Q & A

お寄せいただいた意見、異見、提言、質問を掲載します。

本サイト構築中にモニタしていただいた方々からいろいろな質問をいただきました。その主な内容は下記のようなものでした。説明不足の回答ではかえって誤解を生ずる懸念がありますが、大まかな方向性だけでも示し、より詳しくは別原稿にて明らかにしていきたいと考えます。本サイトの内容を豊富にするのは、疑問と追究です。現地アフガニスタンからも答えてもらいます。ぜひ、積極的な質問を期待します。
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<回答者>
<本サイトアフガン人主筆> ファテー・サミ(Fateh Sami)氏:カーブル出身。人口学、統計学、農業経済学専攻。元カーブル大学講師、アフガニスタン統計省計画調整部長。カーブルタイムズ編集者を経てUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)/IOM(国際移住機関)の上級統計家/人口学者。現在、オーストラリア・ビクトリア語学校(VSL)教師。NAATI認定プロフェッショナルバイリンガル(ダリー語-ペルシア語および英語)の通訳および翻訳者。カーブル大学、ロンドン大学、ボンベイ大学、ジャワハーラールネルー大学、オーストラリアRMIT大学などで学び、20年以上にわたり独立系ジャーナリストとして活躍中。本サイトでのファテー・サミ氏の執筆原稿の一覧はここをクリック

<本サイト編集長> 野口壽一:1980年夏アフガンを単独取材し翌年<写真記録>『新生アフガニスタンへの旅』を上梓。2018年元アフガニスタン共和国副大統領の回想録『わが政府 かく崩壊せり』を翻訳出版。元株式会社キャラバン代表取締役、インターネットによるベンチャー支援組織「246コミュニティ」創設世話人、現在フェニックス・ラボラトリー合同会社代表。もう少し詳しい経歴は「編集室より」最下段を参照。

 

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20230819

ターリバーンはケシ栽培と麻薬生産を禁止したと聞いていますが本当ですか??

(A)  ターリバーンは国外からの批判をかわすためにそのような言動を行っていますが、必ずしもそうではないようです。

本サイトが紹介している、アフガニスタンの独立系ジャーナルである『ハシュテ・スブ』に、2023年8月12日づけでジア・ニザム博士が書いているところによると、「2023年6月26日、国連薬物犯罪事務所(UNODC)は、アフガニスタンにおけるケシ栽培の大幅な減少を示す報告書を発表した。それにもかかわらず、報告書で強調されているように、アフガニスタンは結晶メタンフェタミンとヘロインの世界的な主要輸出国であり続けている。ケシ栽培が禁止されているにもかかわらず、国内の特定地域では違法薬物の製造が続いている。注目すべきことに、結晶メタンフェタミンのような合成麻薬は現在、アフガニスタン中南部の山岳地帯に自生するマオウという植物を使って生産されている。かつては伝統的な治療法で薬草とみなされていたこの植物は、現在では結晶を製造するための重要な成分に変わった。報道によると、地元のタリバン当局者がこの急成長する市場に関与しているとのこと」と指摘しています。
ジア・ニザム博士の記事全文(日本語)は ここをクリックしてお読みください)  (野口)

20230808

ターリバーンの女性差別の理論は、なになのですか? 女性は家庭にとどまり家庭を大事に、という主義ですか?

(A)  ご質問ありがとうございます。取り急ぎ、ポイントのみを記させていただきます。

ターリバーンによる女性差別の表れとして外部世界(イスラーム諸国も含め)から批判されている主な事例は、
● 女性や少女に対して認められる学校教育が小学6年生までであり、すべての女性に中高大学それ以上の教育が否定されていること(ただし医師や医療関連業務など女性を対象とし女性にしかできない専門家の育成を除く)
● 女性の就業を認めない
● 女性の単独の外出を認めない
● 体全体を布で覆い隠すこと。ヒジャーブやブルカなどの強制
● 各種イベントへの出席禁止
● 遊戯娯楽施設への入場禁止
● 美容院の廃止
● 児童婚や売買婚
● 強制結婚
その他、書ききれないほどの事例があり、ターリバーンの〝政策〟は女性を家に閉じ込める隔離政策という単純でおとなしいものではありません。

