Democrats’ waning support for Israel extends to Jewish Democrats too

ユダヤ系民主党員にとって、政治とイデオロギーは宗教的アイデンティティよりも重要になってきている。
Politics and ideology increasingly trump religious identity for Jewish Democrats.

 

(WAJ: アメリカのユダヤ人組織には、つぎの3潮流がある。本論考では共和党寄りのユダヤ人のイスラエル観に大きな変化はないが、民主党寄りのユダヤ人の間ではネタニヤフ政権のやり方への批判が増大している事実がレポートされている。

親イスラエル(主流/ネタニヤフ寄り・親政府寄りの傾向がある団体)
AIPAC(American Israel Public Affairs Committee)アメリカ・イスラエル公共問題委員会 — 米国で最も影響力のある親イスラエルロビーのひとつ。対米議会ロビー活動を通じ強い米イスラエル関係を推進。
Zionist Organization of America(ZOA)アメリカシオニスト機構 — 保守的でネタニヤフや右派路線を支持することが多い組織。ネタニヤフを擁護する発言・協力が見られる。
Conference of Presidents of Major American Jewish Organizations(Conference of Presidents) 主要米国ユダヤ団体会長会議 — 伝統的に政府・イスラエル支持の立場をとるメンバーが多い(AIPACやAJCアメリカユダヤ人委員会など)。

親イスラエルだがネタニヤフに批判的「プロ・平和/二国家解決」志向の団体
J Street — 「pro-Israel, pro-peace」を掲げ、二国家解決や民主的価値を強調。ネタニヤフの強硬路線に批判的な立場を取ることが多い。
Americans for Peace Now(APN)/Progressive Israel Network系団体 — 平和的解決・占領終結を訴え、ネタニヤフ来訪などに反対。

ネタニヤフ(あるいは現行イスラエル政府)の政策に明確に反対・批判的(左派/反占領)ユダヤ人団体
Jewish Voice for Peace(JVP) — パレスチナ人の権利を強く支持し、ネタニヤフ政権や軍事行動を厳しく非難する行動・抗議を継続している。
IfNotNow — 米国ユダヤ人の若手主導の運動で、占領とそれを支持する体制(およびネタニヤフの政策)に反対する直接行動を行う。
Progressive Israel Network / New Israel Fund 系の一部団体 — ネタニヤフの政策や極右連立に対して「Netanyahu is not welcome」等の声明に参加。)

 

マイケル・テスラー (Good Authority:2023年に創刊されたアメリカの独立サイト)
2025年9月23日

連邦議会で民主党の最高位議員であるチャック・シューマー上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)とハキーム・ジェフリーズ下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)の両氏は、ニューヨーク市長選で民主党の候補者となったゾーラン・マムダニ氏(訳注:ウガンダ生まれの33歳。民主社会主義者を自称する民主党員。イスラム教徒)をまだ支持していない。先週、ニューヨーク・タイムズ紙は、シューマー議員が支持をためらう理由のひとつは、マムダニ氏のイスラエルに対する極めて批判的な見解とシューマー議員の「ユダヤ人有権者への責任」にあると報じた。

 

民主党のイスラエルに対する反対が強まる

しかし、シューマー氏の「揺るぎない」イスラエル支持は、彼の党の支持基盤、特に相当数のユダヤ系民主党員の支持基盤とはますます乖離しつつある。例えば、最近のクイニピアック大学の世論調査では、民主党員の3分の2がイスラエルへの軍事援助の拡大に反対している事実が明らかになった。また、民主党の登録有権者の4分の3以上が、イスラエルはガザでジェノサイドを犯していると考えている。

民主党員は、常にイスラエルにこれほど強硬に反対していたわけではない。下のグラフは、2023年10月7日のハマースによるテロ攻撃後の数週間、彼らがパレスチナ人よりもイスラエル人に同情する傾向が著しく強かったことを示している。

 

