The Age of American Unilateralism:
How a Rogue Superpower Will Remake the Global Order

 

(WAJ: 本論考で筆者はロシアや中国だけでなくアメリカも「ならずもの国家」であると断定している。国家はおしなべて「ならずもの」であるとの認識が筆者にはあるのだろう。同感である。したがってトランプ氏が率いるアメリカにとって「問題はもはや、米国がならず者になるかどうかではなく、どのようなならず者になるかである」と言い切っている。そしてどのようなならず者になるべきか、最終段で論者の考えが展開される。アメリカの代表的な主張のひとつとして拝聴する価値があるだろう。)

 

マイケル・ベックリーMichael Beckley:foreignaffairs.com
April 16, 2025年4月16日

(マイケル・ベックリー氏は、タフツ大学の政治学准教授、アメリカンエンタープライズ研究所の非常勤上級研究員、外交政策研究所のアジア担当ディレクター、ニューヨーク市立大学のモイニハン公共研究員)


米国議会議事堂、ワシントンD.C.、2025年4月 リア・ミリス/ロイター

 

冷戦終結以来、アメリカ合衆国は主に2つの外交政策の道筋を辿ると予想されてきた。ひとつは、自由主義的な国際秩序のリーダーとしての地位を維持するか、それとも撤退して多極化したポスト・アメリカ世界に適応するかである。しかし、私が2020年のForeign Affairs誌で論じたように、最も可能性の高い道筋は常に第3の道筋、すなわち、国際主義でも孤立主義でもない、攻撃的で強力で、ますます自国本位の超大国となる道筋であった。

ドナルド・トランプ米大統領は、1930年の悪名高きスムート・ホーリー法(訳注:フーヴァー政権下の米国で制定された関税法。大恐慌時に国内産業を保護するために、幅広い輸入品に対して高関税を課した)を彷彿とさせる水準まで関税を引き上げ、対外援助を削減し、同盟国を冷遇し、グリーンランドやパナマ運河を含む外国領土の占拠を提案することで、このビジョンを明確に定義づけている。しかし、トランプ氏は設計者というよりむしろ、世界的なリーダーシップに対する長年くすぶる不満と、米国の戦略を内向きに引き込む根深い構造的要因を巧みに利用し、このビジョンを加速させている。今、真の問題は、米国が独自の道を歩み続けるかどうかではなく、どのように、そして何のために進むのかである。

この変化の原動力を理解することは、もはや学問的な議論のテーマではない。重要なことは、次にどうなるかを予想することだ。ワシントンの一方的な転換を放置すれば、世界の不安定化を招き、自らの長期的な力を弱体化させかねない。しかし、これらの力を認識し、方向転換すれば、より焦点を絞った持続可能な戦略の基盤となる可能性がある。それは、自由主義秩序の中核的な強みを放棄することなく、自由主義覇権の行き過ぎを断ち切る戦略だ。

 

なぜ一国の問題にとどまらないのか?

米国がならず者の政策をとっている理由のひとつは、それが可能だからだ。何十年にもわたる衰退論の警告にもかかわらず、米国の力は依然として恐るべきものだ。米国の消費者市場は、中国とユーロ圏の市場を合わせた規模に匹敵する。世界貿易の半分、国際金融取引の約90%がドル建てで行われ、米国と関係のある銀行を通じて行われている。そのため、ワシントンは壊滅的な制裁を課す力を持っている。しかし、米国は世界で最も貿易依存度の低い経済のひとつだ。輸出がGDPに占める割合はわずか11%(その3分の1はカナダとメキシコ向け)、対して世界平均は30%だ。米国企業は世界のベンチャーキャピタルの半分を供給し、エネルギーや食料など生活必需品の生産を独占し、半導体、航空宇宙、バイオテクノロジーなどのハイテク産業で世界の利益の半分以上を生み出している。これは中国のほぼ10倍にあたる。米国は、基礎化学品、ジェネリック医薬品、レアアース、低価格半導体といった大量の工業用原材料を中国に依存しているが、中国はハイエンド技術、食料・エネルギー安全保障において、米国とその同盟国にはるかに大きく依存している。両国が決裂すれば双方とも打撃を受けるだろうが、中国の損失はより補填しにくいだろう。

