Afghanistan’s Wealth and Geopolitical Significance: Drivers of Ongoing Intervention
ファテー・サミ (Fateh Sami)
2023年10月2日 (2 October 2023)
(WAJ:『ウエッブ・アフガン』は、2020年2月にアメリカとターリバーンの間で「ドーハ合意」が結ばれたことにより、アフガニスタンにおける内戦が終了し、国づくりの局面に移行する期待のもとに開設の準備にとりかかった。開設にあたっての思いは<視点~001>および「編集室から」に書いたとおり、アフガニスタンの再出発に寄り添うためであった。ファテー・サミ氏の第一寄稿も、新生アフガニスタンの国家体制を問う「いまこそ連邦制を真剣に!」であった。ところがその後、2021年8月のターリバーン再来以降のアフガン国内の状況は混乱の2年間であった。この間、ファテー・サミ氏は本サイトのアフガン人主筆として、本稿「アフガニスタンの富と地政学上の重要性: 現在進行中の外国からの介入の原動力」を含む36本の論説やインタビューをはじめ各ページでの発言により鋭い分析により、アフガニスタンの実情を明らかにしてきた。そしていま、アフガニスタンの20年を振り返り、新しい時代をつくるには何が必要なのかの大事業に臨もうとしている。今回の論考はその序論である。氏の健筆に期待したい。なおサミ氏がこの間、本サイトに執筆した論説のすべては「ファテー・サミ執筆記事一覧」で読むことができる。通読すれば氏の鋭く的確な慧眼ぶりに驚かれることだろう。)
アフガニスタンにおける戦略ゲームの複雑な絡み合いと外国プレイヤーの既得権益の関係は、なかなか理解しにくいものがある。例えば、パキスタンは一貫してより多くの対外援助や補助金を得ようとしてきた。この目的のために、彼らはデオバンド派宗教学校=アフガニスタンのテログループを利用した。(訳注:南アジア最大のマドラサ(イスラーム宗教学校)のネットワークを持ち、南アジアのイスラーム解釈において現在最大の影響力を誇るウラマー(イスラーム学者)の流派の名前 by Google)
他方で、自国の利益を動機として、ライバルや地政学上の敵を一時的に支援する国もある。その顕著な例がイランだ。また米国政府の場合は、ターリバーンに対するアプローチでは驚くべき方向転換をかつて行った(訳注:2020年2月のドーハ合意)。それはしかし中央アジアにおけるターリバーンの立場を強化した。この戦略の転換は、図らずも共和国政府の崩壊と、その後のアフガニスタンの政治統治の崩壊を加速させた。
信頼できる報道によるとイランはターリバーンに軍事援助を続けている。現在のシナリオでは、このことの認識が重要である。イランの目的はワシントンとの戦いを継続することである。アフガニスタンの近隣諸国には、特にターリバーンの復活後は、国境沿いの安定を維持するという共通の利益がある。
例えばイランは、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンを経由して中国と接続する鉄道の建設に積極的に参加しようとしている。パキスタンとアフガニスタンの関係は当初から友好的ではなかったが、アシュラフ・ガニーが逃亡するまでは良好な関係が続いていた。
<参考記事>
https://www.railwaypro.com/wp/five-asian-countries-implement-new-railway-corridor/
パキスタンは歴史的に、南アジアと中東における米国の軍事的・政治的パートナーであった。しかし、そのユニークな特徴から、パキスタンは現在の状況において内政上の課題に直面している。中央政府の統制の及ばない辺境の山岳地帯に武装した宗教原理主義グループが存在することは、大きな難題となっている。とはいえ、アフガニスタンに隣接する動かしえない国境を持つパキスタンは、アフガニスタン問題への干渉を続けている。
最近の出来事がその例として挙げられる。2日前の出来事を要約すると、南西部バルチスタン州のマストゥンで宗教集会中に自爆テロが発生し、数十人が死亡、多数の負傷者が出た後、パキスタンは動揺している。別の攻撃では、北西部カイバル・パクトゥンクワ州ハングのモスクで少なくとも52人が死亡した。これまでのところ、どの武装グループも犯行声明を出していない(原注:11)。これは、アフガニスタンでターリバーンを筆頭とする過激派グループによって燃え上がった炎が、パキスタンとこれまでの支持者の手に負えなくなっていることを示している。この事件は、パキスタンがアフガニスタンに対して長年行ってきたことのブーメラン現象といえる。
<参考記事>
