Five Dispassionate Ways of Looking at Today’s Oval Office Blow-Up

 

(WAJ: 日本時間3月初日の衝撃事件。全世界に配信されたホワイトハウスでのアメリカ大統領、副大統領らとウクライナ・ゼレンスキー大統領の口論。果たしてこれを民主主義と人はいうのか。何万人何十万人が殺され、ウクライナの重要施設や市街地が爆撃で破壊されひとびとの平和な生活が奪われているる。核兵器を所有しているというだけで武力で恣意的に国境線の変更を試みる行為がまかり通る。支援を口実に実利をゆすり取ろうとする行為が堂々とまかり通る。スーツを着た者たちが繰り広げる愚行。人間であることが恥ずかしくなるような脅し。アメリカの知性はこの現象をどう見るか。そしてわれわれは・・・)

 

 

ダニエル・W・ドレズナー
2025年3月1日

Capitol Hill, U.S.A.
Photo by Srikanta H. U on Unsplash

情報通の読者は、本日、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領とドナルド・トランプ大統領のホワイトハウスでの会談があまりうまくいかなかったことを間違いなくご存じだろう。ニューヨーク・タイムズのピーター・ベイカー氏はつぎのように述べている。

トランプ大統領とJ・D・バンス副大統領は金曜日(2月28日)、テレビ中継された大統領執務室でウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領を激しく非難した。そしてこの口論により、希少鉱物協定に署名する計画は最終的に台無しとなり、両国の戦時同盟関係に劇的な断絶を告げるものとなった。

近年の米国大統領と外国首脳の間では見られなかったような公開対決で、トランプ氏とバンス氏は、ロシアとの戦争における米国の支援に十分感謝していないとしてゼレンスキー大統領を非難し、米国が指示する条件で和平協定を結ぶようゼレンスキー大統領に強硬に迫った。

大統領執務室での会議のテレビ放映はほぼ50分間続いたが、最後の7分ほどで真の盛り上がりを見せた。以下は BBC の関連ビデオである。


https://www.bbc.com/news/articles/c2019j0w9glo

<ビデオ概要>

しかし数分後、控えめに言っても前例のない事態が勃発した。和やかな雰囲気は、辛辣さと混乱に変わった。声を荒げ、目を丸くし、中傷する声が上がった。そして、そのすべてが世界中のテレビカメラの前で行われた。

J・D・バンス副大統領がゼレンスキー大統領に対し、戦争は外交を通じて終わらせなければならないと告げたことで緊張が高まった。

一体どんな外交だ、とゼレンスキー氏は答えた。

バンス氏は訪問中のウクライナ大統領に対し、大統領執務室で米国メディアの前で自らの主張を述べるのは「無礼」だと述べ、トランプ大統領の指導力に感謝するよう要求した。

部屋にいた記者たちは、その後の異例のやり取りを口をあんぐり開けて見守った。

「君はもう十分話した。君が勝つことはない」とトランプ氏はある時点で同氏に言った。「感謝しなくてはならない。君にはカードがないのだ」

「私はトランプをやっているのではない」とゼレンスキー氏は答えた。「私は真剣だ、大統領。私は戦争中の大統領なのだから」

「あなた方は第三次世界大戦に賭けている」とトランプ氏は反論した。「あなた方のしていることは、多くの人々が言うべき以上にあなた方を支援してきたこの国に対して非常に無礼だ」

バンス氏は「あなたはこの会議中、一度でも『ありがとう』と言いましたか? 言っていないでしょう」と反論した。

ウクライナ駐米大使は頭を抱えながら見守っていた。

雰囲気は完全に変わり、すべてが明らかにされた。

<ビデオ概要おわり>

その後数時間、誰もが私にこの騒動についてどう思うかと尋ねてきた。これは答えるのが難しい質問だった。本能的に、吐き気がした。米国の大統領と副大統領が、自分たちの素敵な家に招待された貧しい友人たちに「ありがとう」と言えと要求する不機嫌な6歳児のように振舞うのを見るのは、驚きであり不愉快だった。

問題は、国際関係論の著名な教授である私には、直感的な反応以上のものが求められているということだ。そこで、もっと冷静に考えてみると、私は1つの大きな教訓と、いくつかの小さな観察結果を述べるべきだと思った。

第1に、この会談で私が得た大きな教訓は、トランプ大統領がウラジーミル・プーチンには優しくするべきだがボロディミル・ゼレンスキーにはそうすべきではないと考えていることが明らかになったことだ。上のビデオの冒頭で、トランプ大統領は「君はプーチンについて本当にひどいことを私に言わせた上で、『やあ、ウラジーミル、ぼちぼち僕と合意するかい?』と言うつもりだね」と切り出した。ここまでならまったく不合理な立ち位置ではない! しかし、その後トランプは踏み込んでゼレンスキーに対して本当にひどいことを面と向かって言った。その行為がいかなる合意も台無しにするのか否かついては全く興味を示さなかった。

