(2024年10月7日)

  9月28日は世界ニュースデー 

~アムTV表彰の意味~

 

 

世界100カ国から数百のメディアが参加

9月28日は世界ニュースデー。日本ではあまり知られていないが、世界100カ国から何百ものさまざまなメディアが参加しているそうだ。日本からは朝日新聞やジャパンタイムズも参加している。毎年、この日に困難な状況をはねのけ勇気をもって報道を続けるメディアを表彰し、称えている。

世界ニュースデーを主催しているのは、カナダジャーナリズム財団(CJF)ワールドエディターズフォーラム(WEF)など。

CJFは、経験豊富なジャーナリストとその組織への支援と認知を通じてジャーナリズムの卓越性を育成し、事実に基づくジャーナリズムに対する一般の理解を深めるために、1990年に設立されたカナダの財団。WEFは世界新聞協会の一部であり世界中の編集者を繋ぎ、サポートしている。世界新聞協会の正式名称は世界新聞・ニュース出版社協会。Wikipediaのまとめでは、100カ国で76の各国新聞協会、12の通信社、10の地域プレス組織、および多くの新聞社幹部個人で構成される国際的非営利、非政府組織である。1948年に設立され、2011年現在、世界で1万8000以上の出版物を代表している。本部はフランクフルト・アム・マイン(ドイツ)。

 

アムTVが表彰の栄誉に輝く

われわれ『ウエッブ・アフガン』が情報源のひとつとしているアフガニスタンの独立系テレビ局であるアムTVのCEO、ロットフッラー・ナジャフィザダ氏が、本年の世界ニュースデーに、アフガニスタンの独立系ジャーナリストを代表して「2024年カナダ・英国メディア自由賞」を受賞した。授賞式は、9月27日、ニューヨークの国連総会に併行して行われ、カナダのメラニー・ジョリー外務大臣と英国貴族院副院内総務のハイベリー・コリンズ卿が授与した。(詳細はココをクリック

2021年8月に復権したターリバーンは、米英NATO軍支配下で進められてきたあらゆる民主化を反故にした。ドーハ合意での恩赦公約に反して旧共和国軍、警察、政府関係者を摘発し拘束または殺害、さらには女性の権利剥奪・隔離に始まり、詩作・歌舞音曲の禁止、西洋風着衣や関連ビジネスの制限や禁止、体罰の復活、タジク人・ハザラ人排除による民族浄化、イスラム国やアル=カーイダやパキスタン・ターリバーンなどテロ組織の温存支援を行い、単独支配を強固にしつつある。最近はターリバーン独特のイスラム法解釈に基づくシャリーア法を国民に押し付けている。アフガニスタンは、世界のどのようなイスラム国家とも異なる、異様で危険な狂信的首長国に変貌した。

 

ジャーナリストへの苛烈な弾圧

そのような状況の中、本来的に権力を監視し不正を暴き出すことを使命とするアフガニスタンのジャーナリストは逮捕、拷問、検閲などの脅威に直面している。国境なき記者団によると、過去3年間に141人のジャーナリストがターリバーンに拘束され、その多くが拷問を受けている。また、この期間にターリバーンの裁判所は47人のジャーナリストに懲役刑を言い渡している。

ターリバーンはライブが命のテレビ・ラジオの放送では政治がらみの番組は検閲済みの事前収録のものしか認めず、またベールを被っていない女性のテレビ出演を禁じたりしている。当然、政治中継などは禁止。アムTVのスタッフも他のアフガニスタンの独立系メディア同様、国外避難を余儀なくされているが、本国との連絡網を維持し、毎日、報道をつづけている。受賞に際してアムTVのスピーチ責任者は「私たちはこの表彰に深く感動しています。これは、辺境の村で報道するジャーナリストから亡命先で活動するジャーナリストまで、アフガニスタンのメディア界全体にとって名誉なことです」と喜びにみちた決意を表明している。

 

アフガニスタンのメディア、ジャーナリストの叫び

同じく、われわれが参考にしているメディア「ハシュテ・スブ・デイリー」は「2024 世界ニュースデーに寄せて:あなたの助けが必要だ」との主張を発表している。彼らの叫びを聞いてみよう。

――2024年、世界は次々と危機に直面している。ガザとウクライナでの戦争、壊滅的な洪水と熱波、民主主義の崩壊。ジャーナリズムはこれまで以上に重要だ。ジャーナリズムは行動につながり、行動は解決策につながる。ジャーナリズムは、人々がどこにいても情報に基づいた生活を送る力を与える。
この仕事をするために、ジャーナリストは現場に赴き、許し難い状況の証人となり、権力者に責任を負わせ、沈黙させられた人々に声を与えなければならない。
アフガニスタンのメディアは圧倒的に不利な状況と戦っている。メディア組織の大半は亡命先で活動している。国際援助機関からの資金に大きく依存する彼らのビジネスモデルは、ターリバーンの政権奪取以来、破壊されている。
アフガニスタンに残るメディアに対するターリバーンの検閲と規制は拡大し続けている。暫定政府に対する批判は禁じられており、宗教や女性の地位、少数派、人権といったテーマも禁じられている。
アフガニスタンのジャーナリストがいなくなれば、ターリバーンは何百万人ものアフガニスタン人の生活を抑圧してきた責任を問われないままになるだろう。アフガニスタンには、立ち上がって自分たちの声を届けられるような、情報に通じ、関与する社会を築く独立したジャーナリズムが必要だ。

日本に住むわれわれも、ミッションの人道性や普遍性を理解し、賛同し、ターリバーンの圧政に呻吟しつつも未来を見据えて闘い続ける、アフガニスタンの女性たちや、詩人や、ジャーナリストたちを、どんなにささやかであれ、物心両面で支援する方法を本気を出して考え、実行しなければならない。

野口壽一