軍事的には、アメリカ合衆国は自国から数千マイル離れた場所で大規模な戦争を遂行できる唯一の国だ。世界人口の5分の1、経済生産の3分の1を占める約70カ国が、防衛協定を通じて米国の保護に依存しており、国境を越えて自国の軍隊を移動させるには米国の情報機関と兵站の力が必要だ。米国の市場と軍事力に深く依存する世界において、ワシントンの影響力は大きく、既存のルールを改訂、あるいは完全に放棄できる。

アメリカは孤軍奮闘する手段だけでなく、その動機までもがますます強まっている。アメリカ主導の自由主義秩序は当初の目的を達成し、重荷と脆弱性の迷路へと成長した。負けるどころか、もはや存在しない脅威、すなわち第2次世界大戦の荒廃と共産主義の拡大に打ち勝ったのだ。1950年代初頭までに、ソ連はユーラシア大陸のほぼ半分を支配し、西ヨーロッパの2倍の軍事力を擁していた。私有財産の廃止を掲げる共産党は、世界の工業生産の3分の1を支配し、主要な西側民主主義国で最大40%の票を獲得した。こうした状況下で、アメリカ風生活様式への脅威は明白であり、資本主義秩序を守る必要性も明らかだった。その戦略は功を奏した。西側諸国は繁栄し、民主主義を謳歌し、ソ連圏は崩壊した。しかし、成功は旧秩序では解決できない新たな問題を生み出した。

例えば、ワシントンが助けて保護した同盟国の多くは、今日では重責を担うことができなくなっている。米国に安全を約束された西欧じゅうの国々、加えてカナダや日本までもが、国防費を削減し、福祉国家として拡大し、中国市場やロシアのエネルギーと深く絡み合ってきた。多くの同盟国は、自国の周囲の安全確保に汲々とし、世界の安定を維持するまでには手が回らない。そして、危機が勃発すると、彼らは依然としてワシントンに頼る。中国の侵略に直面した南シナ海での航行の自由の確保、ロシアに対抗するウクライナへの武器供与、紅海におけるフーシ派の攻撃から船舶を守るために。かつて自由主義秩序の錨であった国々は、米国に頼り切り、米国を補弼するどころか、その力を漏らしている。

 

ワシントンの影響力は大きく、既存のルールを改正、あるいは完全に放棄できる。

さらに悪いことに、自由主義秩序へのロシアと中国の統合を促進することで、米国は最も危険な敵対勢力を強化してしまった。両政権は、歴史的ライバルであるドイツと日本を宥和し、核拡散を抑制し、世界貿易ルートを確保した米国主導の同盟システムの恩恵を受けた。両国は脇が固まり補給線が比較的安全になったことで、力ずくでユーラシアの地図を書き換え始めた。ロシアはジョージアとウクライナへの侵攻を通じて、中国は南シナ海における軍事拠点の建設、インドの領土侵略、そして台湾への脅威のエスカレートを通じて。

彼らはまた、西側の市場、企業、ネットワークへのアクセスを獲得し、それを悪用してシステムをハッキング、脅迫、略奪した。ロシアは、西側の銀行を通じて寡頭政治家の富をロンダリングし、偽情報を広め、エネルギーを兵器化してヨーロッパを分裂させている。中国は、国内市場を保護しながら、補助金付きの輸出品を他国に氾濫させており、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均の10倍に当たる率の国家予算を産業政策に費やしている。中国は現在、造船、ドローン、電子機器、医薬品などの戦略的製造業のトップに君臨し、その優位性を兵器化して、希土類元素の輸出を削減し、医薬品のサプライチェーンを脅かし、台湾にドローンを群舞させ、安価な電気自動車をヨーロッパに氾濫させることで、米国とその同盟国を脅かしている。国内では、北京は外国のアイデアを検閲し、国外では、オープンインターネットを悪用して知的財産を盗み、西側のインフラにマルウェアを埋め込み、プロパガンダを広めている。国連人権理事会のような機関で指導的役割を担いながら、本来は維持されるべき自由主義の規範を覆すだけの存在となっている。かつて米国が戦略上こだわった門戸開放は、今やトロイの木馬と化している。

