アフガン人だって誰だって女子はおしゃれしたい!自由を謳歌したい!

 

2025年12月4日
野窓パルワナ

(タイトル関連のみ「カブール」、それ以外は「カーブル」と表記しています。)

先日、フォトジャーナリストの目を通じて

『手に魂を込めて、歩いてみれば』でガザの惨状を直視した、

それで、そういえばと思い出して、「難民映画祭」をググってみた。

https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff

 

UNHCR国連高等弁務官事務所・日本事務所が実施する難民映画祭は、

難民に思いを馳せることを目的に難民関連の様々な映画を上映している。

普段はお目にかかることのできない、

ほとんど接点のない国の文化や難民の様子を垣間見ることの出来る貴重な機会だ。

今年で何と20回目を数え、

11/6から12/7まで、丁度、今実施中だった。

ギリギリ・セーフ!

 

知らない間にオンラインとハイブリットで映画を鑑賞できるようになっていた。

在宅でも映画を楽しめるのはとっても便利で、

気軽に見てみようなんて鑑賞者の数も増えそうだ。

 

今年は9本の映画を楽しむことができる。

 

映画タイトル 制作国・地域
ハルツーム スーダン
見えない空の下で ウクライナ/スロバキア
アナザー・プレイス イタリア
希望と不安のはざまで アフガニスタン
バーバリアン狂騒曲 イラン
ラジオ・ダダーブ ケニア
あの海を越えて イタリア
カブール・ビューティー アフガニスタン
ぼくの名前はラワン シリア

 

 

 

早速、駐在したこともあり、タイトルも気になる

『カブール・ビューティー』から見ることにした。

https://www.youtube.com/watch?v=T_0WKHIwnVc

 

私がアフガニスタンに駐在したのは2002年のターリバーン政権崩壊後直後で、

これから民主化が進んでいき自由を謳歌出来るという希望に満ちた時だった。

同時に、アメリカや多国籍軍は治安維持を名目に

戦闘を繰り広げ、治安が更に悪化した時期でもあったけれど。

 

当時は女子教育が解禁され、

女子教育の推進と整備を始め女性支援のプロジェクトがたくさん実施された。

美容師やネイリスト育成などの職業訓練や生計支援プロジェクトがあったことを思い出した。

 

しかし、この映画の設定は

その20年後、2021年8月ターリバーンが復権した後の物語。

映画の中心人物は美容員のニギナ(27歳)とソフィア(25歳)。

カーブル中心地のハイソな美容サロンで働いている。

 

ターリバーンが復権して、

女子の行動が段々制限されてきて

生き辛くなっていく様子が描写されている。

 

大学で勉強するニギナが

来年は女学生は取らないと教授に言われたり、

自動車運転教習所では

女子の運転免許証はターリバーンが許さないと言われたり。

 

パスポートを手にするのも本当に大変だ。

ニギナは申請後かなりの時間を経て無事パスポートを手にすることができたけれど、

他のサロンの同僚は、理由は告げられず申請を却下されている。

 

美容サロンもターリバーンが閉鎖を通告し、

全国で1万以上のサロンが閉鎖に追い込まれた。

 

ニギナとソフィアはひそかに国を出ることを計画していた。

 

パスポートという公的書類を持ってはいても、

アフガン女子がアフガニスタンを出国するのは

実際には大変な困難と危険を伴うものと想像するのだけれど、

この映画では、比較的サラッと出国できた印象だ。

実際は彼女たちはどんな困難に直面したのだろうか、しなかったのだろうか。

 

ニギナは渡航先のドイツへ。ソフィアはフランスへ。

両国ともに受け入れ態勢がある程度整っていて、

二人は異国で路頭に迷うことなく、サポートを受けながら順調に異国での生活を始めることができたように見えた。

 

どんな支援プログラムが提供されるのか、

どのくらいの人たちがその恩恵に預かることができるのか、気になる。

どちらにしても、この2人はラッキーな一握りの中に入るのではないかと思った。

 

それでも、故郷に代わる場所はない。

カーブルを恋しがるニギナ。

 

「カーブルでは制約はあっても私たちは自由よって話してた、

でも今は自由だけど囚人みたい。」

 

「どんなに自由を手にしても、故郷に勝る場所はない。」

 

「あんな埃っぽく雑然としたカーブルをよく夢に見るの。」と涙する。

 

その境遇にいないと到底分からない想いだと思う。

私は幸か不幸か、子供の時から転校生活を繰り返し、

大人になっては、あちこちの国を数年で移動する生活を送っている。

海外駐在中に中期に渡って出張が続いた時は、

自分がどこにいるのか咄嗟には分からなかったり、

私って何者?!とアイデンティティ・クライシスに陥ったりもした。

そして、故郷と呼べる場所のない、土地への所属感のないノマド民。

ちょっと寂しい。。。

 

映画の中でニギナが「囚人のよう」と言ったのは、

友達もいなく、することもない、そんな生活は幸せではないという意味なんだろう。

 

イラク駐在中に、クルド人の同僚は

「クルドを出なければいけない時は、俺が出国する最後のクルド人だ!」と

郷土愛と郷土に留まる強い意志を語っていた。

 

女子の人権抑圧の様子を垣間見ながら、

期せずして故郷への想い、愛国心などを考えさせられた。

 

難民映画祭は12/7まで。

駆け込みで今週は難民映画三昧、難民についてちょっとだけ思いを馳せる一週間として欲しい。