Global Poetry Night – Messages from Participants <II>
==参加者からのメッセージ第1弾はここをクリックしてご覧ください==
(WAJ: 今回は、グローバル・ポエトリー・ナイト参加者の声<第2弾>。フランス語版『詩の檻はない』の発刊を記念して、作者が自作の詩を朗読するZoomイベント、リレー形式で地球を一周するぶっ通し企画だ。(日本時間1月21日(日)午前4時から午後2時))
参加者の声
日本
● 岡和田晃
多言語・多文化を介した「惑星思考(プラネタリティ)」の実践
圧政に対して「文学」をもって抵抗するのは、無意味な自己満足にすぎないのではないか――そうした通念を、軽やかに飛び越えてなされたのが、フランスペンクラブ主宰で2024年1月21日に開催された、« Global Poetry Night: A Stand Against Tyranny and Darkness in Afghanistan »だろう。
フランスPENは『詩の檻はない』の企画を、作品の募集段階から応援しており、それは私も「茨城新聞」2023年8月27日号に書いたことがある。同クラブの新会長に就任されたキャロル・メスロビアンさんは、『詩の檻はない』のフランス語版『Nulle prison n’enfermera ton poème』にも寄稿なさっており、フランスPENが総力を結集してこのイベントに携わっているようで、「文学」を僭称した冷笑主義的な反動性に日頃から接している身からすると、胸がすくように痛快な思いを抱いた。・・・【pdfで全文を読む】
(現代詩作家、文芸評論家、東海大学講師。北海道生まれ、著書に『「世界内戦」とわずかな希望』『反ヘイト・反新自由主義の批評精神』『掠れた曙光』ほか多数)
<以下敬称略到着順>
● 大田美和
夜明けを招く希望の灯
この歴史的な地球規模の詩のイベントの成功は、今後も闇を照らし、夜明けを招く希望の灯となるだろうと確信している。世界の闇は深まり、「世界のどの地域も夜」(ソマイア・ラミシュ)なのだから。
私は詩の朗読の前に次のようなスピーチをした。「この詩を書いていたとき、土木工事によって用水路を作り、砂漠を緑の草原に変えたカカ・ムラド(中村哲医師)のことを思いました。この詩が出版された後、「アジャ(おばあさま)」という短編小説を読みました。アフガニスタンの未亡人が、他の女たちと協力してショベルとツルハシで溝を掘り、村を洪水から守ったという話です。智慧と勇気とリーダーシップがあれば、たとえ女や子供であっても、みんなを救うことができるのです。ソマイアさん、12月に来日したあなたは、私たちに、智慧と勇気とリーダーシップの模範を示してくれました。私たちはあなたについていきます。連帯の挨拶を送ります。ありがとうございました」。
朗読会というイベントというより、自由の価値と詩の社会的役割を信じる詩人の友として、友情を確かめ合う時間であり、世界にこれほど異なる言語や詩の表現があることの豊かさを楽しむ時間だった。日本の詩人たちの作品の多様さを誇りに思った。カロルさん、セシルさん、ソマイアさん、皆さん、ありがとう。
(歌人・詩人・中央大学教授(英文学)、著書に、既刊四歌集・詩・エッセイを収録した『大田美和の本』、エッセイ集『世界の果てまでも』、『大田美和詩集二〇〇四ー二〇二一』、研究書『アン・ブロンテ二十一世紀の再評価』、第五歌集『とどまれ』など。)
● 佐川亜紀
詩の世界的な力に感動
アフガニスタンにおける表現の自由と女性の人権回復を求める世界ポエトリー・ナイトに参加できて、たいへん光栄で、詩人の皆さんの朗読と運営された熱意に心打たれました。
中央ヨーロッパ時間の夜8時に開始され、朝6時まで徹夜で続けられたZOOMイベントは、日本時間で、1月21日の午前4時から始まり、詩の夜明けを感じさせるような会でした。
世界中の詩人の熱い声を集めたフランスペンクラブのセシル・ウムアニさん、キャロル・メスロビーアンさん、バームダードのソマイア・ラミシュさん、すべての詩人に心からの敬意と感謝を捧げます。フランス語の『詩の檻はない』を出版して下さったことにも、限りない御礼を申し上げます。拙詩をフランス語でセシルさんにリズム豊かに朗読していただき、とてもうれしく、ありがたく思いました。
ソマイア・ラミシュさんの勇気ある真剣な詩的抗議によって、多くの共感が生まれ、大きな広がりに発展しました。世界を暗闇と沈黙で覆おうとする権力に対する危機をいたるところで詩人が鋭敏に感じ取り、自由と平和を求める意欲の高まりを直に感じることができ、たいへん励まされました。
なにより「詩」が、社会的な力を持ち、世界中の人々が「詩の力」を信じていることに感動しました。
ソマイア・ラミシュさんが言う「詩の力」は、「抑圧と不正義に対する抗議の声をあげ続けること」です。フランスのペンクラブ会長メスロビーアンさんも自由の象徴としての詩の批判性を重んじ、「詩の抑圧は自由そのものの抑圧に等しい」と主張されました。
日本からは、12人の詩人の方々が積極的に参加され、力づけられました。日本は内に籠りがちと言われますが、こんなに意欲的に発信されるのは、ソマイアさん、野口壽一さん、柴田望さん、岡和田晃さん、大田美和さんらはじめ参加詩人の誠実な取り組みのお蔭です。
アフガニスタンの女性たちにとって、詩を書き、朗読し、顔を見せることは命がけです。弾圧も厳しくなるなかで、彼女たちを守るために、今後も詩の世界的連帯の輪を広げたいと思います。