https://www.voanews.com/a/report-surge-in-terrorism-kills-more-than-700-pakistanis/7291609.html
パキスタンは、この地域のもうひとつのイスラム国であるトルコと友好的な関係を保ち、交流している。そのため、ターリバーンとの直接対決のリスクは軽減されている。パキスタンはターリバーンの庇護者と見られがちだが、直接的にも間接的にも、米国の「汚い戦争」における重要な同盟国として米国を支援している。アフガニスタンの領土を支配することで、パキスタンは中国やイランを監視し、必要であれば彼らの貿易ルートや開発プロジェクトを妨害することができる。ターリバーンがカーブルを占領する前、中国はアフガニスタンの紛争当事者である政府とターリバーンの和平交渉を公式に支援していた。
しかし2021年半ば(訳注:7月28日)、中国の王毅外相はターリバーンの代表のみを北京に招いて調停協議を行った。これは、中国とターリバーンとの関係が温まったことを示すものだった。カーブル陥落後、北京は慎重ながらも友好姿勢を維持した。ターリバーン指導部は、中国を「主要なパートナー」であり「国際承認への入り口」であると認識している。しかし中国は、ターリバーンの成功がウイグル自治区の『東トルキスタン・イスラム運動』のメンバーに与える影響を懸念している。中国はまた、ワハン回廊を通るような代替ルートの建設など、インフラ・プロジェクトの完成にも熱心だ。中国は、米国と競合する新たな大国として、特に国際的な出来事において、米国の行動や立場と乖離した独自のアプローチを採用している。現時点で判断しうるこの状況は明らかに、テーマを設定し、計画を立て、地政学的地域の将来を形成しているのはワシントンではなく北京であることを示唆している。
<参考記事>
https://www.nytimes.com/2021/07/28/world/asia/china-taliban-afghanistan.html
アフガニスタンには豊富な鉱物資源、石炭埋蔵量、リチウム、ベリリウム、硫黄、大理石、金などの貴重な金属がある。さらに、大量の石油や天然ガスや石膏の埋蔵量も知られている。特筆すべきは、リチウムの重要な埋蔵量が発見されたことであり、アフガニスタンの膨大な鉄と銅の埋蔵量は、これらの金属の世界有数の生産国として位置づけられる可能性がある。
膨大な資源と未開発の潜在力を持つアフガニスタンは、世界の主要国にとって常に標的であり、さまざまな形でアフガニスタン問題への侵略と介入を引き起こしてきた。21世紀の幕開けに起こった世界的に重要な出来事のひとつが、2001年9月11日の悲劇的な事件である。
この事件は、米国と54カ国以上の国々がアフガニスタンへの介入のために連合を組む口実を正当化するきっかけとなった。米国のような超大国は、同盟国とともに、これを現代における世界の権力と富の領域における強力な足場を確保する機会とみなした。
2013年以来、中国の指導部は「一帯一路構想(BRI)」を “世紀のプロジェクト “と謳い、世界の舞台に大きなインパクトを与えてきた。150カ国以上がBRIに参加し、何百もの協定が結ばれている。この構想は、2013年9月と10月にカザフスタンとインドネシアを訪問した中国共産党の習近平総書記によって発表された。その後、中国の李克強首相がアジアとヨーロッパを歴訪した際に推進した。新シルクロードとも呼ばれる中国の「一帯一路構想(BRI)」は、これまでに構想された中で最も野心的なインフラ・プロジェクトのひとつだ。習近平国家主席によって2013年に開始されたこの膨大な開発・投資イニシアチブは、当初、物理的なインフラを通じて東アジアとヨーロッパを結ぶことを目的としていた。
過去10年間で、このプロジェクトはアフリカ、オセアニア、ラテンアメリカにまで拡大し、中国の経済的・政治的影響力を大幅に拡大した。一部のアナリストはBRIを中国の増大するパワーの不穏な拡張と受け止めており、多くのプロジェクトのコスト増が一部の国で反対を集めているが、米国は、BRIが中国主導の地域開発と軍事拡張のためのトロイの木馬として機能しかねないという一部のアジア諸国の懸念を共有している。ジョー・バイデン大統領は、先輩たちの北京の行動に対する懐疑的な姿勢を踏襲しているが、当のワシントンはさらに魅力的な経済ビジョンを、BRIに参加する国々に提示することに血道を上げている。
かつて、中国の「新シルクロード」構想のもとに重要な国際会議が開かれ、世界の数10カ国の代表と指導者が北京で一堂に会した(訳注:2017年5月第1回フォーラムには29カ国、2019年4月には36カ国が参加、第3回は今年10月に開かれる)。欧州の首脳の出席はやや控えめだったが、ロシアのプーチン大統領やトルコのエルドアン大統領などの出席が目立った。中国の包括的な目標は、この構想のもと、アジア、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ古代の貿易ルートを再び復活させることだった。
