The Collapse of Afghanistan’s Republic and the Taliban’s Return to Power: Causes and Consequences

 

(WAJ: 2021年8月に、ターリバーンが復帰して3年半になろうとしている。その間、第1次ターリバーン支配には戻らないと公約していたターリバーンの支配は、第1期を凌駕するような極端な政策を実施している。国内だけにとどまらず、パキスタンと米国の後ろ盾によって生まれたターリバーンだったが、現在はそのパキスタンとの対立を生じるまでになり、地域における危険性をましている。本稿では、今後の同地域の状況を見ていくためにも、ターリバーンの復活とアフガニスタン政府の最終的な崩壊につながった要因を振り返っておく。なおサミ氏がこの間、本サイトに執筆した論説のすべては「ファテー・サミ執筆記事一覧」で閲読できる。)

 

ファテー・サミ(本サイト・アフガン主筆)
2025年3月16日

はじめに

アフガニスタン共和国の崩壊とターリバーン首長国の台頭は、内部の弱点、地域の力学、および外国の介入の組み合わせによって形作られた複雑な結果だ。アメリカの戦略的誤算、アフガニスタン政府内の腐敗、近隣諸国の影響などの主要な要因が、アフガニスタン国家の急速な崩壊に決定的な役割を果たした。さらに、米国、パキスタン、イラン、ロシアなどの世界大国の関与が、アフガニスタンの政治情勢の軌道をさらに形作った。これらの相互に関連し合った要素が、どのようにしてターリバーンの復活とアフガニスタン政府の最終的な崩壊につながったのかを以下に概説する。

アフガニスタン共和国の崩壊とそれに続くターリバーンの台頭は、特に、内外の要因や米国の政策変更との複雑な絡み合いに深く根ざしている。パキスタンにおけるターリバーンの起源は、テロリスト集団が地政学的な対立の代理人や仲介者としてどのように利用されてきたかを理解する上で極めて重要である。冷戦期には、米国はソ連に対する対抗措置としてムジャヒディーンを利用し、2020年代のアフガニスタン情勢においては、テロリスト集団が戦略的ライバルを弱体化させるための代理部隊として直接利用されている明確な例を示している。

アフガニスタンにおけるアメリカの駐留が、しばしば、テロと戦うための任務として描かれる一方、一部のアナリストは、20年間のアメリカの関与の理由はより多面的で複雑であると指摘する。しかし、よく見ると、状況は思ったほど複雑ではない。戦略的な誤り、変化する国際力学、近隣諸国、特にアフガニスタンの地域のライバル諸国の政治的・軍事的懸念が、アフガニスタンの運命を形作る上で重要な役割を果たしたのである。

 

アフガニスタンにおける米国の実績

表向きはテロとの戦いと人権促進を目的としていた米国のアフガニスタンへの20年間の関与は、一連の矛盾と戦略的な失敗によって特徴づけられた。アメリカは長期にわたる駐留にもかかわらず、蔓延する汚職や政府の弱体化など、アフガニスタンにおける重大な国内課題を解決できなかった。米国はしばしば、その使命は人権を守ることだと主張してきたが、ドーハでターリバーンと迅速に妥協し撤退するという決定は、これらの主張と矛盾し、その真の目的に疑問を投げかけた。

本質的だがあまり取り上げられていない疑問は、アメリカが意図的にターリバーンに権力を譲ったのかどうかという点だ。アメリカは直接的に権力を移譲しなかったと主張する人もいるが、ターリバーンとの直接交渉、アフガニスタンからの迅速な撤退、脆弱なアフガニスタン政府の樹立など、アメリカの行動が間接的にターリバーンの復活を促進したことを示す証拠がある。アメリカの協力と妥協がなければ、特にアシュラフ・ガニーを大統領に任命しなければ、ターリバーンが権力の座に返り咲く可能性は遥かに低かっただろう。アメリカの政策立案者の誤算が、アフガニスタン国内の不安定さとアフガニスタン軍の急速な崩壊と相まって、ターリバーンの復活にとって完璧な嵐を作り出した。

