Explaining the Sanewashing of Donald Trump
Why are so many folks trying to rationalize Trump’s every utterance?
ドナルド・トランプを洗って正気にしたい心を読む
なぜこんなにも多くがトランプ氏の発言を正当化しようとするのか?
(WAJ: トンデモ論をふりまくトランプ大統領。その無思慮で乱暴な言葉は人々の心を腐らすだけでなく、世界の客観的な政治経済関係をもズタズタにしかねない。ところが、権力の座についたトランプさまにひざまずくだけではご褒美が足らぬと、暴言の真の意味はこうだ、と発せられたゆがんだ汚い言葉を洗浄し、あたかも王様は崇高で天才的な本音をもっていらっしゃるのだ、と解釈してみせ、正当化して、ギャラや原稿料を稼ぐ輩が、雲霞のごとく発生している。アメリカの知性が、アメリカが生んだ邪悪な怪物の取り巻きを切り捨てる。)
ダニエル・W・ドレズナー
2025年2月14日
ラックのなかの卵たち
先週末、ここドレズナーズワールドの勤勉なスタッフがロンドンのフレッチャー校のイベントで講演し、同窓生参加者と食事会を行った。そこでの会話では話題が次から次へと移り変わり、ある瞬間が私の心に残った。ある参加者はランチの間ずっとほとんど沈黙していたが、ふと、私をまっすぐ見て、たったひとつ質問をした。
「なぜこんなに多くの人がドナルド・トランプの発言を正当化するのでしょうか?」
このニュースレターは、私からのひとつの答えだと考えてほしい。なぜなら、無知で、とりとめがなく、時には偏見に満ちたトランプ氏の発言を「洗って正気にしてやりたい」理由はいくつもあるからだ。
まず第1に、私はこの質問がどこから来ているのか理解している。本当だ。実際、私はトランプ氏の知識不足、集中力のなさ、反対意見、そして全体的に未熟なリーダーシップについて一冊の本(The Toddler in Chief: What Donald Trump Teaches Us About the Modern Presidency)を書いた。トランプ氏はガザについて語るとき、自分が何を言っているのか分かっていないと言っても過言ではない。例えば、
【WSJ Video】
トランプ氏は、ガザの米国領有という考えを二度、三度と強調し、ガザのパレスチナ人の民族浄化を受け入れなければヨルダンとエジプトへの援助を差し控えると脅すほどだ。ニューヨーク・タイムズのゾラン・カンノ・ヤングス氏とショーン・マクリーシュ氏は、「この地域の主要同盟国に圧力をかけることを大統領が望んでいるということは、戦争で荒廃した地域の米国領有とパレスチナ人の追放に関する急速に強固になった考えを撤回するつもりがほとんどないことを示している」と書いている。(注1)
トランプ氏の発言を正当化するさまざまな論拠に入る前に、ここドレズナーズワールドの勤勉なスタッフは、トランプ氏の提案はあらゆる面でひどいものであることを明確にしておきたい。道徳的に言えば、トランプ氏は民族浄化行為(注2)を提案しており、これは両党の歴代政権が非難した類の行為である。実際、トランプ氏は中東(特にヨルダン)をさらに不安定にし、米軍を危険にさらし、米国沿岸を襲うさらなるテロの可能性を高める政策を提案している。
要するに、これは馬鹿げた考えだ。では、彼がこんなに常軌を逸するのは何故だろうか?
