Unveiling Afghanistan’s Complicated Reality: The Failure of the Doha Conference and the Exclusion of Afghan Determination

 

(WAJ: カタールの首都ドーハで、2024年2月18・19日、グテーレス国連事務総長主催でアフガニスタンに関する国際会合が開催された。ターリバーンはこれへの出席を拒否した。この会議にかけた国連や米英、そしてターリバーンの意図および会議の裏を分析する。なおサミ氏がこの間、本サイトに執筆した論説のすべては「ファテー・サミ執筆記事一覧」で読むことができる。通読すれば氏の鋭く的確な慧眼ぶりに驚かれることだろう。)

 

By Fateh Sami   2024年2月19日
ファテー・サミ(本サイト・アフガン主筆)

アフガニスタンの混乱のなかで開かれたドーハ会議の失敗を批判的に検討すれば、複雑に絡み合った政治的狙いと政治的力学ゲームが見えてくる。ターリバーンの復活から国際社会の役割にいたるまで、持続可能な平和を実現するには、より深い理解が必要とされる状況となっている。

ドーハ会議を再開しようとする最近の試みは、テロ、女性蔑視、センチメンタルな反文明主義を特徴とする2年以上にわたるターリバーン支配に終止符を打とうとするものと捉えられ、数多くの報道や議論を引き起こした。アナリストらはこの会談の重要性についてさまざまな見方を示しており、楽観的な見方を表明する人もいれば、米国の政治的利益によって画策された単なるプロパガンダだとして相手にしない人もいる。

第2回ドーハ会議は、アフガニスタンを悩ませている長年の問題に対処することを目的としていた。ここへ来て、なぜ米国はハミード・カルザイ( Hamid Karzai /訳注:アメリカなどの支援で樹立されたアフガニスタン・イスラム共和国の初代大統領)やアシュラフ・ガニー(Ashraf Ghani/訳注:カルザイに続く二人目の大統領。2021年8月のターリバーン復活により失脚)などの人物が率いる以前の傀儡政権ではなくターリバーンをよりましな選択肢とみなしたのかという疑問が生じている。20年に及ぶ駐留期間を通じて、米国とその同盟国はアフガニスタン軍の近代化と装備だけをとっても、数十億ドルを注ぎ込んだ。しかし、これらの資金は持続可能な開発を促進するのではなく、汚職を煽り、ガバナンス、軍事作戦、企業活動は瓦解した。

アメリカの長き駐留にもかかわらず、アフガニスタンには依然として大規模な灌漑プロジェクトや持続可能なエネルギー生産などの基本的なインフラが不足している。その代わりに、この国では麻薬栽培と密売が急増し、民族間の緊張と不和がはびこっている。不正選挙や広範な不正行為が目立ったアシュラフ・ガニーの指導下では、専門職の個人が脇に追いやられ、軍などの重要部門が弱体化し、ターリバーン軍の勢力拡大を許した。

アシュラフ・ガニーの元クラスメートらは、ガニーは精神的に不安定で、劣等感に悩まされ、民族中心主義的で部族主義的な傾向に駆られていたと目撃証言を述べている。そのような特徴によって彼は国家指導者としての資質を無くした。詳細については、参照リンク番号 (1) を参照。

2014年以来、米国はアフガニスタンで確立した秘密体制をターリバーンに委譲し、代理勢力として活用しようとしてきた。それは国内外の多数のアナリストが指摘する通りだ。テロ対策の名目でアフガニスタンに20年間駐留してきたにもかかわらず、米国は欺瞞的な戦争を遂行し、その結果驚くべき数の人命が失われた。アシュラフ・ガニー前大統領の登場によって、数千人の民間人とともに10万人以上の若いアフガニスタン軍人が命を落とした。この紛争は壊滅的な被害をもたらした。さらに、今も数千人が負傷による後遺症に苦しみ、100万人以上がホームレスになり、移住したり、近隣諸国への亡命を余儀なくされたりした。

帰国した米兵たちの幻滅は明白だった。アフガニスタンとイラクの人々との連帯を表明して勲章を捨てた数千人の帰還兵の出現が、それを物語っている。これらの兵士たちは、「テロとの戦い」とされるものがでっち上げであったことを認め、被害を受けたアフガニスタンとイラクの人々に遺憾の意を表明した。この件に関する目撃者の証言と詳細は、リンク (2) で閲覧できる。

2024年2月18・19両日に予定されていたドーハ会議は、予想通り不毛な結果に終わった。ターリバーン政権による出席の拒否は、会議の無力さをさらに浮き彫りにした。

1. ターリバーン政権の国内での正統性の欠如に焦点が当たり、ターリバーン政権のメンバーが外国情報機関の傭兵である姿が浮き彫りとなった。ターリバーンがドーハ会議への参加を拒否したことは、彼らがアフガニスタン国民に支持されず、国際規範を無視していることの証左である。

2. ターリバーンは国連によってテロリスト集団として登録されているにもかかわらず、米国から多大な資金援助を受けており、そのような支援の背後にある動機と域内の安定への影響について疑問が生じている。

3. ターリバーンは、米国に対する軍事的勝利がアフガニスタン支配を正当化すると認識している。彼らは、すべての武器を押収し、優位性を主張することで、国際機関の権威や人権規範を無視し、一方的な意思決定を行う権利を有していると信じている。その結果、彼らは以前の和平合意に関与した相手との交渉の舞台への参加を拒否し、そのような面倒を単なる宣伝として無視する。アフガニスタン問題を担当した米国特別代表のザルメイ・ハリルザド(Zalmay Khalilzad)が、交渉の失敗とアフガニスタンにおける米国政府の評判を傷つけた責任者として詰め腹を切らされた。ターリバーンは自らをアフガニスタンにおける唯一の権力行使者とみなしており、無力または腐敗しているとみなした相手と交渉することに価値を見出さない。この態度は、彼らが現在アフガニスタンを完全に支配しており、彼らの目にはこれ以上の交渉は不要であるという認識を示すものだ。