 

外部からの影響と地域力学

2021年に米軍を撤退させるとの決定は、特にアフガニスタンの近隣諸国からの外部圧力に大きく影響された。パキスタン、イラン、ロシアは、それぞれが独自の利益を持っており、この地域におけるアメリカの影響力を縮小し、ターリバーンの立場を強化しようとした。パキスタンは、ターリバーンの権力復帰を促進する主要なプレーヤーであり、ターリバーンをアフガニスタンでの利益を守り、インドの影響力に対抗するための戦略的同盟先と見なしていた。イランとロシアは、歴史的にターリバーンに反対していたが、ターリバーンが地域における米国の影響力を制限するのに役立つことを認識し、ターリバーンの米国との交渉を支持した。

パキスタンの役割は特に重要だった。ターリバーンの諜報機関であるISI(訳注:訳注パキスタンの軍統合情報局)は、紛争を通じて、軍事的・兵站的支援を含め、ターリバーンに対して広範な支援を提供した。この支援により、ターリバーンは作戦を維持し、領土支配を拡大し続けることができた。パキスタンがカーブルに友好的な、あるいは少なくとも中立的な政権を持つという戦略的利益が、和平プロセスと2020年のドーハ会談への関与の原動力となった。パキスタンや他の地域の関係者からの圧力により、米国は急いで撤退を余儀なくされ、アフガニスタン政府は急速に崩壊し、ターリバーンは迅速に権力の座に返り咲いた。

 

米国と国内の圧力

米国の撤退は、国内要因によっても形成された。アフガニスタンでの長期にわたる戦争は、大衆の大きな疲労をもたらし、アメリカ人は高い人的・財政的コストにますます幻滅していった。この不満は、戦争を終わらせるために米国の政策立案者に大きな政治的圧力を生み出した。2021年に就任したジョー・バイデン大統領は、アメリカの「終わりなき戦争」を終わらせ、他の地政学的な優先事項に焦点を移すという公約を掲げて選挙運動を行った。バイデン政権はドーハ合意を堅持したが、適切な計画なしに性急に実行された撤退プロセスは、アフガニスタン政府の混乱した崩壊につながった。

 

政府の崩壊に寄与する内部要因

国内的には、アフガニスタン政府は多くの課題に悩まされていた。汚職、非効率性、正当性の欠如が、アフガニスタン国民の支持を遠ざけ、政府は支配を維持できなかった。米国とNATOから多額の財政的・軍事的支援を受けていたにもかかわらず、アフガニスタン国軍と警察は、士気の低さ、汚職、不十分な訓練などの問題に苦しんでいた。これらの弱点はターリバーンに突かれ、彼らは比較的簡単に国の主要地域を占領することができた。

そして崩壊の鍵は、アフガニスタン政府内の弱点、特にアシュラフ・ガニー大統領による軍の指導部の意図的な入れ替えだった。経験豊富な軍参謀は、経験の浅いパシュトゥーン人将校に置き換えられ、その多くがターリバーンに同情的だった。この行動はアフガニスタン国軍を弱体化させ、ターリバーンの復活への道を開いた。さらに、ターリバーンの囚人5000人以上が釈放されたことで(訳注:ドーハ会談で合意された)、その多くが殺害や地雷の設置などの暴力行為に長けており、ターリバーンはさらに強化された。アシュラフ・ガニーは、これらの囚人たちが主にひとつの言語、つまりパシュトゥーン人の言語であるパシュトゥ語を話すことに目をつけただけだったが、危険な人物をターリバーンの隊列に招き入れるという悪手となって、彼らの軍事的成功を加速させた。
アメリカの誤算と近隣諸国の影響と相まって、これらの要因がターリバーンの権力復帰とアフガニスタン政府の最終的な崩壊において中心的な役割を果たした。

