Echoes of Suffering: Women’s Resilience Needs Attention Under Taliban Cruelty
苦しみのこだま: 残虐なターリバーンと戦う女性たちを見殺しにするな

 

(WAJ: 本サイトのアフガン人主筆ファテー・サミ氏は、前号に引き続きターリバーンの政策が、国内の生存と人権状況に甚大な被害を及ぼすだけでなく、周辺諸国を含む域内、とくにパキスタンでのテロ攻撃の温床になる危険性について警告を発している。ターリバーンを権力の座に引き入れたアメリカは自国の国家利益を守るための「反テロ」対策のパートナーとしてターリバーンを利用している。しかしそれは思慮の浅い危険な方途であることを、アフガン人の切実な声に耳を傾け、理解すべきであろう。なおサミ氏がこの間、本サイトに執筆した論説のすべては「ファテー・サミ執筆記事一覧」で読むことができる。通読すれば氏の鋭く的確な慧眼ぶりに驚かれることだろう。)

 

By Fateh Sami  1/1/2024
ファテー・サミ(本サイト・アフガン主筆)

はじめに: 20年にわたる米国占領ののち2021年8月15日にターリバーンが政権に復帰した。その後、アフガニスタンは政治的混乱、民族的緊張、過激派グループの復活という激動の時代を経験した。それまでの20年間は、ハミド・カルザイ(Hamid Karzai)とアシュラフ・ガニー(Ashraf Ghani)という二人の無能な人物に支配されており、彼らの不和を生み出すだけの政策によって民族紛争は悪化し、国家制度は弱体化させられた。傀儡政権内の権力闘争は民族対立と外部の影響によって煽られ、最終的にターリバーン復活への道を切り開いた。

そしていまターリバーンが政権を握りアフガニスタンは変わり果ててしまった。それではテロ対策を名目としたアメリカによる20年間の占領とは何だったのか? その間、見るからに無能な二人が大統領に就任し「分割統治」政策を推進したことが一因となって、アフガニスタンは千々に乱れ混乱状況に陥った。二人は民族紛争に明け暮れ、経験豊富な人材を主要な政府のポジションから追放し、外国から経験の浅い人材を招き入れた。新任者たちは、個人的なつながりと民族的側面のみを考慮して任命された、主に西側諸国にいたアフガン系人物であり、アフガニスタンに対する真の理解に欠けていた。

傀儡政権の期間中、国の課題に対処することよりも、さまざまな民族グループ間の陰謀を駆使した権力闘争が第一課題だった。パシュトゥーン人との民族的つながりのゆえに、ターリバーンは支持され、多大な財政的および兵站的支援が送られ、テロ訓練施設までもがあてがわれた。米国のアフガニスタン特使ザルメイ・ハリルザド(Zalmay Khalilzad)がターリバーン構成員を刑務所から組織的に釈放したことで、この流れは最高潮に達した。後に、ハリルザドの行動は一時しのぎで偏っており、米国の政策決定者に虚偽の情報を提供したと多くが非難するに至ったが、もう遅かった。

そしてこの2年間。元政府職員への恩赦が保証されていたにもかかわらず、現場の現実は厳しい。ターリバーンの支配下で、かつて軍、公務員、議会、女性の権利問題、芸術、音楽、教育、医療に関係した個人が組織的に標的にされ、その結果、殺害、傷害、投獄、暗殺が横行した。恐怖政治をずっと後援し財政的に支えてきたのが、米国、その同盟国、パキスタンだが、さらにターリバーンはイラン、インド、ロシア、中国など各国からの支援を集め影響力を拡大している。これは地政学的な必然で、米国を困難な立場に置いている。ターリバーンへの影響力を巡ってアジアの主要なライバルたちが域内で権力闘争を始めたのだ。

こうして、アフガニスタンの国民は、貧困、治安の悪化、ターリバーンの残虐行為など、計り知れない苦難を強いられている。特に女性は、私的な強制労働収容所(つまり家庭)に閉じ込められ、厳しい制限に直面している。この悲惨な状況に対する責任の多くは米国にある。ちょっと目をやるだけで分かるとおり、アフガン人に非人道的状況を課しているのは広くテロリストとして知られる集団で、そのうち多くは国連のリストにさえ載っている。