4. ターリバーンは近隣諸国、特に米国に敵対する国々と様々な接点があり、利害が複雑に絡み合う多層的地政学的な状況が見て取れる。

5. 米国は、域内の力関係に影響を与えると見ているターリバーンへ、せっせと資金援助しているにもかかわらず、アジアのライバル諸国、特に中国とターリバーンとの交流は拡大している。その中には、アフガニスタンの鉱物資源を中国に売却する協定や、一部の国での領事館の設立などが含まれる(訳注:参考1)。米国は、ターリバーンには完全な影響力を及ぼすことができないと認識したことから、ウクライナ紛争に焦点を当て、アフガニスタンの支配をターリバーンに委任した。各種報告によると、ターリバーンとダーイッシュ(訳注:アラビア語で「イスラム国」を名乗るイスラム原理主義過激派)、さらには他のテロ勢力との関係が深まっており、状況はさらに複雑になっている。

(訳注・参考1:アメリカがアフガニスタンに送り返した麻薬王バシールが現在中国との取引の前線に立っている。
https://foreignpolicy.com/2024/02/10/noorzai-afghanistan-taliban-china-mining-drug-kingpin/

6. アフガン民衆の間には、団結と連帯による全国的な蜂起を通じてターリバーン政権を打倒できるという考えが広まっている。過酷な環境下の北部地域で約1万9000人が投獄されているなど、ターリバーンの圧制的な行動がこうした感情を煽っている。アフガン人は、これらの捕虜の釈放を確保するのに国連や人権団体が役立つとは思っていない。国民はまた、パキスタンのISI(訳注:軍統合情報局)のような組織との提携を通じてターリバーンの権力掌握を促進した米国の陰謀についても非難している。住宅への襲撃、拉致、強姦、殺害を含むターリバーンによる現在進行中の残虐行為は、アフガニスタンの文化や社会規範に対する犯罪で、加担する超大国たる米国の責任を追求している

7. ドーハ会議の見直しなどの最近の展開は、特に米大統領選挙にむけて世論を惹きつけるために画策された単なる気晴らしであると多くの人は見ている。アフガン人は、20年にわたるアメリカ占領による遺産は、殺人、破壊、大規模移民、失業、貧困、飢餓であったと痛感している。このような結果は、アフガニスタンにおけるアメリカの行動の永続的な証拠として刻まれ、何世代にもわたって集合的な記憶に残り続ける。

以上の考察は、アフガニスタン情勢の複雑さと、進行中の不安定と紛争を引き起こすさまざまな要因についての洞察を提供する。

第1回ドーハ会議(訳注:2013年に再開され2020年2月29日に調印ではターリバーンに権力を委譲しただけだった。今回予定された第2回ドーハ会議はターリバーンを公式に承認するための基礎を築く試みである。(訳注:この国連の会議もその準備のひとつであった。)ターリバーンはパキスタン政府の管理下で米国に雇われた傭兵であり、アフガン国民を代表しておらず、富を貪る貿易業者や汚職者は全員が元偽共和国の構成員であったと知られている。ターリバーンが参加を拒否したことから、この会議の結果は予見できた。しかし一部の専門家は、ターリバーン反対勢力のせいで危機がさらに悪化している可能性もあると指摘している。

アフガニスタンの状況は、ウクライナ、パレスチナ、イスラエルを含む、より広範な領域的および世界的な紛争と複雑に関係している。これらの紛争は、西側諸国とアジア諸国の間の覇権争いを反映している。

繰り返すが、第1回ドーハ会議は本質的にターリバーンへの権力移譲を促進し、2回目会議はターリバーンの国家承認に道を開くものとみられていた。しかし、米国とパキスタンの影響を受けた傭兵たるターリバーンは、真にアフガン国民を代表しているわけではない。ドーハ会議復活の背後にある根本的な動機は次のように概説できる。

1. アフガニスタンの将来にとってターリバーンが唯一の選択肢であるとしたい米国、英国、パキスタンの共同努力。

2. ドーハ合意が依然として履行されていないことをほのめかしながら、アフガニスタンにおける全精力を統合する包摂的と称する体制への支持を再確認するためにアメリカ政府が採用した戦術。

3. アフガニスタンの近隣諸国、特にターリバーンの活躍の場であるインド、ロシア、イラン、パキスタンの影響力が増大し、状況を複雑化させている。

結論として、ドーハ会議はアフガニスタンの長年の課題に対処する試みを象徴する機会だったが、その失敗は根深い複雑さと地政学的に縛られた力学の存在を浮き彫りにしている。今後、アフガニスタンの持続可能な平和と安定のためには、根底にある不満に対処し、包摂的な統治を促進するために、域内および世界の関係者による協調的な取り組みが必要となる。結局のところ、ドーハ会議は、アフガニスタンの複雑な課題に対処するためには、真の全体を統合する包摂的な対話が緊急に必要であることを強調している。域内および世界の利益が一点に集中するにつれ、今後の道のりはどうなるのか。それにはアフガニスタン自身の運命を形作ることが大切だ。説明責任、透明性、そしてアフガン人の声を高める協調的な努力が求められる。

この記事で言及されている参考リンク:

1.
https://youtu.be/6dvb48KoG34?si=COu8xq9f4t9pVNGd

2-
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=pfbid02JGKzTJD8RTWFmMGqDDN2TXQnWXyHbmLv7vGUnUDFjGotx43qvcZ2j38hz8nYYJGul&id=100011452358727

3.ターリバーンの残虐性の一例:むち打ち刑