Who Will Win the Power Struggle: Akhundzada or Haqqani?

(WAJ: アフガニスタンはアフガンのスタン、つまりアフガン族=パシュトゥーン族の国という意味。そのパシュトゥーン族のなかでも有力な2部族であるドゥラーニー族とギルザイ族が王族の時代、左翼勢力やムジャヒディーンの時代、そして現在のムッラー(イスラム僧)の時代を通して支配権を争ってきた。この論考はアフガニスタンが姿を現してきた19世紀から現代までをその史観に基づいて説明し、ターリバーン内の意見対立が今後どのような姿をとるか、予想している。その予想の上に立ち、アフガニスタンは、パシュトゥーン族だけの国ではないこと、タジク族やハザラ族それにウズベク族など多くの民族が住む多民族国家であること、イスラームにおいてもスンナ派、シーア派、諸分派の視点もいれた総合的な視点からみていく必要がある。(<シリーズ>ターリバーンの友(4):民族主義知識人)参照)

 

アモンプル(ハシュテ・スブ (アフガニスタンの独立系メディア))
2024年12月19日

ターリバーンの難民帰還大臣、ハリル・ウル・ラーマン・ハッカーニ氏(訳注:シラージュッディン・ハッカーニ氏の叔父)の暗殺(2024年12月12日)は、ターリバーン最高指導者ハイバトラー・アフンザダ師と同グループの内務大臣でハッカーニ・ネットワークの代表であるシラージュッディン・ハッカーニ氏との間の権力闘争が新たな段階に入ったことを示している。この段階は言葉だけの緊張に留まるとは考えにくい。権力闘争は激化し、解決策は単なる言葉ではなく、ライバルの物理的排除にあるように思われる。シージュッディン・ハッカーニ氏の叔父が実際にこの権力闘争の一環として暗殺されたとすれば、その持つ意味をいくつかの兆候から見て取れる。予想できるのはハッカーニ・ネットワークからの反応で、彼らは他のターリバーン派閥よりも暗殺や自爆テロにはるかに長けている。ハッカーニ・ネットワークは、敵に対してテロリストとしての潜在能力をまだ十分に発揮していない。インドのメディアが報じているように、ハイバトラー師がシラージュッディン・ハッカーニ氏を解任するつもりであれば、今後数週間から数カ月の間に権力闘争が激化し、最終的には対立に発展する可能性がある。以下の短い分析は、この長年の権力闘争における双方の長所と短所を調べ、どちらの派閥が他方に勝つためのより大きな力と資源を持っているかを評価することを目指している。

<参考記事> アフンザダ派はアフガニスタンの指導者からハッカーニを排除したい
https://www.news18.com/world/akhundzada-faction-wants-to-remove-haqqani-from-leading-afghanistan-sources-exclusive-9153654.html

 

アフガニスタンの歴史と同じくらい古いライバル関係

アフガニスタンの歴史は、ドゥラーニー族とギルザイ族の部族間の、時には公然と、時には秘密裏に、根強く続く対立によって特徴づけられてきた。この権力闘争は、アフガニスタンの歴史のどの時点でも重要性を失ったことはない。両部族が、善意と友愛の精神から、この慢性的でしばしば致命的な政治的競争を本気で脇に置いたことは一度もない。戦争で荒廃し、危機に満ちたアフガニスタンの歴史をざっと振り返ると、ギルザイ族と比べてドゥラーニー族の方が輝かしい政治的実績を維持してきたことがわかる。ギルザイ族は部族主義、偏見、偏狭さと結び付けられることが多く、それが彼らの効果的なパフォーマンスを妨げてきた。ヌール・モハメド・タラキ(訳注:アフガニスタン民主共和国(DRA)の初代革命評議会議長。1979年10月、ハフィーズッラー・アミーンにより殺害される)からアシュラフ・ガニー(訳注:2021年8月15日、ターリバーンのカーブル再占拠時に逃亡したアフガニスタン・イスラム共和国大統領)まで、ギルザイ族の指導者は、アフガニスタンの政治の舞台で通常、短命な役割を果たし、最終的には敗北と屈辱のうちに退場してきた。対照的に、アフガニスタンの現在の領土境界を形作ったアブドゥル・ラーマン・ハーン(訳注:1880年か1901年在位のアフガン国王)からハミド・カルザイ(訳注:9.11事件後アメリカの侵攻による暫定行政議長を経てアフガニスタン・イスラム共和国初代大統領に就任)に至るドゥラーニー族は、比較的成功した遺産を残した。しかし、この見解は、アブドゥル・ラーマン・ハーンの強圧的な圧政やハザラ人に対する残虐行為、あるいはターリバーンが徐々に復活する大きな要因となったハミド・カルザイ政権を悩ませた無能と腐敗の蔓延を是認するものではない。むしろ、ここでの意図は、ギルザイ族とドゥラーニー族の統治の比較分析を強調することであり、後者はより大きな成功、安定性、持続可能性を示している。