(詩集『死者を再び孕む夢』『押し花』『在日コリアン詩選集』『日韓環境詩選集 地球は美しい』など。日本現代詩人会、日本詩人クラブ、横浜詩人会、日本社会文学会、各会員)
● ゆずりはすみれ
言葉も、こころも、からだも、他者に奪われていいものなど何一つない
昨年のソマイア・ラミシュさんによる呼びかけに心を動かされた一人として、また、『NO JAIL CAN CONFINE YOUR POEM 詩の檻はない』に寄稿した一人として、グローバル・ポエトリー・ナイトに参加させていただき光栄でした。当日、私は予定があり、短い時間しか他の詩人たちと同席することが叶いませんでしたが、後日、アーカイブ映像で改めて様々な詩人の朗読を聴きました。異なる言語、異なる背景を持つ人々(私も含めてです)が「詩」と「言葉」、そして同じ思いのもとに集い、一つになって声をあげる、そのことの強さと切実さを、今振り返っても切々と感じます。詩人や芸術家たちに自らの表現を禁じることにも、女性が勉強し学ぶことを禁じることにも、私は反対です。言葉も、こころも、からだも、他者に奪われていいものなど何一つないと思います。
世界中の同じ思いを持つ詩人たちの声が、詩人、芸術家に関わらず、アフガニスタンの人々の力になれることを祈ります。
(雑誌「ユリイカ」にて2020年「ユリイカの新人」。静岡新聞での連載「暮らしの音たち」にて詩を担当。掛川市で開催された「かけがわ茶エンナーレ2020+1」にて詩作品の制作・展示。詩集『かんむりをのせる』新装版、個人詩誌『いちがつむいか』を年1回発行など)
● 二条千河
同じ地球という星の上で、「時」の流れは、いったいどこで歪んでしまうのか
「あなたはどの時間帯にいるのですか?」とはソマイア・ラミシュさんの詩の一節だが、まことに私たちはどの時間軸を生きているのだろう、と思わされた。
タリバンという固有名詞を初めて知ったころには、当然ながらまだZoomも存在せずSNSも広まっていなかった。世界中の詩人がリアルタイムで詩を読み継ぐグローバルなイベントに、北海道の片田舎にいながら参加できる日が来るなどとは想像もしていなかった。都会に住んでいないことを、もはや行動しないことの言い訳にできないほどに、時代は進んでいる。
けれど、その進んだ技術を駆使しながら私たちの対峙している現実はどうだろう。芸術弾圧も女性への抑圧も、明らかに時代を逆行している。同じ地球という星の上で、「時」の流れは、いったいどこで歪んでしまうのか。
そして、「詩」は。進んでいるのか、戻っているのか、それとも有史以前からずっと変わらずにいるものなのか。真夜中のフランスをディスプレイの中に覗き見ながら、現地より8時間ほど先行する時計を傍らに、そんなことを考えた冬の朝だった。
(北海道生まれの詩人・文筆家。2021年に上梓した第三詩集『亡骸のクロニクル』で日本詩人クラブ新人賞受賞。ほかに詩集『赤壁が燃える日-現代詩「三国志」-』、『宇宙リンゴのID』など)
海外 (氏名のカタカナ読みはスペルを英語風に読んで表記したものです。)
● Lyliane Lajoinie(リリアン・ラジョイニー)(フランス)
グルーバル・ポエトリー・ナイトは実に強力で平和的なツール
アフガニスタンの人々、とりわけアフガニスタンの女性たちのために、いくらかでも自由と民主主義を回復させるために尽力されたことをお祝いします。
グローバル・ポエトリーナイト(GPN)に参加したのは今回が初めてでしたが、世界各地から声が寄せられるアンソロジーというプロジェクトは、それ自体がすでに非常に印象的で力強いものでした。アンソロジーに参加した詩人たちは、彼らの声に耳を傾け、彼らの目に宿る暖かい光を見ることによって、仲間の詩人たちの手、心、そして精神に触れることができたました。
GPNは実に強力で平和的なツールに思えます。 アフガニスタンにおける言論と思想の自由のための闘いは、このような形で続けられることでしょう。
(リオン在住、フランス・ペンクラブ会員)
● Christopher Merrill(クリストファー・メリル)(アメリカ合衆国)
詩人が団結すれば詩も何事かを起こすことができる
「詩は何も起こせない」。これはW・H・オーデンの有名な言葉です。それでも、グローバル・ポエトリー・ナイトによって生み出された仲間意識の精神は、最も抑圧的な状況下でも詩が存在する空間を維持するという大義のもとに詩人たちが団結すると、良いことが起こり、世界に新たなつながりや生き方を刺激することを示唆しています。何よりも、私たちの一晩の朗読会は、ターリバーンの残酷な権威主義的呪縛の下で暮らすすべてのアフガニスタン人の苦境に光を当てました。
詩人の皆様に感謝の気持ちを込めて
(アイオワ大学インターナショナル・ライティングプログラム・ディレクター
https://iwp.uiowa.edu
www.christophermerrillbooks.com)
● Dianne L Knox(ダイアン・エル・ノックス)(アメリカ合衆国)
この草の根運動は、行動と構造の変化を達成するための方法
私は、私の詩『Unexiled Poet(追放されざる詩人)』で弾圧や検閲に反対する詩人の一員になれることに興奮しました。イベントはとてもよく組織されていました。フランス語、ペルシア語、日本語、その他の言語は理解できませんでしたが、朗読の一つ一つに心を感じることができました。女性を応援してくれる男性が多くて新鮮で嬉しかった。この草の根運動は、行動と構造の変化を達成するための方法です。アフガニスタンの女性は勇敢で強いです。決してあきらめない!