お尋ねの趣旨は、このような女性差別と見なせる事例の背景にある、ターリバーンの理論ないし思想の源泉はなにか、ということです。

簡単にいうと、その根拠はふたつあります。
① ひとつは、イスラームの規定を根拠にしたもの。
② もうひとつは、ターリバーンの主体であるパシュトゥーン族の旧弊固陋な因習。

最初に確認しておきたいのは、ターリバーンには、女性を差別・抑圧しているという認識はありません(ただしターリバーンは一枚岩ではなく女性の扱いに関する政策の在り方については女子教育問題も含め内部に異論が存在しています。)逆に、彼らは、女性を差別し権利を剥奪・迫害しているのではなく、聖典コーラン(またはコラーン。正確な発音は〝クルアーン〟に近い)とイスラーム法であるシャリーアの正しい運用によって、男性が尊敬すべきものとして女性を保護しているのだ、と主張しています。また、女性の教育に関しても、教育を否定しているのでなく女性を正しいモスレム(イスラーム信者)に成長させるべく適切な措置を施しているのだ、と主張しています。

しかし、コーランにもとづくといってもその規定は千数百年前の戦闘に明け暮れていたアラビア半島の在り様に縛られたものです。その後、布教地域が広がり、時代が下るにつれ地域性や民族性、社会などの相違と経済的社会的発展変化を踏まえ、新しい事態に適応すべく宗教学者がコーランやシャリーアなどをそれぞれに解釈してさまざまな布告を発します。そのため、イスラームはさまざまな流派に分かれ、お互いを異なる宗教であるとして殺し合う(ジハード=聖戦)ほどの対立を内包するまでになりました。ターリバーンが信じる流派はコーランが成立したころに戻ろうとする復古派に属し、さらに過激な思想、行動を是とする分派です。(この点に関しては、『ウエッブ・アフガン』では一貫して報道し続けてきましたが、池滝和秀氏が「タリバンが『女性蔑視思想』を築いた3つの背景」(https://toyokeizai.net/articles/-/450278?display=b)で簡明な解説をしています。参考になさってください。)
さらに状況を複雑にしているのは、ターリバーンの主流をなすパシュトゥーン族が、イランや南アジア全域に今も残存する女性嫌悪・女性蔑視イデオロギーであるミソジニーを色濃く保持する民族であるという点です。(この点に関しても『ウエッブ・アフガン』で繰り返し解説していますが、30数年間の南アジアにおけるフィールドワークを通してパシュトゥーン族の文化的社会的特質を解明した松井健氏の労作「西南アジアの砂漠文化」(東京大学東洋研究所刊)があります。きわめて貴重な著作物です。)
ターリバーンの側に立って、ターリバーンの女性政策を擁護した書物としては中田考氏の「タリバン復権の真実」(ベスト新書)があります。この書を読めば、ターリバーンが女性問題だけでなく、アフガニスタンでおこなっている暴挙の根拠なるものがいかに時代錯誤で非人間的なものであるかがよく分かります。西洋的近代化と植民地主義・帝国主義に反抗したい意図と気持ちは理解できないでもないですが、近代思想を乗り越えるのに〝野蛮〟に戻って対抗することがいかに悲惨な結果を生むかが、さらによく分かります。時間とお金に余裕があれば、一読してもよいかもしれません。【野口】

 

アフガニスタンでは20年におよぶ戦争でいったい何人の人びとが死んだのでしょうか。とくに民間人。数千人という数字があったり、米ブラウン大学は民間人4万6000人でアメリカ兵の死亡の20倍という数字を算出しています。またタリバン側も数万人の戦死者がでたと言われています。実際はどうなんでしょうか?