現在、この馬鹿げた非常識な考えを正当化している集団が3つある。まず、トランプ氏の追従者と、その追従者を支援するメディアだ。匿名のホワイトハウス関係者とホワイトハウス記者は、こうした内部関係者を情報源として頼りにしている。
トランプ氏がガザ占領を最初に提案した直後、ホワイトハウスはそれを撤回したが、その過程で彼がそもそもこのアイデアを提案した理由を擁護した。例えば、Axiosのジム・ヴァンデヘイ氏とマイク・アレン氏は、大統領顧問たちの次のような根拠を挙げている。
「彼は狂気のゴールポストを動かしている。今回は、彼は見出しや評論家の発言に怯むことなく、自分が投げたいと思うところに何でも投げるつもりだ」と、長年のアドバイザーは私たちに語った。
この顧問の言葉を借りれば、トランプ大統領の中東へのメッセージは「あんたらの状況をもっと悪くすることもできるんだぜ、さもなきゃもっと良い計画を考え出せよ」ということだ…。
内心では誰もが、トランプがトランプであることを知っている。完全に自信に満ち、束縛されず、頭に浮かんだことは何でも言い、提案できる自由を感じているのだ…。
ある米当局者は、トランプ大統領がこの計画を提示したのは、ガザに関して他に誰も新しい考えを持っていないとの結論に達したためだと述べた。
同様に、Politicoのイーライ・ストコルス氏とダーシャ・バーンズ氏もホワイトハウスの知らんぷりについて報道したが、その後次のように報じた。
内部の考えを話すために匿名を条件に与えられた別の政府高官は、15か月に及ぶイスラエルの爆撃によって瓦礫と化したガザ地区について米国が「所有し、責任を負う」というトランプ大統領の率直な発言は、永続的な平和を実現する再建プロセスを主導するという彼の決意の表明として、より広く解釈されるべきだと語った。
「大統領の言う『所有権』がどのようなものかは、プロセスを経て見えてくるだろう」とも語った。「しかし最も重要なのは、彼がリーダーとしての地位を握るということだ。」
ホワイトハウスのレビット報道官はこの計画をトランプ大統領の「型破りな」考え方の一例であり、地域和平協定を結ぶというシグナルだとアピールした。
同様に、大統領の国家安全保障担当マイク・ウォルツ補佐官は、トランプ氏の提案は始まったばかりの外交プロセスの一部であり、中東で主導的な役割を果たすつもりであることを示唆するものだと強調した。ウォルツ補佐官はCBSとのインタビューで、トランプ氏の提案は、同地域の他の国々にガザ再建のための独自の計画を提出するよう促す可能性もあると語った。
「誰も現実的な解決策を持っていないのに、彼が非常に大胆で斬新な新しいアイデアを提示しているという事実は、いかなる形でも批判されるべきではないと思う。地域全体が自ら解決策を見出すことになると思う」とウォルツ氏は語った。
この種の「洗って正気にする手法」は、誰かの「狂人なのか… それともキツネのようにこずるいだけなのか?」という発言と基本は同種なので、とても笑える。正気を求めて洗う人は、トランプ氏を何度も破産に追い込んだのと同じビジネス原則を使って世界政治を解決できると対話相手を説得するために、「型破り」などのビジネスの決まり文句を絶えず持ち出す必要がある。これは、「状況がこれ以上悪くなるはずがない、なぜこれを試さないのか?」という論理に大きく依存しているが、実際には悪い状況は常に悪化する可能性がある。
2番目のカテゴリーの正当化は、トランプ氏の逆張りの評論家や同僚たちだ。これらの人々は、ほとんどの場合、政治的な会話を「私はトランプ氏に投票しなかったが…」という一文で始め、その後1時間、トランプ氏の戦略的洞察力を擁護し続ける。本質的に、このカテゴリーでは、逆方向つまり帰納法で正気へ向けて洗濯する。
1.トランプ氏は、どんな政治家でも失脚するような行為や発言をしたにもかかわらず、二度も大統領に選出された。
2.それは、ある意味、注目すべき成果だ。トランプ氏は私が知らない何かを知っているのかもしれない。
3.もしトランプ氏が本当に政治の天才であるなら、彼の発言のすべては、たとえ宇宙的に愚かに思えるものであっても、五次元チェスの行為としてみなされるべきである。
このため、評論家たちはトランプ氏の発言の背後にあるより深い意味を掘り起こそうとコラムを書いている。トランプ氏の愚かな発言でさえも、「彼はただ質問しているだけだ」と言い換えることができる。評論家にとっては、ドナルド・トランプ氏が、他の誰もがくだらないと思っていることについて正しい、あるいは他の誰もが恐れて口にできない不快な質問をしている、と勇敢に宣言することで、怒りを買って知識人の注目を集めるという追加のボーナスまでゲットする。
