Part 2: The Friends of the Taliban
※ Tehrik-i-Taliban Pakistan (TTP)
(WAJ: ターリバーンは果たして、アフガニスタンという地方に限定された地域ジハード運動なのだろうか。筆者はそうではない、と断言する。なぜなら、アフガニスタンのパキスタン・ターリバーンはパキスタンのターリバーン運動を支援している。また、アフガニスタン・ターリバーンは関係を持たないと主張しているがアフガニスタン領内には20を超すテロ集団が存在している。ターリバーンは地域のパシュトゥーン人を主体とした運動体であると同時に、イスラム教徒の義務とされているジハード(神の道に邁進するために日常的に行う努力)を追求する組織である。ターリバーンを地域的な運動としてみる危険を指摘するこの分析は重要である。)
アモンプール (ハシュテ・スブ:アフガニスタンの独立系メディア)
2024年10月21日
ターリバーンの主要同盟組織であるTTP(訳注:Tehrik-i-Taliban Pakistan、パキスタン・ターリバーン運動)は、ターリバーン組織がアフガニスタンで権力を握って以来、必要な資金と軍事資源をすべて利用できるようになり、時とともに勢力を強めている。国連安全保障理事会の報告書によると、ナンガルハール州、クナル州、パクティヤー州、パクティーカー州、ローガル州、ホースト州には4000~6000人のTTP戦闘員がいる。TTPの指導者ヌール・ワリ・メスードもアフガニスタンにいる。このグループはパキスタン政府に対して致命的な攻撃を実行し、アフガニスタン・ターリバーンとイスラマバードの関係悪化につなげている。パキスタン政府は、ターリバーンがTTP封じ込めに関する約束を果たさず、同グループはアフガニスタン・ターリバーンの保護下で自由に活動していると主張している。パキスタンは長年、アフガニスタン・ターリバーンに対してTTPを制御するよう圧力を強めてきた。しかし、カーブル政権は、パキスタンの要求に応えるために表面的な行動をとることはあるものの、実際にはTTPを抑圧する兆候を見せていない。同グループは、アフガニスタンのターリバーンから揺るぎない支援を受け続けている。
ある時点では、イスラマバードの圧力の高まりに応じて、ターリバーンの指導者であるムッラー・ハイバトゥラーがパキスタンでの戦争を禁じる(ハラム)布告を出したと報じられた。しかし、イスラマバードの主張にもかかわらず、アフガニスタンのターリバーンはこの布告を公表することを拒否した。そのような布告は存在しなかったか、ムッラー・ハイバトゥラーがグループ内の対立を恐れて公表しないことを選んだかのどちらかと思われる。たとえ、ターリバーン政権が一貫してTTPを支持していることを証明する他の証拠がなかったとしても、この布告を公表することを拒否しただけで、2つの過激イスラムグループ間の深いイデオロギー的結びつきが示され、ターリバーンがTTPと戦うことを期待することが単なる希望的観測に過ぎないことが分かる。
アフガニスタンのターリバーンの全面的な支援を受けて、TTPは今やパキスタン政府にとって大きな課題となっている。パキスタン軍はTTPを鎮圧するために「アズム・エ・イステカム(安定への取り組み)」と名付けた作戦を開始したが、大きな成果を上げる可能性は低い。ソ連のアフガニスタン侵攻以来、パキスタン軍がアフガニスタン領内での縦深戦略(訳注:領地が南北に細長いパキスタンの対インド戦略で、アフガニスタンを自国の友好国としておくことによりインドとの戦争を有利にしようとする戦略・戦術)を目指してイスラム過激派グループの創設、装備、継続的な支援に携わっていなければ、今日のようなテロ産業の急成長は見られず、両国が現在直面しているような惨事や窮乏は避けられただろう。テロ産業を育成し、状況をコントロールすることで長らく持続してきたパキスタン軍は、イスラム過激主義が今日われわれが目撃しているものよりも大きな頭痛の種、さらには危険なものになるとは想像もしていなかったかもしれない。