(A)  アシュラフ・ガニー大統領の任期中だけでも、政権発表では、国軍の75000人の若者が殺害されました。しかし、ガニー大統領は政治的な理由で損失を少なく見せようとしていました。だから実数はもっと多いでしょう。2021年4月の時点で、71,000人以上のアフガニスタンとパキスタンの民間人が戦争の直接の結果として死亡したと推定されています。
2017年に米軍は、アフガニスタンでの空爆規則を緩和したため、民間人の死傷者が大幅に増加しました。CIAは、深刻な人権侵害と民間人殺害に関与しているアフガニスタン民兵グループを武装させ、資金を提供してきました。
アフガニスタンの土地は不発弾や地雷で汚染されており、数万人のアフガニスタン人、特に子供たちが移動や日常生活の際死傷しています。
戦争によって、貧困、栄養失調、衛生状態の悪さ、医療へのアクセスの欠如、環境悪化によってアフガニスタン人の生存条件は悪化しました。
民間人、軍人、女性、子供を含む人的損失の合計は、25万人から30万人を超えると思われます。
数字の正確さよりも、戦争によって信じられないほどの数の罪のない人びとが殺されたという事実が重要です。(Fateh Sami

 

群雄割拠のアフガニスタンは5つくらいの州が連邦政府を築く方向にいくのでしょうか?

(A) アフガニスタンでは中央集権化の難しさを踏まえた連邦制の案もあれば、それもあきらめた分国化案もあるようです。ターリバーンは全体主義的な中央集権化を目指しているように見えますが、首長国の体裁が保たれれば宗教的権威主義による分封制をとるのかもしれません。しかし、アフガン領内では民族部族の混住が進みパキスタン領内ではパシュトゥーン族の自治領が存在するという複雑さを抱えているこの地域ではどの案も決定打を欠いているようです。民族部族と国家間の利害対立、過去と未来の相克。当分の間アフガン人同士の闘争・努力から目が離せません。(野口)
※「連邦制の話」は[ここをクリックして]ご覧ください。
※アフガニスタンの民族部族分布(パキスタンとの関係を示すため、ここではタジク族、ウズベク-トルクメン族、ハザラ族その他の諸民族は割愛してあります。)

アフガニスタンに残った人々のために、私達に何か出来ることはあるのでしょうか?

(A) たくさんあります。まず、アフガンに常に注目し彼の国が世界から忘れられないようにすること。一般の人々の目線で情報を仕入れて周りに伝達すること。さまざまな支援ができますが、自分ができなくてもやっている人を物心両面で助けること。政府や国連よりNPOやNGO、個人で何かしら有益なことをやっているとみなせる人を見つけて応援(声援でだけでもいい)することです。そんな団体や人物はたくさんありますが、そのごく一部をサイトの「便利帳」に載せました。参考にしていただければ幸いです。
(野口)

ターリバーンが国境の90%を支配したと報道されています。アフガン政府の税収(関税)収入がなくなるのではないでしょうか?

(A) ターリバーンは国境を支配していません。ターリバーンはパキスタンの民兵で、パキスタンはターリバーンの名前を使ってアフガニスタンのさまざまな地域で直接戦争を指揮しています。指揮官たちは偽名を使っています。一部は捕虜になりその事実が判明しています。ターリバーンの上級の指導者たちは全員パキスタン領内にいます。ISI(パキスタン軍統合情報局)は彼らの住所を完全に把握しています。パキスタン政府は裏でパキスタン内のパシュトゥーン人に支配されているため、ターリバーンのための隠れ場所を提供しています。 90%の国境を管理しているとの報道はパキスタン政府内外のターリバーン支持者が言いふらしていることです。しかし、ターリバーンの支配地域が急激に増えていることは私が何度も言及している理由によって事実となっています。アフガン政府の税収について言えば、政府内の腐敗によって、どっちみちすべてが国庫に入っているわけではありません。(Fateh Sami)
--【この問題についてはSami氏が新しい論文を執筆中です。ご期待ください(編集部)】

