Afghanistan, a Country Teetering on the Edge of Collapse under Taliban’s Reign of Brutality – The World a Silent Witness
ターリーバーンの蛮行で崩壊寸前のアフガニスタンー世界は沈黙する目撃者
ファテー・サミ (Fateh Sami)
2023年9月24日 (24 September 2023)
(WAJ:本稿は前号の「アフガニスタン陥落から2年後の経済危機: 「イスラム首長国」の勝利と敗北」の続編である。前半部分は前回の記事と重複があるが、復習のつもりで読んでいただきたい。ターリバーンの強硬姿勢の背景には、強行姿勢を取らなければ内外の体制を維持できない事情があり、逆にその強硬姿勢が彼ら自身を拘束し、山積する難問の解決を難しくする原因ともなっている。現在の姿勢をあらためなければ、国民だけでなく、ターリバーン自身も苦境に陥っていくだろう。)
2021年8月15日にアフガニスタンの腐敗した共和制が崩壊し、アメリカとパキスタンによってターリバーンが政権を握った後、アフガニスタンでは深刻な経済危機が発生した。一部のアナリストによれば、それまでアフガニスタンの予算の約75%を占めていた国際援助のかなりの部分が突然打ち切られたことで、危機はさらに悪化したという。私の考えでは、それは真実ではない。アフガニスタン経済は、国際援助と外国や国内の麻薬マフィアによる麻薬取引だけで成り立っていたわけではない。メディアによって発表されたデータによれば、援助の即時停止によって2021年の国内総生産(GDP)は20.7%激減し、その結果、雇用が広範囲に失われ、経済的苦境が著しく高まった。さらに、アフガニスタンの約70億ドルの資金が外国の銀行で凍結され、多くの銀行が顧客の要求に応えることができなくなった。その結果、雇用と国際支援の喪失は貧困の急増を招き、アフガニスタンの危機は政治的なものから経済的な大惨事へと事実上変貌した。
ターリバーンに権力が移行して以来、アフガニスタンでは貧困、失業、経済悪化がかつてないレベルで発生し、人道的状況は多くの国際救援組織にとって最大の関心事となっている。英国イスラーム救援機構(訳注:英国バーミンガムに本部を置くNGOで、イスラーム世界における緊急支援とその社会発展を目指す慈善団体)は最近、混乱したターリバーン支配下の経済崩壊の直接的な結果として、アフガン国民の40%が悲惨な食料貧困に直面していると報告した。さらにショックなことに、アフガニスタンの人口のおよそ4分の3に当たる2900万人以上の人々が、国際機関からの人道援助を切実に必要としているという統計もある。アフガニスタンは、脆弱な経済、干ばつ、気候変動によって悪化した深刻な貧困と闘っている。非道なターリバーンの支配下で、おびただしい数の人びとが生計手段を失っている。ターリバーンの誤った管理と全体主義的な政権のもとで、このような状況の激化が出現している。さらに悪いことに、国際援助は貧しい人々に公平に分配されていない。援助は、ターリバーン民兵による行政機構に吸い取られている。
2023年4月までに、国連開発計画(UNDP)は、アフガニスタンの経済生産が20.7%減少し続けると報告している。不幸なことに、人口の85%が貧困ライン以下で生活しており、なんと95%の国民が食糧不安に直面する危険にさらされていることが明らかになった。さらに憂慮すべきことに、ユニセフの報告によると、アフガニスタンの子どもたち約1600万人が、基本的な食糧や医療を受けられないでいる。この経済危機は、強制的な児童婚、経済的・性的搾取、児童売買、児童労働、密輸、危険な密入国事業など、恐ろしい結果を生んでいる。アフガニスタンにターリバーンが復活して以来、アフガン国民の苦境や国の悲惨な社会経済的状況に対する国際的な関心も減少している。
皮肉なことに、ターリバーンによる抑圧的な政策は、経済的困難をさらに悪化させている。2023年2月、国連特別報告者リチャード・ベントは、アフガニスタンの人権状況を評価する中で、恐怖と抑圧的な手段を特徴とするターリバーンの統治に注目し、特に女性の苦境に焦点を当てた。これは、カーブル陥落とアフガニスタン占領後の2年間、ターリバーンがその権力を強固にし、過激派イデオロギーを強要してきたことを強調している。
<参考サイト>
https://www.ohchr.org/en/stories/2023/07/experts-taliban-treatment-women-may-be-gender-apartheid