さらに、自由主義秩序は制御が困難になっている。第2次世界大戦後、ワシントンは脱植民地化を支持し、新興国を世界市場や国際機関に統合することで、グローバリゼーションと「取り残された国々の台頭」を促し、主権国家の数を倍増させた。しかし、その成功には代償が伴った。新たなプレーヤーが増加するにつれて、権力は分散し、拒否権行使の局面が頻発した。かつて米国の影響力を増幅させていた国連、世界貿易機関、世界銀行といった機関は、膠着状態に陥り反米姿勢の舞台と化している。

国内においても、その影響は同様に深刻化している。グローバル化は成長を促したが、米国産業を空洞化し、利益を偏在させた。2000年から2020年にかけて、米国の工業生産(半導体を除く)は10%近く減少し、工場の雇用は3分の1に減少した。純雇用増加のほぼ全てが、上位20%の富裕な地域に集中し、国の大部分は取り残された。社会的な影響は甚大で、障害年金請求の増加、薬物の過剰摂取、そして壮年層の労働力離脱が大恐慌並みに増加している。多くの傷ついた地域社会は、都市部の多数派よりも農村部の意見を増幅させる選挙制度のおかげで、政治的影響力を維持している。その結果、自由主義的な国際協調から勢いよく足を洗い、保護主義とシビアな国境管理へと大きく転換した。

 

迫りくる嵐

2020年に私が主張したように、人口動態の変化と急速な機械化という2つの強力な潮流が世界情勢を一変させ、アメリカは単独行動主義への傾倒を強めている。急速な人口動態の変化はユーラシア大陸の大国を弱体化させ、並み居る発展途上国が蠢きだした。一方で、新たな技術はアメリカがかつて必要とした外国人労働力、エネルギー、そして大規模な軍事基地の重要性を削いだ。その結果、アンバランスが拡大し、一方には混乱拡大と弱体化する同盟国、他方にはアメリカにおける自給自足と遠距離攻撃能力の向上がある。この格差が拡大するにつれ、ワシントンは単独で行動しようとする誘惑にますます直面することになる。

まず人口動態から見てみると、今世紀を通して壮年層の労働力が増加すると予測されている唯一の大国はアメリカ合衆国である。2050年までに、ユーラシアの主要経済国では、生産性、軍人募集、そして経済成長を牽引する25歳から49歳の成人が約2億人減少し、多くの国で25~40%の減少が見込まれる。2100年までにこの数字は3億人を超え、中国だけでも壮年層の労働力が74%減少すると予測されている。高齢者の割合は今世紀半ばまでにほとんどの国で2倍以上に増加し、扶養比率(退職者1人あたりの労働者数)は破滅的なレベルに達する。例えば、中国では、2000年の10対1から2050年には2対1以下に減少する見込みだ。人口減少はすでにユーラシア主要国の年間成長率をパーセントで1ポイント以上引き下げており、債務対GDP比は平均で250%を超えている。他の経済が縮小し、逼迫する中で、米国経済は世界経済の成長においてより中心的な存在となり、その財政基盤と軍事力は相対的に強固なものとなる。

しかし、米国が人口動態の優位性を新たな自由主義覇権の時代へと転換させる可能性は低い。むしろ、世界的な人口動態の混乱は危険な不均衡を助長し、同盟国の防衛に対するリスクを高めている。独裁体制であるライバル国は人口減少にもかかわらず軍事力を強化している一方、民主主義国家である同盟国は有権者の高齢化と増大する福祉負担に制約されながら、ゆっくりと再軍備を進めるしかない。ユーラシアのバランスが独裁国家側に傾くにつれ、米国による防衛の面倒見に対するリスクは高まり続けている。

このパターンはすでに見えている。ロシア、中国、北朝鮮は、苦境に立たされた独裁国家が長らく行ってきたこと、すなわち体制の安全確保のために軍部に頼っている。成長が鈍化し、不安が高まると、独裁者は反対意見を抑圧し、ライバルを抑止し、隊列内の忠誠心を確保するために、軍に資源を注ぎ込む。ソ連は1970年代と1980年代にこの道をたどり、経済と人口が停滞しているにもかかわらず国防費を倍増させた。今日、ロシアは同じことをしている。GDPの8%を国防に充て、民間予算を削減し、ウクライナの戦場での損失を毎月2万5000人から3万人の割合で補充している。中国は、労働力の崩壊に瀕しつつ、1930年代のナチスドイツ以来最大の平時軍備増強を行っている。北朝鮮は貧困と高齢化に見舞われているにもかかわらず、兵器と戦争に資源を注ぎ込み続けている。

