The Intertwining of Religion and Politics in the Israeli-Palestinian Conflict

(WAJ: イスラエル・パレスチナ問題の根本は、イスラエルによるパレスチナへの侵略・植民・占領である。そしてその過程でのアパルトヘイトとジェノサイドである。宗教は抗争の背後にある強力な理由ではあるが問題を複雑にする副要因にすぎない。過激なスラム原理主義のイデオロギーに苦しめられているアフガン人が、おなじく、宗教対立のはざまで苦しむイスラエルとパレスチナ問題を論評する興味深い主張。あたかもゴルディオスの結び目のように複雑にもつれたロープのような難問を果たして解くことができるのか。諦めて武力でたたき切るのか。アフガニスタンの独立系ジャーナルであるハシュテ・スブは、アブラハム宗教のしがらみの当事者の一人の視点から、その解決の道を提示する。「過激派のキリスト教徒は、自分たちのメシアがやってきて、ユダヤ人の裏切りによりイエスが十字架にかけられたことへの復讐を期待している。過激派ユダヤ教徒は、メシアが自分たちのためにダビデ王国を復活させてくれることを期待している。イスラム原理主義者たちは、ユダヤ人に対する最後の戦いを導くメシアを待ち望んでいる。しかし、メシアは現れず、地上で起こることは、より多くの孤児、未亡人となった女性、悲嘆にくれる父親と母親、そして予測不可能な世界規模の戦争の可能性である。」「政治を宗教の領域から遠ざけ、いかなる差別もない公正な法的枠組みの中で、パレスチナとイスラエルに2つの国家を樹立し、互いの宗教的遺跡を尊重することが、この血なまぐさい紛争に対する唯一の解決策である。」(黄色およびピンクのハイライトはWAJ))

ハシュテ・スブ 主張
2023年10月21日

イスラエル・パレスチナ紛争ほど複雑な現代の政治闘争はないだろう。この紛争は1世紀近くも続き、何万人もの命を奪い、何百万人もの人々を避難させてきた。この紛争は、中東の体にできた慢性的な傷のようなもので、出血と持続を続け、世界規模の戦争に発展する可能性さえ秘めている。

ある見方をすれば、この紛争は、地域的・国際的レベルでの地政学的・地理経済的要因が絡む、他のよく知られたグローバルな紛争と共通する。しかし、この紛争を従来の紛争とは一線を画すものにしているのは、宗教と政治が深く絡み合っていることである。この深い絡み合いによって、紛争は従来の紛争の域を超え、双方の目には神聖化された形而上学的な次元に押しあげられている。この紛争の宗教的な側面と儀式的な側面の複雑さは、人間同士の紛争での常套手段でこの複雑さを解明できなくし、経験豊富な政治専門家をも当惑させている。

この紛争で最も心を痛めるのは、その人的被害である。犠牲者の大半は、子ども、女性、高齢者、一般市民で、主にパレスチナのイスラム教徒だが、この地域に住むユダヤ教徒やキリスト教徒もいる。これらの人々は、実はこの紛争のどの戦線にも属していない。この紛争は、何百万人ものパレスチナ人から自然な生活と基本的権利を奪っている。何世代にもわたって、恐怖、抑圧、差別、移住、追放の中で生きることを余儀なくされている。彼らの固有の人権は、平和な生活、安定した未来、独立した国家であるが、彼らの子どもたちは、戦争、弾圧、包囲、収奪のない環境で成長する権利がある。彼らは差別や屈辱、脅迫を受けるいわれはなく、彼らにとってこの辛い現状を永続させる正当性はない。

