Flood Catastrophe and Citizen Desperation: Taliban Observe Flood Victims from Above
(WAJ: 5月10からアフガニスタンの北部諸州を襲った豪雨はヘラート、ゴール、バグラーン、バダフシャーン州などで大洪水を引き起こした。その後、ヒンドゥークシュ山脈の雪解け水をも巻き込み、随所で鉄砲水災害を引き起こした。被害の報告は20日になってもつづき、被災者の数も増え続けている。一昨年はパキスタンで国土の半分以上を巻き込むような大洪水が発生したが、今回のアフガニスタンの大洪水も史上まれな事態だという。地球環境の悪化は国力の脆弱な地域により大きな被害を集中させる。アフガニスタンの実質的な支配権を有しているターリバーンは国民の統合に失敗しており、行政能力に乏しい。世界からの支援の手を伸ばす必要がある。)
ハシュテ・スブ(アフガニスタンの独立系メディア
2024年5月15日
アミン・カワ
モハマド・モハマド
バグラーン州、ゴール州、バダフシャーン州、ヘラート州のおのおのは壊滅的な洪水に直面し、多大な人的被害と莫大な経済的損失をこうむった。事態の深刻さにもかかわらず、これらの地域の多くの洪水被害者は、災害から1週間近くが経った今も支援を待っている。彼らは川岸で愛する人の遺体を懸命に探している。被災者たちは、犠牲者を避難させ、援助を提供する救助隊が不在であると指摘し、ターリバーンの対応の欠如を批判している。彼らは、ターリバーンが洪水の被害を受けた人々の生命と財産に対して無関心と無視を示し、差別的な扱いをしていると非難している。
<参考サイト> 日本国外務省の報道発表
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_00677.html
最も多くの犠牲者が出たバグラーン州ブルカ地方にあるフロール地区では、生存者の報告によると、この5日間、同情や援助を申し出るターリバーン関係者の姿はなかった。ところが、ターリバーンの経済担当副首相アブドゥル・ガニー・バラダール(Abdul Ghani Baradar)の事務所は録画されたビデオを発表し、バグラーン州の浸水地域を訪問したと主張している。
最近、アフガニスタンのいくつかの州で未曾有の洪水が発生し、市民はこれまでにない人的被害と経済的損失を被った。特にバグラーン州では死傷者が最も多く、数百人が死亡し、損壊は広範囲に及んでいる。
<参考記事>
https://www.bbc.com/news/articles/c4n1wze72kdo
国際援助団体、ターリバーン支配下の政府機関、現地の報道各社などさまざまな組織が、バグラーン州や他の被災州における洪水被害者について、さまざまな統計を提供している。しかし、直近のデータ、特にバグラーン州における正確な洪水による死傷者数はまだ得られていない。
セーブ・ザ・チルドレン・ファンド(訳注:世界の子どもの暮らしの向上を目指して1919年英国で設立された国際NGO)は、バグラーン州の約4万人の子どもたちが豪雨と洪水のために家を失ったと報告した。同団体はさらに、バグラーンで12,000棟以上の家屋が破壊され、洪水が同州の80,000人の生活に影響を及ぼしていることを指摘した。また、アフガニスタン北部の31万人の子どもたちが洪水の影響を受けていると述べた。
それと前後してユニセフは、アフガニスタン北部で発生中の洪水により、51人の子どもたちを含む少なくとも240人が死亡し、負傷者も多いと報告した。
<参考サイト>
https://www.unicef.org/afghanistan/press-releases/statement-unicef-afghanistan-devastating-flash-floods-northeast-afghanistan
一方、地元情報筋によると、ブルカ地方をはじめとするバグラーン州の洪水被災地では500人以上が命を落とし、さらに数十人が負傷しているという。
その中にあるフロール地区を訪れたある情報筋は、ここの死傷者は 「1000人に達するかもしれない 」と主張している。彼は、洪水被害者を救助するための支援はこの地域には届いておらず、人々は5日たった今でも、着の身着のままで、行方不明の親族を捜すために川岸や氾濫した水路をあさっていると主張している。この情報源はこう付け加えた: 「洪水はフロールに甚大な被害をもたらしました。村は破壊され、すべての家が流されました。ほとんどが行方不明です。また北隣のクンドゥズ州ではこれまでに、アンゴルバグ地方で6人、カナーバード市で4人の遺体が収容されましたが、さらに多くの人々が行方不明です。数人の地元の救助隊とヘリコプターが水とパンのわずかな物資を届ける以外、援助は届いていません。」
洪水後にソーシャル・メディア・ネットワークで共有されたビデオや、ハシュテ・スブ・デイリーに送られた独占ビデオによると、バグラーン州フロール地方とブルカ地区のいくつかの村は完全に流失している。このエリアで記録されたビデオクリップのひとつは、フロールに住む 「アルバブ・ドスト・モハムマド(Arbab Dost Mohammad)」という男性が撮影した。荒廃した地域に立ち、彼は言う。「この付近には、モスクを含めて25軒の家がありました。家もモスクも跡形もありません。今のところ、毛布やコップ一杯の水さえも、何の援助もありません」。
