US Senate passes bill to terminate Trump tariffs against Brazil
(WAJ:2025年10月28日のロイターは、「トランプ大統領が7月に宣言した国家非常事態を解除し、ブラジルに対する関税を撤回する法案を米上院が可決した」と報道し解説を行った。また、ChatGPTはその解説をさらに深掘りしてみせた。この法案可決は上院共和党議員5名の「造反」によって実現した。その概要を下記に記す。今回のニュースのもつ意味は<視点:151>が引き続きの解明を試みる。)
(ロイターのサイトでは、記事のAI要約の試みが始められており興味深い。原文記事中の「Try Reuters AI」ボタンを押せば要約が表示される。)

2025年10月18日、米国ワシントンD.C.のキャピトル・ヒルで、数週間にわたる政府閉鎖が続く中、国会議事堂の背後の雲に虹が見える。ロイター/アーロン・シュワルツ
デビッド・モーガン
2025年10月29日午前8時46分 GMT+9
<まとめ>
・上院は超党派の支持を得て、ブラジル関税法案を52対48で可決
・下院共和党はブラジルへの関税措置を棚上げする可能性が高い
・上院民主党はトランプ大統領の関税が消費者物価を上昇させると批判
ワシントン 10月28日 ロイター – 共和党が主導する米上院は28日、ブラジルがボルソナロ前大統領をクーデター未遂容疑で訴追したことへの報復としてトランプ大統領が7月に宣言した国家非常事態を解除し、ブラジルに対する関税を撤回する法案を可決した。
今週上院で審議されると予想される3つの関税法案のうち最初の法案では、共和党議員5人が党派を超えてこの法案を支持し、議員らはブラジルに対する措置を52対48で承認した。
トランプ大統領のカナダに対する関税と世界各国に対する関税を撤廃するための立法措置が今週後半に採決にかけられると予想されている。
この採決により、ブラジルの法案は共和党が多数を占める米国下院に送られ、棚上げされる見込みです。下院共和党は、トランプ大統領の関税撤廃を求める法案の成立を阻止するために繰り返し投票を行ってきました。
上院のこの措置は、トランプ大統領がマレーシア、日本、韓国を5日間訪問し、木曜日に中国の習近平国家主席と貿易協議を行う予定となっているさなかに行われた。
上院民主党は、トランプ大統領が関税の一部を正当化するために偽の緊急事態宣言を利用したと主張し、影響を受ける商品や資源の価格が上昇し、米国の消費者に打撃を与えていることから、貿易措置を撤回するために繰り返し採決を強制することを約束した。
「人々は苦しんでいる。トランプ大統領の関税政策のせいで、食料、衣料、医療、エネルギー、建築資材に支払う金額が増えている」と、決議案を起草したバージニア州選出の民主党上院議員ティム・ケイン氏は上院本会議で述べた。
彼の法案は共和党の上院議員スーザン・コリンズ、ミッチ・マコーネル、リサ・マーカウスキー、ランド・ポール、トム・ティリスらによって支持された。
他の共和党議員らは、この法案がトランプ大統領の他国との新たな貿易協定交渉の努力を損なう可能性があると警告した。
ブラジル当局は、過去15年間で米国がブラジルに対して4100億ドルの貿易黒字を計上していることを理由に挙げている。しかし、トランプ大統領の大統領令は、ブラジルが米国の国家安全保障、外交政策、そして経済を脅かし、ボルソナロ大統領を「政治的に迫害」していると非難した。
ボルソナーロ大統領は、武装犯罪組織への参加、暴力による民主主義の破壊の試み、クーデターの企ての罪で有罪判決を受け、懲役27年の刑を宣告されている。大統領は繰り返し不正行為を否認し、ブラジル最高裁判所に控訴している。