アフガニスタン問題は日本にとってなぜ重要なんですか。

(A) 日本は、特に第二次世界大戦後、平和政策を積極的に推進してきました。日本は、戦争の悲惨を地球上の他のどの国よりもよく知っています。日本の人々は、1945年8月6日に広島と9日に長崎に野蛮に投下された米国による原爆の犠牲になった最初の人でした。 15,000トンのTNTに相当する爆発により、都市の4平方マイルが廃墟となり、2つの都市で120000人が即死しました。傷と放射線中毒で数万人が亡くなり、最初の週に60000人が亡くなりました。原因が何であれ、アフガニスタンの人々と伝統的な友好関係にある日本は、アフガニスタンでの戦争が続いたとしても、その継続を望んでいません。日本は、米国とその同盟国がテログループとの戦いでアフガニスタンを占領した後、アフガニスタンの再建と地雷除去に参加しました。(Fateh Sami)
コマツや山梨日立建機が地雷除去のための重機を開発しアフガニスタンでの地雷除去作業に貢献した映像が本サイト内にあります。ここをクリックしてご覧ください】(編集部)

(A)  世界市民の一員として平和と進歩を求め闘うという人道的な課題が第1。第2にアフガン問題は緊密に結びついた国際関係の重要課題であり米中対立が厳しさをます現在、アメリカの同盟国として戦争できる国になろうとする日本の内政に直結しています。国際的な視点を常に持っていないと日本がアメリカの傘の下のガラパゴスになってしまう危険性を感じるからです。(野口)

NATOの一員として参戦したトルコはカーブル空港の警備という名目でアフガニスタンにのこります。なぜですか。

(A) ご存知のように、トルコはNATOの加盟国であり、テロリストグループ、特にアルカイダとDAESh(ダーシュ:イスラム教スンニ派武装組織ISIS (アイシス) のアラビア語での略語(goo辞書))とのいわゆる戦いに関与してきました。米国は戦争を中央アジアに引きずり込みたいと考えています。
NATOのメンバーであるトルコへのカブール空港の引き渡しは、トルコがシリアからアフガニスタン、特に中国、中央アジア諸国(ロシアの同盟国)イランと国境を接する北部にISISを安全かつ秘密裏に移すことができるからです。これは、このプロジェクトの実施に関与してきた米国、カーブルの傀儡政権=カルザイ政権の時代からのプロジェクトでした。
アフガニスタン北部の人口は主にタジク人、ウズベク人、ハザラ人で構成されており、主にパシュトゥーン人で構成されているターリバーンに対する潜在的な脅威です。現政府は自身のパシュトゥーン人の傾向のために、北部の他の民族グループよりもターリバーンを支持しています。
米国のアフガニスタン侵攻後、ISAF(国際治安支援部隊)の一部として戦闘部隊がアフガニスタンに駐留しました。トルコは、民間および軍の幹部の訓練に参加しました。トルコはまた、政治的および宗教的にパキスタンと密接な関係を持っています。トルコは明らかに仲介者として行動したいと思っていますが、実際にはアフガニスタン北部の米国の計画を間接的に促進しています。どのようにしてでしょうか?
トルコがカブール空港の安全を維持するために割り当てられている現在、必要なすべての安全および諜報機器は米国によって提供されます。トルコはまた、空港の安全のためにパキスタンの支援を求めます。つまり、アフガニスタン北部を統治することで、地域を再建するプロジェクトの実施には、トルコを含め、米国、パキスタン、英国がすべて関与しているということです。
さらに、イスラム世界では、トルコは米国政権の立場に立ちサウジアラビアに取って代わろうとしています。
主な理由は2つあります。第一に、シリアからアフガニスタン北部へのDAESh(ダーシュが移動できないようカーブルの空域を厳しく管理することです。第二に、アメリカ軍の安全な帰還に耐えることです。(Fateh Sami)

表紙の写真はなんですか??

