Afghanistan Retains its Position as the Largest Narcotics Producer

By: Dr. Zia Nizam
By Hasht-E Subh On Aug 12, 2023

投稿者: ジア・ニザム博士
投稿者:ハッシュテ・スブ 2023 年8月12日

(WAJ: ターリバーンはケシ栽培と麻薬生産を禁止したと主張している。読者からもそのような質問を受けることがある。しかし、事実は逆である。昨年、アメリカはアメリカ人人質との交換で、麻薬王としてアメリカが収監していたハッジ・バシャールとして知られるバシール・アフマッド・ヌールザイを解放し、ターリバーンに引き渡した。それによりターリバーンはアヘン管理を本格化することが可能になっている。そのような現実をジア・ニザム博士が明らかにする。)

2023年6月26日、国連薬物犯罪事務所(UNODC)は、アフガニスタンにおけるケシ栽培の大幅な減少を示す報告書を発表した。それにもかかわらず、報告書で強調されているように、アフガニスタンは結晶メタンフェタミンとヘロインの世界的な主要輸出国であり続けている。ケシ栽培が禁止されているにもかかわらず、国内の特定地域では違法薬物の製造が続いている。注目すべきことに、結晶メタンフェタミンのような合成麻薬は現在、アフガニスタン中南部の山岳地帯に自生するマオウという植物を使って生産されている。かつては伝統的な治療法で薬草とみなされていたこの植物は、現在では結晶を製造するための重要な成分に変わった。報道によると、地元のターリバーン当局者がこの急成長する市場に関与しているとのこと。

<参考サイト>
https://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/world-drug-report-2023.html

 

ケシ栽培の取り締まりにより、意図せずしてマオウと精製結晶の生産部門の成長が促進された。この拡大は、伝えられるところによると、違法事業から利益を得ている地元のターリバーン関係者の積極的な関与によって促進されている。ケシ栽培が減少しているのであれば、アフガニスタンは今や、メタンフェタミンの生産と流通の重要な世界的拠点として浮上していることになる。昨年4月ターリバーン最高指導者は、ケシの栽培と取引を禁止する宣言を発出した。しかし、そこにエフェドラ(マオウ属)植物は禁止事項に含まれていなかったことに注目すべきだ。

<参考記事:ケシ栽培禁止>
https://www.dw.com/en/afghanistan-taliban-outlaw-opium-poppy-cultivation-drug-trade/a-61348766

 

ケシ栽培の禁止宣言により麻薬の価格が高騰した。特にアヘン価格は、ターリバーン最高指導者ハイバトゥラー・アクンザーダ(Hibatullah Akhundzada)政権の布告以前の時代と比べて数倍に高騰している。国境閉鎖などの外部要因もこの価格高騰に影響を与えている。チャタムハウス(訳注:第1次大戦後に設立された英国のシンクタンク。別名「王立国際問題研究所」)の記すところによると、アヘン1キログラムは2021年には40~50ドルだったが、現在は360~475ドルの範囲で取引されている。8倍から10倍という驚異的な高騰である。

<参考サイト:チャタムハウスによる分析>
https://www.chathamhouse.org/publications/the-world-today/2023-08/why-talibans-opium-ban-will-probably-fail

 

麻薬密売業者もターリバーン当局者も、ターリバーン指導者が引き起こした価格高騰を巧みに利用し、大量のアヘン在庫をつり上げられた価格で売却する機会を利用してきた。一方、メタンフェタミンへの世界的な移行とターリバーン支配下のアフガニスタン内でのその生産の増加は、同グループの麻薬関連活動からの収益が2023年に前年を上回る見込みであることを示唆している。

初期のターリバーン政権時代にケシ栽培が支持され、アフガニスタンが麻薬生産の最前線に押し上げられたことを思い出してみる価値はある。アフガニスタン統治4年目の1999年、アフガニスタンは4565トンのアヘンを生産するという前例のないマイルストーンを達成したが、これは単一国の世界記録である。この成果は、貧困、飢餓、戦争、そして過激派政権の支配という悲惨な状況の中で達成された。このアヘンの余剰は世界的な価格の暴落を引き起こし、その結果アフガニスタン国内に大量のアヘンが備蓄されることになった。翌年の 2000年、それまでアヘンの生産と取引を受け入れていたターリバーンは、態度を転換し、アヘンを非イスラム的であると決めつけた。この変化によりアヘン市場の価格が即座に上昇し、ターリバーンは蓄積された備蓄を売却して利益を上げることが可能になった。

<参考サイト>
https://1997-2001.state.gov/www/regions/sa/facts_taliban_drugs.html

 

ターリバーンがケシ栽培に関与してきた広範な歴史を考慮すると、ターリバーンの統治下で麻薬取引が削減される可能性は考えにくい。ターリバーンは国家承認を求めてケシ栽培を禁止するという表面を維持するかもしれないが、ひとたび国際社会が彼らの首長国を承認するや、そのスタンスは明らかに変化する。すると状況は変わり、ターリバーンの暗黙の承認を背景に、さまざまな口実でケシ栽培が強化されるだろう。これは、ターリバーンが違法と見なされる別の活動をこれまで続けてきたやり口とまったくの生き写しだ。

