World and Afghanistan: The World’s Moral Conscience Has Not Died

(WAJ: 本論では、欧州議会におけるアフガニスタン問題に関する議論を通して、ターリバーンが国際的承認を勝ち得ることができない背景と、ターリバーンに反対する勢力がいかにしたらアフガニスタン国内で存在感を高めることができるかの興味深い考察が提示されている。ロシアのウクライナ侵略戦争や、ガザ-イスラエル戦争などで忘れられがちなアフガニスタン情勢の今後を考えるうえで参考になる。)

Hasht-E Subh 7 October 2023
ハシュテ・スブ 主張 2023年10月7日

欧州議会(訳注:10月5日裁決)では、最近さまざまな政党やその代表者がアフガニスタンの現状について包括的な議論を行った。彼らは総じて、ターリバーンの圧政下でアフガニスタンに蔓延している悲惨な状況を強調した。議論は、恣意的逮捕、カンガルー法廷(訳注:大英帝国が支配していたオーストラリアでカンガルーがぴょんぴょんジャンプするようにとんとん拍子で判決にいたっていた裁判)、追跡、処刑など、アフガニスタンで進行中の悲劇を詳述する信頼できる文書化された報告書をもとに議論された。特に強調されたのは、アフガニスタン女性に対する非人道的な扱いと、性別に基づいて何百万人もの国民に対する基本的権利(今日世界のすべての人間に認められた固有の権利)を否定していることである。欧州議会はまた、民族的、宗教的、イデオロギー的偏見など、ターリバーンによって強制された他の形態の差別も非難した。コンセンサスは全会一致で、そのような特徴を示す政権は認められず、このような事態に直面している世界は沈黙してはならない、というものだった。この会合では、アフガニスタンで進行中の悲劇に対する各国の行政機関の無関心を明確に批判した。

<参考サイト>
https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/TA-9-2023-0349_EN.html

 

欧州議会のこのセッションでは、世界の行く末を左右する困難な政治情勢と世界的な混乱にも関わらず、政治領域の賢明な人々がアフガニスタンの窮状を認識し続けていることを実証した。さらに重要なことは、彼らがこの危機に直面して沈黙を拒否し、蔓延している現状を変えるための積極的な措置を主張していることだ。それは世界の現実の奥深い複雑さを強調している。つまり行政機関の方針だけに基づいて単純化しすぎるべきではないし、それら機関のポリシーのみに基づいて判断し結論してはならないということである。

ターリバーンとその支持者は、時間が経てばアフガン情勢が正常化し、世界から受け入れられるようになるとの希望を抱いていた。つまり彼らの支配をすべての国が黙認するだろうと予想していた。ターリバーン政権の常態化によって官民を問わないあらゆる形態の抵抗を潜在的に抑止できると考え、抑圧に抗う国民を完敗させるはずだった。ターリバーンの支持者らはアフガン問題に対する世界的な無関心を望み、国内における犯罪が発覚せずターリバーンの支配が長引くというシナリオを思い描いていた。

しかし、状況はそれほど単純ではない。抑圧的な政権に対する人々の闘いに光を当てる過去数世紀の歴史的経験は、今日の世界でも簡単に無視できない。一方で、情報技術の発展は、臭いものにふたをする行為を防止する。いかなる抑圧的な政権もこのような歴史的変化に抗えない。その一方で、現代世界の各国利害は複雑に絡み合っているため、出来事を明確に位置づけできなくなった。世界のどの地域でも、その性質に関係なく、あらゆる出来事が他の多くの人々の運命に多大な影響を与える可能性がある。そのため、アフガニスタンにおける進展が、たとえ同国がもはや世界政治の主要な懸案事項ではなくなったとしても、域内でも世界中でも他国に影響を与えることは避けられない。したがって、各国はアフガニスタンを自国の利害得失計算から除外することはできない。