(A) バラ・ヒサールという古城から発して、カーブルを守るために周囲の山々に築かれた歴史的な壁です。万里の長城ほどではないですが、延々とつづいています。右側の碑は開明君主と言われているアマヌラー王の記念碑です。アフガニスタンの近代化、世俗国家への改革を追求した国王として知られています。(野口。現在の表紙は変更になっています。)

 

アフガニスタンの主な輸出品(外貨獲得手段)は何?

(A) 伝統的に、アフガニスタンの主な輸商品は農産物です。乾燥および新鮮な果物、薬草、羊皮、野菜、綿実油などがあります。また地下資源としては各種鉱物、石、鉄、鋼、銅、天然ガス。そして木材の梁材。工業品としては絨毯です。しかし、腐敗した政府が賄賂をもらって野放しにしたため、違法売買や密輸が横行し、輸出益が国の経済と国民所得を後押しすることなど困難という悲惨な現状です。外国からの援助がなければ、政府のいつもの運営費不足はもとより、即座に財政赤字に転落します。戦争が長引いているいま、農業生産は大きな打撃を受けています。農民は土地を手放し、兵士として働くか身の危険をさっして難民となるかのどちらか。また、熟練した絨毯工は国を出てをパキスタンへと逃げ出しました。(Fateh Sami)

米露中という大国がアフガニスタンの政情にあれこれ手出し口出しするのはなぜですか?  地下資源を狙っているというのは本当ですか?

(A)  アフガニスタンという一国を見ても、中東全域に目を向けても、この三か国がその地を侵略する目的は主に石油、ガス、鉱物といった天然資源を略奪し世界に売り歩くためであることは間違いありません。それは貿易競争で勝利し経済覇権を握ることを目指して、この三か国がアフガニスタンに関わっているということです。みにくい競争ですが「地域の政治経済的利益を確保する」というお題目の下に、正当化されています。 (Fateh Sami)

中村哲医師を殺した犯人はつかまったのか?誰だったのか?殺害の目的は?

(A) カーブルの傀儡政権が誕生してから、主にパキスタンの工作員が国内に潜り込み、いま支配的になっています。パキスタンはソ連軍が侵攻する12年も前の1967年からずっとアフガニスタンの破壊をたくらんでいます。ソ連が占領したあとは、腰を据えて代理戦争化させ、ときには積極的に、ときにはゆったり構えてその謀略を推し進めました。その手先がかつてはムジャヒディン、いまはターリバーンなのです。こうした謀略はいまも速度をましながら続けられています。その一環が中村哲医師の殺害であると言えば、回答になっているでしょう。(Fateh Sami)

アフガニスタンは多民族・多部族の国と聞きますが、イスラム的にスンナ対シーアは拮抗しているのか?それともどちらか一方が他方を圧倒しているのか?

(A) まず最初に、アフガニスタンには定住民と遊牧民がいます。そして、人口に関する信頼できる統計上の資料は存在しません。例えば最も基本的な総人口すら国勢調査が行われていないため不明なのです。一例をあげると、よく言われる「パシュトゥーン人が多数だ」というはなしですが、英国その他の外国の力を借りてできたパシュトゥーン人政府が言い張っているだけで、そこには何の根拠もありません。ただ世間をあざむいて権力にしがみつきたいがためだけの、むなしい主張です。そんなわけで、スンニーとシーアのどちらが多数派なのかと問われても正確には答えられないことをご承知おきください。
どちらが多いかといえば、スンニーが多いのは明かですが、両派のいがみあいはアフガニスタンではほとんど見られません。宗派を越えた婚姻が数多くなされていることをその照査としてあげておきましょう。
しかし近年の戦争状態のなか、米国、パキスタン、サウジアラビアの三か国がスポンサーとなって、ワッハービ派という極端な敬虔主義のイスラム教の一派をアフガニスタンで、はやらせようとしています。とても熱心にスンニーとシーアのいがみあいをたきつける一群です。しかしうまく広まっていません。ちなみに、米国など諸外国の手先であるターリバーンは、全アフガニスタン人に対してとんでもない犯罪をおかしていますが、特にシーア派を目のかたきにしています。(Fateh Sami)

ターリバーンは米国が生み出したのですか?