過去においてアフガニスタンは、肺炎救済などの医療目的でケシ栽培を散発的に行っていたのみで、世界の麻薬取引にはほとんど参加していなかった。アヘン生産の拡大は、1970年代後半の混乱と紛争の始まりと同時に起こった。しかし、1980年までは年間生産量は控えめで、ピークは200トンだった。この数字は、その後の驚異的な生産量(1999年には4565トン、2007年には8200トン、2021年には6200トン)と比較すると見劣りする。

わずかここ2、30年で、アフガニスタンが麻薬輸出国として台頭してきた背景には、外的介入、内紛、治安不安の時期が密接に結びついている。不穏な情勢、脆弱な治安、犯罪組織や武装勢力の浸透、そして広範な貧困が重なり、アフガニスタンは世界的な麻薬取引の最前線へと押し上げられた。単なる政治的美辞麗句にとどまらず、ケシ栽培に真摯に取り組む責任ある政権の不在が、この問題をさらに悪化させている。こうした状況は、地域的・国際的な密輸ネットワーク、テロリスト、軍閥の関与を促進している。世界市場の需要と国家を越えたシンジケートの存在が相まって、積極的な介入努力を妨げている。最初のターリバーン首長国から2番目のターリバーン首長国までの20年間、治安の悪さ、紛争、政府の無策、国際社会の無関心によって、野放図なケシ栽培が続いた。

アフガニスタンは40年前、麻薬の非輸出国であったにもかかわらず、なぜ比較的短期間で世界有数の麻薬生産国になったのだろうか? その核心的な理由は、蔓延する治安の悪さと、政府の統制の及ばない地域の存在にある。注目すべきは、ケシ栽培と治安の悪化が共和国政府の時代に表裏一体となったことだ。アヘンの主要生産地であるヘルマンド州は、他のどの地域よりも治安の悪化に悩まされていた。2014年のUNODCの統計によると、同年のアフガニスタンのアヘン生産量6400トンの約半分はヘルマンド州の農場に由来する。この時期、ヘルマンドの中央部だけが政府の支配下にあり、残りの地域はターリバーンに支配されていた。さらに、アフガニスタンにおけるアヘン生産の大部分は、不安定な南西部のわずか3つの州で行われている: ヘルマンド州、カンダハール州、ファラー州である。

麻薬の生産と密売は、賊徒ターリバーンにとって重要な収入源となっている。その結果、ターリバーンの影響下にある地域は、ケシ栽培の鍵となる中心地として浮上してきた。農民や密輸業者は歴史的にターリバーンに十分の一税(訳注:イスラーム税法)を貢いでおり、ハジ・バシャール・ヌールザイ( Haji Bashar Noorzai 、下記訳注参照)のような著名な密輸業者は積極的にターリバーンを支援している。ターリバーンが現在アフガニスタンを支配していることを考えると、麻薬の生産や取引が抑制される可能性は低い。ターリバーンが麻薬をめぐる外交的なダンスに興じることはあっても、生産と密売のネットワークを根絶することは依然として不可能だ。儲かる麻薬取引は、ターリバーンにとって重要な収入源であり、麻薬生産者と密売人は、ターリバーンの戦争組織の重要な利害関係者として機能している。

(訳注:ハジ・バシャール・ヌールザイについては、「バシャール・ヌールザイ、グアンタナモ刑務所から釈放」 https://afghan.caravan.net/2022/10/02/amin_kawa/ および 「アフガン解放をより困難にする麻薬王の釈放」https://afghan.caravan.net/2022/10/02/8am_editorial/ をご参照ください)

原文(英語)を読む

Afghanistan Retains its Position as the Largest Narcotics Producer

2 thoughts on “アフガニスタン、最大の麻薬生産国の地位を維持”
  1. […] (WAJ: ターリバーン復権2周年を迎えて、アフガニスタンで問題とされている麻薬問題に関する論評が増えている。禁止していると言いながら実際のアヘンビジネスは継続されターリバーンの独自解釈による極端な〝イスラーム〟教育は増強され、ターリバーンの危険性が世界から危惧の目をもって見られている。国民が疲弊している状況を変えられなければ、国家運営におけるターリバーンの無能力は破綻に向けて前進しているようにしか見えない。「アフガンの声」の「アフガニスタン、最大の麻薬生産国の地位を維持」(ジア・ニザム博士)の論考とあわせて読めば、実態がよりよく理解できるだろう。) […]

  2. […] ★麻薬問題についていうと、カタールに駐在するスハイル・シャヒーン・タリバン政治事務所長は、ターリバーンを代表して9月22日、ナタリア・キンタヴァッレ駐アフガニスタン・イタリア大使と会談し、ターリバーンはアフガニスタンにおける麻薬根絶に努力しており、アフガニスタンのケシ栽培農家の生計を支援するためのプロジェクトを支援してくれと要請した。しかし2023年6月26日の国連薬物犯罪事務所(UNODC)の報告によれば、アフガニスタンにおけるケシ栽培は減少しているが逆に合成麻薬である結晶メタンフェタミンの製造は増えているのである。(「アフガニスタン、最大の麻薬生産国の地位を維持」)(「ターリバーンは禁止、にもかかわらずアヘン売買は公然と」) […]

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