What’s behind the escalating tensions between Pakistan and Afghanistan?
A Good Chat with Asfandyar Mir on the latest strikes – and what to watch.
アスファンディヤル・ミール氏との最新の攻撃、そして注目すべき点についての対話
(WAJ: 今回のパキスタンとアフガニスタンの軍事衝突の発生は、長年続くデュランドライン紛争の枠をはるかに超えた危険なものといえる。その衝突の背景には民族主義的部族主義的テロリズムの動きがありそれに周辺諸国(中央アジア、イラン、インドなど)も巻き込まれるおそれがある。インドとパキスタンは核保有国であり最近実際に武力衝突も起こしている。アメリカの南アジアの専門家が今回のパキスタンのアフガン空爆をふくむ軍事衝突の原因、背景、展望をどう見ているか、興味深い問題提起がなされている。)
2025年10月13日
クリストファー・クラリー(Good Authority編集長)とアスファンディヤル・ミール(スティムソン・センター南アジア担当シニアフェロー)
(記事要旨)
2025年10月9〜10夜、パキスタンはアフガニスタン領内への空爆を実施し、首都カーブルでも攻撃が行われた可能性が高い。標的は反パキスタン武装組織TTP(パキスタン・ターリバーン運動)の車列で、最高指導者ムフティ・ヌールワリ・メフスードを狙ったとの観測もあるが、生存説が有力で死亡者の特定は不明。東部パクティーカー州バルマル地区のTTP拠点にも別個に空爆があった。直近の引き金は9〜10月に西部パキスタンで続いた攻撃で、2025年の治安部隊死者は過去最悪ペース。パキスタンはターリバーンがTTPなど反パキスタン勢力に越境の「聖域」を与えているとみなし、対ターリバーン感情は2021年のターリバーン復権以降悪化した。これまでも東部国境地帯への空爆はあったが、カーブル攻撃は一線を越えるもので、アフガン政治的にもターリバーンにとって屈辱度が高い。
ターリバーンは国境のパキスタン前哨基地を攻撃して報復しつつ、今後もTTPの行動自由度を高める形で「間接的に反撃」する可能性がある。他方で、歴史的にパキスタンと敵対した政権は長続きしなかったという恐れがターリバーン内部にあり、全面エスカレーションは抑制するかもしれない。パキスタン側の狙いは①TTPそのものの弱体化・目標変更を迫る大規模圧力、または②ターリバーンの反パキスタン武装支援の再考を強いる「政権向けの威嚇」である。前者には住民・地形の「可読性」と情報から打撃までの「スピード」が鍵だが、パキスタンは人的情報網や無人機・精密打撃能力は持つ一方、ISR(監視・信号傍受・分析)の裾野は十分でない。後者(ターリバーンへの政治的圧力)なら現有の軍事・情報手段でも理論上は効果を及ぼし得る。
今後の注目点は、TTPなど反パキスタン勢力の攻撃軌跡、ターリバーンの統制度合い、そしてパキスタンがカーブルを含む内陸目標への打撃を継続するか。パキスタン外務省はアフガン国民の「解放」に言及し、ターリバーン反対勢力への国際的な足場提供を仄めかすなど、体制変化を示唆する強硬メッセージも発している。域外アクターでは、サウジ・UAE・カタールや中国が仲介を模索し得るが、根本力学の転換には至っていない。米国は傍観姿勢だが、トランプ大統領は事態長期化なら関与を示唆し、バグラム空軍基地「奪還」への言及もある。さらに、インドはターリバーンとの関係正常化を進めており、これがパキスタンの疑心と対立構図を一層複雑化させている。以上の複合要因が、今回の越境空爆と国境衝突というエスカレーションの背景である。