<図表:イスラエル人に共感する人数からパレスチナ人に共感する人数を減じたシェア>

しかし、それ以来、イスラエルに対する民主党の支持は急落している。ユーガブ/エコノミスト社の共同世論調査(訳注:英国発祥の調査会社ユーガブ社とエコノミスト社が共同で実施・発表する定期的な世論調査)によると、民主党支持者はイスラエルよりもパレスチナに同情すると答える割合が40ポイント近く高いことが分かっている。ギャラップの世論調査でも同様に、イスラエルによるガザへの軍事作戦を支持する民主党支持者の割合は、2023年11月の36%から今年7月にはわずか8%にまで低下している。

共和党支持者の間では、イスラエルへの強い支持は過去2年間、ギャラップとユーガブ・エコノミストのデータの両方において比較的安定している。つまり、世論における党派間の分断の拡大は、ガザ紛争におけるイスラエルの行動に対する民主党の反対の高まりに完全に起因していると言える。

 

ユダヤ系民主党員はガザ戦争への反対を強めている

この大きな党派間の分断は、ユダヤ系アメリカ人のイスラエルに対する意見にも及んでいる。イプソス(訳注:フランス発祥の国際的な市場調査・世論調査会社)がロチェスター大学のジェームズ・ドラックマン氏、カリフォルニア大学のブルース・フラー氏と共同で実施した1166人のユダヤ系成人を対象とした新たな調査では、アメリカのユダヤ人の大多数が、イスラエルによる2年間にわたるガザでの軍事作戦を支持していないことが明らかになった(不支持53%対支持31%)。

下のグラフはさらに、民主党支持あるいは民主党寄りのユダヤ系アメリカ人の大部分に、反対意見が集中していることを示している。

<図表:イスラエルのガザにおける軍事作戦を支持/不支持するアメリカ在住ユダヤ人の割合>

出典:イプソス/カリフォルニア大学/ロチェスター大学、2025年8月〜9月の調査。政党別集計データはジェームズ・ドラックマン氏提供。

 

実際、画面左側を見ると、ユダヤ系民主党員の70%が過去2年間のイスラエルの戦争行為に反対していることがわかる。しかし、画面右側を見ると、共和党支持者、あるいは共和党寄りのユダヤ系アメリカ人のうち、イスラエルのガザにおける行動に反対しているのはわずか16%にすぎない

残念ながら、一貫した世論調査データがないため、過去2年間でユダヤ系民主党員の間でイスラエルへの支持がどれほど低下したかを正確に特定することは不可能だ。しかし、減衰しているのは明らかだ。実際、ピューリサーチセンターが2024年2月に米国在住のユダヤ人1000人以上を対象に実施した世論調査では、ユダヤ系民主党員の過半数以上(53%)が「イスラエルのハマースへの対応方法」は容認できると回答していた。

 

ユダヤ系民主党員がイスラエルの軍事作戦に反対する理由

アメリカのユダヤ人全般、特にユダヤ系民主党員は、歴史的に多元主義、寛容、平等主義、少数派の権利擁護といったコアなリベラル価値観に傾倒してきた。例えば、ピューの調査データによると、ユダヤ系民主党員は、ユダヤ系共和党員や一般のアメリカ人成人よりも、疎外された集団(黒人、ゲイ・レズビアン、イスラム教徒、ヒスパニック系など)に対する差別の蔓延をはるかに懸念していることが示されている。

もちろん、こうした長年にわたり培われた価値観は、約2年前にガザ紛争が始まって以来のイスラエルによるパレスチナ人への人権侵害の増大とは真っ向反対する。したがって、ユダヤ系民主党員の大多数を含むアメリカのユダヤ人の大半が、イスラエルの進行中の軍事作戦に反対していることは、全く驚くべきことではない。

実際、イスラエルに対するユダヤ系民主党員の意見では、イスラエルの行為に対する政治的、イデオロギー的な嫌悪感が、宗教的アイデンティティや集団内の親和性よりもますます優勢になっているようだ。

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