Afghanistan: Crises, Challenges, andPathways to Sustainable Development

 

(WAJ: ターリバーンが復権して4年。ドーハ合意でターリバーンが約束した全アフガニスタン人を包摂する正規の政府樹立への道筋は途絶えたままである。ターリバーンはアフガニスタンを支配するのはイスラム法であるシャリーアであると主張し、それを強力をもって押し付けている。さらには最近、それまで各大臣につけていた「暫定」の呼称を外し、ターリバーン政府が正規の唯一の政権であると主張している。そのような状況にあって、本論考のように国民の大多数が合意する憲法を柱とするアフガニスタンの統治を提案するのは絵空事のように思える。しかし、ターリバーンもアフガニスタンの有力な構成勢力(現在は主勢力)である以上、ターリバーンにも飲ませるべき考えである。実際、ドーハ合意において一度はターリバーンも認めていたアフガニスタンの統治への道筋だったのである。結論部分で述べられた3本の柱を全アフガン人は噛みしめるべきである。本サイトのアフガンサイト主筆ファテー・サミ氏がこの間、本サイトに執筆した論説のすべては「ファテー・サミ執筆記事一覧」で読むことができる。)

ファテー・サミ:フリーアカデミック研究者
2025年8月30日

 

はじめに

アフガニスタンは過去数十年にわたって一連の複雑で多層的な危機に耐えてきた。限られたグループへの権力の集中、広範囲にわたる教育の剥奪、外部資源への経済的依存、包摂的な憲法の枠組みの欠如などが、総合的で持続可能な開発と社会正義の実現を妨げてきた。この論考では、厳密な学術的アプローチによって、国が直面している主要な危機を調査し、これらの課題に対処するための実践的かつ包括的な道筋を提案する。

 

1:政治危機と権力集中

アフガニスタンの中心的な課題のひとつは、少数グループへの権力の集中と部族統治の持続だ。この集中は、包摂的で公平な政治システムの確立を妨げ、歴代政府の正当性を損なった。このような状況下では、民族、女性、若者の国家意思決定への積極的な参加は厳しく制限され、汚職と権力乱用が急増している。包摂的なガバナンスを確立する機会が生じたとしても、権力闘争や歴史的および外部から影響を受けた政治的階層の居座りによって、それらはしばしば損なわれる。

アフガニスタンの政治史は、流血、投獄、秘密拘禁、陰謀、同胞殺しの暴力によって特徴づけられている。何千人もの人々が殺されたり、失明したり、投獄されたりした。兄弟どうしが敵対し、子供たちは親や叔父に敵対した。歴史的経験は、包括的な法的枠組みを所有するだけでは、政治的安定、正義、または市民の権利保護の保証は決してないことを示している。

ザヒル・シャー治世の最初の憲法から、ダウド・ハーン政権下の改革、アフガニスタン人民民主党(PDPA)の一党支配、ムジャヒディーン時代、そしてムジャヒディーン指導者が主要な文官・軍事ポストを占めていたカルザイ氏とガニー氏の米国支援の共和政権を経て、アフガニスタンは一貫して憲法を制定してきた。それにもかかわらず、この国は戦争、民族紛争、制度の崩壊、外国勢力への深い依存に苦しみ続けている。

ターリバーン勢力が国のかなりの部分を支配している現状を考慮すると、海外や国際的な監督下に憲法起草評議会を設立するだけでは危機を解決することはできない。内部の政治的合意、国民的合意、社会的勢力の動員がなければ、世界有数の法律専門家によって起草された憲法であっても、事実上執行不可能なものとなるだろう。

アフガニスタン問題の根源は、単に法的文書がないだけでなく、国民の意志、内部の合意、相互信頼、政治的独立の欠如にある。権力の分配、武装グループの役割、外国の介入などの根本的な問題が取り上げられるまで、新しい憲法の枠組みは、前任者とおなじ運命をたどる可能性が高い。

過去の指導者たちが果たした役割を明確化することも不可欠だ。PDPAは、14年間の統治中に、ソ連の支援がありながら重大な誤りを犯した。パキスタン、米国、そして特定のアラブ諸国の支援の恩恵を受けたムジャヒディーンの指導者たちは、さらに悪い状況に陥った。35年以上にわたり、彼らはどの分野でも有意義な進歩をもたらすことができず、広範な汚職、民族分裂、国家機関の弱体化、外国の干渉の機会を帰結させた。PDPAがソ連との提携と非効率性で批判されるならば、ムジャヒディーンの指導者たちもその責任からは逃れられない。歴史が証明しているように、誰もアフガニスタンの安定した未来を築けなかったのだ。

外部勢力は、アフマド・シャー・ドゥラーニーに至るまで、アフガニスタン政府の形成において歴史的に決定的な役割を果たしてきた。主要な政治的決定はしばしば外国の圧力や指導の下で行われ、国の政治的独立が制限された。実際的には、アフガニスタンは真の主権を持ったことはなく、根本的な政治改革が実行可能であるためには、歴史的および外部の影響を考慮しなければならない(UNDP、2025;アフガニスタン・アナリスト・ネットワーク、2024年)。

 

2:教育危機と女子教育の剥奪

女子校の閉鎖と教育へのアクセス制限は、世代間および社会間の分断を深めるだけでなく、熟練労働者層の能力を低下させている。こうした貧困がもたらす心理的、社会的、経済的影響、特に社会経済への積極的な参加意欲の低下は、国家の発展に長期的な影響を及ぼす(ユネスコ、2023年)。

