(2026年2月3日)

 タカイチ信任選挙? 

~ トランプ従属の日本でいいのか ~

 

真冬の解散総選挙

選挙報道をテレビで見るたびに、国内政治はひどい「内向き」とポピュリズムに収れんしていると感じる。
与野党とも競い合うように減税やバラマキ策を掲げ、大衆迎合の「人気取り」をしている。
オールドメディアは早々に与党優勢を予測している。

しかし、こうした国内の政治風潮は、国際環境の激変とまったく歩調が合っていない。

むしろ世界の現実から目をそらし、国境の内側だけで政治が完結するかのような鎖国政治だとすら思える。

国際社会では、世界一極支配を維持できず、行き詰まりと衰退を自覚した米国のトランプ大統領が「アメリカ・ファースト」と叫び、過去の強大なアメリカへの想いをつのらせ、現実に抗う強い怒りを先鋭化させている。その結果、高関税政策、グリーンランド領有やカナダ併合などの西半球支配構想、同盟国軽視、さらには中国やロシアなど権威主義国との「世界大国支配」構想にまで至っている。世界秩序は100年前の大競争時代の再現を思わせる危険な兆候が満ちるようになった。トランプ大統領の思想的基盤ともされる「ドンロー主義」は、米国の孤立ではなく、力と力で地球を分割する「世界ジャングル時代」への回帰を思わせる。(米国2025NSS 「2025 National Security Strategy(NSS)」参照

 

回帰を打破し未来へ

これに対し、国際社会の別の潮流誕生を予感させる動きがカナダのマーク・カーニー首相のダボス会議演説だ。カーニー首相はこの演説で、「ルールに基づく秩序は終焉した」「大国(米中)の経済強制に抗うため、中堅国(ミドルパワー)は結束し」「中堅国連合による新国際秩序をつくるべきだ」と呼びかけた。米中対立を軸とした世界の分断を避け、グローバルサウスを含む中堅国が協調し、ルールに基づく秩序を維持しようとするこの提案は、国際公共財としての「諸国間の安定共存」を守る現実的な道である。世界の中堅国が結束すれば、自由で開かれた経済環境や、平和な国際社会を実現・維持できるはずだ。

国際秩序の変容を鋭く突くカーニー首相の演説は世界中で大きな波紋と論争を呼んだ。
世界の主な反応をGeminiを利用してまとめると次の通り。

1. 称賛・共感(中堅国、欧州、多国間主義擁護派)
「歴史的な名スピーチ」としての称賛: 多くのメディアや識者が、カーニー氏が「集団的幻想」に過ぎなかった従来の国際秩序の終焉を率直に認めたことを高く評価した。
中堅国の団結への期待: 「もし中堅国がテーブルにつかなければ、メニュー(食材)にされる(=大国の餌食になる)」という強い表現が、オーストラリア、韓国、メキシコなど他のミドルパワーの共感を呼んだ。
欧州首脳の歓迎: 「古い秩序は戻らない」という認識は、米中の二大国に挟まれる欧州諸国からも支持され、結束を呼びかける姿勢が称賛された。

2. 反発・批判(トランプ米政権)
トランプ大統領の強い反発: カーニー氏がトランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策や関税・強制手段を暗に批判したとして、トランプ氏は「カナダは米国のおかげで生きている」と非難。
トランプ氏が主催する平和評議会からの除外: トランプ大統領は、自身が主導する「平和評議会」へのカナダの参加呼びかけを取り消し、対立姿勢を明確にした。

3. 分析・冷静な視点(国際政治アナリスト、メディア)
「西側の都合の良い目覚め」への疑問: このスピーチを「西側がこれまで無視してきた問題をようやく認めたに過ぎない」と分析。
「対トランプ」戦略の転換: カナダ国内や米国のメディアは、これまでの「アメリカべったり」な対米外交から、独自の結束を強める「現実主義」への重大な転換と位置づけた。