しかし、なぜこのジレンマはこれほど複雑になってしまったのだろうか? その答えを見つけるには、より深い根源まで掘り下げる必要がある。今日、パレスチナとイスラエルとして知られる土地は、3つのアブラハム宗教すべてにとって等しく神聖で重要な意味を持つ。つまりユダヤ教、キリスト教、イスラム教である。それは暴力と神の命令の場所である。これら宗教、特にイスラム教とユダヤ教は、相互の関連に富む家族のようで、宗教学者によれば、他の信仰と比べるとお互い同士がもっとも類似している。現在争われている土地は、ユダヤ教徒にとっては約束の地でありソロモン神殿の跡地であり、イスラム教徒にとってはメッカと同等なものと考えられている。キリスト教徒にとって、この地はイエス・キリストの生誕地であり、キリスト教史上最も神聖な教会である復活教会がある場所である。イスラム教徒にとっては、3大聖地のひとつであり、預言者ムハンマドが夜の旅をした場所であり、最初のキブラ(祈りの方角)でもある。こうした信心は、これら宗教の神話の一部であるが、歴史家によって完全に立証されているわけではない。少なくともこれらすべてを決定的に証明する証拠はいまだ得られていない。歴史と神話の融合は、この争いのある領域をめぐる物語を形成し続けている。

民族や国家という点では、この土地はこれら3つの宗教の信者だけのものではない。歴史学者や考古学者によれば、カナン人、バビロニア人、古代パレスチナ人、ギリシャ人、ローマ人、ヘブライ人、アラブ人など、さまざまな人間の共同体や集団が2万年以上にわたってこの地域に居住してきた。何度かの戦争と激しい侵略を経て、時には完全に荒廃してしまった

このような不安定な時期が交互に繰り返された最新の段階は、大英帝国がこの地を支配下に置いた20世紀初頭にさかのぼる。当時のシオニスト組織との合意の中で、この地をユダヤ人に譲渡することが決定された。シオニズムとは、ユダヤ人の政治活動家たちによって設立された組織で、ユダヤ人国家の樹立を目指し、世界中に散らばるユダヤ人の弱体化を解消することを目的としていた。この組織の創設者たちは、宗教的な翼と自由主義的な翼の2つから構成されていた。リベラル派の優先事項は、ウガンダ、アルゼンチン、パレスチナなど、機会があればどこにでもユダヤ人のための祖国を建設することだった。宗教的な翼にとってはパレスチナだけが受け入れ可能な地であった。彼らの信念によれば、そこだけがメシアが現れる約束の地と考えられていたからである。したがって、パレスチナが選ばれたのは、終末のメシアを期待するためだった。

第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて起こった出来事は、この組織のメンバーにとってこの理想の実現をかつてないほど可能にし、最終的に1948年のイスラエル建国につながった。それ以来、この土地をめぐって何度か血なまぐさい戦争が起こったが、最も有名なものは1948年戦争、1967年戦争、1973年戦争である。インティファーダと呼ばれる民衆蜂起が1978年と2000年の2度にわたって広範に起こったのも、この紛争に関連する出来事の一部である。この点で、イスラム教徒やキリスト教徒であるパレスチナ人によって、イスラエルに対抗するためのさまざまな政党や組織が結成された。その中で最も重要なのは、世俗主義的なアプローチをとるパレスチナ解放機構(PLO)であり、その一部は後に原理主義的なアプローチをとるハマースとなった。イスラエル建国後、世界のユダヤ人の一部がイスラエルに移住し、過激な宗教政党から中道右派、左派、政治に関心のない宗教団体まで、さまざまな党派が結成された。

その一方で、この紛争を終結させるためにさまざまな国際的努力がなされてきたが、今のところ有意義な成果は得られていない。この点で最も重要な努力は、1993年にヤセル・アラファト率いるパレスチナ解放機構とイツハク・ラビン率いるイスラエル政府との間で調印されたオスロ合意である。この合意の主な内容は、「二国家共存」として知られる、イスラエルと並ぶパレスチナ政府の樹立であった。この合意の条項をパレスチナ解放機構は履行したが、イスラエル国内の原理主義派は、イスラエル政府にオスロ合意の履行を許さなかった。彼らの言い分は、合法的な組織として認められていないハマースとパレスチナ・イスラミック・ジハードがパレスチナ側に含まれていたことだった。イスラエル国内の反対派である過激派は、イツハク・ラビン首相を暗殺さえした。これらの派閥の反対理由は、完全に宗教的なものである。彼らの解釈によれば、神殿の丘/ソロモン神殿として知られる彼らの最も神聖な宗教施設は過去に2度、バビロニア人とローマ人によって破壊されたが(訳注:それぞれ、紀元前587年と紀元70年)、アル・アクサ・モスク(訳注:「遠隔のモスク」を意味し、709年に完成)および周辺施設の地下に位置している。彼らは、イスラム教徒がその上にモスクを建てたと信じている。彼らは、この聖地の不可侵性について妥協しない。他のユダヤ人グループは、最左派も正統派も、このアプローチには反対である。最左派のユダヤ人はこの点に関して世俗的なアプローチをとり、ユダヤ人とイスラム教徒の共有社会の形成を支持し、ソロモン神殿について聖典に記されていることが人々の共存の妨げになることを望んでいない。正統派ユダヤ教徒は、自分たちの宗教的記述に忠実ではあるが、約束されたメシアが現れるまで待つべきだという意味に解釈している。これは、隠された、人間の意志を超えた問題であり、メシアが現れる前に政府を形成すべきではない。メシア以外の誰にも、神が望む政府を樹立する資格はないと考えている