 

トランプ氏は何世代にもわたって平和を維持してきたシステムそのものを破壊している。

一方、民主主義同盟国は対応に苦慮している。日本、韓国、台湾、そして欧州諸国は、税基盤の縮小と、防衛よりも社会保障支出を優先する有権者の高齢化に阻まれ、再軍備はゆっくりと進めざるを得ない。台湾の徴兵対象者は2050年までに半減すると予測されている。日本、韓国、ウクライナは募集目標の達成に苦戦している。イギリス、フランス、ドイツの軍事力は停滞、あるいは縮小している。その結果、様々な嵐が巻き起こっている。独裁国家は紛争への備えを強め、民主主義国家は対応策があまりにも少なく、遅きに失し、そして米国は遠方の同盟国を守ることが増大するリスクに見合う価値があるのか、ますます確信を持てなくなっている。

発展途上国が人口動態の混乱に陥るにつれ、米国は海外へのこだわりを深く嫌悪するようになる。富裕国が高齢化と人口減少に陥る一方で、南半球の国々の多くは爆発的に人口が増加している。アフリカだけでも2050年までに人口は10億人以上増加すると見込まれており、そのほとんどの国々は貧困、脆弱な統治、気候変動といった問題に既に直面している。こうした国々の多くでは、若年層の失業率が30%を超え、教育制度は崩壊しつつある。アフリカ諸国のおよそ半数が債務危機に陥り、4分の1が紛争状態にあり、中東や南アジアでも同様の傾向が見られている。最もポテンシャルの低い国々で起きている若年人口の急増は、内政不安、過激主義、大量移民を促進している。移民が南北アメリカやヨーロッパに逃れるにつれ、ポピュリストの反発を煽り、自国を隔離しようとする米国の本能に油を注ぐ。

一方、新たな技術は、その本能を現実的なものにするだけでなく、魅力的なものにしている。ドローン、長距離爆撃機、サイバー兵器、潜水艦、精密ミサイルは、米国の大規模で恒久的な海外基地への依存を減らしながら、世界中の標的を攻撃することをたぶん可能にする。基地は、同様の技術を装備した敵に対してますます脆弱になっている。その結果、米軍は転換期を迎え、同盟国を守るための部隊は最早時代遅れとなった。いまや重点は米領からの攻撃つまり、敵国国境付近へドローンを飛ばして地雷を捲き自動でキルゾーンを構築、そののち機敏な遠征部隊を派遣して重要目標を攻撃し、敵を懲らしめ、犠牲者が出る前にとんずらするという部隊構想である。つまり狙いはもはや現地駐留による抑止ではなく、遠距離からの先制攻撃である。

同じ論理が米国経済を変容させている。自動化とAIは外国人労働者の需要を縮小させている。3Dプリンティングと呼ばれる積層造形技術とスマートロジスティクスはサプライチェーンを圧縮し、生産の国内回帰を可能にしている。AIは海外のコールセンターに取って代わっている。工場の自動化が進み、エネルギー価格が下がり、世界最大の消費市場を持つ米国企業は、安全保障だけでなく、ビジネス上の合理性もあって国内回帰を進めている。米国の世界経済への依存はなくなることはないが、その範囲は狭まり、より選択的になりつつあり、次の世界的危機が訪れた際には、より容易に病根を切り離せるようになっている。要塞経済は要塞軍事に匹敵するほどに台頭しつつある。そして、これらが相まって、より安全かつ賢明な国内回帰を実現している。

だからこそ、ならずもの超大国は単なる仮説ではなく、最も抵抗の少ない正道なのだ。もはや問題は、アメリカ合衆国がならずもの超大国になるかどうかではなく、どのようなならず者超大国になるかだ。アメリカは、暴力を振るい、関係を断ち切り、長期的に大きな代償を払って限定的な利益を追求する、無謀で超国家主義的な大国になるのだろうか? それとも、力をもっと戦略的な姿勢へと転換できるのだろうか? つまり、それは行き過ぎた行動を控えながら、より緊密で有能なパートナーたちの間で自由主義秩序の中核を維持する姿勢だ。

