How Trump Is Killing the U.S. Defense Industry
It turns out that abandoning allies and tossing out security guarantees is bad for business.
同盟国を見捨て、安全保障を放棄することはビジネスにとって悪いことだ
(WAJ: 本サイトでは、アメリカの経済は軍産複合体クラスターを基軸とする軍事ケインズ主義経済であると批判してきた。その観点に立てば、アメリカの防衛産業が「破壊」されるのはいいことかもしれない。だが、論者の指摘によれば、ヨーロッパの軍事産業の株価が上昇しているという。つまり、アメリカで減少した軍事支出が欧州自身の出費でカバーされるだろうということである。GDP比2%以上を約束している日本はどうか。いずれにせよ、人類の福祉に貢献しない軍事支出に頼る経済構造を世界的に変革していく努力こそが重要なのだ。)
エリザベス・ブロー
2025年3月4日
(フォーリン・ポリシー紙のコラムニストで、アトランティック・カウンシルのシニアフェローである エリザベス・ブロー による記事)
政府は政策を実施する前に十分に検討すべきだ。これは明白に思えるかもしれない。そうしなければ、予期せぬ結果という恐ろしい必然に直面する恐れがある。米国の防衛産業政策ではまさに今それが起こっている。
米国の防衛関連株が低迷する一方で、欧州の防衛関連株は急上昇している。市場は、これら欧州各国の政府が防衛費を大幅に増やすはずと結論付けているからだ。そして世界中の全政府は、先週、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に大統領執務室で何が起こったかを知っている。
ドナルド・トランプ米大統領とJ・D・バンス副大統領がゼレンスキー大統領と口論したことから多くの指導者が導き出す結論は、米国による安全保障(各国が米国製兵器を購入する傾向にある主たる理由)はもはや説得力のある議論ではなくなるということだ。これまでのところ、トランプ氏の「米国を再び偉大にする」努力は、米国の極めて重要な柱である防衛産業にとって悲惨な結果となっている。
アイタタタ。トランプ大統領の就任以来、米国の6大防衛企業の株価は平均4%下落している。一方、ドイツのラインメタルを含む欧州最大の防衛グループの株価は同時期に40%近く「急騰」していると、フィナンシャル・タイムズが2月25日に 報じた。
金曜日のトランプ大統領とゼレンスキー大統領の激しい会談と、それに続く週末のロンドンでの欧州首脳による防衛サミットの翌日の取引初日である3月3日、欧州の防衛関連株はさらに大きく上昇した。月曜日の取引終了時点で、イタリアのレオナルドは17%以上、フランスのタレスはほぼ同額上昇した。ラインメタルは15%、スウェーデンのサーブは12%近く上昇した。
業界関係者が言うように、市場は常に正しい。そして重要なのは、市場はイデオロギー的ではないという事実だ。ここ数日、数週間、市場はワシントンからの発表に注目しており、予想通りトランプ政権は国防予算を削減したいと考えているという結論に至った。確かに、ピート・ヘグゼス国防長官は、削減するのは行政コストで米国の戦闘能力は逆に高まると述べているが、イーロン・マスク氏が新たに設立した政府効率化局が見せる予算削減のパフォーマンスは政府全般に及ぶ。
一方、欧州諸国は軍事力の増強に真剣に取り組んでいる。トランプ氏をなだめるため、英国は2027年までに軍事予算をGDPの2.5%に増やすと急いで発表した。ポーランドは今年5%に達する見込みだ。ゼレンスキー氏を支援するため英国のキール・スターマー首相が主催したロンドンでの首脳会談で、首脳らはウクライナへの軍事支援を強化し、ロシアとの戦争で同国を守るために「有志連合」を結成することで合意した。
これらすべては、よそから兵器を購入するよりもはるかに複雑だ。ただし、兵器の追加は重要な部分だ。そして、欧州政府はもはや米国が自分たちを支えているとは想定できず、彼らが欧州製品を購入するために全力を尽くすのは間違いない。(米国や他の西側諸国が兵器を他国に売る場合、販売国の政府は兵器の使用方法について制限を加えることができる。そのため今日、欧州は米国から兵器を購入しても、ロシアに対する使用を阻止されるリスクを考慮しなければならない。)したがって、欧州の兵器メーカーにとって今後数カ月、数年は好景気になると市場が見ているのも不思議ではない。
この突然の米政府がくれた天啓を誰もが今後利用できるわけではないが、動き出す者の数は多い。
「どの企業が勝利するかはまだ分からない」とスウェーデン安全保障防衛産業協会の事務局長ロバート・リンマーガード氏は私に語った。「西側同盟国全体で安全保障政策がどのように進化するかが重要であり、企業が新しいタイプの戦争に兵器を適応させる能力も重要だ。それができれば勝利は近い。」
それはまた、ロシア・ウクライナ戦争から知見を取り入れることを意味する。最近まで世界の武器市場でトップクラスの成績を収めていなかったウクライナの防衛企業の多くは、大陸で最も戦闘経験を積んだ軍隊を擁していることを考えると、貴重な知見を有している。米国の防衛メーカーにはその能力くらいあるだろう。しかし、市場は物事の行く末を知っていると自負する。だから1月下旬以来、ロッキード・マーティンの株価は500ドル近くから450ドル以下に下落した。