この結論は決してドゥラーニー政権を擁護するものではなく、むしろギルザイ政権と比較した場合の相対的な業績と回復力の客観的な評価である。

ドゥラーニー族とギルザイ族の長年の対立は、今やターリバーン内部でも鮮明になっている。ドゥラーニー族から枝分かれしたヌールザイ族出身のハイバトラー・アフンザダ師は現在、ドゥラーニー族を率いており、勢力拡大に努めている。一方、ギルザイ族から枝分かれしたザドラン族出身のシラージュッディン・ハッカーニ氏は、アフンザダ師の独占的傾向に断固として抵抗し、権力分配における役割の縮小を受け入れたくないと示唆している。それぞれの立場を分析すると、ターリバーンの中でハッカーニ・ネットワークに代表されるギルザイ族が「実用主義」と「穏健主義」の旗を掲げていることが分かる。この姿勢はあまりにも顕著で、欧米の主流メディアはシラージュッディン・ハッカーニ氏をターリバーン内の「唯一の反対意見」と位置づけ、「穏健派」の人物として描いているほどである。一方、ロシア、イラン、中国などターリバーンの支援国とされる国々は、同集団に対し、包摂的で穏健な政府を樹立するよう繰り返し求めてきた。こうした状況で、国際社会に頑固に反抗し、「核兵器で脅されても、屈しない」と大胆に宣言するハイバトラー師に比べ、ハッカーニ氏は外部からの支援が実現すればより有利な立場にあるようにみえる。しかし、この激化する権力闘争において、国際社会がターリバーンのいわゆる「穏健派」を積極的に支援するのか、それとも人権擁護、女性の生活への制約の撤廃、包摂的な政府の樹立、テロとの戦いなどを要求する声明や決議の発表にとどまるのかは不透明であり、国際社会がどの程度介入するのか、あるいは鼻から介入する気があるかどうかも不明である。

 

ターリバーン内の「保守派」と「実用主義者」

ターリバーンは、しばしば「保守派」と「実用派」という2つの主要な派閥に分かれている。どちらの派閥にもドゥラーニー族とギルザイ族のメンバーが含まれており、一方のグループを率いるのはドゥラーニー族のリーダーで、もう一方のグループを率いるのはギルザイ族のリーダーである。この複雑さが、ハイバトラー・アフンザダ師とシラージュッディン・ハッカーニ氏の間の現在の緊張にさらに陰謀という階層を生じさせている。ここで疑問が生じる。この権力闘争において、ドゥラーニー族の「保守派」と「実用派」の全員がターリバーン最高指導者の側に付き、ギルザイ族の「保守派」と「実用派」の全員が内務大臣を支持するのだろうか。答えがイエスであれば、ハイバトラー・アフンザダ師は、幅広いターリバーンの支持を得て、自信を持ってギルザイ族に挑戦することができ、この権力闘争でハッカーニ師を倒す可能性が大幅に高まる。しかし、答えがノーであれば、アフンザダ師がギルザイ指導者に勝利する可能性は大幅に減少する。現在、ターリバーンは最初の政権(訳注:1996年から2001年の第1次ターリバーン政権)に比べて「実用主義者」の数が増えている。これらの実用主義者は、人権、女性の権利、テロ対策、包摂的な政府の形成に関する国際的な要求に応えなければ、承認されず、ターリバーン政権は持続性に欠けることを認識している。停滞と最終的な崩壊への恐れは非常に深刻で、ターリバーン指導者間の内部不和を激化させ、武力衝突につながる可能性もある。とはいえ、ターリバーンの現在の体制では、「強硬派」が「穏健派」よりもはるかに大きな力を持っている。ドゥラーニー族の指導者内で「実用主義者」と見なされている者たちの間でさえ、ハイバトラーとハッカーニの進行中の権力闘争については沈黙が目立ち、その立場は不明確である。そうした実用主義者の一人、バラダール師がパクティアで行われたハリル・ウル・ラーマン・ハッカーニ師の葬儀の際に最近行った発言は、ターリバーン内の「実用主義者」が明確な立場を取ることを避けていることを示している。その代わりに、彼らは内部紛争を軽視し、グループ内の団結を呼びかけようとしている。バラダール師の発言は、彼の最大の懸念は国の悲惨な状況ではなく、アフガニスタンでターリバーンが構想する「イスラム体制」の崩壊の可能性であることを示唆している。この懸念だけでも、内部分裂がいかに深刻で危険なものになっているかが強調される。バラダール師は重大な亀裂を公に否定しているが、彼の発言は、ターリバーン指導者の間で政権への差し迫った危険に対する認識が高まっていることを明らかにしている。内部の緊張が高まり、グループの結束と長期的な存続が脅かされる中、この恐怖はおそらくピークに達している。

