幸運は予告なくひょんなことで飛び込んでくる。

「ちば産学官連携プラットフォーム」の2025年度活動報告会が明徳学園で開かれるから参加してほしい、と声がかかった。

「産学官連携」をキーワードとする活動は蔵前工業会(東工大の同窓会組織)のメンバーとして大田区産業振興課などの掛け声のもと中小企業会社群と連携していろいろやったことがあった。だからまったく無経験でもないけれど、千葉明徳学園の幼稚園や短大の施設をおかりして、週1回やっているアフガン人女性やその子弟への日本語講座や託児活動は、とてもじゃないけど「産業」なんてもんじゃないしなぁ、と思いながらも、枯れ木も山の賑わい、普段の借りを返すためにも参加しなくちゃと思い先週木曜日(12月18日)、その報告会に出席した。

ちば産学官連携プラットフォーム」は、千葉市域(千葉市中心/市原市等を含む)にキャンパスを持つ11私立大学・短期大学(※1)が連携し、「競争から共創へ」をスローガンに2018年8月に設立された。設立の翌月には千葉市と地域社会の発展・人材育成等を目的とした包括的な連携に関する協定を締結している。最初から学官が連携している。

※1:植草学園大学、神田外語大学、敬愛大学、敬愛短期大学、淑徳大学、千葉経済大学、千葉経済大学短期大学部、千葉明徳短期大学、帝京平成大学、東京情報大学、放送大学

報告会は各大学から担当者が集合し報告討議する形式。一部ズームで遠隔参加する大学があるこじんまりとしたものだった。専門担当者の会議みたいだ、ずいぶんイメージと違うなあ、と戸惑ったが、議題はまあ、一般に行われている「産学官会合」だろうから、と高をくくっていたら、あにはからんや「産」の影が見えない。出席者は大学関係者だけ。千葉と言えば日本最大の東京湾岸工業地帯の一角ではないか。無数の企業群がひしめいているはず。しかしここで言われている「産」とは第2次産業の「産」、つまり大田区で対象とされたモノづくりの「工場」ではなく、教育や地域課題の解決を目指す社会サービスのことだった。

「ちば産学官連携プラットフォーム」のミッション、ビジョン、アクションはつぎの5つにまとめられている。
①地域の「高等教育の魅力」の向上
②地域の「学生募集力」の向上
③地域の「地元企業への就職率」の向上
④地域の「多様な学び」の価値の向上
⑤地域の「まち」としての魅力の向上

徹底して少子高齢化で基盤そのものが変容しつつある社会課題に「私立大学」という特質を生かして大学そのものが「産」として千葉市、市原市で社会貢献しようとする姿勢だった。

だから当日報告された活動報告は、それぞれのミッションに密接にかかわる具体的に実行された8項目の活動内容だった。当日報告されたのは、就学、就職、生涯学習支援、子育て、デジタル教育、シニアケアなどの社会事業を展開してきた報告だった。(※2)より詳しくはHP参照

※2:①学生募集連携事業部会、②就職支援連携事業部会、③生涯学習連携事業部会、④地域支援連携事業部会、⑤短期大学連携ワーキンググループ、⑥こども子育て支援ワーキンググループ、⑦デジタル人材ワーキンググループ、⑧教育活同連携事業部会

各大学の担当者の活動報告を聴きながら、われわれが千葉県在住のアフガン人女性とその子弟に対して日本社会に溶け込んで共生できるよう支援する活動は、まさにプラットフォームのミッション、ビジョン、アクションそのものだったのだ、と実感した。

委員の皆さんの、対面とバーチャルの報告が終わったところで、司会者から、発言を求められた。その時には何を発言すればよいのか見当はついていた。イーグルアフガン明徳学園の開校のいきさつから日常の活動まで、千葉明徳学園への感謝表明もあわせて、詳細に報告することができた。他の大学の代表者の方からはわれわれの活動は貴重な活動であり、在日外国人問題への取り組みも考えているので参考にさせてもらいたい、との発言もいただいた。

現在ちまたでは、さまざまなレベルでの在日外国人問題が語られ、ヘイトスピーチも飛び交っている。在日外国人比率が比較的高い千葉県にあってわれわれの活動は、単にアフガン人女性たちに役だっているだけでなく否応もなく多国籍化を深めていくこれからの日本社会にとって役立つ活動だと認められた瞬間だった。

「ちば産学官連携プラットフォーム」の事務局の皆さん、お呼びくださり、本当にありがとうございました。これからはわれわれの活動の視点を一段アップさせて活動の質・量を向上させていきます。よろしくお願いいたします。

野口壽一