4. その他(カナダ国内)
国内の政治的な支持: マニトバ州の州首相などがカーニー氏の「道徳的な明瞭さ(moral clarity)」を称賛し、カナダが主体的に動くべきだという意見が出された。

カーニー首相本人の対応:
カーニー氏は、トランプ氏からの反発にも関わらず、演説内容を撤回せず、「私は言ったことを本気で言った。古い秩序はもう戻らない」と姿勢を貫いた。
全体として、このスピーチは単なる経済フォーラムの講演を超え、大国依存からの脱却を模索する「ポスト・ルールベース秩序」の外交指針として、今後長く記憶される可能性があると評されている。

トランプ氏から併合の脅しをかけられているカナダのカーニー首相の反発に対しヨーロッパ諸国はトランプ大統領の強硬な姿勢に対し、かつてないほど明確に「戦略的自律」を打ち出し、距離を置く動きを加速させている。
米国とヨーロッパはグリーンランド問題をめぐり決定的な亀裂をうみ、一部の国を除き大半がトランプ大統領の「平和評議会」への不参加を表明し、米国に頼らない「主権」の確立を公然と口にするようになっている。

 

どこを向く? 日本外交

世界を揺るがし始めたカーニー首相の提案と世界の動きに対し、日本の与野党の外交姿勢はどこを向いているのか。

高市氏は中国を強く刺激する対中強硬外交を前面に掲げたままだ。国内向けには消費税減税を訴えながら、対外的にはトランプ政策に追随して防衛費増を進めるなど、内政ポピュリズムと対米従属というちぐはぐな政策運営を続けている。だが、米国の大国ブロック化構想に唯々諾々と加担することは、日本の国際的プレゼンスの縮小を意味するだけでなく、中堅国として主権をもって世界秩序づくりに参加する機会を自ら手放すことでもある。

いま求められているのは、国内の排外主義的ナショナリズムに迎合する姿勢ではなく、むしろ国際社会の変動を冷静に見据え、中堅国としての日本の役割を再定義する政治であろう。カーニー首相が示すような、多国間主義を再構築しようとする世界の潮流に日本が参加できるかどうかは、まさに今の政治選択にかかっている。

国際秩序が揺らぐ時代において、国内政治が内向きに閉じることは致命的である。日本が国際社会の信頼を維持し、経済的繁栄を確保し、地域の平和に貢献するためには、世界とつながる視点を取り戻す必要がある。選挙はその最初の一歩である。

自民党党首の高市氏は、解散にあたって、「私を信任するかどうか」だ、と無条件委任をもとめる、極めて傲慢な態度で国民に臨んだ。

 

人間であるための条件

「<視点:162> AIと生きる人類の未来」で紹介した生成AIは、人間にとって本当の恐怖は:
・世界を理解しなくなり
・判断を放棄し
・意味や責任を他者(機械)に預けること
つまり、
人間が人間であることをやめてしまう恐怖

である、と喝破している。高市氏の与党に投票することは、政策論議や裏金や旧統一教会との薄汚い関係などを一切合切棚上げにした「人間が人間であることをやめてしま」い、彼女にすべてを「丸投げ」し信任することと同じなのだ。

今度の選挙で、支持する政党がない、という人は多いだろう。だが選挙は、支持する対象に投票することだけではない。支持する政党や候補者がなく、大悪、中悪、小悪ばかりだったとしても、中悪、小悪に投票することができる。
現在の日本の問題は、内政・外交ひっくるめて将来の日本をどうするか政治の場できちんとした議論がなされていないことである。当然議論すべきテーマがないがしろにされ、戦後民主主義の看板の下で、既得権益の防衛・分取りや、相続や縁故による議員職の争奪、社会の支配システム維持のための地位争いに終始してきた結果、とめどない政治の劣化がおきてしまったことだ。

2月8日の投票日には、未来を閉ざす大悪である内向きポピュリズムと排外主義に「NO」をつきつける、「ストップ タカイチ」の投票行動が求められているのではないか。

野口壽一