U.S.-Russia Relations: Strategic Rivalry, Political Manoeuvring, and the Shifting Global Order Under Trump’s Return
(WAJ: 親プーチンと揶揄されることもあるトランプ第2期政権の対ロ政策は果たして従来の米国の姿勢と本質的な違いはあるのか。筆者はこの問いに、本質的な違いはない、コインの裏表だ、とイラク戦争やリビア・カダフィ政権打倒の例を挙げて論証する。そのうえでなぜプーチン大統領がウクライナ戦争にこだわるのかの理由も明らかにする。本稿では一部プーチンサイドの視点も交えながらユニークな分析が提供される。なお、著者ファテー・サミ氏がこの間、本サイトに執筆した論説のすべては「ファテー・サミ執筆記事一覧」で読むことができる。)
ファテー・サミ(Fateh Sami):フリーアカデミック研究者
2025年2月17日

はじめに
米ロ関係は長い間、戦略的競争と政治的緊張によって規定されてきた。そして両超大国は、それぞれの世界的影響力を維持するために策動してきた。ドナルド・トランプ大統領が2期目としてホワイトハウスに復帰するにあたり、ロシアに対するアメリカ外交の将来について疑問が生じる。とりわけ、ウクライナおよび中東における進行中の紛争を考慮すれば、なおさらである。
本稿は、トランプ氏の指導下でワシントンとモスクワの間の力学の変化を掘り下げ、彼の経済・軍事政策が前任者ジョー・バイデン元大統領のそれとどのように対照をなすかを検討する。また、権力関係と国益追求に比して信頼関係が二次的に扱われ、にもかかわらず両国が依然として政治的かつ戦略的な高リスクのチェスゲームを行っている環境において、プーチン氏のロシアがいかにこの状況変化を乗り越えねばならないかを考察する。
新世界秩序において同盟関係の変化と経済的圧力にどう対応するか
ドナルド・トランプ氏がホワイトハウスに入るにあたり、問いが生じる。米国の対ロ外交は、競争から協力へと転換するのか。第1期政権中、トランプ氏はロシアとの関係改善への意欲を示唆し、対立よりも対話を強調した。これは、特にジョー・バイデン政権下で米国政治体制がしばしば取った強硬路線と鮮明な対比をなすものであった。
ウラジーミル・プーチン大統領の視点からすれば、バイデン政権下で特徴づけられた継続的な「戦争煽動」レトリックは変わらないのか、それともトランプ氏復帰によって潜在的な転換があるのか。現在のウクライナ紛争および中東のくすぶる緊張、その他の地政学的火種は持続しているように見える。一部の分析者は、これらの危機が米国の世界的影響力と権力を維持するために機能していると主張する。継続する不安定性はまた、物質的利益を梃子にし、米国主導の国際秩序を維持する手段とも見なされ得る。
しかしながら、地政学的景観は劇的に進化している。米国はいまだ相当な力を保持しているものの、中国の台頭とロシアの積極的な国際行動は、世界がますます多極化していることを示唆する。米国が唯一の超大国であり続けるという観念は、経済的および戦略的領域の双方においてその支配に対する挑戦が増大するなかで、ますます維持困難となっている。それにもかかわらず、プーチン氏はしばしばトランプ氏について楽観的に語り、世界関係の軌道を変え得る潜在的同盟者と見なしてきた。
ウクライナおよび米国支援に対するトランプのアプローチ:戦略の転換か?