中国の習近平国家主席は、この会合で次のように述べた。「国家間の相互依存と世界的な脅威が持続するこの時代において、どの国も単独でこれらの世界的な課題に取り組む能力と度量を有していない。遺憾なことに、この中継ルートの接続性と自国の利益への潜在的な影響に関する西側の懸念が、アフガニスタン北部、現代のイラン、そしてシルクロード沿いの他の国々における不安定化の一因となっている」
<参考記事>
http://tl.china-embassy.gov.cn/eng/xwdt/201905/t20190507_1140865.htm
https://www.silkroadbriefing.com/news/2023/05/29/afghanistan-accepted-into-chinas-belt-road-initiative/
「アフガニスタン」というキーワードで検索をかけると、悲惨な軍事的事件が氾濫している。国連が発表した報告書によれば、2021年のアフガニスタンは世界各国の中で最下位であり、厳しい現実を物語っている。そこで疑問が生じる。 近年、どのような一連の行動がアフガニスタンの現在の苦境を招いたのか? この問いに対する答えは、アフガニスタンの波乱に満ちた旅路の始まりとなった20年前の出来事を再考することにあるのかもしれない。2001年9月、ジョージ・ブッシュ大統領は、それまでの数年間における深く憂慮すべき状況(脚注:ターリバーン政府がアル=カーイダを匿い、テロ活動を助長した)を打開する新たな視点を見つけ出した。
その運命の日、ペンタゴンで午前9時、ペンシルベニアで午前10時3分、旅客機による4件の自爆攻撃が発生し、爆発と墜落が起こった。ブッシュ大統領は犯人の身元を明確に主張した。「われわれが綿密にまとめた証拠はすべて、オサマ・ビン・ラーディンの指導の下、アル=カーイダと総称されるテロ組織の集合体を指し示している」、と。
2001年9月11日の作戦を調査する委員会の委員長を務めたフロリダ州のボブ・グラハム元上院議員は、その後包括的な報告書を発表した。この報告書では、このテロ作戦について、その翌年までの経過を説明している。
<参考サイト>
https://www.intelligence.senate.gov/sites/default/files/documents/CRPT-107srpt351-5.pdf
パキスタンがさまざまなテロ組織の避難所となっていることはよく知られている。これらのグループはアラブ諸国から資金援助を受けており、アメリカとその緊密な同盟国によって監督されている。残念なことに、大国が仕組んだこの残酷なゲームの矢面に立たされているのはアフガニスタンの人々である。このような不公正は世界情勢に暗い影を落とし、グローバル・ダイナミクスの複雑さと結果を浮き彫りにしている。
このような複雑なグローバル・ダイナミクスを踏まえ、私は「アフガニスタンの20年」を記録することに着手した。これは、アフガニスタンへの介入の歴史、特に2001年9月11日以降を網羅する広範な年代記である。この試みは、歴史と政治に強い関心を持つ人々を対象としている。「アフガニスタンの20年」は、目立たない出来事が多いアフガニスタンの平和と混乱の複雑さを明らかにするための主要な資料となるだろう。
アフガニスタンでは、世界のどこにでもあるような生活が展開され、出来事が手綱を握り、存在の流れを操り、時には突然それを止めてしまう。このような出来事は、しばしば個人の力ではどうすることもできないが、外部に端を発し、アフガニスタンの国土に浸透しているのだ。
そして、アフガニスタンにおけるターリバーン政権は、アフガニスタン住民の間に広まった不満だけでなく、物議を醸す非合法な政権奪取により、多くの課題を突きつけている。
主な課題には以下のようなものがある。
正当性と国際的孤立: ターリバーンの権力掌握は広く非合法とみなされ、国際社会での孤立を招いた。多くの国や国際機関は、パシュトゥーン人の宗教指導者が支配する政権を承認することを拒否している。この孤立はアフガニスタンに深刻な経済的、外交的影響を及ぼしている。
安全保障上の課題:ターリバーンは、さまざまな反政府武装勢力や民兵が未だ存続してることで安全保障上の課題に直面している。ISISホラーサーン州のようなグループは、国内で攻撃を続けている。さらに、ターリバーンの権力強化の努力は、いくつかの地域で局地的な紛争や抵抗運動を引き起こしている。