<参考投稿> バラダル副首相がターリバーンの亀裂について語り、内部分裂を示唆
https://x.com/Pak_AfgAffairs/status/1867827762779587029

 

「アミール・アル=ムウミニーン」に反対することの大きな代償

イデオロギー運動において、最高指導者は決定的かつ変革をもたらす役割を担い、グループの存在と方向性の中心となる。そのような指導者に異議を唱えるには、誰もが払えるわけではない大きな代償が伴う。個人が既存の権力と地位を保持できる唯一の無代償の行動は、指導者の命令に盲目的かつ無条件に従うことである。ターリバーンの国防大臣ムッラー・ヤクブ(訳注:ターリバーンの創設者で初代最高指導者ムハンマド・オマル師の息子)が、最高指導者への服従は洗濯板の上の死体と同等であるべきだと宣言したとき、彼は自分が支持する政権の不変かつ神聖不可侵の原則のひとつに言及していた。同様に、ターリバーンの勧善懲悪相(訳注:ハリド・ハナフィ)はかつて、「アミール」への服従は義務であると述べた。ターリバーンの枠組みでは、「アミール・アル=ムウミニーン」が最高の宗教的および政治的権威と見なされている。この宗教的側面により、指導者に異議を唱えることは極めて困難である。このような状況で、シラージュッディン・ハッカーニ氏はハイバトラー・アフンザダ師に挑戦を挑むにあたり、大きな障害に直面している。ターリバーンの内部規則によれば、指導者には内務大臣を解任する権限がある。しかし、内務大臣はシラージュッディン・ハッカーニのような著名人であっても、指導者を解任して報復する権限はない。したがって、ハッカーニはハイバトラー師に対するいかなる行動も正当化するためには、綿密に計画し、多大な努力を払わなければならない。この構造的な不均衡は、ターリバーン内の根深い階級制度を浮き彫りにするだけでなく、内部の権力闘争に伴う大きな利害関係を浮き彫りにしている。「アミール・アル=ムウミニーン」に対抗するハッカーニの取り組みには、多大な資源とエネルギーの投入だけでなく、広範な反発を招くことなく指導者の権威に挑戦するための慎重な策略も必要となるだろう。

<参考記事> ターリバーン国防相、指導者への忠誠を強く求め、服従を「洗濯板の上の死体」に例える
https://amu.tv/117768/
ターリバーン大臣、アフガニスタン国民に「美徳促進法」に従うよう呼びかける
https://bayannews.af/en/2024/11/10/taliban-minister-calls-on-afghans-to-obey-the-law-of-promotion-of-virtue/

 

有害な前例を作る恐れ

ハッカーニ氏がハイバトラー・アフンザダ師に対するクーデターを企てれば、意図せずしてアフガニスタン人民民主党(PDPA)を悩ませた党内クーデターの連鎖を彷彿とさせる前例を作ってしまう可能性がある。モハメド・ダーウード・ハーンに対する軍事クーデター(訳注:1978年4月27日)で政権を握ったPDPAは、権力闘争と内部クーデターという破壊的な伝統に巻き込まれ、この有害な遺産から抜け出すことができなかった。PDPAの統治下では、軍事クーデターが当時の政治文化に深く根付いていたため、毛沢東主義派閥でさえ同様の手段で権力を掌握しようとした。その一例が、中国派解放機構がイスラム主義派閥と協力して画策し、ソ連に支援された政権によって残酷に鎮圧されたバラ・ヒサール蜂起(訳注:Bala Hissar Uprising(1979年8月5日))である。しかし、このクーデター文化はPDPAを最終的な崩壊から救うことができなかっただけでなく、その没落を加速させた。党が権力にしがみつくために内部クーデターに頼れば頼るほど、党は崩壊の瀬戸際に近づいた。彼らの努力にもかかわらず、政権は内部の権力闘争に頼る以外に選択肢がなかったようで、PDPAは「クーデター政権」というあだ名をつけられた。

この苦い歴史から教訓を得ると、ターリバーンの一派が他の派閥に対して軍事クーデターを起こせば、アフガニスタンの政治情勢においてこの破壊的な伝統が復活する可能性が高い。たとえそのような政権交代がターリバーンに短期的な利益をもたらしたとしても、長期的には同グループの最終的な崩壊を早めることは避けられない。ターリバーン指導部はこのリスクをすでに認識しているかもしれない。クーデター成功の前例が一度作られると、クーデターの首謀者が後に同様の陰謀の犠牲にならないという保証はないことを。この権力闘争のサイクルは、政権が完全に崩壊するまで続く可能性がある。

このため、ターリバーン内で軍事クーデターが起こる可能性は今のところ低いと思われる。しかし、現在進行中の危機とターリバーンの統治の脆弱な状態を考えると、将来的に軍事クーデターを含むいかなるシナリオも完全に排除することはできない。

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