トランプ氏とバイデン氏の間の主要な相違点のひとつは、ウクライナ紛争の扱いにある。バイデン政権下では、米国の政策はウクライナを強く支持し、軍事援助を提供し、ロシアの侵略に直面するなかで民主主義の防衛を強調した。
しかしトランプ氏は、イデオロギー的コミットメントよりも、資源および地政学的位置づけの戦略的価値を重視する、より実務的かつビジネス志向のアプローチを採る可能性が高い。
もしトランプ氏が再び就任すれば、ウクライナへの軍事支援を縮小し、進行中の紛争を支えてきた武器と資源の流れを減少させるのではないかとの推測があった。一部の分析者は、プーチン氏がトランプ氏の立場を誤算している可能性を指摘していた。トランプ氏の言説が米国政策の劇的転換に直結すると信じるのは誤りかもしれない。実際には、トランプ氏も依然としてロシアを紛争に巻き込んだままにして米国の利益を優先する可能性がある。
トランプ氏の過去の発言は、実利的で結果志向の外交への傾向を示唆しており、この文脈において彼はウクライナ戦争をイデオロギー的戦場ではなく、ロシアの資源を消耗させる手段として見る可能性がある。
米ロ関係の将来:リアルポリティークか、それとも永続的競争か?
プーチン氏にとって、問題は残る。彼はトランプ氏主導の米政権を信頼できるのか。もしホワイトハウスに対する戦略を再調整しなければ、地政学的駆け引きが潜在的進展を損ない続ける長期的膠着状態に陥る危険がある。
プーチン氏と米国は歴史的に互いを協力者ではなく競争者と見なしてきた。冷戦の遺産は依然として重くのしかかる。トランプ氏のレトリックがバイデン氏のそれと異なろうとも、競争と相互不信という根本的力学は変化しにくい。
トランプ氏の外交政策は、時に孤立主義的傾向を帯びながらも、特にロシアおよび他の世界的プレーヤーとの関係において、戦略的同盟と配置を通じて米国の力を強化することを目的とする。トランプ氏のアプローチは、モスクワと直接軍事的に対決することなく、とりわけウクライナにかかずりあうロシアの弱点を利用する可能性がある。
トランプ氏の戦術は、新たな形態の緊張を生み出す可能性がある。すなわち、ロシアが外部紛争に関与し続けるならば、米国の力はより目立たぬ手段によって維持される状況が出来する可能性がある。
最終的に、プーチン氏にとって最善の行動は、ロシアの利益と完全に一致することのない米国指導部に備えることではないだろうか。トランプ氏もまた、バイデン氏同様、広範なイデオロギー的および戦略的分断を考慮すれば、ロシアと同盟を形成する可能性は低い。
米国外交政策形成における「ディープ・ステート」の役割:欧州およびウクライナに対するトランプのアプローチ
米国の外交政策はしばしば、「ディープ・ステート」と一般に呼ばれる強力な制度的勢力によって形成される。これらの存在は舞台裏で機能し、ホワイトハウスに誰がいるかにかかわらず、アメリカの対外利益がより広範な地政学的目標と整合することを確保する。それにもかかわらず、大統領のレトリックと行動は依然として外交政策の進路に重大な影響を与え得る。
直感に反するように思えるかもしれないが、トランプ氏の政策はしばしばアメリカの欧州同盟国との間にも摩擦を生み出してきた。これらの同盟国は彼の指導から次第に距離を置きつつある。欧州が、特にウクライナ戦争の文脈において戦略を調整していることは明らかであるが、トランプ氏は引き続き、バイデン政権を特徴づけたのと同じ恐怖を基調とするレトリックを用いながら、欧州諸国にロシアへ対抗することを促すアプローチを追求してきた。しかし彼の立場は、明確に取引的であり、欧州に対して米国から軍事装備を調達し、進行中の紛争への支援を維持することを明白に要求している。
ウクライナに関するトランプの戦略:ビジネス交渉に根差した戦術的アプローチ
最近の記者会見で示されたトランプ氏のウクライナ戦争に関するメッセージは明白である。彼は戦争は継続されねばならず、先進兵器を用いてロシアへの圧力を強化すべきであると主張した。彼の発言には、欧州が米国から重火器を購入し続け、交渉による解決が達成されるまで紛争を継続すべきであるという含意があった。これは単なる軍事戦略ではなく、欧州が米国の兵器製造業者にとって市場であり続けることを期待する明確な経済的指示でもある。
プーチン氏の側近たちは、このレトリックを過小評価すべきではない。トランプ氏の指導様式は、伝統的な政治家というよりも実業家としての経歴によって形作られている。彼は伝統的意味での熟練した経済学者ではなく、むしろ梃子、威嚇、さらには恐喝を通じて行動する実利的交渉者である。この場合、欧州諸国に米国製兵器を購入させ、戦争に関与し続けさせようとする彼の要求は、彼のより広範な取引的外交政策を反映している。
経済的および戦略的利益:過去の取引の反復か?
