アフガニスタン女性のための日本の希望の窓口

NHK ワールド JAPAN ペルシャ語  2024 年2月11 日 放送

 

(WAJ:  NHKワールド・ペルシャ語放送(ラジオ)がイーグル・アフガン明徳カレッジを取材し、放送しました。2月24日13時まで音声をWebで聴くことができます。
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/fa/radio/listener/202402110600/
ペルシャ語字幕のHPはその後も掲載されるようです。)

(※ NHKペルシャ語放送では日本語の提供はしていないので、視聴者のご協力をえて『ウエッブ・アフガン』編集部の責任で、放送内容の概略を日本語にしました。)

 

 

<番組紹介>

東京近郊の千葉県を訪問し、アフガニスタン人女性を対象とした日本語教室をご紹介します。ここで学ぶのは 、アフガニスタンの内戦や紛争から逃れ、日本で新たな生活を築こうとしている女性たちです。これまで教育を受ける機会のなかった女性たちも、学び始めています 。

日本の生活に馴染むため、日々奮闘する彼女たちにとって、希望の光となっているこの教室について、創設者や生徒の声を交えてお聴きいただきます。

<番組概要>

土曜日の朝、「 学園前 」 の駅周辺は、子どもの手を握り、歩く女性たちの姿が見られます。『 イーグル・アフガン明徳カレッジ(EAMC)』 で、日本語の授業を受ける女性たちです。
法務省によると、2023年6月時点で日本全国には5618人のアフガニスタン人が在留、そのうち2327人が千葉県にいます。この人数は、2021年にターリバーンが アフガニスタンで権力を奪還して以降、大幅に増加しています。アフガニスタン人の多くが、このコミュニティーで 、中古車の解体に関連する事業に従事する男性の家族です。
以前からこうした家族の女性たちが日本語を学べない状況にあり、子供は学校に通い日本語を話せるようになっても、子どもたちが学校から持ち帰る情報を母親が把握できないなどの課題がありました。
そこで、あるアフガニスタン出身の人物が、この問題を解決すべく立ち上がりました。
NPO法人 イーグル・ アフガン復興協会の代表を務める江藤セデカさんです。これまでもアフガニスタン出身者の支援活動に携わってきましたが、学校法人 千葉明徳学園の協力を得て、『 イーグル・アフガン明徳カレッジ 』をスタートさせました。

 

◆ 江藤セデカさんのお話 ◆

Q:カブールで生まれ、日本に40年近く住む江藤セデカさん。日本に住むアフガニスタン人女性が日本語を学るよう、支援を始めました。

セデカさん:この教室は、結婚して日本に来た女性たちのためのクラスです。たとえば子どもが3、4人いて、学校に通っていても、自分は長年経ってもまだ言葉が話せないので、日本社会での問題を日本語で解決できないという母親がたくさんいるのです。こうした女性たちのために日本語を学ぶクラスを作りたいと思っていました。

Q:何年も日本に住んでいる人が、日本語を話せないのはなぜでしょうか?

セデカさん: 経済的な理由もありますし、子どもどもたちの養育のために時間がとれない、ということがあります。また、中には、家族の許可を得られないというこの社会固有の課題も、理由のひとつと言えるかもしれません。

Q:この教室は、いつから始まったのですか? また、どのように実現に至ったのでしょうか?

セデカさん: 私は日本に40年近く住んでいますが、その多くの時を、アフガニスタンからやってきて、様々な課題を抱える家族たちとも間近で関わってきました。

Q:どのような活動をされてきたのですか?

セデカさん: 非営利団体(NPO)で、アフガニスタンの人々、特に女性のために、その成長や地位向上を支援する活動を行ってきました。内戦や紛争によって様々な権利を奪われてきた女性たちに、ささやかながら支援を行い、またいつかアフガニスタンの女性のための学校を作りたいという夢を持っていました。
この数年間は、私たちはアフガニスタンに行くことはできませんでしたが、日本にいるアフガニスタンの女性たちのために支援する機会に恵まれました。
2年前にアフガニスタンで政権が変わった後、アフガニスタンから来日した女性たちが日本語を学ぶ機会がなかったので、様々な協力を得て去年の11月に日本語教室を始め、今は生徒たちが通ってきて、日本語を学んでいます。

Q:どのような協力を得ることができましたか?

セデカさん: こちらの学校(千葉明徳学園)が、わたしたちに協力を申し出てくれたのです。毎週土曜日、この場所で教室を開催できるように取り計らってくださいました。

Q: 母親たちのための教室だとのことですが、子どもたちの姿を見かけます。お母さんと一緒に教室に入っているお子さんもいますね。

セデカさん: 私たちが目指しているのは、母親たちが、家族の許可を得て、支障なく学べる場とすることです。もし子どもをどこに預けるか心配があるとすれば、勉強することは難しくなってしまいます。子どもたちがいるんだからお前は勉強できないよ、という男性たちの言い訳を取り除くことが大切です。
ある女性は、ここに3人のお子さんを連れてやってきます。お母さんが勉強に集中できるように、わたしたちがお子さんを預かります。それで、小さいお子さんだと、そばに置きたいとお母さん自身が望む場合もあります。その時は教室に連れてきてもらっています。お母さんがここで一生懸命日本語を勉強し、お子さんも一緒に学べます、お母さんが学ぶことは子どもたちの将来にも役立ちます。子どもたちが学校に通うようになった時、先生とお母さんがしっかりとコミュニケーションをとれるようになるのです。

Q:去年の11月から通い始めた女性たちに、どんな変化がありましたか?