米国大統領は明らかに、強者はできることをし、弱者は我慢しなければならないと信じている。ロシアは強く、ウクライナは弱く米国の影響力に頼っている。トランプ氏の世界観と世界の権力分布に関する彼の見解の両方を否定することは誰にでもできる・・・しかし、明らかに上記がトランプ大統領の信じるところである。

小さな収穫

第2に、私はヨーロッパ人がこのぶち壊しにどう反応するかに真に関心がある。テレビで放映された50分間を全部見れば、NATOをぶち壊したくはなく、特にポーランド人は必ず保護するとトランプ氏はかなり強く語っている。私はヨーロッパ人がこれらの主張にいかなる形にしろ屈服すべきだとは言わない。しかし人によっては、もし記者会見が最後の質問の前に終わっていたら、このやりとりには全く満足したかもしれない。

第3に、ホワイトハウスによる記者団選出において一部メディアを排除した影響はすでに現れている。CNNが報じたところによると、「ロシアの国営通信社のメンバーが金曜日、トランプ大統領とウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領との会談を取材するため大統領執務室にアクセスできたのに、AP通信(訳注:メキシコ湾と表記し続けているのを疎まれた)とロイター通信は高官級会談への立ち入りを禁じられていた」。ホワイトハウスは後にTASSの記者を通したのは間違いだったと述べたが、このような失態が安全保障上どのような影響を及ぼすかは想像に難くない。

<参考記事>
https://edition.cnn.com/2025/02/28/media/tass-russian-state-media-oval-office/index.html
https://www.reuters.com/world/us/white-house-bars-ap-reuters-other-media-covering-trump-cabinet-meeting-2025-02-26/

 

TASS通信の記者は、ホワイトハウスが出席させた記者よりも良い質問をしたかもしれない。米国の記者はおとなしくしていた。OANN(訳注:ワン・アメリカ・ニュース・ネットワーク(親トランプのケーブルチャンネル))の記者はトランプに、プーチンとの対話を始めるのに必要な「勇気」について質問した。それはあまりにも愚かで、おべっか使いの質問で、トランプでさえ気にしたほどだった。さらにはマージョリー・テイラー・グリーン(MTG)のボーイフレンドの件。

<Drew Harwell のX書き込み>

ゼレンスキー氏にスーツを所有しているか尋ねたブライアン・グレン氏は、親トランプメディアネットワーク「リアル・アメリカズ・ボイス」の記者で、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員のボーイフレンドでもある。ホワイトハウスがAP通信の取材を阻止した後、彼は大統領執務室の希少なインタビュアー枠のひとつを手に入れた。

C-SPAN 動画

“Why don’t you wear a suit?”
「なぜスーツを着てないんだ?」

この書き込みに対して「3306再ポスト 773引用 1万 いいね」。第2次世界大戦中、スーツを脱ぎ戦闘服で外交活動をしていたチャーチル英首相の写真やイーロン・マスク氏が閣議に野球帽・Tシャツ姿で発言する写真や動画が引用され、アホな質問への反論がつづく。

<Drew Harwell のX書き込み おわり

 

第4に、上のビデオを見て、J.D.バンス副大統領とマルコ・ルビオ国務長官に注目してほしい。彼らのボディランゲージが物語っている。バンス氏は、ポッドキャスター風の質問に喜び、すべてを悪気のない冗談だと受け取った。一方、ルビオ氏は、まさにその瞬間、火星に送られたいと思っているように見えた。ルビオ氏は後に、大統領への支持をツイートしたが(訳注:3月1日の書き込み「これまでどの大統領も勇気がなくて出来なかったやり方でアメリカのために立ち上がってくれてありがとう。アメリカを一番に置いてくれてありがとう。アメリカはあなたと共に!」)、間違いなく、会議がどれほどひどいものだったかを彼は正確に知っていた。

2人の反応のどちらがより不快であったかは、みなさん判断できるだろう。だが、私に代わってエリザベス・ピキュートが次のように語っている。(https://bsky.app/profile/did:plc:2kfemzpsbyfpzkp4op6dopoj/post/3ljb3jvpmms2a?ref_src=embed

ふたりのボディランゲージはこれ以上ないほど対照的だ、まさにそれが私が両方を軽蔑する理由だ。

 

第5に、そしてこれで最後だが、これはロシア以外のすべての国にとって悪い結果になる。ウクライナにとって、トランプの大統領執務室でのぶち壊しは共和党内での大きな支持を失った。米国にとって、トランプ氏とバンス氏の行動は米国の世界における地位を再び低下させる。欧州にとって、これは大西洋をまたぐ棺桶に打ち込むいまひとつの釘となる。そしてロシアにとって、そう、クリスマスとイースターが一度にやって来たようなものだ。

結論。トランプ2.0 のいつもの通り、今日は事態がさらに悪化した。

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