さらに、民主的で自由な国家では、民間機関と非政府組織が大きな影響力を行使する。これらの国の政府はその正当性の多くをそれら機関や組織の支持から得ているため、政治家はそれらの存在を無視するわけにはいかない。西側諸国の民間機関は、アフガニスタンの状況、特に女性と少数派の扱いに関して深い不満を表明している。その結果、米国を含む西側諸国の政治指導者は、アフガン問題が自国民に対する自らの立場を危険にさらさないように多大な努力を払っている。このことが、アフガニスタンの合法的かつ正当な政府としてターリバーンを承認することを彼らがためらう理由の説明になる。彼らの議論は主に国の将来の形成とターリバーン後の体制の確立に焦点を当てている。

そのうえ西側のライバルたる国々は、ターリバーンと連携する傾向があるにも関わらず、その政策が国際的規範から著しく逸脱していることは熟知している。ターリバーンを承認すればそうした国々を国際システムとの厳しい対立に陥れ、制裁やその他の嫌がらせを被る可能性がある。そのため中国もロシアもパキスタンもイランもターリバーン政権をあえて承認しようとはしない。

その厳しさにもかかわらず、現在のアフガン情勢は、絶望と完全な敗北のどん底に陥らないための抵抗の機会を国民に与えている。内外の変化の加速は、非ターリバーン勢力の行動にかかっている。市民的抗議活動の堅固さ、ターリバーンに反対する政治・軍事組織間の団結、さまざまなギャップと対立の調整、副次的な紛争の解決、些末な問題での資源浪費を防止することなどにより、集合的かつ迅速に、変革のための基盤を作り出すことができる。

歴史的にみて、アフガン国内の出来事は、他の多くの国と同様、域内および世界の発展と複雑に結びついている。したがって、内部要因と外部要因の間の微妙な調整が不可欠だ。アフガン国民だけでは、特にターリバーンのような容赦のない抑圧的な政権に直面していると、正しいと思われる方程式をそのまま適用することはできない。喫緊の課題はターリバーンに抗い、力で行動を変えさせるか、異なる政治構造を選択することだ。権力機構が強力な外国勢力と相互作用してきたことは歴史的事実だが、このことで部外者がすべてを決定していると誤解してはならない。外国からの支援は複雑な方程式の一部であり、国内の力と調和することで重要性を増す。

ターリバーンに対する抵抗を表明するアフマド・マスード(訳注:国民的英雄であるアフマド・シャー・マスードの子息で、国民抵抗戦線(NRF)のリーダー)の欧州議会に向けての演説(訳注:冒頭のアフガン問題に対する欧州議会に合わせて、10月4日欧州保守改革グループ(ECR)がアフマドを会派の集会に招待した)は、民主主義社会におけるターリバーンのロビイストの失敗を象徴している。それは、ターリバーン政権下のアフガニスタンは世界に受け入れられず、ターリバーン後のアフガニスタンの将来を構想しなければならないという強力なメッセージを送っている。ターリバーン後のアフガニスタンは、民族、政治、宗教の違いを受け入れながら、国内の多様性と多元性を反映すべきである。国際フォーラムに非ターリバーン勢力が招かれ、アフガニスタンのさまざまな立場の代表として機能するなら、重要な意味を持つことになる。こうした機会の積み重ねは、アフガン人が共通の願いのもとに団結する力を持つことを世界に示している。

<参考サイト>
https://ecrgroup.eu/article/ecr_group_to_host_ahmad_massoud_at_extraordinary_meeting

 

アフガニスタンの政治指導者や市民活動家は、国の内外を問わず、自らの過去を振り返り、新たなアプローチを採用する必要がある。彼らは国民の信頼を獲得し、国際社会と建設的な対話を行う必要がある。これを達成するには、意見の対立や派閥を乗り越え、将来に向けた統一戦略を提唱する必要がある。現状からの国家の解放は間違いなく困難な課題だが、不可能ではない。世界の道徳的良心は今も生き続けており、アフガニスタンの人々の人権追求を支援する基盤となっている。これらの機会を効果的に取り入れ、活用する必要がある。

原文(英語)を読む
https://8am.media/eng/2023/10/07/world-and-afghanistan-the-worlds-moral-conscience-has-not-died/

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