この危機に対処するには、女子校の再開と、現代的でスキル重視の教育プログラムの実施が不可欠だ。包括的な教育と人間のエンパワーメントは持続可能な開発の柱であり、国の社会、経済、政治の基盤を強化する。

 

3:経済危機

アフガニスタン経済は、何十年にもわたって厳しい規制と外部援助への高い依存に直面してきた。経済の大部分は外国の援助と伝統的な資源に依存しており、持続可能な開発と経済的自給自足が困難になっている。制度化された経済構造の欠如は、民間部門の成長を妨げ、特に若者や熟練労働者の雇用機会を制限している(世界銀行、2024年)。

経済危機に対処するための戦略には、民間部門つまり非政府部門の発展、若者と女性の雇用機会の創出、経済的エンパワーメントと起業家精神のためのプログラムの実施が含まれる。民間部門の成長と国民所得の増加は、社会福祉の向上だけでなく、政治参加と国民の信頼を強化することにもつながる。

しかし、ターリバーンによる抑圧的な状況下では、人口増加に歩調を合わせた長期的な経済成長さえも大きく制約されている。貧困率が上昇し、乳児死亡率の上昇につながる一方、若者のうつ病と広範な失業により、長期的な社会的、政治的、健康的、経済的危機が激化している。

 

4:社会参加と市民機関

積極的な市民参加は、教育、経済発展、持続可能な成長をつなぐ重要なリンクである。それがなければ、いかなる政策や開発イニシアチブも成功しない。持続可能な開発には、公民権を制度化し、民族グループ、女性、若者の国家意思決定への参加を確保し、独立した市民社会組織を設立することが不可欠だ(Relief Web、2025)。

 

5: 包摂的な憲法の起草

包摂的な憲法の制定と採択は、政治的および社会的安定のための重要な手段となる。憲法は、権力共有の枠組みを提供し、市民の権利を保障し、監視メカニズムを確立し、持続可能な開発の基礎を築く (アフガニスタン憲法専門家グループ、2023 年)。

それにもかかわらず、国の現実、民族的および社会的構成、およびすべてのグループの幅広い参加を考慮せずには、いかなる憲法を起草しても、ほとんど効果がないだろう。正当性と持続可能性を確保するには、あらゆるセクター、特に女性と若者の積極的な関与が不可欠だ。

 

6:経済・教育・政治的発展発の統合

経済成長、特に民間部門つまり非政府部門をつうじたそれは、強力な国家政策と市民参加の基盤となる。強固で透明性のある経済は、汚職を減らし、権力の集中を制限し、社会的関与と国民の信頼を強化するのに役立つ。

教育と人間のエンパワーメント(権限付与・自立支援)――特に女性と若者のためのそれは――もうひとつの重要な柱を成している。
人材の能力と現代的なスキルを高めることは、経済的な機会の活用を可能にし、市民参加を促進する。

包括的な戦略立案にとっては、経済発展、教育エンパワーメント、政治参加を統合する必要がある。 その結果、真の独立と持続可能な発展を生み出すことができる。

 

7: 結論と今後の展望

アフガニスタンは、国内外の機関や社会集団が包摂的で透明性があり、公平なプロセスで協力する場合にのみ、慢性的な危機を克服することができる。成功のためには、国民の参加を強化し、政府機関への信頼を築き、すべての国民に平等な機会を提供することが不可欠だ。

アフガニスタンの将来のビジョンは、正義、参加、人間開発にかかっている。包摂的な憲法の起草、民間部門の成長の促進、教育の改善、国民、特に女性と若者のエンパワーメントは、国を安定、真の独立、持続可能な開発へと導くだろう。この包括的なアプローチは、複雑な危機に対処し、応答性が高く、公平でダイナミックな社会を構築するための唯一の実行可能な道を表している。

最後に、既存の危機を乗り越えるには、3つの主要な柱に基づいて構築された国家ロードマップが必要だ。

1. ターリバーンの権力独占を撤廃し、軽蔑的な言葉を使用したり、政治的分裂を悪化させたりすることなく、包摂的で参加型の政府に向けて移行すること。

2. 東側や西側かかわらず外国への盲目的な忠誠を捨て、国内で国力を動員し、専門知識を有する海外在住同胞との団結を促進すること。

3. 法的原則だけでなく、国民のコンセンサスと現場のリアリティーに基づいた、包括的で運用可能な国家文書を起草すること。

憲法は解決策の一部だが、それが実現するための前提条件は真の自由、独立した意思決定、および内部の合意である。これらの要素が実現されるまで、先見の明のある計画や新憲法の議論は、ほとんどが修辞的なものであり、アフガニスタンの危機を実際に解決する可能性は低い。

 

参照

• United Nations Development Programme (UNDP). (2025). Afghanistan SocioEconomic Review. Retrieved from
国連開発計画(UNDP)。(2025). アフガニスタン社会経済レビュー。
https://www.undp.org/afghanistan/publications/afghanistan-socio-economicreview

World Bank. (2024). Afghanistan’s Economic Decline Continues but Private Sector Can Support Growth.
世界銀行。(2024). アフガニスタンの経済衰退は続いているが、民間部門は成長を支えることができる。https://www.worldbank.org/en/news/press-release/2024/05/02/afghanistan-seconomic-decline-continues-but-private-sector-can-support-growth-says-worldbank

UNESCO. (2023). Let Girls and Women in Afghanistan Learn!
ユネスコ。(2023). アフガニスタンの少女と女性に教育を!
https://www.unesco.org/en/articles/let-girls-and-women-afghanistan-learn

 

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