Analysis: Al Qaeda expands its network of training camps in Afghanistan

(WAJ: ワシントンDCに拠点をおく民主主義防衛財団(FDD)のプロジェクト”FDD’s LONG WAR JOURNAL(FDD-LWJ)は、アメリカ合衆国による、ジハード主義、国家と非国家主体間の紛争、国家間の戦争に対処する行動を知ることのできる貴重なメディアのひとつであり、アフガニスタンとアフガニスタンを安息所として勢力を温存、強化しているイスラム過激派の動向をつぶさに分析している。本サイトでは本年6月9日のトピックス「アル=カーイダの指導者が外国人戦闘員にアフガニスタンへの集結を呼びかけている」を掲載し、警告を発したが、本IWJの分析はその事実をより詳細に明かし立てる論考である。)

 

By Bill Roggio | July 11, 2024
ビル・ロッジオ| 2024年7月11日
Al Qaeda infrastructure in Afghanistan map

アル=カーイダはアフガニスタンのカンダハール州とタハール州で訓練キャンプを運営していると、国連分析支援・制裁監視チームが報告した。これらの施設は、監視チームが過去1 年間に特定した他の 10 州にある施設に加えて存在する。さらに監視チームは、アル=カーイダが「依然としてアフガニスタンをターリバーン支配下の寛容な避難場所として利用している」と指摘している。

監視チームは7月10日、アフガニスタンに関する最新の国連安保理報告1267中で、新たなアル=カーイダの訓練キャンプの存在を明らかにした。

アル=カーイダは現在、アフガニスタンの34州のうち12州で訓練キャンプを運営している。監視団は前回の2回の報告書で、アル=カーイダがガズニー、ラグマーン、パルヴァーン、ウルーズガーン、 ヘルマンド、ザーブル、ナンガルハール、ヌーリスターン、バードギース、 クナルにキャンプを設置していると報告した。

アル=カーイダのインフラの拡大は、ターリバーンがテロ集団を抑制しているという主張と矛盾している。

監視団は「ターリバーンはアル=カーイダとその関連組織の活動を抑制するために多大な努力を払ってきた」と主張しているが、アフガニスタンにおけるアル=カーイダのインフラは拡大を続けている。国連機関は「加盟国は、アル=カーイダの再編と訓練活動、およびアフガニスタンへの新たな渡航は、アル=カーイダが依然としてターリバーンの支配下でアフガニスタンを寛容な避難場所として利用していることを示しており、アル=カーイダの意図に疑問を投げかけていると指摘している」と述べているが、これは矛盾しているように思える。

監視チームのこれまでの2つの報告書では、アル=カーイダが隠れ家、宗教学校、メディア運営センター、武器保管施設を設立したと指摘されている。

ターリバーン提供の隠れ家は、ファラー州、ヘルマンド州、ヘラート州、カーブル州で確認されている。アル=カーイダの共同創設者で元首長のアイマン・アル・ザワヒリは、 2022年7月にカーブルの隠れ家のひとつで米軍のドローン攻撃を受けて死亡した。その隠れ家は、ターリバーンの2人の副首長の1人で現内務大臣のシラジュディン・ハッカーニの副官によって運営されていた。米国務省は、アル=カーイダとの密接な関係を理由に、シラジュディンの強力なハッカーニ・ネットワークを外国テロ組織に指定している 。シラジュディンと彼の主要な副官の多くは、 米国財務省によって特別指定国際テロリストにも指定されている。

ファラー、ヘルマンド、ヘラートの隠れ家は、アル=カーイダが「アフガニスタンとイラン・イスラム共和国間の[メンバーの]移動を容易にするために」使用していると、監視チームは2024年1月に報告した。

アル=カーイダはまた、ラグマーン州、クナル州、ナンガルハール州、ヌーリスターン州、パルヴァーン州でもマドラサ(宗教学校)を運営している。かつて反ターリバーン民族抵抗戦線の拠点であった中央パンジシール州では、アル=カーイダは「武器を備蓄する」ための基地を設立した。

アフガニスタンにおけるアル=カーイダのテロ基盤の急速な拡大に加え、アル=カーイダの指導者はターリバーン政府に勤務し、ターリバーンはアル=カーイダ構成員にパスポートや国民身分証明書を発行し、アル=カーイダは国防省でアル=カーイダの訓練マニュアルを使用している。

国連の報告書は、アル=カーイダ首長が支持者たちにアフガニスタンに集まるよう呼びかけたことには触れていない。(訳注:上記「アル=カーイダの指導者が外国人戦闘員にアフガニスタンへの集結を呼びかけている」参照)

6月初旬、アル=カーイダの推定首長であるサイフ・アル・アドルは、テロ組織の公式メディア部門であるアス・サハブに「これがガザだ:国境の戦争ではなく生存の戦争」と題する記事を掲載した。記事の中で、アドルは「変化に関心のあるウンマ(世界中のイスラム教徒コミュニティ)の忠実な人々は、アフガニスタンに行き、その状況から学び、彼ら(ターリバーン)の経験から利益を得なければならない」と述べている。

世界中のいわゆる「シオニスト」や西側諸国の標的に対する攻撃を実行する前に、支援者らにアフガニスタンに渡航して訓練、経験、知識を得るよう呼びかけたアドルの呼びかけは、最新の監視チームの報告書には記載されていない。しかし、この省略はアドルの記事の発表と報告書の発表のタイミングによるものかもしれない。

監視チームは、「加盟国」は「アル=カーイダの意図について疑問を抱いている」と指摘している。また、「アル=カーイダの大規模攻撃能力は引き続き限定的であるが、その意図は、関連組織の対外作戦遂行能力に支えられ、依然として確固たるものとなっている」と評価している。

アル=カーイダが攻撃を控え、アフガニスタンからの計画を制限しているのは、同グループが「限られた」能力に問題を抱えているというよりも、ターリバーンとの関係を維持し、安全な避難場所を確保するためである可能性の方がはるかに高い。

アドルが世界中の聖戦主義者にアフガニスタンに集結するよう呼びかけたことと、アル=カーイダが「ターリバーン支配下の寛容な避難所」でテロ基盤を拡大していることを合わせると、アル=カーイダがアフガニスタンの地から自らの選んだタイミングで攻撃を計画、訓練、実行しようとする意図と能力について、疑いの余地はなくなるはずだ。

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