With Surge in Attacks, Militants Begin New Era of Bloodshed in Pakistan
(WAJ: アフガニスタンでターリバーンが再度デファクトオーソリティーとなって、アフガニスタンを拠点とする兄弟組織であるパキスタンのターリバーンも力を増大させている。アメリカ軍が残していった武器類で武装し、戦闘力も飛躍的に増大させた。それによるパキスタン国内での武装反政府活動が活発化してきた。また、これまでターリバーンと協働してきたISなどは一部がパキスタンに追い出されて住民らを恐喝して資金を手にする動きにでている。そのような新しい、隠された動向がこの記事では明らかにされている。貴重な報告である。パキスタン国内で増大するテロ攻撃や武力衝突については「トピックス」欄で可能な限りフォローしている。参考にしてほしい。)
By Christina Goldbaum and Zia ur-Rehman
Oct. 3, 2023, 12:01 a.m. ET
クリスティーナ・ゴールドバウム、ジア・ウル・レーマン 記者
2023年10月3日12時1分(米国東部時間)
それは、過激派による暴力の暗黒の日々がパキスタンに戻ってきたことを思い出させる血なまぐさい出来事だった。先週、パキスタン南西部の宗教祭で自爆攻撃があり、約60人が死亡した。
パキスタンはこの10年近く、このような致命的な攻撃の連鎖を断ち切ったかに見えた。2014年、パキスタンの治安部隊はアフガニスタン近郊の部族地域で大規模な軍事作戦を実施し、武装勢力に国境を越えさせ、荒れ果てた辺境地域に比較的平和を取り戻した。
しかし、2021年8月にターリバーンが隣国アフガニスタンで政権を掌握して以来、アフガニスタン国内に安全な避難場所を提供されたグループもあったが、弾圧を受け始めて隣国パキスタンに戦闘員を押し出すグループもあって、暴力が再燃している。パキスタンの首都イスラマバードに本部を置き、過激派の暴力を監視しているパキスタン平和研究所によれば、ターリバーンが政権を握った最初の1年間で、パキスタンにおけるテロ攻撃の件数は前年比で約50%増加した。
今年も攻撃のペースは上がり続けている。テロそのものも大胆になり、テロにおびえる国民の恐怖をよみがえらせている。1月には、厳重に警備されたモスクで自爆テロが発生し、100人以上が死亡した。その1ヵ月後、武装勢力はパキスタン最大の都市カラチの中心部を襲い、警察本部を数時間にわたって包囲した。7月にも政治集会で自爆テロが発生し、50人以上が死亡した。
最新の大虐殺では、金曜日(訳注:9月29日)に自爆テロ犯が宗教的な行列で爆発を起こし、通りに殺戮を残した。どのグループもまだ犯行声明を出していない。
<参考記事>
https://edition.cnn.com/2023/09/29/asia/pakistan-balochistan-blast-intl-hnk/index.html
犠牲者の遺族を見舞ったパキスタン陸軍のサイード・アシム・ムニール陸軍大将は、武装集団に対する全国的な軍事作戦を実施するという政府の決意を改めて表明した。
「軍隊、情報機関、法執行機関は、テロリズムの脅威が国から根絶されるまで、休むことはありません」とムニール将軍は語った。
この暴力は、すでに米国の外国テロ組織リストに掲載されているグループが世界で最も集中している場所のひとつであるこの地域が、国際テロの温床になりつつあるという懸念を煽っている。また、パキスタン政府とターリバーン関係者の間の緊張を高めている。ターリバーン関係者は、盟友であるパキスタン・ターリバーン(別名T.T.P.)などの過激派グループへの避難所の提供を否定している。
これまでのところ、パキスタン軍が過激派を駆逐するために重要な行動を起こした形跡はほとんどない。パキスタンはもはや、10年前に過激派を駆逐するのに役立ったアメリカの軍事支援を当てにすることはできず、すでに政治的・経済的な危機が定着しているため、この国に暴力を止める力はほとんどないと多くの人が考えている。
ワシントンに本部を置くシンクタンク、クインシー・インスティテュートの中東プログラム副部長、アダム・ワインスタインは、「パキスタン政府の軍事的努力は、主に政治的分裂と財政的制約によって妨げられています」と述べた。また「T.T.P.に対する本格的なキャンペーンを維持できるかどうかは疑問です」と付言した。
パキスタンのターリバーンは、アフガニスタンのターリバーンとイデオロギー的に双子であり、パキスタンの国境地帯に厳格なイスラーム支配を押し付けようとしており、過去2年間のほとんどの攻撃の背後にいる。2007年に設立されたこのグループ(訳注:パキスタンのターリバーンのこと。設立は同年12月)は、2014年に軍が弾圧するまで、国境沿いの部族地域の大部分を支配していた。
アフガニスタンでターリバーンが政権を取り戻したことで、このグループは復活した。何百人ものパキスタンのターリバーン戦闘員がアフガニスタンの刑務所から解放された。パキスタン当局によれば、彼らは米国が支援するアフガン政府にかつて提供されたアメリカの軍装品で武装した。また同グループの現指導者であるムフティ・ヌール・ワリ・メスードがその兵員を増強しようと努力した結果、アル=カーイダに関連する組織の勧誘に成功し、反シーア派グループの戦闘員やアフガニスタンでターリバーンの反乱に加わっていたパキスタン人の各種武装勢力も加わった。