セデカさん: 去年この教室を始める時には、10人くらいしか来ないのではないかと思っていました。最初の日は15人が参加して、次は26、7人、そしていまは50人くらい来るときもあります。
最初の日は、女性たちは顔をしっかりと覆い、全然口を開かず、黙って下を向いていました。話そうとはしませんでした。
この2か月あまりで、皆さんの顔から自然な笑みがこぼれるまでになっていて、とても嬉しく思います。

Q: この日本語教室に関わる教師たちは全員女性です。また教師をサポートする人たちも女性たちです。このため男性たちも、妻や娘を安心して教室に送り出すことができます。

 

◆ EAMCで学ぶアフガン女性のお話 ◆

Q:生徒の ひとりにお話を伺いました。日本には いつ来たんですか?

生徒:約2年前 、夫が日本で 仕事をしているので、移住してきました。

Q:アフガニスタンから?

生徒:はい、アフガニスタンから来ました。約2年ここに 住んでいますが、幸運なことに、こちらの機関について知り、通い始めました。

Q:お子さんを連れていらしているのですね 。

生徒:そうなんです。新しく日本に来たばかりで、知り合いもなく、言葉もできないアフガニスタンの女性たちにとって、ここに来られることは、生活の中の光で、とても有難いです。

Q:勉強の方は いかがですか?

生徒:私がここに来るのは7回目ですが、子どもを預かってくれることができ、言葉を学べる場所が必要だったので、 こちらに来られることを、本当に助かっています。外国に移住すると、誰でも同じ問題を抱えることになりますが、私 にとっても、 大きな難題となっているのが言葉です。まず、私たちアフガニスタン女性たちの大きな課題は言語ですので、言葉をしっかり学びたい。その後、少しずつ 、勉強を続けて行きたいと思っています。

Q:どんな 分野の勉強を続けたいのですか?

生徒:私の専門は、法学と政治学です。神のご加護によって、この勉強を続けたいと思っています。

 

◆ 学校法人 千葉明徳学園・福中理事長のお話 ◆

 

Q:アフガニスタン 人女性のための日本語教育プログラムは、千葉明徳学園の福中儀明理事長による協力なくしては 、今のような形で開始することはできなかったはずです。福中理事長は、この教室の開催場所に千葉明徳学園の校舎を提供しています。さらに女性たちが 連れてくる子どもたちを預かる託児サービスも、学園とつながりのある人々によるボランティア や 、理事長自身の尽力によって実現させています 。

福中理事長: イーグル・アフガン 復興協会理事長の江藤セデカさん とは、私共の学校法人の組織で働いているスタッフで、イーグル・アフガン復興協会のメンバーでもある人物を通して紹介を受けました。セデカさんは、日本に住むアフガニスタンの女性のための日本語教室を開きたいけれども、その場所が見つからないというのです。私は、学校の教室を提供するだけだったらすぐできますから、使ってください、ということで始まったわけです。

Q:なぜ、そのように迅速 な判断ができたのでしょうか 。

福中理事長: 日本の教育事情について考えてきたことがあります。ひと昔前、ふた昔前から、これからの時代は教育には情報化と国際化が大事だとずっと言われてきました。確かに情報化、国際化は進んだかもしれないけれど 、国際化については、一方通行なんじゃないだろうか。 つまり、日本で英語を勉強して外国に出て行って、活躍するという、出ていくための国際化はかなりあるけれども、逆に入ってきた人が、どういう教育を受けるのか、ということについては、ほとんどやっていないんじゃないかな 、と感じていました。
保育園、幼稚園を卒園した子どもたちが小学校に入ると、外国人の子どもたちが結構いて、なかなか日本語に苦労していると言うのを聞きますからね。学校としては、なんとかしなきゃいけないのではないかと、以前から 考えてきたのです 。
そこでこの話が来たので、 ひとつの国際化の貢献でもあるのではないかと思いました。千葉県に住むアフガニスタン人は一番多いと聞いていますので、それはやらなきゃいけない、と考えたのです。

Q:アフガニスタン人が増えているということは、地域では、日常的にも、変化が見られるのではないでしょうか 。

福中理事長: 街の中を歩いていても、ヒジャブを被った方が目立つようになってきたけれども、その人たちが日本語ができなくて困っているというところまでは思いは及んでいなくて、最初に考えたのは子どものことだけなんです。でも、子どもよりもお母さん方の方が日本語ができなくて大変だというのをセデカさんから聞き、子供だけじゃなくて、親のために何かをやらなくてはいけない、と実感しました。

Q:教室を提供するだけでなく、子どもたちの預かりでもご尽力されています。

福中理事長:こんなにたくさん子どもたちが来るとは思っていなかったんですよ、まったく。でも開いてみたら、子どもたちがいっぱい来て、 これは子どもたちを別の場所で保育しなきゃいけないということ がすぐに分かりました。幸い、千葉明徳学園には、保育士、幼稚園教諭を養成する専門の短期大学があり、そのための施設と、隣に付属幼稚園があり、そこで子どもたちを遊ばせることができます。いくらでも子どもたちが来ても大丈夫ですし、私も少し参加しようと考えたのです。私自身は 日本語を教えることはできないけれども、子どもたちと一緒に遊ことはできるから、それをやろうということをすぐに思いついたわけです。

Q:この プロジェクトの今後について、教育者としてど のように展望されていますか?

福中理事長: お母さんが一生懸命勉強しているから、子どもも少し勉強させた方がいいかな、と私は思います。江藤セデカさんも、子どもたちにダリー語を教えたいと考えているようです。母語はきちんと覚えなきゃいけないですから。様々なレッスンのアイデアが出てきています。子どもたちが学べる機会も広げていきたい、そこまで考えています。

(完)

 

 

 

オリジナルサイト

https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/fa/radio/listener/202402110600/