Key Islamic State commander reported killed in Afghanistan

(WAJ: 本レポートは、アフガニスタン内部でのターリバーンとISホラーサーンの暗闘を具体的に伝える希少な記事。ISホラーサーンのもととなる過激組織イスラム国(IS)はもともとはイラクに侵攻したアメリカの失敗による混乱のなかから生まれた組織であり、イラクのISがシリアのアサド政権と戦う過程でISIS(イラクとシリアのIS))となり、変遷を繰り返してきた。ISは異教徒(イスラム教以外)を聖戦(ジハード)の対象とするアル=カーイダと異なり、シーア派やスンニ派でも教義に合わないと認定すればイスラム勢力であっても聖戦(ジハード)の対象とする。それが、アフガニスタン内部でシーア派のみならずターリバーンに対してさえ自爆攻撃をおこなう理由である。対米NATO戦争では同志であったターリバーンとISの関係はいまや戦争相手となっている。アメリカはISとの戦いにおいてターリバーンを利用しようとしている。米国の利用主義は危ういと言わざるをえない。)

 

2024年7月7日
VOA News
アヤズ・グル

【イスラマバード発】
アフガニスタンのターリバーン治安部隊は日曜(7日)、パキスタンと国境を接する東部州でイスラム国の主要司令官を殺害したと主張した。

ターリバーンの公式メディアは、ナンガルハール州の対テロ部隊が、国際過激派グループの関連組織でアフガニスタンを拠点とするイスラム国ホラーサーン(IS-K)の隠れ家を急襲したと報じた。

アル=メルサード通信(訳注:2023年1月にパシュトー語による配信を開始した親ターリバーンの報道機関で、特にその軍事活動の報告が詳しい。アル=メルサードはアラビア語で「見張りの塔」を意味する)は、日曜の行動で殺害された「ザキルッラー(通称アブ・シェール)」は、国境州アチン地区(訳注:ナンガルハール洲にありパキスタンとの国境に接する地区)のISホラーサーンの軍事指導者だと伝えた。

<参考記事>
https://monitoring.bbc.co.uk/product/b0000f2w

同通信によるとモフマンド・ダラ地区では「ターリバーンの特殊部隊」がその作戦を終了した。

<参考サイト> ナンガルハール州
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fd/Nangarhar_districts.png

アル=メルサードの主張を別の独立した情報源から確認することはできなかった。さらにターリバーン政府関係者も、2015年以降アフガニスタンと広く域内で過激派活動を開始したISホラーサーンが同州のアチンに本部を置き、そこを攻撃したことについてコメントしていない。

アフガニスタン戦争への約20年間の関与の後、米国主導のNATO軍がすべて撤退した2021年にターリバーンは権力の座に復帰した。米軍は定期的にISホラーサーンに対する作戦を実施し、その主要指導者数名を殺害した。

過激派グループはターリバーンによる政権掌握後、治安部隊やアフガニスタンのシーア派コミュニティのメンバーに対する自爆作戦やその他の攻撃を激化させた。この暴力行為により、著名なターリバーン指導者や宗教学者を含む数百人が死亡した。

ターリバーン当局は、ISホラーサーンの隠れ家に対する持続的な軍事行動によって、アフガニスタン内外に脅威を与えるISホラーサーンの能力が著しく低下したと述べている。

事実上のアフガニスタン当局は、パキスタンとタジキスタンがそれぞれの土地でISホラーサーンの工作員を「訓練し、育てている」と非難している。

アフガニスタンの両隣国は、この非難を無根拠だと退けており、問題はカーブルの事実上の支配者で、国境を越えたテロリスト集団が自国の領土を利用して域内の安定を脅かすのを防げなかったとして非難している。

5月下旬に公表された米国防総省の四半期報告書は、アフガニスタンを拠点とするISホラーサーンが、域内において「大規模で多数の死傷者を出す攻撃を通じて、国境を越えたテロ能力の向上を示した」と指摘した。(訳注:報告書本文では「イランとロシアにおける攻撃」と限定的に書かれているがこの記事では以下に説明するためか、その部分をカットしている。)

<参考資料> 米国防総省報告書
https://media.defense.gov/2024/May/30/2003475060/-1/-1/1/OES_Q2_MAR2024_508.PDF

報告書は、1月に隣国イランのケルマーン市でイラン軍最高司令官の記念碑で自爆テロが発生し、少なくとも100人の弔問客が死亡したと述べている。また、ISホラーサーンの武装集団が3月にモスクワ近郊のコンサート会場を襲撃し、少なくとも140人を殺害した。これはロシアで過去20年間で最悪のテロ攻撃とされている。

3月、米中央軍司令官マイケル・クリラ将軍は、アフガニスタン発のテロの脅威が高まっていると議会で証言し、イスラム国関連組織は「米国と欧州の同盟国をわずか6か月で攻撃する能力と意志を保持している」と警告した。(訳注:クリラ将軍は2023年3月にも議会で同様の証言をしている。)

<参考記事>
https://www.defense.gov/News/News-Stories/Article/Article/3699741/general-says-centcom-area-facing-volatile-security-situation/

米国の四半期報告書は、アフガニスタンでのテロ集団の避難所を認めないと誓約したにもかかわらず、ターリバーンは「アル=カーイダが自国の領土を利用して他国に脅威を与えていることを公的に否定しながらも、個人的にアル=カーイダ幹部に隠れ家を提供し続けている」と述べている。

国連安全保障理事会は1月の報告書(訳注:イスラム国の脅威に関する第18回レポート)で、ISホラーサーンが「領土の喪失、死傷者、上級・中級指導層の大きな喪失にもかかわらず、アフガニスタンと域内で大きな脅威を与え続けている」と述べた。

<国連レポート>
https://documents.un.org/doc/undoc/gen/n24/017/61/pdf/n2401761.pdf?token=mmWkUnaPBzAnTHE26a&fe=true

このうち上記記事に該当する部分の文言は
「アフガニスタンと域内、さらにその先へ大きな脅威を与え続けている」(下線:訳者)

 

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