トランプ大統領は7月、ブラジル製品の大半の輸入関税を50%に引き上げ、ボルソナロ事件を担当するブラジル最高裁判所判事に制裁を科した。判事は、ボルソナロ氏が自身の刑事事件においてトランプ大統領の介入を唆したとの疑惑を受け、捜索令状と接近禁止命令を発令していた。ボルソナロ氏は、ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領の2023年の就任を阻止しようと企てたとして起訴されていた。
トランプ大統領は先週、適切な状況であればブラジルに対する関税の引き下げを検討すると述べた。
4月、上院はトランプ大統領によるカナダへの関税を撤廃する法案を可決したが、世界的な関税を抑制する別の法案は否決した。両法案とも下院で否決された。
デビッド・モーガン記者による報告、ソナリ・ポール記者とリンカーン・フィースト記者による編集。
【原文(英語)を読む】
<ChatGPTによる解説>
主な事実
上院は2025年10月28日(米国時間)に、ブラジルからの輸入品に対してトランプ政権が発動した「50%の関税」を撤回あるいはその根拠となる国家緊急事態宣言を終わらせる決議を、賛成52・反対48という僅差で可決した。(ロイター)
この決議は、民主党のTim Kaine上院議員(バージニア州)が発案したもので、トランプ大統領がブラジルでの元大統領 Jair Bolsonaro の起訴を理由に“米国に対する異例かつ重大な脅威”として国家緊急事態を宣言し、その上でブラジルからの輸入品に高関税(50%)を課したという背景がある。(ザ・ガーディアン)
注目すべきは、共和党議員の中から5名が党を越えて賛成に回ったこと。具体的には、 Mitch McConnell(ケンタッキー)、 Rand Paul(ケンタッキー)、 Susan Collins(メイン)、 Lisa Murkowski(アラスカ)、 Thom Tillis(ノースカロライナ)です。(ザ・ガーディアン)(ロイター)
とはいえ、この決議が直ちに関税撤回に繋がるかというと、ハウス(下院)において既に共和党指導部がこの種の決議を「審議拒否」できる手続きを設けており、またトランプ氏が大統領権限として拒否権(veto)発動を示唆しているため、実効性としては現時点で象徴的な意味合いが強いという報道がある。(AP ニュース)
なぜこの決議が出たのか(背景)
トランプ政権は、ブラジルがボルソナロ元大統領を起訴して有罪判決を下したことを契機として、「米国の国家安全保障/外交政策/米国経済に対する異例かつ重大な脅威」として、2025年7月にブラジルからの輸入品に対して50%の関税を課すとともに、国家緊急事態を宣言した。(ロイター)
共和党内部にも、こうした大統領による「国家緊急事態宣言を根拠とする関税課税」という手法に疑問を持つ議員がおり、「非常事態とは戦争・飢饉・竜巻といったものだ。輸入関税を嫌だからといって非常事態を宣言するのは乱用だ」といった批判も出ている。(ザ・ガーディアン)
また、米・ブラジル間の貿易関係をみると米国がブラジルに対して貿易赤字という構図ではなく、近年では米国のブラジル向け輸出・輸入が双方でかなり動いており、50%関税という大きなハードルが米企業・農業・消費者にも影響を及ぼすとの声もある。例えば、米国がブラジルとの15年間で約70 億ドルの貿易黒字を出していたという指摘もある。(ザ・ガーディアン)
今後の展望
この決議は上院で可決されたものの、下院(United States House of Representatives)での審議ルートをすでに下院共和党が阻んでおり、決議として成立し、関税を実際に撤回するには多くのハードルがある。(ロイター)
また、トランプ元大統領による発動権限(国家緊急事態宣言→関税)自体の合法性が、最高裁(Supreme Court of the United States)で争われる可能性があると報じられている。(ザ・ガーディアン)
今後、カナダ、その他多数の国に対して課された同様の関税・国家緊急事態宣言を巡る決議も上院で予定されており、今回のブラジル決議はその先駆け的な意味合いがある。