 

機能する自由な世界

もし国民生活が金銭のみの事象で、外交政策の目的が金銭をできるだけ早く手に入れることだとしたら、トランプ氏は理想的な指導者かもしれない。友好国にも敵国にも関税を課し、対外援助を削減し、戦略的に重要な領土を奪取しようと提案し、同盟国には自力で生き延びるよう求めることで、トランプ氏のアプローチは少なくともしばらくの間は、いくらかの余剰現金を搾り取るかもしれない。

しかし、経済だけが唯一の選択肢ではない。地政学も絡んでいる。そして、世界情勢を単なるビジネス上の駆け引きのように扱うことで、米国が何世代にもわたって平和を維持してきたシステムそのものを破壊させるリスクを負っている。貿易戦争は価格を吊り上げるだけではない。同盟関係を崩壊させ、ライバル国を対立へと追い込む。1930年代に世界が崩壊したのは、保護主義、恐怖、そして武力以外に成長の道を持たない台頭する大国によるものだった。トランプ政権の高官たちは、中国を1980年代の日本――最終的には譲歩を強いられる貿易相手国――と比較したがる。しかし、中国は米国の保護下にある民主主義の同盟国ではない。かつての列強と同様に、経済と安全保障をコインの表裏一体とみなし、復讐心に満ち、核武装した独裁国家である。その民軍融合のドクトリンは、より正確には、大日本帝国の「富国強兵」イデオロギーを反映している。北京の視点から見れば、ワシントンが煽っている貿易戦争は単なる経済的な争いではない。中国の総合的な国力への攻撃であり、銃撃戦への前兆となる可能性がある。

そして、真珠湾攻撃以前の日本と同じく、北京は経済的には敵対的だが軍事的には脆弱な米国と対峙していると見ている。米軍は台湾から500マイル(約800キロメートル)以内に主要基地を2つしか持たず、どちらも現在中国のミサイルの標的となっている。米国の弾薬備蓄は、大規模な戦争が起これば数週間以内に枯渇するだろう。一方、若いアメリカ人の77%は、主に肥満、薬物使用、教育不足のために、軍隊に入隊するのに不適格である。トランプ大統領は1兆ドルの国防予算を発表する予定だが、米国の国防産業基盤の再構築には何年もかかる可能性がある。軍事力不足を解消する前に関税を引き上げるということは、米国が十分に勝利する準備ができていない戦いを選んでいることを意味するのかもしれない。

 

問題はもはや、米国がならず者になるかどうかではなく、どのようなならず者になるかである。

米国は台湾とウクライナを犠牲にし、世界を大国圏に分割して、中国をアジア、ロシアを東欧、米国を西半球に据えることで紛争を回避すべきだと主張する者もいる。彼らは、冷戦時代、米国が東欧におけるソ連の支配を渋々容認していたことを、そのような取り決めが平和を維持できる証拠として挙げる。しかし、この類推には十分危険な欠陥がある。第2次世界大戦後のソ連とは異なり、ロシアと中国は勝利の国境を守ろうとしているのではなく、敗北の国境と見なすものを覆そうとしているのだ。彼らの領土主張はウクライナと台湾で終わるのではなく、そこから始まる。モスクワは東欧と中央アジアにまたがる「ロシア世界」の復活を目指している。北京は南シナ海と東シナ海の大半、そしてインドの大部分の領有権を主張している。中国の軍関係者やプロパガンダ担当者は、グアムやハワイといった米国領土を西側帝国主義の遺物とみなし、脅威を煽っている。

中国やロシアにこれらの領域の一部を与えても、彼らは満足しないだろう。むしろ、さらなる勢力を強めることになるだろう。そして、彼らが踏みつけるところでは暴力と弾圧が続く。ウクライナでは、ロシアは産科病棟を爆撃し、民間人を拷問し、子供を誘拐し、文化財を略奪してきた。ジョージア、シリア、チェチェンでは、都市を破壊し、残忍な政権を支えてきた。中国は香港の自由を抑圧し、チベットに戒厳令を敷き、新疆ウイグル自治区に強制収容所を建設し、南シナ海を人工島の要塞と多数の海上民兵で軍事化してきた。ロシアや中国の領域拡大は秩序や繁栄をもたらすどころか、国家テロの温床を拡散させるだけだ。