<参考サイト:ハマースとパレスチナ・イスラミック・ジハード>
https://www.moj.go.jp/psia/ITH/organizations/ME_N-africa/HAMAS.html
https://www.moj.go.jp/psia/ITH/organizations/ME_N-africa/PIJ.html

<アル・アクサ・モスク>
https://www.arabnews.jp/article/middle-east/article_102482/

もし二国家共存が実施され、これら3つの宗教の信者の間で聖地に関する合意が成立すれば、紛争の主な要因はなくなる。これは、世界のほとんどの国、特にアラブ諸国やイスラム諸国が強調していることである。これに対する主な障害は、双方の宗教的過激派が影響力を強めていることだ。ハマース側はイスラエル政府の承認に反対することを宗教的義務とみなし、イスラエル国内の宗教的過激派はパレスチナ政府の樹立に反対している

この点に関する国際協定や国連決議の不履行は、パレスチナ人に最も大きなダメージを与え、彼らを困難で脆弱な立場に追いやり、アパルトヘイトのような状況に晒した。この状況は、和平交渉への参加を挫折させ、ハマースやジハードのようなイデオロギー的な過激派グループに勧誘の場を与えている。他方、イスラエルのユダヤ人過激派は、パレスチナ人をハマースに還元し、パレスチナ人全体を和平に反対するジハード主義者として提示することで、問題を単純化しようとしている。

<参考サイト:国連決議>
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/plo/kokuren/2012_11_gaiyo.html

世界中のイスラム教徒にとって、アル・アクサ・モスクとエルサレムは特別な存在であるため、イラン、サウジアラビア、トルコ、エジプト、カタール、アラブ首長国連邦などがこの件に関わり、中東のパワーバランスにおけるそれぞれの役割を強調しようとしている。その中で、アメリカは特にイスラエルを支持する立場をとっており、このジレンマを国際的な困難要因たらしめている。米国がイスラエルを全面的に支持することは、ロシアや中国が域内の政治勢力の一部と同盟を結び、数式を複雑にする十分な機会を提供するからだ。ハマースやパレスチナ解放機構などの地元グループは、域内や世界の強国が関与する中で揺れ動いている。このように、パレスチナ問題は多層的な問題にまでエスカレートしており、この結び目を解くのは日に日に難しくなっている。

なぜアメリカ政府はイスラエルを誠心誠意支持するのか? それは強力な親イスラエル・ロビーがアメリカ政府の意思決定システムに影響を与えるからだ。アメリカにおける「イスラエル・ロビー」という言葉は、この国のすべてのユダヤ人を網羅しているわけではない。アメリカやヨーロッパにおける親イスラエル・ロビーの一部は、クリスチャン・シオニストと呼ばれるキリスト教原理主義者で構成されている。また別の原理主義派閥の登場だ。彼らの宗教的記述によれば、紛争地はユダヤ人の支配下になければならず、終末のメシアの出現はこの条件下でのみ可能だからである。逆に、イスラム教徒やキリスト教徒が支配するとメシアの出現が遅れる。

アメリカを含む世界中のユダヤ人の中で、正統派とリベラル派、もしくは左派は、イスラエルのパレスチナ人に対する姿勢に反対している。彼らはこの政府の存在を容認できないと考えているが、紛争の混乱の中で、こうしたグループの声はあまり聞かれなくなっている。他方、パレスチナ人、アラブ人、イスラム教徒の中で、誰もがイスラエルの存在に反対しているわけではない。彼らは、イスラエルが国際決議や条約を遵守し、パレスチナ人の独立国家樹立の権利を認めるのであれば、正当な国として関わりたいと考えている。

