(WAJ: 『ウエッブ・アフガン』は、平和・人権・進歩のテーマについて学ぶサイトを目指している。「進歩」のカテゴリーでいま最も注目しているのがAIである。AIは人間の「脳」機能の代行・発展・外延化を行う。しかしそれは人間個人ではなく、類としての人間の進化・発展をも促す。したがってその発展は必然的に人間社会の変革をも引き起こす。現在その技術的革新の過程を通じたAIと人間の融合は、すでにこれまでの人間を旧人類とする新社会の実現を現実のものとしつつある。2026年3月17日付のForbes JAPANに掲載されたバリー・リバート氏の記事はこの事実を明らかにしている。AIを活用してその要約を下記に掲げる。ぜひ<視点:172>とあわせて全文をお読みいただきたい。)
シンギュラリティは始まっている
記事の中では、ヴァーナー・ヴィンジのいう「技術的特異点」が、もはや遠い未来ではなく、AIの急速な進歩によって現実味を帯びてきたと論じている。筆者は、2022年11月30日のGPT-3.5公開を大きな転換点と位置づけ、それ以後、AIが経済・企業活動・働き方を一変させたとみる。株式市場の再評価、SaaS企業の苦境、Nvidiaの急成長、xAIとSpaceXの統合構想などを背景に、AIが単なる新技術ではなく、産業構造を塗り替える力になったという認識が示される。
AIは知的作業を代替する
記事の中心的な主張は、AI革命はすでに始まっており、もはや誰もその外部にはいられないという点にある。筆者によれば、2025年末から2026年初頭にかけて登場した新しいAIモデルは、従来の「業務支援ツール」の域を超え、ソフトウェアそのもの、さらには知識労働全体を飲み込みつつある。営業、マーケティング、人事、財務といった非技術職も含め、誰もが自然言語で高度な成果物を作れるようになり、完成度・速度・コストのすべてで従来型の仕事のやり方が揺らいでいる。筆者はこれを、AIが人間の知的作業を包括的に代替し始めた証拠として受け止めている。
AIは自立的価値創出主体に
その具体例として、筆者は4社を挙げる。
・AgentPressはB2B営業向けに、顧客別の投資対効果や導入効果を示すビジネスケースをAIで数秒で生成し、従来は一部大型案件にしか使えなかった高度な提案業務を全商談へ拡張する。
・HiveMQは、AI活用の本質的ボトルネックはモデルではなくデータだとし、リアルタイムで構造化・検証されたデータ基盤を整えることで、産業現場で安全かつ追跡可能に動くAIを可能にする。
・Axoniqは、企業システムの完全な履歴と意思決定の文脈を保存し、AIの振る舞いを「なぜそうしたか」まで説明できる基盤を提供する。
・Anthropicの例では、同社CEOがAIが社内コードの大部分を書いていると述べ、しかも現世代AIが次世代AIを自律的に作る段階まで1〜2年かもしれないと語っていることが紹介される。これらの事例を通じ、筆者はAIが補助役ではなく、自律的な価値創出主体へ変わりつつあると強調する。
AIを使い倒している者が勝つ
記事は、この変化が個人、企業、投資家に何を意味するかを論じる。結論は明快で、実験し、導入し、日常的にAIを使い倒している者が勝つ、というものだ。AIによる生産性向上はすでに観測可能であり、METRのような組織の測定結果も、AIモデルの能力向上が急角度で進んでいることを示しているとされる。筆者は、AIの進歩は過去の自動化と違って、単一作業ではなく認知スキル全般を置き換える点で本質的に異なるとみる。ソフトウェア開発、法務、財務、医療、営業・マーケティングなど、ほぼあらゆる知識集約型職種が対象になり、AIは単純補助ではなく、本格的な代替者・共同実行者になっていく。議論の焦点は「AIは役立つか」ではなく、「AIをどう業務の中心に据えるか」へ移ったというのが筆者の立場である。
AIに飲み込まれる知識労働
記事後半で筆者が最も強く訴えているのは、AIの進化を抽象的な未来論として語る段階は終わり、企業経営・投資・労働の実務で、すでに勝者と敗者を分ける現実的な条件になっているという点である。前半ではシンギュラリティの到来可能性が語られるが、後半ではその議論が一気に具体化し、「では企業や個人は何をすべきか」という実践論へと移る。筆者は、AI革命の本質は単なる効率化ではなく、知識労働そのものをAIが飲み込み始めていることにあるとみている。営業、マーケティング、人事、財務、法務、医療など、従来は人間の専門職が担っていた認知作業が、より速く、より安く、しかも高品質に遂行される世界が現実化しつつある、というのが後半の基調である。
