Why Starmer decided the time was right to recognise a Palestinian state

(WAJ: 日本政府の岩屋外相は「パレスチナ国家承認をしたからと言ってイスラエルが停戦に応じるとはかぎらない」と他人事のコメントを発し(21日のNHK日曜討論)日本が国家承認しない言い訳をした。アメリカがOKしないから、というのが本音だろうに、見え透いたウソを平気でつくから国民の信頼を失うのだということをそろそろ気づいてもよさそうなものだが。)

 

ハリー・ファーリー(BBC政治担当記者)
ベッキー・モートン(BBC政治記者)
2025年9月21日

 

イギリスのキア・スターマー首相は、ガザの人道状況の悪化と国内外からの圧力を受け、9月の国連総会に合わせてパレスチナ国家を承認する方針を発表した。歴代英国政府は「最大の効果を発揮できるタイミングで和平プロセスの一環として承認する」と述べてきたが、今回スターマー氏はその時が到来したと判断した。

決定は労働党内部の要望に強く支えられている。220人を超える議員が署名して承認を要求し、特にイスラム教徒人口や学生の多い選挙区の議員は大きな圧力を受けていた。党内の一部閣僚も承認を推進し、議席を失う危険に直面していた者もいた。労働党は2014年にも下院で承認を求める動議を支持しており、今回の決断は公約の実現でもある。同時に、スターマー氏が選挙前に掲げた「政治的ジェスチャーからの脱却」との姿勢との矛盾も指摘される。

国際的要因も大きい。英国は、フランスが承認を表明した直後、G7諸国の中で最初に承認に踏み切った。続いてオーストラリアやカナダも同調している。ダウニング街の当局者は、これが中東情勢を変える可能性があると主張し、アラブ諸国がハマスに武装解除を求めた声明を例に挙げた。

しかし批判も多い。保守党は、承認はイスラエル人人質の解放や停戦につながらず、単なる政治的ポーズだと非難。条件がイスラエルにのみ課され、ハマスには課されなかったことも問題視された。イスラエルのネタニヤフ首相は「ハマスのテロを奨励する」と批判し、英国の首席ラビも決定の停止を求めた。米国との摩擦も生じ、トランプ大統領は訪英中にスターマー氏と意見の相違を公然と認めた。

労働党内部でも評価は割れる。ガザ政策をめぐり、スターマー氏は2023年のインタビューでイスラエルの封鎖を擁護したと受け止められた発言以来、イスラム系有権者の不信を招いた。停戦支持をめぐって議員辞任や党内反発が相次ぎ、2024年2月にようやく「即時停戦」支持に転じた経緯がある。今回の承認はこうした批判を和らげる狙いもあるが、党内左派からは「さらなる制裁や武器禁輸が必要」との声が絶えない。他方で、外交カードを使い果たしただけで和平促進には逆効果だとする懸念も強い。

さらに、一部議員は「政府が英国旗よりパレスチナ国旗を重視している」との印象を与え、選挙に逆効果になりかねないと指摘する。支持基盤の一部は満足させても、中間層や他の選挙区では響かない可能性が高い。

結局のところ、今回の承認方針は労働党の歴史的公約を実現する大きな外交転換であり、国内政治・選挙区事情・国際的圧力の複合的な産物である。しかし、それがガザの現地状況を改善するかは不透明で、むしろイスラエルを和平プロセスから遠ざける可能性さえある。労働党にとっては党大会を乗り切る一助にはなりうるが、選挙全体への決定的影響は少なく、真の評価は今後の中東情勢と選挙時の状況次第となる。

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