2026年5月4日
征矢野剛(たかし)

『オールド・オーク』。「オーク」とは、ブナ科コナラ属の広葉樹の総称である。
ケン・ローチの作品は、『ケス』から観ているが、おそらく、かれの最後の作品となり、かれの最高傑作だと思う。solidarity=連帯が、この映画のテーマとなっている。
「オールド・オーク」は、イギリス北東部の、とある炭鉱町のパブの名前。店主のTJ・バランタインは、元炭鉱労働者。かれは、父親の遺産で、パブをはじめた。「パブ」は、イギリスでは、「パブリック・ハウス=公共の家」の略である。
かれの父親も炭鉱労働者だ。かれのパブの奥には、20年使用していない厨房付レストランがある。そこには、おじきの写真が、いくつも掲げてある。1951年の炭鉱事故、1984年の炭鉱労働者のストライキの写真などが。
パブの経営も苦しい。TJが、いろんな問題にぶち当たり、人生に絶望している、まさに2年前の4月9日に、愛犬マラと海辺で出会う。運命の出会いだ。
炭鉱町は、炭鉱が閉鎖されたため、錆びれている。そんな中で、シリアからの難民が大量に押し寄せる。舞台は2016年の設定なので、シリアはアサド政権である。
炭鉱町に住んでいる人びとの、シリア難民への対応が、さまざまに分かれている。
シリアからの難民ヤラに、TJが、ひょんなことから出会う。彼女は、シリアにいたころから写真を撮り続けている。この町でも、写真を撮り続けることによって、TJを含めた地域住民と、少しずつ打ち解けていく。
また、ヤラによって、地域住民の中でも、さまざまな問題があることが、人びとに突きつけられる。
そういう中で、シリア難民と地域住民とのsolidarity=連帯が生まれてくる。
詳しくは、映画を観ていただきたい。ラストと、その直前のシーンは、圧巻だ。
また、映像として見応えのあるのは、ボランティアに名乗りをあげた1000年以上の歴史のある教会だ。町の歴史を感じさせるシーンである。
キャスティングにもこだわりがある。シリア人以外の出演者は、全員、地元コミュニティから集めた。シリア人の存在に対するさまざまな反応は、同じ街路に住み、同じ歴史を共有し、悪い時代の前には、良い時代があったことを知る人びとから生まれたことが、わかっている人びとだからだ。
イギリスだけでなく、日本を含め、世界各国で、排外主義が吹き荒れている。そんな中で、solidarity=連帯を謳っているのは、本当に素晴らしい。ぜひ、ご覧いただきたい。