 

アシュラフ・ガニーの逃亡と政府の崩壊

アフガニスタン政府の崩壊で最も劇的な瞬間のひとつは、2021年8月のアシュラフ・ガニー大統領の突然の逃亡だった。ガニー大統領が主要当局者や軍司令官に知らせずにカーブルから脱出するという決定をしたことが、権力の空白を作り出した。米国の広範な諜報能力を考えると、ターリバーンの急速な進軍がもっと早く発見されなかったのは驚くべきことだ。このことから、ガニーの辞任は、アメリカとターリバーンの間で事前に取り決められた取引の一部だったのではないかと推測する人もいる。アフガニスタン政府がターリバーンの進軍に対応できなかったことは、カーブルの政治構造の崩壊をさらに例示している。

 

ザルメイ・ハリルザドの役割と部族の影響

米国のアフガニスタン和平担当特別代表であるザルメイ・ハリルザドは、2020年のドーハ合意につながった交渉で重要な役割を果たした。パシュトゥーン人の出身であるハリルザドは、多くの批評家が信じる所によるとターリバーンと個人的なつながりを持っており、それが合意形成に影響を及ぼした。ハリルザドはターリバーンとの取引において過度に楽観的であり、暴力と弾圧の歴史にもかかわらず、彼らを正当な交渉相手として信用したと主張する人もいる。ドーハ合意におけるターリバーンへの譲歩には、米軍の撤退の他に、人権及びテロ対策の保証の未確保が含まれ、ターリバーンが権力の座に返り咲くための舞台となった。

 

代理戦争と戦略目標

代理戦争の概念は、長い間、アフガニスタンの政治情勢の中心となってきた。代理戦争は、国家が直接的な軍事的関与なしに戦略目標を達成することを可能にする。1980年代、アメリカはソ連のアフガニスタン侵攻に対抗するため、ムジャヒディーンを支援した。同様に、米国は近年、戦略的影響力を維持しながら軍事的負担を軽減するために、ターリバーンとの関与を模索している。

 

地域大国とその影響

地域大国は、アフガニスタンの政治において極めて重要な役割を果たした。パキスタンは長い間ターリバーンを支援し、財政的、兵站的、軍事的支援を提供してきた。この支援は、ターリバーンが効果的に活動する能力を維持し、アフガニスタンでの地位を確保する上で極めて重要だった。パキスタンが、アメリカの撤退を確保することを目的としたドーハ和平交渉に関与したことで、アフガニスタン問題における主要な要素としての役割がさらに強固になった。

イランとターリバーンの関係はもっと複雑だ。両国は歴史的に敵対していたが、イランはターリバーンを米国の影響力に対する潜在的な対抗手段と見なしていた。時が経つにつれ、イランはターリバーンと密かに関係するようになり、この地域におけるイランの戦略的利益を守るために彼らに財政的・軍事的支援を提供し始めた。同様に、中央アジアにおけるアメリカの存在を警戒したロシアは、この地域におけるアメリカの影響力を減らすためにターリバーンを支援するようになった。

 

アメリカが支援したアフガニスタン政府の失態

アメリカが支援するアフガニスタン政府は、多くの人々が傀儡政権と見なしており、ターリバーンと効果的に対決する正当性を欠いていた。強力で自立した政府を樹立できなかったため、アフガニスタン国家はターリバーンの前進に対して脆弱になった。ターリバーンは、ゲリラ戦術、心理戦、地元民の支援を駆使して、ターリバーンの猛攻に抵抗するために必要な団結力と結束を欠いていたアフガニスタン政府の権威を失墜させた。

 