サダナンド・ドゥーム氏のウォール・ストリート・ジャーナルのコラム「インド人とパキスタン人が移住できるのに(訳注:1947年、両国の分離独立の際、イスラム教徒とヒンズー教徒が分離移住した)、ガザの人々はなぜできないのか?」は、トランプを正気へと洗うこのカテゴリーに該当する。
米国がガザ地区を占領し、200万人のパレスチナ人を移住させるというトランプ大統領の考えは、激しい怒りと嘲笑を招いている。しかし、たとえこの考えが実現しなくても、イスラエルに対する世界の二重基準に光を当てるという利点がある。
過去1世紀にわたって、多くの人口移動が起こってきた。1920 年代、ギリシャとトルコは強制的な人口交換に同意した。トルコにいたギリシャ正教のキリスト教徒はギリシャに、ギリシャにいたイスラム教徒はトルコに移住した。第二次世界大戦後には、何百万人ものインド人とパキスタン人、またチェコスロバキアとソ連のドイツ系住民が、新たな居住地を見つけることを余儀なくされた。1970 年代、ウガンダはインド人を追放した。しかしパレスチナの場合のみ、難民問題が際限なく悪化している。
この議論は二重基準を浮き彫りにしている。1948年のイスラエル建国と第一次アラブ・イスラエル戦争の後、約60万から70万人のパレスチナ人が故郷を逃れた(訳注:イスラエルによってなされた、ナクバと呼ばれるパレスチナ人を故郷から追放した政策)。しかし、近東におけるパレスチナ難民のための国連救済事業機関は現在、約600万人のパレスチナ「難民」を支援している。これは、避難したパレスチナ人だけでなく、その子孫も国連が難民として数えているからだ。
トランプ氏の発言を真剣に受け止めることで、ドゥーム氏は、パレスチナ難民問題は例外であり、トランプ氏の提案はその事実を明らかにしているという、彼がすでに主張したい議論を展開できるようになる。
ドレズナーワールドの勤勉なスタッフは、この説明にかなり疑問を抱いている。明らかに、20世紀の強制移住がもたらしたトラウマを軽視している。さらに、ガザ以外でドゥーム氏が挙げたすべてのケースでは、戦争によって民族が移動し、次の国へと移った。ガザの場合、問題はパレスチナ国家が存在しないことだ。しかし、私が言いたいのは、トランプが隠れた政治の天才であるという前提を維持するには、正気への洗濯が不可欠だということだ。
トランプを洗って正気化したい最後のグループは、トランプの言葉を武器にして自分たちの政策を推進する政策提唱者たちだ。私が以前に書いたように、トランプが知らない、あるいは気にも留めていない政策が山ほどあることを思い出してほしい。
「ドナルド・トランプがまったく興味を示さない知識の領域は広大にある。例えば、トランプ氏がケネディ・ジュニアに「健康問題ではワイルドに行け」と言っているのは、トランプ氏が健康問題にまったく関心がない証拠だ。トランプ氏は健康問題にうんざりしている。こうした分野では、トランプ氏は未熟で知識不足の大統領のままで、部下が自分に忠誠を示すことを望んでいるだけだ…。トランプ氏は特定の政策よりも、部下が自分に対して示す忠誠心を気にするだろう。
<参考記事> トランプ大統領はケネディ・ジュニアの「アメリカを再び健康に」計画を称賛している。科学者らは懸念している
これは最も危ない正気への洗濯である。なぜなら、それが現実世界に影響を与えるからだ。トランプ氏の部下は、彼の言葉をさも知恵がありそうな口実にして、ただ自分たちがやりたいだけの政策を本気で実行してしまう。実際、この動きはウィンウィンだ。部下たちはグレートリーダーを称賛して点を稼ぎつつ、同時に自分たちの政策課題を実行に移せるのだから。
トランプ政権の2期目が、この第3形態の「正気への洗濯」を起こすにはまだ早すぎるが、今後数週間から数か月以内にトランプ内閣の誰かがこの策略を展開すると私は確信している。
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(注1)そのニューヨークタイムズの記事には、トランプ氏の狂った考えを説明するために使われる、いわゆる「正気を装う」口調の例がいくつか含まれている。私の考えでは、これはグレイ・レディの社風に関するもので、人それぞれだが、どう違うかは人それぞれだ。
(注2)表面上は懐古主義的なアイデンティティに根ざしている MAGA 運動が、パレスチナ人から先祖伝来の土地を買収できるなどと考えるような間違いは犯さないだろうと思われるだろう。しかし、論理的一貫性は、MAGA を応援するメンバーになるための前提条件ではなかった。