ここ数カ月、パキスタンのターリバーンは、国境沿いの部族地域で、主にパキスタンの治安部隊を標的に執拗な攻撃を続けている。イスラマバードに本部を置くシンクタンク、安全保障問題研究センターの報告書によれば、この衝突によって治安部隊は過去8年間で最悪の死傷者を出している。
警察官や兵士の多くは、反乱軍と戦うための装備が不十分だと感じているという。
パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州の34歳の警察官ムハンマドは、武装した反乱軍から山岳地帯を守ることは絶望的だと語った。脚に残る痛みが、その危険を思い起こさせる。4月の定期夜間パトロール中、パキスタン・ターリバーンと思われる武装勢力が彼と同僚に発砲し、彼は負傷した。
「攻撃者たちは私たちには見えなかったが、彼らは私たちをはっきりと見ていた――おそらく暗視ゴーグルを使っていたのだろう」とムハンマドは語った。彼は報復を恐れ、報道機関と話す権限がなかったため、ファーストネームのみを明かすよう求めた。
パキスタン当局者はターリバーン政権に対し、パキスタン人武装勢力の抑制を繰り返し要請してきた。ところがその要請に応える代わりに、アフガニスタンのターリバーン当局者らは、パキスタン当局者こそが武装勢力の要求に対応するよう提案し、交渉の仲介を申し出た。こうして、ここ数カ月間、パキスタン国内での不満が沸騰しているようだ。先週になって当局は、パキスタンに不法滞在している最大110万人のアフガニスタン人を国外追放すると発表した。この動きはアフガニスタンのターリバーン政権に対する報復と多くの人がみなしている。
危機の深刻化に伴い、パキスタンはまた、イスラーム国ホラーサーン(ISIS-K)として知られる同地域のイスラーム国関連組織による新たな暴力の波にも直面している。パキスタンのターリバーンとは異なり、イスラーム国はアフガニスタンのターリバーンが真のイスラーム法を施行していないと言って敵対しており、ターリバーン治安部隊による残忍な弾圧に直面している。
アメリカ当局者らによると、ターリバーンは年初以来、イスラーム国の指導者8人を殺害した。しかし、アナリストらによると、ターリバーンの攻撃により一部のISIS戦闘員がパキスタンに押し込まれ、そこで攻撃が強化されているという。
部族地域に住む一般のパキスタン人にとって、過激派による暴力の復活は、反政府勢力が地域でほぼ自由に活動し、住民の日常生活にくすぶる恐怖感を植え付けていた頃への壊滅的な後戻りのように感じられている。ここ数カ月、武装勢力は恐喝作戦を再開し、実業家や地元指導者に対して、家族が標的にされたくなければ巨額の金銭を出せと脅している。
4月、安全上の理由から姓のみを使用するよう求めたコメ貿易業者のアリ氏に、1本の脅迫電話がかかってきた。彼によるとアフガニスタンの電話番号から発信されたものだと言う。電話の声は、8500ドルを払え、さもなければ自宅が攻撃されるという最後通牒だった。
アリ氏は当初、地元の警察署に通報し、脅迫を一蹴した。その後、小さな爆発が起こり、彼の家の玄関が破壊された。彼はその番号に折り返し電話し、最終的に約 2200 ドルを恐喝者に支払った。
「私の家族は夜中に自宅で起きた爆発で眠りから揺り起こされ、トラウマを残されました」とアリ氏は語った。 「あの恐ろしい瞬間を忘れることはできません。」
このエピソード以降、過激派が近所や市場にスパイを配置して裕福なターゲットを特定しているのではないかと不安になった、と彼は付け加えた。警察の反応は乏しかった。担当者は彼に防犯カメラを設置するよう勧め、行動を自粛するようアドバイスした。それ以上、できることは何もない、と警察は彼に言った。
急増する暴力に対応して部族地域では、荷物をまとめて家を離れることを選択した人々もいる。武装勢力が再びその地域を制圧すれば命が危険なのだ。
軍の車列を狙ったとみられる攻撃によって労働者を乗せたトラックが爆破された事件を受けて(訳注:8月20日、北ワジリスタンで11人の労働者が犠牲となった)、カイバル・パクトゥンクワ州北ワジリスタン地区の建設請負業者サイード・ワジルは、イスラマバードに逃げ出した。彼は現在の暴力の方が以前と比べてさらに恐ろしいと述べた。その理由は武装勢力が影で活動しているためで、危険性も被害妄想もこれまで以上に膨れ上がっていると言う。
<参考記事>
https://www.voanews.com/a/clashes-with-militants-near-afghan-border-kill-6-pakistani-soldiers/7235844.html
「彼らは現在、地下で活動し、一撃離脱戦法を採用しています」とワジル氏は語った。 「道端の爆発物に遭遇したり、銃撃や自爆テロに巻き込まれるのではないかという恐怖が常にあるのです。」
クリスティーナ・ゴールドバウムはニューヨークタイムズのアフガニスタン・パキスタン支局長である。