柴田望 Nozomu Shibata
詩誌「フラジゃイル」主宰 日本現代詩人会会員 (公財)北海道文学館評議員 北海道詩人協会事務局長 第57回北海道詩人協会賞(詩集『顔』) 令和3年度旭川市文化奨励賞
本年8月15日に発刊されたアフガニスタンにおける検閲と芸術の弾圧に対する詩的抗議である『詩の檻はない』の日本語版を、この運動の主唱者である「亡命詩の家」(Baamdaad – Home of Poetry – in Wxile)のソマイア・ラミシュ(Somaia Ramish)さんとともに編集、発行。以後、Baamdaadの日本代表としてこの運動の国際展開に邁進されている。
2023年12月発行の『フラジゃイル 19号』では8月24日に旭川市の「まちなかぶんか小屋」で開かれた出版記念会「世界のどの地域も夜」の公式レポートが掲載されている。(ここをクリックすればpdf版を閲覧できます。)
なお、本サイトと柴田望氏とでおこなった主要な活動の記録を閲覧できます。(ここをクリック)
以下に掲載するのは、『詩の檻はない』が誕生したいきさつを表現した柴田氏の最新作です。
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「 O.K. 」 柴田望
本当なのか?
お金をとる詐欺じゃないのか?
本当にあるのか?
詩を書いてはならないと
禁じられた国なんて
ネットにも書いてない
世界の詩人たちへメッセージだなんて
その人は存在するのか?
疑う人が存在するのと
同じように、あなたはいた
英語で交し合った、数々のメール
あなたは有名な勇気ある詩人で
お子さんは病気がちで
狙われる 命がけで
世界にメッセージを送った
規制された国には届かないし
疑う人は疑い続ける
でも世界中から詩は届いた
価値観の違いに驚く
生きているフツーが国によって恐ろしく違う
フツーじゃないフツーも時代によって変わる
禁じられていない国も
かつては禁じられていた
ある日のあなたのメールが泣いていた
泣いている絵文字をあなたが送った
カブールに新しい刑務所が建てられる
女性を閉じ込める檻を造っている
どうか日本で本を出版してほしい
アフガニスタンがタリバンに陥落した
8月15日に出版してほしい
オーケー、あと二ヶ月しかないけれど、やってみよう
かつては日本も自由に書けなかった
かつては日本も貧しかった
かつては日本も混乱していた
いまの日本にもいじめや差別はある
これは人類全体の問題かもしれないから
英語で交し合った、数々のメール
時差は7時間
詩人の順番はアルファベット?
じゃあ、あいうえお順にしよう
翻訳は誰がするの?
北海道で一番優秀な先生がするよ
表紙はなぜこの海の写真なの?
この写真は私たちの物語に合うの?
日本は海に囲まれている
日本にとって海は国境
国境を越えてあなたのメッセージは届いた
海は檻のようでもある
日本は鎖国していた
檻を破ってあなたのメッセージは届いた
波の輪のように世界中に広がっていきますように
ソマイア・ラミシュ、もしあなたが故郷を失っても
世界中の詩の中にあなたの故郷はある
オーケー、この写真でいいよ