バグラーン州の洪水被害者の悲惨な状況を映した数多くのビデオクリップがソーシャル・メディア・ネットワークに出回っており、この地域の状況の深刻さを物語っている。その中のひとつに、家族を悼みながら涙を流す少女の動画がある。「洪水が私の姉妹の一人を奪い、叔父の妻は死に、祖母は行方不明です。姉妹と叔父の妻の遺体は見つかったのですが、他の人たちは見つかっていません。」そこまで話すと彼女は涙にむせた。
環境問題の専門家であるナジブラー・サディッド(Najibullah Sadid)は、バグラーン州ブルカ地方の衛星画像を公開し、「アフガニスタンは今や洪水被害を空から解析し、自然災害へのリスクを管理しながら、救援活動ができるようになりました」と述べた。さらにこう加えた、「衛星画像を見ると、アフガニスタンのバグラーン州ブルカ地方が洪水の影響をどのように受けているかがわかります。ふだん乾燥しているはずの急斜面や涸れ川に水が流れ、地区の大部分が浸水しています。」
<参考サイト> ブルカ地区衛星画像
https://reliefweb.int/map/afghanistan/mudflow-impact-burka-district-baghlan-province-afghanistan-14-may-2024-imagery-analysis-14052024-published-16052024-v2
ゴール州(訳注:バグラーン州の西にバーミヤーン州があり、そのさらに西に位置する)の壊滅的な洪水は、同州のチャルサダ地区とマルガブ地区の住民にも大きな経済的損失をもたらした。これらの地域は遠隔地のため、あまり注目されてこなかったが、地滑りによって水路がふさがれ、あふれた水が村を飲み込んだ。
州内のチャルサダ地区にある 「アブカジ・イスラマバード」村の住民は、水が溜まっている様子を映したビデオをハシュテ・スブ・デイリーに送った。彼らの村は水没し、さらなる洪水の危険性が常に彼らの生活を脅かしているという。彼らによると、持ち物はすべて水没し、食べるものもないという。
チャルサダ地区の被災住民はさらに、1週間以上経過しているにもかかわらず、ターリバーンの支配下にある政府機関を含め、どの組織も支援のために到着していないと述べている。
<参考記事> ゴール州の惨状
https://www.bbc.com/news/articles/c4n1gg2p1ljo
別の報告によると、人的被害に加えて、バダフシャーン州、タハール州、ヘラート州における壊滅的な洪水は、住民に多大な経済的損失(訳注:家や動産に加え、農地と家畜の損失が甚大)を与えた。彼らはまた、ターリバーンの差別と不始末を非難している。
一方、ターリバーンの経済担当副首相事務所は、アブドゥル・ガニー・バラダールのバグラーン州訪問のビデオを公開し、洪水被災地の空からの視察を行ったとしている。この事務所によると、彼が訪問した地区で観察された被害のレベルは高く、彼は洪水被害者を支援するためにあらゆる資源を活用するよう関係当局に指示した。
洪水被害者や一部の国民は、ターリバーンが自然災害の被害者を誤って扱っていると非難している。彼らは、このグループには管理しサービスを提供する能力も知識もなく、国を「人質」にとり、差別と偏見で人々を扱っていると主張している。
アフガニスタンの元国会議員であるミール・ハイダル・アフザリ(Mir Haider Afzali)は、自身のX(旧ツイッター)ページに、ターリバーンの洪水被害者に対する振る舞いに対して、過去の政府では、汚職や差別があったにもかかわらず、政府関係者は自分たちを人々の喜びや悲しみのパートナーだと考えていたと書いている。彼は、2019年にパルヴァーンとカーピーサーで起きた洪水で、何百もの家屋が破壊され、多大な人的・経済的損失が生じたことを想起している。アフザリによれば、宗教を装って支配するターリバーンは、洪水被害者への欧米の援助を4日後に控え、その半分を自分たちのものにできるようにしているという。また、このグループの一人が上空から人々の悲惨な状況を観察したと聞き、彼はこう書いている。「ターリバーンは何でもできる、統治と民衆への奉仕を除いては」。
バグラーン州の洪水被災者に対する外国からの支援発表と並行して、さまざまな州の住民たちが、草の根的な公的支援集めの取り組みを開始した。バグラーン、ゴール、バダフシャーン、タハール各州の洪水被害者のために支援を集めるキャンペーンを開始することで、彼らは洪水の被害を受けた人々に寄り添うという決意を表明した。
同時に、洪水被災地の住民はもちろんこの国の市民は、公的寄付や慈善寄付を集める際の透明性の欠如を批判し適切な管理を要求している。彼らは、ターリバーンやその他の搾取者による濫用を防ぐために、援助の分配プロセスや受益者の特定を厳しく監視する必要性を強調している。
アフガニスタンの洪水被災地の大多数は、ターリバーンや国際組織が人道支援を約束したにもかかわらず、何の支援も受けられなかったと主張している。今、すべての財産と家族を失った洪水被害者たちは、ホームレスとなり絶望の中で飢えと死の脅威に直面し、悲惨な状況に置かれている。
Flood Catastrophe and Citizen Desperation: Taliban Observe Flood Victims from Above