Afghanistan Returns To U.S. Politics
(WAJ: RFE/RL, Inc. は、米国グローバルメディア庁(USAGM)からの助成金を通じて米国議会から資金提供を受けている民間の非営利法人。報道の自由が脅かされ、偽情報が蔓延している国々で、正確で検閲のないニュースと開かれた議論を提供することにより、民主主義の価値を促進することを目的に23か国を対象に27言語で活動している。アメリカ合衆国の意向を知るうえで有益なメディアといえる。今号では大統領選挙戦でのアフガン撤退の取り上げ方、アフガニスタンを経由して中央アジアとパキスタン・インドを結ぶガスパイプライン・プロジェクトの動向が注目される。)
THE AZADI BRIEFING Abubakar Siddique
2024年9月15日
ドナルド・トランプ(左)とカマラ・ハリスの合成写真。9月10日の大統領選討論会で、両候補は2021年のアフガニスタンからの米軍撤退の混乱について相手を非難した(AFP)
第1の論点
米国が11月の重要な大統領選挙をまえに、アフガニスタンが一時、大見出しに戻ってきた。
共和党と民主党は、アメリカの歴史上最も長い戦争であったアフガニスタン紛争の終結にさいし秩序ある撤退ができなかったことで互いを非難しあった。
9月10日の大統領選討論会で、カマラ・ハリス副大統領兼民主党大統領候補は、ジョー・バイデン大統領のアフガニスタン撤退決定を擁護した。彼女は、対立候補である前大統領で共和党候補のドナルド・トランプが、「アフガニスタン政府を脇に置いた 」2020年のドーハ協定をターリバーンと結んだと非難した。
これに対してトランプは、ドーハ協定は 「非常に良い協定 」だと擁護した。彼は、バイデン政権が撤退時に兵士を失い、武器を置き去りにし、協定の条件を履行しなかったと非難した。
9月8日、下院共和党の新たな調査報告書も、アフガニスタンからの混乱した最終撤退についてバイデン政権を非難していた。
下院外交委員会の委員長として調査を指揮したマイケル・マッコール下院議員(共和党、テキサス州選出)は、バイデン政権にはアフガン政府の不可避的な崩壊をさける「情報と機会があった」にもかかわらず、「安全よりも見栄え」を選んだ、と言う。
しかし国務省は、委員会が党派的な声明を発表し、事実をつまみ食いし、「推測される真実 」をわかりにくくしていると非難した。
なぜ重要なのか:
アメリカのアフガニスタンでの戦争、特にその悲惨な結末は、国民の記憶からも、アメリカ主導の対テロ戦争がどのように遂行され、どのように終結したかをめぐる政治的議論からも消えそうにない。
2001年から2021年まで20年以上続いたこの戦争については、現在進行中の調査がさらに光を当てそうだ。
アフガニスタン戦争委員会は、戦争経験のある元米政府高官で構成される超党派の立法機関であり、この紛争を調査している。その報告書は2026年に発表される予定である。
モデルとなった9.11委員会の報告書と同様、世間の関心と監視の目を大いに集めることになりそうだ。
次なる課題:
11月5日の大統領選挙を控え、党派間の対立が激化する中、アフガニスタンへの関心が再び高まりそうだ。
しかし、短期的にワシントンの対アフガニスタン政策は大きく変わりそうにない。
第2の注目点
アフガニスタンのターリバーン支配者たちとトルクメン人指導者グルバングリー・ベルディムハメドフが、トルクメニスタン-アフガニスタン-パキスタン-インド(TAPI)パイプラインのアフガニスタン区間の建設を開始した。
9月11日、ターリバーンは長らく遅れていたパイプラインの起工式を行った。
ターリバーンの首席報道官であるザビフラ・ムジャヒドは、アシガバード側がパイプラインの建設に投資すると述べた。ターリバーンによればその資金は、年間5億ドル以上と推定される配送料の徴収開始後に返還される。
ムジャヒド報道官は、アフガニスタン国内のパイプラインは3段階に分けて建設されると述べた。同報道官によれば、第1段階はトルクメン国境とアフガニスタン西部の都市ヘラートを結ぶもので、今から2年以内に建設される。その後、エネルギー不足の同国へのガス供給が開始される。第2段階では、パイプラインを南部のヘルマンド州まで延長する。第3段階では、TAPIは南部のカンダハール州を経てパキスタンに至る。
全長1800キロのパイプラインは、年間330億立方メートルの天然ガスをアフガニスタン南部を通ってパキスタンの南西部バロチスタン州に運ぶ。そこからパキスタン東部パンジャブ州を通り、インド北西部パンジャブ州のファジルカに至る。
なぜ重要なのか:
TAPIは重要な地域エネルギープロジェクトとして長い間注目されてきた。
しかし、アフガニスタンの治安の悪さと国際的な投資の不足が、その具体化を妨げている。
ターリバーンが重要なインフラ・プロジェクトについて透明性を欠いていることを考えれば、TAPIが単なる夢物語に終わる可能性はまだある。