
仏ヴェルサイユ宮殿で米・イラン合意に署名するトランプ大統領
アメリカとイランは17日、戦争終結に向けた了解覚書(MOU)の内容を公表した。
トランプ氏は、ヴェルサイユで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)終了後の夕食会の場で、14項目の覚書に署名した。精一杯のパフォーマンスではなかったか。
覚書は、ホルムズ海峡を再開させるものであり、その他のほぼすべてについて最終合意に到達することを目指すとする取り決めでもある。
トランプ大統領はこの合意を「誰にも成し遂げられない偉業」「大勝利」と自画自賛するが、大方の評価では、オバマ大統領時代の合意水準を下回るものであり、イランの戦略的勝利、米・イスラエルの敗北、と見なされている。
報道や論評はあふれるほどに流されているので本サイトでそれらを追うことはやめ、AI時代を代表する3種のAIに世界世論をまとめさせてみた。
3種とは「ChatGPT」「Gemini」「Claude ai」。
与えた指示は下記の2つ。その返答をそのまま別添のpdfに収録した。
AIに与えたふたつの指示
==最初の指示==
・イスラエル・ネタニヤフにそそのかされてアメリカは交渉中にもかかわらずイランへ一方的な突然の爆撃を行った。
・初戦においては破壊的な打撃をイランに与えたアメリカだったが、イランの反撃により攻撃が表面だけのものであり、ミサイル基地のせん滅やイランの体制崩壊を実現するどころか、以前にもまして体制を固めさせ、国民的な団結をも強めてしまった。
・さらにはイランはホルムズ海峡封鎖を実施し、世界経済を波乱に追い込みアメリカを世界から孤立させた。
・6月中旬、イスラエルを脇においてイランと単独で行った合意内容も、オバマ時代に取り交わしていた合意の水準以下にまで逆戻りしたもので、世界的にもアメリカの敗北という評価が多数をしめている。
・「何のための戦争だったのか」の声がアメリカ内部にさえ生まれている。
・如上のようにアメリカのイランへの一方的な攻撃から現在までの状況を整理し、今回の合意の内容、およびその評価を行え。
==第2弾の指示==
第1弾の回答にからめて、トランプ大統領陣営とイスラエルのネタニヤフ陣営は事態をどう見ているか、最初の指示の場合とおなじく、3種AIにまとめさせた。その回答もそのまま収録した。
最初の指示へのまとめ
AIは世界に流布する情報を収集し指示に従う観点からまとめをおこなう。今回の指示は経過と世評をまとめさせるレベルのものなので表面的なものとなりがちだが、3種の特徴が現れて興味深かった。
「最初の指示」は、「アメリカの敗北」をあらかじめ示唆する指示だったため、ChatGPTだけは作業開始の前に「この見方は、特に中東・グローバルサウスや一部欧州の論者にかなり共有されています。ただし、米国・イスラエル側には“核開発を大きく遅らせたので成功”という反論もあります」と述べてバランスをとる立場を表明した。しかしアメリカの敗北を主張するのは「中東・グローバルサウスや一部欧州の論者」だけでなく、米国やイスラエル内部にさえ存在するのであって、ChatGPTの政治的バイアス思考が垣間見られて興味深かった。
「最初の指示」に対して<ChatGPT>のまとめは、
・経過説明の分量は他に比べて多い。
・表現は簡潔でリスト表示が得意。語り口調。
・事象の分析はよわく外面的な説明調。
・「戦場では勝ち、交渉では負けたアメリカ」とし、 最大の皮肉は「戦争前よりもイランの核武装インセンティブが強まった可能性が高い」程度で米への批判は弱い。
・アメリカが一方的に敗北したという見方でなく米国・イスラエル側の「核開発を大きく遅らせたので成功」という反論も指摘し、回答にバランスを取ろうとしている。
<gemini>の立場は明確である。
国際的な評価は、アメリカの覇権失墜と敗北である、と明快に述べ、自説を次のように展開する。
「世界的にも、今回の結末は“アメリカの敗北”と明快に評価されています。軍事力で行使した圧力が何の結果も結ばず、世界経済を人質に取られた末に、当初(開戦前)よりも悪い条件で妥結せざるを得なかったためです。また、主戦論を唱えていたイスラエルを交渉の席から”脇に置いた”ことで、中東における伝統的な同盟関係にも深い亀裂が入りました。」
そして、アメリカ国内の評価として、「何のための戦争だったのか」という内省が生まれている、として次のように述べる。
「アメリカ国内では、多大な軍事費を投じ、同盟国からの信頼を失い、世界経済を混乱させた挙句に得られたものが“オバマ時代未満の妥協”であったことから、強い失望と不満が渦巻いています。 野党や世論からは、”莫大なコストとリスクを支払って、一体何のための戦争だったのか”という総括を求める声が噴出しており、政権の外交・安全保障政策に対するドクトリン(基本原則)そのものが根本から揺らいでいます。」
と明快である。そして次のように「結論」を述べる。
「今回のイランへの一方的攻撃から合意に至るプロセスは、”不完全な情勢認識に基づく軍事介入が、かえって敵対勢力を団結させ、自らの首を絞める結果になった”という、近代失政の典型例として記憶されることになるでしょう。アメリカが得たものはなく、失ったものは国際的信用、中東の安定、そして自国の経済的・政治的影響力という、極めて代償の大きい結末となっています。」
トランプ政権に忖度することなく世界に流布する多数意見を集約していると言えるのではないか。
では、<Claude AI>はどうか。
事実経過のまとめは他のAIと大差はないが、イスラエルにとってこの合意がどういう意味を持つかを述べた。
「イスラエルにとっては明確な敗北と評される。イランを存在的脅威と位置づけてきたネタニヤフ首相にとって、イラン体制の存続と米国の単独合意は深刻な打撃である。国内選挙を控える中、厳しい政治的状況に置かれている。
今回の戦争は、米国が圧倒的軍事力を行使しても望む政治的結果を得られないという“ハードパワーの限界”を改めて示した。( cfr.org)
”何のための戦争だったのか”という問いに対し、明確な答えを示せないまま、米国は戦争前より不利な条件で停戦を受け入れる形となった。」
相対的にまともなまとめをしているがここでは「Claude Opus 4.1」だったためか、「これ以上の会話は有料化しないとダメ」とくぎを刺されたのにはげっそりした。第2の指示では無料版「Claude sonnet4.6」に指示をだした。
「第2弾の指示」に対しては、
・ChatGPT 事実列挙的
・gemini あっさり
・claude よくまとまっている
という印象だった。
このプロセスは全文をpdfにまとめた。全文はここをクリックして閲読してほしい。
【野口壽一】