征矢野剛
2026年5月13日

まずは、医療者と、特に、若い方々に観ていただきたい映画だ。
冒頭のシーン。2024年1月24日、東京・銀座の30人ほどのデモ。主催は、2015年6月に結成された「安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会」。この映画制作が始まったのは、「安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会」共同代表の伊藤真美さんが、映画をプロデュースしたシグロの山上徹ニ郎さんに、思い立って、唐突な電話をされたのが、きっかけだ。
映画は、4章だてになっている。
第1章 731部隊
第2章 日本医師会の戦後
第3章 医の倫理の現在
第4章 戦争と医療者
731部隊。敗戦がわかると、かれらの行動の証拠はすべて消し去られた。この映画は、部隊の生き残りの証言者たちの文章、映像を紡ぎ合わせた。731部隊の蛮行が、ここに浮かび上がった。
そして、731部隊に従事した医療者たちの大半が、戦後、反省もなく、医療の中心に座っている。ドイツとはまったく違う。
2023年3月、日本医学会が、創立120周年記念事業で、やっと『未来への提言』を出したが、その後、改めて、何かを取り組むかと思えば、取り組んでいない。『提言』には、以下の通り書かれている。
「わが国も、これまで医学・医療の名において、人々に大きな犠牲を強いた過去を持つ。戦時中に石井機関と731部隊で中国人やロシア人等を対象とした非人道的な人体実験が広範に行われ、この研究には当日の日本の医学界をリードしていた大学教授たちが多く参加していた事実がある」「私たちは、こうした過去の過ちに学び、将来にわたって非倫理的な状況が再び起こることのないよう、私たち自身の倫理を確固たるものとし、時には流れに抗うことも医学に携わる者の責務であることを改めて認識する」
映画は、このことを告発している。
そして、インタビューを受けた方々は、以下の通り(敬称略)。
伊藤真美 花の谷クリニック院長
安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会 共同代表
西山勝夫 滋賀医科大学名誉教授
「戦争と医の倫理」の検証を進める会 呼びかけ人
吉中丈志 京都大学医学部臨床教授
「戦争と医の倫理」の検証を進める会 呼びかけ人
沢田貴志 内科医 港町診療所 所長
NPOシェア=国際保健協力市民の会 副代表理事
安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会 共同代表
胡桃澤伸 精神科医 劇作家
宮子あずさ 精神科看護師 文筆家
徳田安春 総合診療医 群星沖縄臨床研修センター センター町
川嶋みどり 看護師 日本赤十字看護大学名誉教授
「戦争と医の倫理」の検証を進める会 呼びかけ人
安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会 共同代表
天羽道子 「かにた婦人の村」名誉村長
安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会 共同代表
インタビューを受けた皆さんは、今の医療現場に疑問を感じ、思い思いに、さまざまな取り組みを、独自に展開されている。
皆さんのお話は、今、医療問題でお困りの方々の回答にもなる。この点でも優れた作品だ。
最後に、映画にも登場する世界医師会の「倫理マニュアル」を引用する。
「倫理は法よりも高い基準の行為を要求し、ときには、医師に非倫理的行為を求める法には従わないことを要求します」
「法」よりも高い基準の行為を要求する「倫理」という言葉の響きは、本当に素晴らしい。実戦すべきだ。
監督の山本草介さんは、『阿賀に生きる』の佐藤真監督に師事された。
自主上映も各地で行われているので、ぜひ、ご覧下さい。
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