まとめ

アフガニスタン政府の崩壊とターリバーンの復活は、国内の政治的機能不全、外部からの圧力、戦略的な誤算が組み合わさった結果だった。アフガニスタンの隣国、特にパキスタン、イラン、ロシアは、ターリバーンの帰還を支援する上で重要な役割を果たし、それぞれが独自の戦略的利益を追求した。米国の撤退は、国内の疲労と国際的な圧力の両方の影響を受け、アフガニスタン国家の崩壊への道をさらに開いた。アフガニスタン政府の内部の弱点は、汚職、民族分裂、そして無力な軍隊によって悪化し、ターリバーンが再びアフガニスタンを支配する条件を作り出した。

 

参考文献と参考文献:

書物:

1. Coll, Stephen. Directorate S: The C.I.A. and America’s Secret Wars in Afghanistan and Pakistan. Penguin Press, 2018.

本書は、アフガニスタンとパキスタンにおける米国の諜報活動を詳細に考察し、米国の関与とターリバーンの台頭の秘密の側面を詳述している。

2. Rashid, Ahmed. Taliban: Militant Islam, Oil, and Fundamentalism in Central Asia. Yale University Press, 2001.

ターリバーンの出現に関する独創的な研究で、そのルーツ、イデオロギー、そしてターリバーンが権力を握る上での地域大国の役割を検証している。

3. Kaldor, Mary. New and Old Wars: Organized Violence in a Global Era. Stanford University Press, 2012.

アフガニスタンでの米国の戦争を含む現代の戦争の性質を探り、戦略の変化と代理軍の使用を強調する。そのためターリバーンの台頭の文脈を理解するのに参考できる。

研究誌:

1. Berman, Ilana. “Afghanistan and the Geopolitics of the Taliban.” Journal of International Affairs, vol. 74, no. 1, 2020, pp. 45-60.

本稿では、ターリバーンの地政学的な役割と、ターリバーンが権力の座に返り咲くまでの数年間におけるパキスタン、イラン、ロシアなどの地域関係者との関係を分析している。

2.Giustozzi, Antonio. “The Taliban’s Return to Power: A Political Economy Perspective.” Central Asian Survey, vol. 39, no. 2, 2021, pp. 197-212.

ターリバーンの復活を学術的に分析し、ターリバーンの権力復帰を可能にした政治的・経済的要因に焦点を当てている。

3.Kuznar, Lawrence A. “The Role of Ethnic Divisions in the Fall of the Afghan Government.” Ethnic and Racial Studies, vol. 44, no. 7, 2021, pp. 1125-1140.

本稿では、アフガニスタン国内の民族力学、特にアフガニスタン政府の崩壊に貢献した軍事的・政治的決定におけるパシュトゥーン族主義の役割について考察する。

レポート:

1.United Nations Assistance Mission in Afghanistan (UNAMA). The Situation in Afghanistan and Its Impact on Regional Stability. United Nations, 2021.

この公式の国連報告書は、アフガニスタンの国内状況、紛争に影響を与えた地域的要因、および米国の撤退後の政府の急速な崩壊の概要を示している。

2.International Crisis Group. The Taliban’s Path to Power: The Resurgence of an Insurgency. International Crisis Group, 2021.

ターリバーンの復活と、ターリバーンが権力の座に返り咲くまでの地域力学を追跡した国際危機グループによる詳細なレポート。

ウェブサイト:
1. The United States Institute of Peace (USIP). “Afghanistan: The Fall of Kabul and the Return of the Taliban.” www.usip.org, 2021. https://www.usip.org

カーブル陥落と米国の撤退に関する包括的な分析と、ターリバーンの帰還とその世界的な影響についての洞察。

2. BBC News. “Afghanistan: How the Taliban Took Control.” www.bbc.com, 2021. https://www.bbc.com

アフガニスタンでのターリバーンの復活をめぐる出来事のタイムライン(主要人物へのインタビューやアフガニスタン政府の崩壊の分析を含む)。

3. Council on Foreign Relations (CFR). “The Taliban’s Return and the Future of Afghanistan.” www.cfr.org, 2021. https://www.cfr.org

ターリバーンの権力復帰と、アフガニスタンと周辺諸国に対する地政学的な影響についての洞察を提供する記事。