Herat Security Dialogues: Grasping What We Reject, Ambiguity Surrounds Our Desires

(WAJ: アフガニスタンの現状をどう分析し、どう対応するかの国際会議にさいして発せられたハシュテ・スブのこの主張は極めて示唆に富んでいる。悲惨な政治状況にあるアフガニスタン、と思いがちだが、デファクトオーソリティー(事実上の当局)であるターリバーンは、国内的には日本の自公政権と同じ位置におり、その反対勢力はアフガニスタンの反対勢力と変わらない。つまり、何を目指して反対するのかが明確でなく、反対派どうしが対立し分裂し少数化しているのが現実である。「いま重要なのは、(反対派が)本当に望んでいること、そのために喜んで負担するコストの表明」だとこの主張は述べている。日本国民にもとめられているのも同じではないのか。なお、今年開かれたヘラート安全保障対話についての詳細報告はココをクリック

ハシュテ・スブ(アフガニスタンの独立系メディア)主張
2023年12月1日

タジキスタンの首都ドゥシャンベで開催された「ヘラート安全保障対話」(訳注:2023年11月27日・28日)と題したシンポジウムでは、多様な国の多数の専門家や政策立案者がアフガニスタンの直面している課題と潜在的な解決策についての洞察を共有した。審議中に提起された注目すべき点の中で、サイード・タイエブ・ジャワド大使( Said Tayeb Jawad 訳注:旧政権時の駐ロシア・アフガニスタン大使)は重大な懸念を強調した。同氏は、「アフガン国民は自分たちが何を拒否しているのか明確だが、彼らの願望に関しては不確実性が漂っている」と述べた。本質的には、戦争、専制政治、過激派支配、ターリバーンに対する嫌悪感は満場一致でありほぼ普遍的な立場である。しかし、合意されていないのは、まさにその実現のために努力し戦う理想とする共同体とシステムであり、どのような社会と政治システムを望んでいるのかが不明である点だ。この点はさらに検討されなければならない。なぜなら、包括的な国家的願望に関する合意と一致の欠如がこの国の根本的な問題のひとつであり、その解決策がなければ、この盲目の結び目を解く望みはほとんどないからである。

反対を表明し、望ましくない状況を明らかにすることは、主に否定的な仕事だが、特に否定性、悲観主義、冷笑主義が個人や集団の精神構造に根づいている場合には、それほどのスキルは必要ない。政治の分野では慣例となっているように、政治的派閥に反対し、時には激しく、時には微妙に対立することは、過去半世紀にわたるアフガニスタンの政治活動の極めて重要な側面であった。トゥルキ・アル・ファイサル(訳注:元サウジアラビア情報総局長官)は、アフガニスタンに関する著書の中で、かつてムジャヒディーンの指導者たち(訳注:ターリバーンと対立するジハード勢力)がメッカにいて神の家の中で祈りをささげた様子を語っている。最初、彼らは涙を流し、統一と団結を約束した。しかし、メディナ市(訳注:メッカに次ぐイスラームの第2の聖地)に到着する前に、彼らの対立は激化し、敵意とあからさまな敵対をすぐさまかつ強烈に明らかにし始めた。もちろん、それはムジャヒディーンに限ったことではなく、他の政治グループも同様で、現在でもうまくはやっていない。

半世紀にわたる痛ましい悲劇的な経験によって、政治勢力がアプローチの変更を行う潮時となった。ネガティブなアプローチを採用する代わりに、ポジティブなアプローチを選択し、反対や対立よりも理解と協力を選択し、望ましくない結果よりも願望を優先する必要がある。これは、アフガニスタン国内でも、国外の多くでも、多数が待ち望んでいる変革だ。しかし、問題は、そのような変化はどのように目撃できるのかである。今の政治家はそのような変化を受容できないのだろうか? 視点を新たに革新的なアプローチを持つ新世代の政治家の出現が、このジレンマを解決する鍵なのだろうか?

現時点では、これらの質問に対する明確な答えはまだ見つかっていない。それにもかかわらず、変化こそが現在の状況を解決する唯一の解決策なのだ。アフガニスタンはこれまで以上に深刻な危機に陥っている。国民は将来への希望を失い、知識人は世界中に散らばり、近隣諸国は自分たちに害を及ぼさない限り満足しており、世界は戦略計画や代理戦争を進めるためにアフガンの国土をどのように活用するかを熟考している。こうした状況の主な原因は、アフガニスタンの政治に浸透した消極的で紛争志向のアプローチであり、アフガニスタンの多くの政治家がいかに多くの政治運動を起こそうとも、積極的で有意義な協力は不可能であるという信念を強化している。したがって、この行き詰まりを打開し、有意義な前進に向けて前向きな能力を解放するには、ターリバーンとの関与を考慮せねばならない。

アフガニスタンの政治情勢を否定的な状態から肯定的な状態に転換し、不和を乗り越えて協力を促進するには、一定の能力を養う必要があり、努力する価値のある追求である。第一に、政治派閥間の対話能力が確立されなければならない。対話には、対立する意見を容認し、お互いの立場を理解するよう努めることが含まれる。次のステップでは、内部の自己批判と外部つまり他者からの批判の両方に対応する能力が含まれる。批判を受け入れる能力、あるいは少なくとも批判に耳を傾ける能力が政治力学に不可欠になるまで、大きな変革は期待できない。特に自分の実績を批判的に再評価する能力が受け入れられるまでは。対話と内外の批判を通じて政治的合理性が力をえ、有意義な変化への道が開かれる。

社会内部で政治的合理性が成熟するにつれて、不必要な対立を避けながら多様性を受け入れるようになる。この観点から、矛盾があっても必要最小限に抑えることで、対処可能な課題に変えられると考えるべきだ。したがって、紛争を軽減し、管理するための正しいアプローチは、共通点を強調し、各政治運動を結び付ける要素を優先することだ。政治運動を結びつけ、収束と協力のプラットフォームとして機能し、過去、現在、未来を結びつける要素は豊富にある。すべての派閥によって普遍的に評価されている文化的および文明的遺産と歴史的成果は、統一の基盤となる。さらに、現在の困難がすべての人に影響を与え、この土地の何百何千万もの人々を苦しめていることは、結束と連帯にとってもう一つの重要な要素である。さらに、この国の将来の世代が共有し、各自が貢献しなければならない共通の未来は、もうひとつの重要な絆を構成し、政治勢力間の相互作用を支えるべきだ。

このような合理性が達成されると、焦点は望まないものから望むものに移る。否定に集中するのではなく、願望を定義し、それを達成するために集団でどこまで進んでいくかを決定することが優先される。アフガニスタンの厳しく困難な状況において、政治は私たちの願望を正確に表明することを中心に展開されるべきだ。重要なことは、すべての勢力の共通基盤となり得る基本的な点を特定し、それらに対する統一的な立場を確立する必要があるということである。最小限のコンセンサスが進歩への鍵となる。アフガニスタンの人々は、政治勢力が共通の目標に向けて努力を調整しているのを目撃する必要があり、国際社会は、アフガニスタンの政治が分裂と分断から共通の願望へと移行しているのを観察する必要がある。それは望まないことを述べるだけではない。重要なのは、本当に望んでいること、そのために喜んで負担するコストを表明することにある。

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