しかし、パキスタンのISI(軍統合情報局)のような特定の親ターリバーン組織は、ターリバーンの経済的、社会的、教育的不始末に目をつぶることを選んだ。彼らは、現在進行中の貧困増大のリスクについて、際立って沈黙を守ることを選んだのだ。アフガニスタン経済は現在、国民のかなりの部分が貧困と飢餓に苦しみ、外国からの援助に依存したまま、微妙なバランスを保っている。さらに、新たな諸問題が生起して、よりいっそうの経済衰退への明白な脅威となっている。ターリバーンが政権を奪取してからの数カ月間の懸念されていた急激な経済崩壊の可能性は、現在も克服されずに持続している。援助の削減幅、段階的な削減、不必要な制限の厳格な実施、農民への増税などである。ターリバーンのジェンダー規制が強化されるのか、据え置かれるのか、緩和されるのかはまだわからない。
今年9月だけで、61人が「未認定の武装勢力」の名の下にターリバーンによって殺害された。ターリバーンは多くの元政府軍人の殺害に関与している。例えば、コルフガン地区アグブラグ村のムラヴィ・ファゼル・ミンアラ(Moulavi Fazel Min-Allah)、別名ジャムジュク(Jamjuq)という名のターリバーンメンバーは、元アフガン軍人を殺害し、殺害された軍人の妻と12歳の娘に性的関係を強要した。別の例では、2023年9月20日、ウルズガン・カス県で、公共の場を通りかかったハザラ人親子2人がターリバーンの男たちに「逮捕」され、切りつけられた。したがって、ターリバーンによる占領後のアフガニスタンの状況は、深い憂慮に満ちたものであり、国際社会からの早急な注意が必要である。この州ではこれまでに17人のハザラ人が殺害されている。メディアに流れる殺害の映像は、衝撃的なほど恐ろしい。そして、ターリバーンのメンバーであるモハメド・アクバリ(Mohammed Akbari)は、このような殺害をイスラームの大義のためのジハード行為だと冷淡に擁護している。悲劇的なことに、国際社会は無言の観客であり続けている。
しかし、全員が沈黙の証人というわけではない。アフガニスタンの元外交官であるアーメド・サイーディ(Ahmed Saeedi)氏は、「第78回国連総会は、アフガニスタンが主権国家として代表することなく閉幕しました。私自身の限界だけでなく、祖国に課せられた限界にも心が痛みます。遺憾ながら、私にできることは他にほとんどありませんでした」と述べた。
サイーディ氏は続けて、「私は世界の指導者の演説に耳を傾けていますが、私の義務は厳しい現実を示すことです。アフガン国民は、わが国が現在の世界情勢の中でまさに瀬戸際に立たされているということを認識させなければなりません。現在の雰囲気のもとでは、アフガニスタンの窮状に共感したり、注意を求める声に耳を傾けようとする人はほとんどいないようです。」彼はまた、アフガニスタン国内で起きている複雑な地政学的ゲームの持続についても強調した。これについては次回の記事で説明する。
同氏はさらに、米国が域内における中国とロシアの影響力拡大に対抗するため、カタールやトルコなどを舞台に立たせる戦略に出ていると指摘した。米国はシルクロード構想の実現と、中国によるアフガニスタンの鉱物資源への多額の投資を阻止するために積極的に取り組んでいる。さらに、インドはカシミールにおけるジハード戦士たちの活動に現状悩ませられており、パキスタンにおけるターリバーンの存在を懸念している。一方、サウジアラビアはイエメン紛争への関与に気を取られつつ、アフガニスタンの一部地域におけるイランの影響力拡大を警戒している。
サイーディ氏は、ISIS(訳注:イラクとシリアで発生したイスラーム過激派組織。ISIL や IS、ダーイシュ、イスラム国などと呼ばれることもある)がアフガニスタン北部で重要な勢力に変貌する可能性について、アフガニスタンの中央アジア近隣諸国の間に蔓延する恐怖を強調した。彼は、ISISホラーサーン(訳注:近古代にイラン東部とアフガニスタン北西部を含む地域の名称)に同調する数千人の武装勢力が現在パミールとヒンドゥークシュ地方に駐留していると指摘した。
競合する国々の複雑に絡み合った利害のもと、アフガニスタンに不確実で困難な未来が待ち受けていることが深く憂慮される。パキスタン・ターリバーンによる最近の攻撃は、パキスタンとアフガニスタンの両国で戦争が続く可能性を示しており、アフガン国民はこの長期化する紛争の矢面に悲惨な形で立たされている。
女性や少女に対する過酷な扱いだけでなく、ターリバーンの弾圧は様々な民族にも及び、彼らを抑圧の対象としている。ターリバーンの迫害には、アフガニスタンの旧共和国政府で軍人と民間人の両方の立場にあった人々に対する組織的なキャンペーンも含まれる。特に、このキャンペーンは北部地域、特にタジク民族に属する数百人の若者を標的にしており、パンジシール州からの代表者がその多くを占めている。これらの人々はターリバーンの刑務所に不当に収監され、非人道的な拷問や長期投獄に耐えている。
上記の事実はアフガニスタンからの目撃証言に基づいている。さらに様々な報道機関、国際機関、国連、アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、ICRC、WFP、WHO、UNDP、ユニセフの報告書を参照しており、この記事で取り上げた事柄の信憑性を理解する上で役に立つだろう。