この対立の核心は、前述の3つの宗教の信者の中の原理主義グループにあり、彼らはいずれも終末論的なイデオロギー的立場から脱却していない。彼らは自分たちの宗教的記述の代替解釈を受け入れず、平等な参加と地位に基づく他者との共存の用意もない。これら3つの潮流は、終末のメシアの到来とその世界的支配の確立を待ち望みながら、逆同盟を結び相互に強化し合っている。それぞれのメシアは他とは異なるが、その終末期の使命が従う者たちの関心によって定義される点は変わらない。過激派のキリスト教徒は、自分たちのメシアがやってきて、ユダヤ人の裏切りによりイエスが十字架にかけられたことへの復讐を期待している。過激派ユダヤ教徒は、メシアが自分たちのためにダビデ王国を復活させてくれることを期待している。イスラム原理主義者たちは、ユダヤ人に対する最後の戦いを導くメシアを待ち望んでいる。しかし、メシアは現れない。そして地上には、孤児、夫を亡くした女性、悲嘆にくれる父親と母親がより多く現れ、予測不可能な世界規模の戦争が影を落とす

現実的な解決策は、この対立の核心が砕け散るところから始まる。これは、三者すべての宗教団体が、復讐心、排他主義、終末論の盲信を排除した道徳的な宗教解釈を採用したときにのみ達成できる。真の意味での人権は、特定の宗教や信条に関係なく、民主的で参加型の空間で確立されねばならない。このアプローチによってのみ、この爆発的な戦争の導火線を引き抜くことができ、何百万もの人々が囚われている現在の悪夢から解放される道が開かれるのである。政治を宗教の領域から遠ざけ、いかなる差別もない公正な法的枠組みの中で、パレスチナとイスラエルに2つの国家を樹立し、互いの宗教的遺跡を尊重することが、この血なまぐさい紛争に対する唯一の解決策である

原文(英語)を読む

The Intertwining of Religion and Politics in the Israeli-Palestinian Conflict

2 thoughts on “イスラエル・パレスチナ紛争における宗教と政治の絡み合い”
  1. […] さらに、イスラエル・パレスチナ紛争が宗教紛争であるとする論評が幅をきかせているが、それがいかに浅はかで、対立をあおるものでしかないかを、イスラームの国であり、かつイスラム過激主義の抑圧に苦しんでいるアフガニスタンの独立系ジャーナル=ハシュテ・スブの主張「イスラエル・パレスチナ紛争における宗教と政治の絡み合い」を紹介した。 […]

  2. […] (WAJ:ファテー・サミ氏がこの論説の冒頭で述べている、アメリカがアフガンから撤退したのは次(ウクライナと中国)に備えるためであった、ということに関しては先に掲載した米サリバン大統領補佐官の「アフガンからの撤退は、つぎに備えるためだった」でも述べられている。また、アフガニスタンに駐留していた米軍がアフガン国軍を見捨てる形で撤退した事実についてはいくつもの証言があるが現地司令官であったデビッド・ペトレイアス元CIA長官の「アフガニスタンはこうなる必要はなかった」が非常に参考になる。つづけてサミ氏は現在進行中のガザ・イスラエル戦争に関する世界の反応を収集し紹介している。論者は今回の事件の真因は宗教や民族対立などでなくイスラエルという国家による侵略と植民と占領であり国際法を踏みにじるものであることを明確にしている。ロシアによるウクライナ国境の侵犯や、パレスチナ問題の背景にあるユダヤ人差別・虐殺の歴史や宗教や民族の対立などの要因が、真因を見えにくくさせている側面があるが、それについては別稿で紹介した「イスラエル・パレスチナ紛争における宗教と政治の絡み合い」や「ガザ・イスラエル衝突-マスメディアが語らない本質」などを参照してほしい。なおサミ氏がこの間、本サイトに執筆した論説のすべては「ファテー・サミ執筆記事一覧」で読むことができる。通読すれば氏の鋭く的確な慧眼ぶりに驚かれることだろう。) […]

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