またお誘いがあれば喜んで参加させていただきます。
愛をこめて
(アイオワ大学卒の詩人、詩集やインスタレーションあり)
● Vinith Bhandari(ヴィニス・バンダリ)(インド)
詩はあらゆる方法で私たちを団結させる
グローバル・ポエトリーナイト(GPN )は神秘的な夜であり、貴重な経験でした。
詩はあらゆる方法で私たちを団結させます。私が詩の中で描写しようとしているのと同じように、詩人が挑む旅は、私たち全員が共感できるものです。それは私たち全員が、自分たちの世界、闘争、そして忍耐の中でそれを理解できることを願っています。
私は常に、詩が読者や聞き手によって認識されるという考えが好きです。自分たちのやり方で。優れたイメージを持って、私たちは独自の世界を冒険し、私たちが選んだ現実の中で詩を体験します。
(インドの詩人。ケンブリッジ大学を卒業後オランダに移住。ペルシャ語とウルドゥ語の作家の影響を強く受け、ヒンディー語と英語で執筆している。)
● Shirani Rajapakse(シラニ・ラージャパクサ)(スリランカ)
私たちがありのままの個人として扱われることを
『詩の檻はない(フランス語版)』アンソロジーと詩の朗読回に参加する機会をいただきありがとうございます。私は、アフガニスタンの女性たちがすぐに何の障害もなく自分の夢を追求できるようになることを願っています。また、あらゆる場所で女性に対するあらゆる抑圧がなくなり、私たちがありのままの個人として扱われることを願っています
(詩人、短編小説作家。スリランカ、英国、米国、香港で受賞。世界の多くの雑誌やアンソロジーに収録されている。)
● Chiran C (チラン・シー)(ネパール)
グローバルな詩の朗読会は闇の勢力に反抗する芸術の力の強力な証拠
キャロル様(フランスペンクラブ会長、今回のGPNの主宰者)、心のこもったメールをありがとうございました。あなたの言葉は深く響き、詩的な集まりの夜から私の中で湧き起こった感情を映し出しています。このような重要な機会に参加できたことは本当に光栄であり、特権でした。国境や国境を越えた詩のエネルギー、情熱、純粋な美しさは、まさに魔法そのものでした。本当に美しく快い夜でした。
あなたのリーダーシップとビジョンは、夢見ることしかできなかった方法で私たちを団結させました。世界の詩の夜は、私たちを中世の暗闇に追いやろうとする闇の勢力に団結し、インスピレーションを与え、反抗する芸術の力の強力な証拠として存在しています。
素晴らしいイベントに参加する機会をいただいたこと、心より感謝申し上げます。フランスペンクラブとその崇高な使命に対する私の支持は今後も揺るぎないものであることをご認識ください。私は皆さんの最新情報を心待ちにしており、文学の探求と団結の旅を続けることを楽しみにしています。
ソマイア・ラミシュ(GPNを主宰したバームダードの創立者)、セシル・ウムアニ(フランス・ペンクラブ)、そして少女や女性の権利を阻止する中世の戦略が今世紀には機能しないと野蛮な勢力に対して警告するために、皆さんが取り組んでいる素晴らしい仕事に本当に感謝しています。
創造性、回復力、そして無限の喜びに満ちた一年になりますようお祈り申し上げます。
お体お大事に。
(職業はジャーナリスト。ネパール通信社の上級記者研編集者を経て国連のネパール特派員、その後ロンドンに数年間駐在し、多くのメディアに記事や詩を執筆している。)