(A) 2007年12月にテロで暗殺されたパキスタンのブット元首相の次の言葉をもって回答といたします。「もちろんターリバーンはパキスタン、サウジアラビア、イギリス、アメリカが援助しています。」(Fateh Sami)

ターリバーンの創設者オマル氏は今ではどう評価されていますか?

(A)彼はターリバーンの精神つまり彼ら独自の宗教的、民族的思想を持っている人々にのみ支持されています。彼がパキスタンのテロリスト養成所で育てられたことはアフガニスタンの誰もが知っています。彼はパキスタンの諜報機関(ISI)によって育てられ、殺されました。彼には墓すらつくられませんでした。人々は彼をターリバーンのでっち上げられた指導者、そしてパキスタンの傭兵だと見抜いています。(Fateh Sami)

マスードを暗殺したのはどの勢力?

(A) 外国の諜報機関が主導した複雑にからみあった陰謀です。暗殺作戦を手助けするために内部で、マスード将軍の極側近で、手引きするものもいました。全貌を精査し解明するにはもっと時間が必要です。この事件に関する取り調べはすでに中止されましたが、将軍の排除なしでは米軍のアフガニスタン侵攻が不可能だったことは、集められた証拠から明らかです。彼が生きていれば米国のアフガニスタン侵攻は困難をきわめたでしょう。(Fateh Sami)

ターリバーンはバーミヤンの石仏を破壊したが、なぜ? 現状は?

(A) ターリバーンは、パキスタンの指揮、指導のもとで1500年もの歴史があるバーミヤンの石仏を破壊しました。仏像が偶像崇拝を否定するイスラムの教えに反するという名目ですが、アフガニスタン国民、特にバーミヤン一帯を支配するハザラ人の影響力をそぐのがその目的でした。ターリバーンはただの工作員であるため、この石仏ばかりでなく、パトロンの命令ひとつで何でもおかまいなしに破壊してしまいます。(Fateh Sami)
日本は破壊されたバーミヤンの修復に努力しています。その活動を推進されているのが本サイトでも紹介した前田耕作先生です。ここをクリックしてご覧ください。】(編集部)

911のあと、アメリカと有志連合がアフガニスタンを攻撃したのはなぜ?

(A) 米国は、テロとの戦いという名のもとにアフガニスタンを攻撃しましたが、当時アフガニスタンで活動していたテロ組織はとても小規模で、こうした米国の主張は誇大な宣伝活動でした。侵攻したのは単にアフガニスタンという地域が政治的、経済的に米国からみて有益だったからです。(Fateh Sami)

東京オリンピック2020にアフガニスタン選手団は参加していますか?

(A) 選手6名が参加しています。うちわけは男子5名(陸上・水泳・テコンドー・射撃・重量挙げ)と女子1名(陸上)です。ほかに難民枠でアフガニスタン出身の女子1名(自転車/フランス在住)が参加しています。五輪の創設者クーベルタン男爵は「五輪は参加することに意義がある」と述べたそうです。無観客で「おもてなし」もままならぬなか、こうした戦火に苦しむ国から来た選手たちに励ましの声を届けたいと思っています。(金子)
⇒難民枠で参加したアフガン出身女子選手の報道は[ここをクリック] (編集部)

日本の自動車はアフガニスタンで売れていますか?

(A) 売れていますよ。日本車は非常に信頼性が高く、アフガニスタンでも大人気です。個人的にはトヨタが好きで、これまでにいろんな車種を購入しました。(Fateh Sami)

新型コロナはどれくらい深刻ですか? ワクチン接種状況は?

(A) 非常に深刻です。でも、人びとは防衛に積極的ではありません。マスクをつけたり安全な距離をたもったり集会を避けるといった対策はとられていないため、新型コロナの流行は深刻化しています。ワクチン接種についても、国民は懐疑的です(Fateh Sami)