アフガニスタンのターリバーンを見てみよう。パキスタン軍は長い間、このグループに全面的な支援を提供し、最終的にアフガニスタンでターリバーンが政治権力を握ることを可能にした。ターリバーンが徐々にイスラマバードの影響を拒否し始め、最終的にTTPを全面的に支援してパキスタン軍の「縦深戦略」という胸に秘めた夢を覆そうとしたとき、状況はさらに興味深いものとなった。
パキスタン軍は、アフガニスタンに傀儡政権を樹立することに失敗しただけでなく、ターリバーンが権力を握った当初、パキスタンの統合情報局(ISI)の当時の長官(訳注:ムラー・ファイズ・ハーミド中将)がカーブルで力を発揮していたとき(訳注:「ターリバーンとダーイッシュの生みの親ISI長官、子供喧嘩の恥ずべき仲裁」参照)には、このような失敗は予想されていなかった。しかし現在、ほとんどの事実は、アフガニスタンの現状がパキスタン軍にとって不利であることを示している。さらに、パキスタン軍は、旧同盟組織にTTPを封じ込めるよう強制することもできず、ましてやこのグループのリーダーを引き渡したり鎮圧させたりすることもできない。アフガニスタンのターリバーンは、もはやパキスタン軍のあらゆる指示に従おうとはしない。これは、同国の軍にとって重要な教訓となるはずだ。彼らがかつての自信過剰を捨て、いくらか現実的になっていると仮定すれば。パキスタン軍は、テロ産業への支援を放棄することが平和と民主主義のためになることを理解したのだろうか? 残念ながら、パキスタン軍内部にそのような変化の兆しはまだなく、近い将来にそのような大きな変化を目撃することは期待できない。したがって、「アズム・エ・イステカム」がそうするつもりだとしても、テロリズムを根絶することはおろか、弱体化することさえできないだろう。それどころか、この作戦を通じてテロリズムが再生産される可能性が高い。だがパキスタン軍はそれをまったく気にしないかもしれない。テロリズムが盛んになれば、パキスタン軍はその寿命を延ばし、国内で権力を握る時間を長く楽しむことができるからである。
実際、ターリバーンによるアフガニスタン内に存在するTTPやその他のテロリスト集団への支援は、ハイバトゥラー師の世界的ジハード計画の一環である。現状ではターリバーンはこの計画について多くを語ろうとはしていないが、アフガニスタンを制圧したことで、同集団が世界的ジハード計画の実現に向けた第一歩を踏み出しており、次の段階に進もうとしていることは間違いない。最も手段に乏しいイスラム教徒ですら、ジハードを世界規模に拡大するという夢を抱いている。国を支配下に置くハイバトゥラー師にとってはなおさらだ。ハイバトゥラー師は、審判の日までジハードを続けると繰り返し明言しており、それに従うターリバーン指導者は簡単には思いとどまらず、同集団が権力の座に長くとどまるほど、ハイバトゥラー師の野望は大きくなる。
したがって、ターリバーンはアフガニスタン国内に限定された目標を持つ、単に地域に限定されたジハード組織であるという考えは、啓発的というより誤解を招く見方である。この見方は、現実の表面をかすめとっているだけで、状況をより深く分析することにほとんど関心を示していないため、誤解を招く。ターリバーンはアフガニスタン以外に大きな野心を持たない地域的な運動であるというこの見方は、ターリバーンの友人たちが権力の座にある同組織の存在を正当化するために広めている。ご覧なさい、ターリバーンは世界的なジハードを追求する意図も計画も持ちません、ジハードはもう終わったと考えています。だからターリバーンとはうまくやっていけますよ、と。このようにして、ターリバーンは世界的および地域的な目標を持つテロ集団から、アフガニスタンに限定された地方組織へと成り下がっている。しかし、TTPを含む国際テロ集団がターリバーンによって支配された領土内に存在し、活動しているという事実だけをとっても、世界的なジハード計画が一度も停止していないことの証拠である。たとえターリバーンが公然と宣言できないとしても、ジハードはすべてのイスラム教徒にとって永続的な関心事であるため、彼らは秘密裏に非公式にジハードを追求し続けるだろう。