(2026年1月7日)
ベネズエラ侵攻は“例外”ではない
~ アメリカの力の使い方を考える ~
このページに目を向けていただきありがとうございます。
今日は少し重い話をします。でも、遠い国の話ではありません。
私たち自身の未来に関わる話です。
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1.何が起きたのか
まず、事実から始めましょう。
今年1月3日、アメリカ軍はベネズエラを攻撃し、
その国の現職大統領、ニコラス・マドゥロとその妻を拘束し、
アメリカ本土へ連行しました。
これは「逮捕」ではありません。
軍事力による拉致です。
アメリカはこう言っています。
「マドゥロは麻薬テロの責任者だ。アメリカの法律で裁く」
しかし、みなさん、考えてみてください。
主権国家の元首を、
国連の決議もなく、相手国の同意もなく、
軍事力で連れ去ることが、
いったいどこで許されているでしょうか。
これは明確な国際法違反です。
国連憲章が禁じている、武力による他国への介入そのものです。
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2.本当の理由は何か
しかも、アメリカの大統領は、
その直後の記者会見で、こんな趣旨のことを言いました。
「ベネズエラの石油利権を取り戻す」
これで、話ははっきりしました。
麻薬対策――
民主主義――
人権――
でも、それらは口実です。
本音は、
・石油
・地政学
・中国、ロシア、イランへの対抗
そして、
キューバを締め上げることです。
今回の軍事行動では、
マドゥロ大統領を警護していたキューバ兵32人が戦死したと伝えられています。
「逮捕作戦」で、
30人以上の外国兵が死ぬでしょうか。
これは戦争です。
しかも、ベネズエラ軍や警察の死者は報道されません。大統領夫妻は自分たちの警護を外国軍に頼っていたのでしょうか。ベネズエラトップたちは自分の国の大統領夫妻の警護を外国の兵士(軍隊)に丸投げしていたのでしょうか。この事件の裏には表向きの報道や評論では語られないどす黒い謀略が隠されている気配が濃厚です。
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3.トランプだけの問題ではない
ここで、よくある反応があります。
「トランプだからだ」
「トランプは異常だ」
本当にそうでしょうか。
実は、アメリカは、
ずっと同じことをやってきました。
アフガニスタン:
ビン・ラーディン逮捕を理由に侵攻し、
20年戦争を続け、何も解決せず撤退しました。
イラク:
「大量破壊兵器がある」と言って侵攻し、
それが嘘だったことを、後で認めました。
中南米:
パナマに侵攻し、ノリエガ将軍を拉致して裁判。
反米政権潰しにグレナダに侵攻。
ニカラグアでは反政府武装勢力を支援。
そして、最も悲劇的だったのがチリです。
合法的な選挙で成立した
アジェンデ社会主義政権を、
経済制裁とCIA工作で追い詰め、
軍事クーデターを起こし、
大統領を銃撃戦で殺しました。
直接侵攻しなくても、
経済を壊せば、国は倒れる。
これは、偶然ではありません。
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4.アメリカの「手口」
アメリカは、
いきなり軍事力を使うことは、あまりありません。
まず、口実を作る。
なければ、作り出す。
ベトナム戦争のトンキン湾事件。
自作自演でした。
イラクの大量破壊兵器。
存在しませんでした。
それでも侵攻は行われました。
軍事侵攻が難しければ、
次は経済制裁です。
キューバには、60年以上制裁を続けています。
オバマ政権は国交を回復しましたが、
制裁はやめませんでした。
つまり、
「殴らないけど、首は絞め続ける」。
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5.ベネズエラはなぜ弱ったのか
では、ベネズエラはどうだったのか。
チャベス政権の初期、
原油価格は高く、
医療、教育、福祉が拡充され、
国民の支持は本物でした。
しかし、
原油価格の下落、
制裁、
技術遮断。
石油産業は衰退し、
通貨はハイパーインフレで紙屑同然になりました。
人口約2800万人のうち、
3割近く800万人が国外に逃れました。
これは「移民」ではありません。
難民です。
政権の腐敗もあり、
マドゥロ政権への支持は低下しました。
アメリカは、それを見逃しませんでした。
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6.中国との対立という大きな文脈
忘れてはならないのは、
現在のアメリカ外交の最大目標です。
それは、
中国を叩くことです。
ベネズエラも、
パナマも、
グリーンランドも、
すべて同じ文脈にあります。
トランプ大統領は言いました。
「グリーンランドはアメリカのものだ」
「軍事力の行使も排除しない」
これは冗談ではありません。
「西半球は俺たちのものだ」
モンロー主義の、
露骨な復活。ドンロー主義です。
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7.トランプを叩くだけでは足りない
最後に、
一番大事なことを言います。
トランプは確かに危険です。
しかし、問題はトランプだけではありません。
なぜ、
こうした帝国主義が、
今、支持されているのか。
それは、
先進国の労働者自身が、
ナショナリズムに取り込まれているからです。
「移民が仕事を奪う」
「外国が悪い」
そう言わされ、
本当の問題――
巨大企業と不平等の構造――から
目をそらされています。
トランプ主義は、
私たちの社会の中で育っています。
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8.自問しよう
だから、最後に、
みなさんに問いかけたい。
私たちは、
この暴力を「遠い国の話」として見過ごすのか。
それとも、
国際法と人間の尊厳を守る側に立つのか。
答えは、
ワシントンではなく、
私たち一人ひとりの中にあります。
ありがとうございました。
【野口壽一】