このアプローチは、中東における過去の米国戦略、とりわけイラク戦争期を想起させる。トランプの振る舞いは、ジョージ・W・ブッシュ政権下で仲介された欺瞞的取引を思わせる。当時ロシアは、サダム・フセイン排除後の戦利品の分け前を約束された。そのシナリオでは、ロシアはイラクの石油収入における持分を受け取ると信じさせられたが、NATOおよび欧州諸国が地域資源の支配を確立すると、結局は脇に追いやられた。同様に、リビアにおいても、カダフィ政権崩壊後の重要な役割からロシアは排除された。
しかしウクライナの場合、力学は異なる。ウクライナはロシアと歴史的および文化的結びつきを共有しており、その地理的近接性はロシア連邦にとって戦略的に重要である。ロシアの関与が周辺的であったイラクやリビアとは異なり、ウクライナは、とりわけ旧ソ連の遺産の継承者としての役割を考慮すれば、ロシアの影響力にとって不可欠な空間と見なされている。分析者は、トランプの指導下で米国が地域を支配することを許して後退する余裕はプーチン氏にはないと示唆する。後退はロシアの立場を弱めるだけでなく、重大な面目の喪失をもたらす危険を伴う。
プーチン氏のジレンマ:ロシアの世界的地位にとっての歴史的決断
もしトランプ氏がウクライナを西側の影響下に置くことを許すならば、それはプーチン氏にとって記念碑的失敗と見なされるであろう。アフガニスタンからの米国撤退との比較でそれは語られるだろう。ターリバーンからの拙速な撤退によって米国が屈辱を味わったのと同様に、ロシアもまた、ウクライナで自らの主張が崩れれば米国と同様の屈辱に直面する危険がある。
プーチン氏はその重大性を認識している。ウクライナ戦争は単なる地域紛争以上のものである。それはロシアの世界的地位を維持し、西側がロシアの勢力圏と見なされる領域へのいっそうの侵入を防げるかどうかに関わっている。したがって、ウクライナにおける潜在的敗北がロシアの国際的地位の棄損を許さないという決意のもと、プーチン氏はこれまで以上に断固たる姿勢を採る可能性が高い。
共通する一本の糸:バイデンとトランプは同じ硬貨の裏表
プーチン氏にとって、ホワイトハウスをバイデン氏が占めるかトランプ氏が占めるかにかかわらず、米国が提示するチャレンジは本質的に大きく異なるものではない。両指導者は根本的に、特に旧ソ連共和国およびロシアが伝統的に影響力を保持してきた他地域を通じて、ロシアの戦略的利益に挑戦することにコミットしている。進行中のウクライナ戦争は、多くの点で、ロシアを消耗戦に絡め取る広範な米国政策の継続である。
トランプ氏がウクライナ指導部と過去に行った取引は、一部分析者がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との「恥ずべき取引」と呼ぶものに関与する意欲を示唆している。この取引は、特にポクロフスクやクラマトルスクのような鉱物およびエネルギー資源に富む地域におけるウクライナの豊富な天然資源の搾取を含むとされる。ウクライナ防衛支援の名目のもとで、トランプのアプローチは米国の経済的利益確保を目指し、ウクライナをロシアとの広範な競争におけるさらなる地政学的梃子へと転換することを意図している可能性がある。
ワシントンのウクライナ政策:ロシアにとって危険な経済段階
ワシントンのウクライナ戦争に対する政策は変化していないだけでなく、より危険な経済段階へと入っている。もしプーチン大統領が断固かつ決定的な行動を取らなければ、トランプ氏は過去に民主党体制が加えた圧力と同様に、ロシアにとってもうひとつの重大な対抗馬となり得る。
「はじめに」で強調したように、地政学において信頼が果たす役割は限定的であり、国益こそが最重要である。これらの利益が政策と意思決定の最終的駆動力である。
プーチン氏はトランプ氏に信頼を置くべきか?
