Syrian Islamist Rulers Shun The Taliban Governance Model

 

(WAJ: アサド政権を打倒し実質的に政権の中枢を掌握したHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャーム)の指導者は、ターリバーンと同じイスラム主義組織でありながら、女性に対する政策をはじめ国民和解などアフガニスタンのターリバーンとは同じ政策はとらない、と断言している。しかしターリバーンも2021年8月の復権直後は第1次ターリバーン政権時と同じ様な政策はとらない、と宣言していた。旧政権当事者への恩赦も確約していた。シリアのHTSが今後どのような姿勢で内政外交を展開するか、注視したい。)

 

2024年12月25日
アブバカール・シディク(Abubakar Siddique: RadioFreeEurope RadioLiberty)

 

シリアのイスラム主義指導者アフマド・アル・シャラーは政策を穏健化すると約束した。(資料写真)シリアのイスラム主義指導者アフマド・アル・シャラー氏は政策を穏健化すると約束(資料写真)

アフガニスタンのターリバーン指導者たちは、シリアのバッシャール・アル・アサド大統領の政権を打倒したハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS)のイスラム主義者たちに即座に祝意を述べた。

12月8日にHTS戦闘員が首都ダマスカスを制圧した際、ターリバーンは同組織が「主権を有し奉仕志向のイスラム政府の基礎を築く」よう期待していると述べた。

しかし、2週間以上が経過した現在、米国とEUがテロ組織に指定しているHTSは、ターリバーンによるアフガニスタン統治とは一線を画そうとしているようにみえる。

以前はアブ・ムハンマド・アル・ジョラニという戦闘名で知られていた同組織の指導者アフマド・アル・シャラー氏は、女性の権利、国民和解、国際社会との関係に関してターリバーンの過激なアプローチと比較して穏健な政策を採用すると公言している。

先週BBCにシャラー氏は「シリアとターリバーンの間には多くの違いがある。統治の仕方も違う」と語った。

 

女性

シャラー氏は、政府は女性に教育を受けさせると述べた。過去8年間HTSが支配してきたシリア北西部の都市イドリブでは、大学生の60%以上が女性であると述べた。また、キリスト教徒の女性はベールの着用を強制されないとも述べた。

ターリバーンは2021年8月に首都カーブルを制圧してから1か月後、中学生以上の女子の就学を禁止した。また、2022年12月には女性の大学や専門教育への参加を禁止した。

1996年、ターリバーンはアフガニスタンを掌握し、イスラム法を厳格に遵守する政府を樹立した。2001年に米国主導の連合軍がターリバーンを打倒したが、ターリバーンは反乱軍として再編し、2021年に米国とNATO軍が撤退した後、最終的に権力を取り戻した。

ターリバーン幹部らは、国際社会やアフガニスタン国内の多くの人々から反対されているこの禁止令を施行するために、イスラム法シャリーアの「反主流の意見」(訳注:下の参考記事によると、ターリバーンのアフンザダ師はムハンマドの妻の1人サウダがその死まで家に留まったことを礼賛しており、その意見は「反主流」ではあるが逆らえない)を採用した。

<参考記事> イスラームは少女の教育を認めるのに、なぜターリバーンは禁じるのか?
https://www.rferl.org/a/taliban-girls-education-islam-takeover-anniversary/32546094.html

 

しかし、HTSは女性の完全な自由を支持してわけではなく、さまざまな制限や制約を検討している。「女性が司法権を握ることに関しては、研究者や専門家による研究の対象だ」と、HTS主導の暫定政権の広報担当者オバイダ・アルナウト氏は述べた。

アルナウト氏は議会や政府における女性の働きについても同様の見解を持っている。

彼の発言は、イスラム主義グループに宗教的支配を押し付けないよう警告した女性権利活動家たちの抗議を引き起こした。

 

「団結と和解」

HTSの主な政治メッセージは、2011年以来激しい内戦を続けているグループに向けられたものであり、シリア国内の多様な民族、宗教、宗派グループ間の団結と和解を呼び掛けている。

イスラム主義を奉じるHTSは、同党の指導者の中から選ばれた人物で暫定政権を構成した。そして、3月まで暫定政権として機能するため北西部イドリブの拠点から政権の大半を移転した。

しかし、指導者シャラー氏は国民和解と国民を包摂する政府機関を約束した。

「シリアは皆のための国であり、我々は共存できる」と彼は12月22日に記者団に語った。


2022年8月、カーブルで抗議活動を行うアフガニスタン女性たちを解散させるターリバーン戦闘員

HTSのリーダーは、元バース党の幹部で元副大統領のファルーク・アル・シャラー氏を、今後首都で開催される国民対話会議に参加するようあえて招待した。彼は、すべての人が受け入れられる憲法の制定に向けて努力すると繰り返し約束している。

これは、2021年以来権力を独占しているターリバーンとは異なる。ターリバーンの聖職者によって率いられた神政政府は、ターリバーンに属していないアフガニスタン人を遠ざけ、憲法制定を抑えてきた。

2021年9月に暫定政府を任命したにもかかわらず、ターリバーンがすべてのアフガニスタン人を包摂する政府の樹立を許可する兆候はまったくない。

 

外交関係

国際社会はシリアの政権移行と、HTSがシリア国民の願望にどう応えるかを注視している。

シャラー氏は、将来の統治、テロ対策、外交政策について議論するためにダマスカスで会談した外交官や国際高官に強い印象を与えたと伝えられている。

この取り組みは成果を上げているようだ。12月20日、ワシントンはシャラー氏に対する1000万ドルの懸賞金を解除した。シリア指導者は自国に対する国際的制裁の早期終了を強く求めている。

「我が国が前進するためには、制裁は速やかに解除されなければならない」と、シャラ―氏は12月22日、トルコのハカン・フィダン外相とともに記者団に語った。

アフガニスタンでは、ターリバーン指導者の大半が依然として国連と米国の制裁リストに載っている。女性に対する教育禁止やその他の人権侵害を理由に、一部の指導者は新たな渡航禁止や制裁に直面している。

HTSがシリアで権力を固め続ける中、西側諸国の当局者や外交官は、この過激派グループの言葉をそのまま受け取ることに慎重になっている。

「ターリバーンはアフガニスタンを占領する際に、より穏健な顔をしていた、少なくともそうしようとしていたが、その後、本性を露呈した」と、アントニー・ブリンケン米国務長官は12月18日、ニューヨークのシンクタンク「外交問題評議会」で述べた。「その結果、ターリバーンは世界中でひどく孤立したままだ。」

ブリンケン国務長官は「シリアで台頭しているグループ」に対し、国際的な孤立を避けるために「国を前進させること」に重点を置くよう助言した。

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