(2024年12月25日)
大地震と少数与党化
~危機をチャンスにするには?~
激動の2024年もあとわずか。なんだか年末になると毎年このフレーズを使ってきたように感じるのは私だけでしょうか。コロナパンデミックが収まっても世界的な激動は収まりません。ことしの「激動」は決して大げさではないと信じます。
年末になると各メディアや組織がその立場からの十大ニュースを発表するのが恒例です。そう思って、メディアがどんなニュースを選んだのかとネットで検索してみました。結果、かつてのように各新聞社や放送局が競って発表する、という時代ではないようです。あるいは、どこが選んでもそう変わり映えがしない、という理由からかもしれません。
国内ニュースで妥当だなと思う事件は、なんといってもトップは「能登半島地震」、「日航機・海保機 羽田で衝突」。元旦早々ふたつの惨事が文字通り日本を揺さぶりました。地震大国日本なのに、能登の復興の遅れの痛ましい現状がいまだに報道されます。いまだにつぶれたままのビルが放置されています。行政の不備への批判が止みません。自衛隊は4月にも伊豆諸島・鳥島沖でヘリ墜落事故を起こしています。(ちょうど1年前の4月にはもっと大事故、つまり第8師団師団長他幹部自衛官7人ら10人が搭乗していたヘリが墜落し犠牲となっています。)
あとは各社まちまち。私が関心をもったものをあげると、「ノーベル平和賞に日本被団協」、「袴田巌さん 再審で無罪判決」、「去年の出生数75万人余で過去最少を更新」、「新紙幣 20年ぶり」、「健康保険証が新規発行停止」。などでした。被団協の受賞に対する石破首相の「お疲れ様」発言の無責任ぶりには驚きました。袴田さんの件は、国の冤罪とくだらない意地のためひとりの人間の人生が生きたまま無にされた事実への腹立たしさ。さらに理不尽さを許さずはねのけたお姉さんや支援者のご努力にただただ頭が下がりました。少子化、新紙幣、DX、大川原化工機事件の冤罪で2021年に獄中でなくなった相嶋静夫さんの損害賠償裁判など思うところは多々ありました。
本当はもっとうえ、最上位にランク付けすべき事件は「衆院選 与党過半数割れ」、「自民新総裁に石破氏」。それを生んだ闇献金問題ではないでしょうか。国会議員の特権意識が暴露された結果、国会議員全体、政治への不信が噴き出た民意でした。そして最後に、どのマスコミも上げたがらない「重要選挙でSNSなどネット大活躍」。
特に最後のネットの影響力は、旧来のマスメディアの在り方に一石を投じるものであっただけに、取り上げるマスメディアは少ないようです。むしろ、これを機会に選挙におけるネット利用を制限しようとする動きが出てきているのは要警戒です。むしろ、「公平・中立」という実行不可能な「建前論」が、虚実ないまぜになったクチコミメディアに浸食されている事実にこそ目を向ける必要があるでしょう。そうしなければますます、新聞やテレビを見ない世代が増えていくだけではないでしょうか、ネ、マスコミさん。
自公与党が過半数を取れず少数与党に転落したのは、ニュースのランク付けでは表現できないほどの衝撃を日本社会に与えるのではないでしょうか。トランプ氏と個人的な深い関係を築いた安倍氏が生きていれば状況は善かれ悪しかれ今とはまったく変わったかもしれません。が、彼が銃殺され、自民党では常に少数派で反安倍派の石破氏が首相になったというのもなにか日本の未来を暗示する不吉なものを感じます。
国際ニュースは何といっても「トランプ氏の大統領返り咲き」、「イスラエル・ガザ戦争(本当はイスラエルのパレスチナ侵略なんですが)」、「ウクライナ戦争 北朝鮮参戦」「中国経済失速」「韓国戒厳令騒ぎ」「シリア・アサド政権崩壊」「イギリス総選挙 政権交代」「イラン・ライシ大統領ら死亡」「台湾総統選 民進党・頼清徳氏が当選」「ヨーロッパ ポピュリストの台頭」などでしょうか。ここでもトランプ再選の衝撃が大きいですね。
トランプ氏が石破氏を袖にして安倍昭恵氏、孫氏に会ったというのも、因縁含みのイヤーな予感がにじみ出ます。たとえタテマエ論であったとしても理想を語る政治でなく、とことん利害、実利を押し通すプラグマティズム、さらには縁故主義にアメリカ発で世界が毒されていくような気がします。
しかしよくよく考えてみると、アメリカという国は、哲学ではプラグマティズムを信奉する国です。エゴに徹して最終的には腕力で物事を決める実力万能主義の国です。トランプ氏はその立場をオブラートに包まずに素直に表明しているだけ。逆に言えば理解しやすいのかもしれません。かといって理屈や十分な説明で制御できる相手ではないでしょう。
2025年は「激動の2024年」の後の正念場の年かもしれません。世界各国人類の英知と良心を信じて自分の身の回りでできる善きことに専心していきたいと思います。
ウエッブ・アフガンは世界の荒波にもまれる木の葉のような存在です。しかし来年も、アフガニスタンのようにグローバルサウスのなかでも最貧国のしかも過激で偏頗なイスラームを暴力的に強制する国で闘う人びとの視点に立って、日本や世界を見ていきます。
末筆ながら、われわれのささやかなジャーナリズム活動にお付き合いいただいている皆様に、来る年も、従来に変わらぬご支援とご鞭撻を賜ります様、お願いいたします。
新しい年の皆さまのご健康とご繁栄を祈念して本年最後のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
【野口壽一】