変わる売上創出の構造
その説明のために筆者は、AI活用企業の事例を並べるが、後半で重要なのは個別企業の紹介そのものより、AI導入の勝敗を分ける条件が何かを示している点である。AgentPressの事例は、AIが営業支援の周辺業務を少し楽にするのではなく、案件ごとのROI算定や提案資料づくりといった、従来は時間も専門性も必要だった中核業務を数秒で処理できることを示す。しかもその結果、営業の質と規模そのものが変わり、すべての商談に高度な価値訴求を持ち込めるようになる。ここでのポイントは、AIが補助者ではなく、売上創出の構造を変える実働要員になっていることだ。
質が問われるデータとデータの出力
一方で筆者は、真に重要なボトルネックはモデル性能ではなくデータ基盤だと強調する。HiveMQの例では、産業用AIは入力データが不完全でサイロ化されていれば機能せず、優れたモデルがあっても「質の悪い出力」を高速に返すだけだとされる。つまり、AI時代に競争優位を持つ企業は、単に高性能モデルを使う企業ではなく、リアルタイムで構造化され、文脈づけられ、ガバナンスの効いたデータを供給できる企業である。後半の論旨に照らせば、AI競争とはモデル競争ではなく、実はインフラ競争でもある。
AIは賢いだけでは不十分
さらにAxoniqの事例では、AI活用の次の課題が示される。それは「AIを使えるか」ではなく、AIがなぜその判断をしたのかを説明し、正しかったと証明できるかという問題である。従来システムは履歴や文脈を十分に保持せず、AIの判断過程を追えない。そのため企業は、AIの導入可否よりも、監査可能性・説明可能性・再現可能性を備えた基盤を持てるかで差がつく。筆者はここに、今後の企業システムの核心を見ている。AIは賢いだけでは不十分で、企業の意思決定と責任の枠組みに接続されて初めて実装可能になるということだ。
「真の集合知」の立ち上がりと先取
後半の中でもとりわけ強いメッセージは、AI導入を実験段階にとどめる側は負けるという断言である。筆者は、すでに日々AIを試し、導入し、大規模運用している個人・企業が大きく勝つと述べる。その理由は、彼らが単なる作業効率化ではなく、「真の集合知」の立ち上がりを先に取り込むからだという。METRの生産性測定にも触れながら、AIの能力向上は急激であり、人間がこれまで最も高生産的だった地位を、機械が塗り替えつつあると論じる。つまり後半の筆者は、AIを便利なツールとしてではなく、人間を上回る生産主体として認識せよと迫っている。
過去の自動化との質的な相違
そのうえで記事は、今後飲み込まれる領域としてソフトウェア、法務、財務、医療、営業・マーケティングを挙げる。ここで重要なのは、AIが単一の作業だけを自動化するのではなく、あらゆる業界の認知スキル全般を汎用的に代替すると筆者が見ている点である。これは過去の自動化とは質的に異なる。人間の専門性の多くが、AIエージェントに再編される可能性がある以上、仕事の定義そのものが変わるという認識が後半全体を貫いている。
成功するAI企業の3条件
では、どうすればAI時代に成功できるのか。筆者は結論として、企業が見るべきポイントを人材・製品・パフォーマンスの3つに整理する。
第1に人材面では、人間の従業員だけでなく、同等規模のAIエージェントが組織で働き、生産性向上とコスト削減を定量化できること。
第2に製品面では、製品そのものがAIネイティブであり、開発工程にコーディングエージェントが深く組み込まれていること。
第三に業績面では、従来のSaaS指標ではなく、AI企業特有の成長率や収益性、企業価値評価で判断すべきだという。
ここに筆者の実務的結論がある。つまり、AI時代の競争力は「AIを使っているか」ではなく、AI前提で組織・製品・評価軸を作り替えているかで決まる。
AIは新しい「種」
最後に筆者は、人間同士の集合知を重視してきた自らの過去の視点を更新し、いまや機械が人類の知識・言葉・画像・経験を吸収した、より巨大な集合知の担い手になりつつあると結ぶ。AIは希望であると同時に脅威でもあるが、もはや後戻りはできない。したがって重要なのは到来を疑うことではなく、新しい「種」としてのAIとどう共存し、その恩恵を引き出すかである。後半は全体として、シンギュラリティ論を未来の哲学ではなく、企業経営と社会制度の差し迫った現実として読み替える内容になっている。