結論として言うと、私たちが目撃しているのは、拙速で無秩序な政権交代の落とし前とアフガニスタンが格闘しているという現実で、その影響で深く苦しめられる国民である。ターリバーンは、約束した恩赦と社会を包摂する政府の樹立を依然果たすことなく、軍、市民運動、芸術、学術に関わる社会のさまざまな人々を攻撃の標的にしている。特にアフガン女性は基本的権利を否定する政権による支配のもと苦しみ抜いており、国際的な関心と介入が緊急に必要なことを特筆しなくてはならない。この困難な状況は広く国境を越えてもたらされた。地政学的なライバル国や外部要因、特に米国と域内競合国が暗躍した。今後の道を進むにあたり、アフガニスタンの運命は、歴史の力学、世界的利益、国民の回復力がどう相互作用するか、そのバランスにかかっている。

アフガン国民を解放するための国際的な関心と行動を求める緊急要請

米国とパキスタンに操られた政権の残虐行為に立ち向かうアフガン女性たち

私は苦渋にみちた心でこの訴えを書く。ターリバーンの残虐な手中に陥っているアフガニスタンの人々の叫びと苦しみに重荷を負う心だ。これは諸君の集合的良心に対する緊急の訴えであり、注目を求める嘆願であり、アフガニスタンを抑圧の束縛から解放するための行動への呼びかけだ。

アフガニスタンの現在の苦境は、複雑な歴史と地政学的な策略が絡み合った悲劇的な物語である。ターリバーンは、かつて人道に対する凶悪な行為で悪名高かったが、逆説的に、20年間アフガニスタンを占領したまさにその勢力、つまり米国、パキスタン、およびその同盟国が率いる連合によって権力の座に躍り出た。

ターリバーンは主に自爆テロ、民間人の虐殺、道路上での爆破、旅行者への攻撃、強盗、麻薬密売、テロ組織との関係などに関与した人物によって構成されており、現在、権力を謳歌している。アフガン国民の希望や願望に対するこの明らかな矛盾を見ると、この権力移行に手を貸している連中の目的や動機について重大な疑義が生じる。

第1次ターリバーン政権のもとで計り知れない苦しみを味わったアフガン国民は、彼らによって再び厳格に支配され暮らしている。治安状況は不安定で、貧困が蔓延し、飢餓が迫っている。特に女性は権利を剥奪されており、教育、雇用、そして基本的な人間の尊厳が剥奪されている。
これまでのところ国際的な反応は残念ながら不十分だ。国連や他の国際機関は空虚な演説を行うに止まり、アフガン国民をターリバーンの手から解放するための有意義な行動には至っていないように見える。

皮肉をさらに上塗りするのは、ターリバーンの圧政を維持するために米国が提供しているとされる財政援助(訳注:「予断を許さぬアフガン情勢」文中の「なぜアメリカは20年後にターリバーンを復権させたのか?」の章参照)である。これは国際的な注目が要求される苦い真実である。かつてターリバーンと戦ったまさにその勢力が、現在では彼らの圧制を助長しているとは何事か。

こうした作為・不作為の結果は悲惨かつ広範囲に及ぶ。アフガニスタンは、過激主義の温床、狂信者たちの孵卵器となる危険がある。そうなれば自国民を危険にさらすだけでなく、世界の安全保障に重大な脅威をもたらす。このままでいくと、アフガニスタンを危険な勢力の避難所に変え、国境を越えて攻撃する可能性のある暴力的なイデオロギーを助長する可能性がある。

地球市民として私たちが団結してターリバーンの行動を非難し、アフガン国民を救出するために迅速かつ断固とした行動を要求することが不可欠だ。私たちは国際社会に介入し、アフガン国民の基本的権利を回復し、アフガニスタンが過激主義のるつぼになるのを防ぐよう求めなければならない。

受動的に観察する段階はとうに過ぎた。世界はこの事態に立ち上がり、アフガニスタンでの圧制を共同で非難し、アフガニスタンの人々が恐怖と圧制から自由に暮らせる未来の確保に向けて取り組まなければならない。

私たちの集合的な声が国境を越えて権力の殿堂に響き渡り、正義を求める私たちの一致した呼びかけがアフガン国民の希望の光となるように。

 

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