抵抗運動: ターリバーンの支配に対抗して、アフガニスタン人の一部は、パンジシール渓谷の民族抵抗戦線(NRF)をはじめとする抵抗運動を形成している。これらのグループは、ターリバーンの権威と支配に対する挑戦となっている。
統治と施策:ターリバーンが基本的な施策を提供し、インフラを維持し、効果的に統治する能力は証明されておらず、1990年代の過酷な支配を記憶している多くのアフガニスタン国民から懐疑的な目を向けられている。
国民の不満: ターリバーンの統治に対する国民の不満や抗議が広がっていることは、彼らのイデオロギーや個人の自由の制限を拒否する国民を統治することの難しさを浮き彫りにしている。
こうしたアフガニスタンの課題の存在およびその対処法については、以下の団体の見解にも注目することが必要である。
報道機関:BBC、ロイター通信、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、アルジャジーラなどの信頼できる国際報道機関がアフガニスタンの動向を定期的に報道している。彼らのウェブサイトやニュースアーカイブは、最新情報を得るための貴重な情報源だ。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ:ヒューマン・ライツ・ウォッチは、アフガニスタンにおける人権侵害や課題に関する報告書や最新情報を発行している。彼らのウェブサイトはターリバーンの支配と人権への影響に関する良い情報源となっている。
アムネスティ・インターナショナル:アムネスティ・インターナショナルはアフガニスタンを含む世界中の人権侵害を監視している。彼らの報告書や出版物はアフガニスタンの状況についての洞察を提供している。
国連:国連は、さまざまな機関やミッションを通じて、アフガニスタンの人道・治安状況に関する最新情報や報告書を提供している。これらの報告は国連の公式ウェブサイトで見ることができる。
シンクタンクや研究機関:International Crisis Group、Carnegie Endowment for International Peace、Centre for Strategic and International Studiesなどの機関は、アフガニスタンの政治的・安全保障的課題に関する分析やレポートを頻繁に発表している。
学術雑誌:国際関係、政治学、中東研究などの学術雑誌には、アフガニスタンに関する記事や分析が頻繁に掲載されている。JSTORや学術データベースは、そのような論文を探すのに適した場所だ。
政府声明: 米国務省やNATOなど、各国政府や国際機関の公式声明や報告書から、アフガニスタンの課題に対する見解を知ることができる。
最後に、本記事で言及された情報は下記の分野での参考文献にもとづいている。
1. アフガニスタンで展開されるグレートゲーム: 地政学的策略と資源の豊かさ。このセクションでは、アフガニスタンにおける複雑な地政学的ダイナミクスが述べられている。
2. パキスタンの役割:パキスタンの対外援助確保の努力や、アフガニスタンのテロリスト集団の利用についての情報は、パキスタンの対外政策に関する様々なニュース記事や報道を通じて参照することができる。
3. イランのターリバーン支援:イランのターリバーン支援とアフガニスタンにおける地政学的利益に関する報道は、さまざまなニュース記事や研究論文で見ることができる。
4. ワシントンのアプローチの変化:アフガニスタンの情勢の変化に対応するワシントンの戦略に関する情報は、報道や米政府の公式声明を通じて参照することができる。
5. 中国の関与:中国のアフガニスタンへの関与、和平交渉への支援、ターリバーンの新疆地域への影響に対する懸念は、さまざまなニュース記事や中国の公式声明から得ることができる。
6. アフガニスタンの豊富な資源: アフガニスタンの鉱物資源、石炭、金属、石油、天然ガスの埋蔵量についての詳細は、地質調査やアメリカの地質調査などの機関の報告書で見ることができる。
7. 9.11の影響: 2001年9月11日の出来事と、それがアフガニスタンへの米国の関与に与えた影響に関する情報は、政府の公式報告書や歴史的記述を参照することができる。
8. 中国の一帯一路構想(BRI):中国のBRIに関する詳細は、中国政府の公式文書や声明、国際機関の報告書から得ることができる。
9. ターリバーン政権の課題:ターリバーン政権の課題に関する情報は、信頼できる報道機関や研究機関の報道や分析で見つけることができる。
10. 報道機関および組織への言及: 報道機関、人権団体、シンクタンク、学術誌、政府声明に関する情報は、それぞれのウェブサイトや出版物を参照することができる。