この文脈において問いが生じる。プーチン氏はトランプ氏を信頼し、依拠すべきか。今日、トランプ氏は植民地主義的傾向と好戦的姿勢を特徴とする政策を追求しており、とりわけガザの人々に関して顕著である。しばしば暴力的イメージや戦争的レトリックを喚起する彼の言説は、目的達成のために武力行使を辞さない指導者像を反映している。同時に、彼のアプローチは米国覇権のより広範な利益と整合し、地域的配慮を顧みることなく米国に利益をもたらす攻撃的措置を推進しているように見える。
プーチン氏は強力な地域大国として、これら多くの問題について顕著に沈黙を保っている。とりわけガザを含む中東に対する彼の沈黙は、彼の指導力および世界的事象に影響を及ぼす能力に関する疑問を生んでいる。この慎重かつやや無関心な姿勢は、米国一極支配への挑戦者としてのプーチン氏への信頼を損なう。ロシアの影響力が否定できないものである一方で、重要な世界的問題に対するこの静かな立場は、彼の意図と長期戦略に対する懐疑を招いている。
信頼の限界と政治的利益の現実
国際関係において、信頼は実利的な国益追求に従属する。トランプ氏との、あるいはいかなる米国指導者との交渉も、個人的関係が行動の方向を形作るという信念に基づくべきではない。むしろ、それらの議論は、力の力学と変化する世界秩序を冷静に認識した上で行われねばならない。
ロシアにとって、トランプ氏との関与が有用であるのは、新たなルールの下で具体的な利益――領土または影響力――を確保できる場合に限られる。交渉の場において戦略的かつ実質的な立場を確保することにより、自国の利益を保護することが不可欠である。
ワシントンに対する強硬政策の採用
柔軟性と寛容性に基づくロシアの戦争上の立場のいっそうの進展――それがウクライナであれ、中東であれ、他地域であれ――は、有利な結果をもたらす可能性は低い。専門家によれば、ロシアはワシントンに対してより強固な政策を採用すべきであり、明確な戦略目標を伴わない交渉の罠に陥ることを避けねばならない。
この点において、クレムリンは、トランプ氏の政策によって拡大した欧州と米国の亀裂を、将来の交渉における戦術的手段として活用しなければならない。これらの亀裂は、ロシアが世界秩序においてより有利な位置を占める機会を提供する。
結論
トランプ氏のホワイトハウス復帰の下で米国が新たな指導段階に入るなか、米ロ関係の力学は依然として複雑かつ緊張に満ちている。トランプ氏の政策はバイデン氏のそれと様式において異なるかもしれないが、最終的には長年世界地政学を規定してきた戦略的競争を継続している。
欧州が米国から距離を置き、ロシアが地域的優位を主張するなかで、ウクライナおよびより広範な中東における影響力をめぐる争いは終わっていない。この高リスクの地政学的ゲームにおいて、信頼は冷徹な国益計算に道を譲る。ロシアの今後の進路は、変化する世界秩序を巧みに航行する鋭敏な指導力を必要とする。
問題は依然として残る。トランプ氏のアメリカとプーチン氏のロシアは共通基盤を見いだすことができるのか。それとも、相反する野心と歴史的怨恨によって駆動される終わりなき競争の循環に閉じ込められ続けるのか。
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