拡大はそこで止まることもなかった。歴史が示すように、大国は力や地理的要因によって阻まれない限り、その進撃を止めることは滅多にない。19世紀から20世紀にかけて、アメリカ合衆国は西半球とその周辺海域を支配するまで拡大を続けた。ドイツと日本は、第2次世界大戦で敗北を喫し帝国主義的野望を終わらせた。イギリスとフランスは、この戦争で荒廃しながらも自らの帝国にしがみついたが、反植民地主義という反乱とアメリカの圧力によって帝国は崩壊した。ソ連もまた、外へと勢力を拡大し、発展途上国全体の反乱勢力に武器を供給し、東欧の改革運動を戦車で鎮圧し、キューバに核ミサイルを配備した。西側諸国の粘り強い抵抗によってのみ、ソ連の進撃は阻止された。プーチンと習近平が、この歴史的法則の例外となると信じる理由はない。

安全保障上のリスクを別としても、自分の勢力圏に引きこもれば経済的な観点から崩れ去る。莫大な富は要塞経済から生まれたものではない。持続的で複合的な経済成長を可能にする、開放的な海運ベースの商業秩序から生まれるのだ。確かに米国が大陸主義へと後退し、北京とモスクワに勢力圏を譲り渡せば、米国は他の多くの国よりも安全で豊かな状態を維持できるかもしれない。しかし、米国は本来あるべき姿よりもはるかに貧しく、将来、紛争の火種に直面する可能性がはるかに高くなるだろう。

 

危機から生まれるチャンス

より良い戦略は、世界を中国とロシアと並んで分割するのではなく、統合された自由世界圏で両国を封じ込めることだ。その計画は国内から始まるだろう。北米はすでに世界最大の自由貿易圏を形成している。カナダ、メキシコ、そしてアメリカ合衆国は、合計5億人の人口、膨大なエネルギー資源、そして幅広い産業力を有している。この大陸的核を、共通のインフラ、安全なサプライチェーン、そして労働力の流動性によって深化させることで、アメリカ合衆国は敵国に頼ることなく、世界規模で競争できる繁栄した基盤を築くことができるだろう。

海外においては、米国は独裁国家の枢軸である中国、イラン、北朝鮮、ロシアに対し、多層防衛体制を敷くべきである。ポーランド、韓国、台湾、ウクライナといった最前線の民主主義国家は、侵略を撃退するため、短距離ミサイル、ロケットランチャー、機動防空システム、哨戒型ドローン、機雷などで重武装すべきである。その背後では、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、英国といった主要同盟国が、より長距離のミサイルと機動性の高い陸・空・海戦力で前線を強化し、全戦域への攻撃と最前線防衛の支援を行う。米国は究極のバックストップ(後方支援)および黒幕として、衛星情報、重量物輸送と兵站、核抑止力、そして空母、ステルス爆撃機、潜水艦による大規模な航空・ミサイル攻撃を提供する。

 

目標は、大国間の争いに勝つことだけではない。それをうまく導くことなのだ。

この軍事同盟は経済圏も形成する。米国は、同盟国が防衛費を増やすという具体的な約束と引き換えに市場アクセスを提供する。半導体、通信、エネルギー、先進製造といった重要分野で同盟国をロシアと中国から分離しつつも、米国企業には同盟国の市場への相互アクセスを認める。貿易協定には、投資審査、輸出管理、産業補助金に関する共同ルールが含まれ、先進技術の共同生産を支援する。目指すのは、普遍的な自由主義秩序の復活ではなく、加盟国を守り、敵対国を孤立させ、集団的な交渉力を発揮する緊密な経済同盟を強化することである。

今日の暗い見通しに一筋の希望があるとすれば、それは危機が機会を生むということだ。永続的な国際秩序――主権国家によるウェストファリア体制、1814年から1815年のウィーン会議から生まれたヨーロッパの平和、第2次世界大戦後の自由主義秩序――は、大国間の競争の激化の中で、理想主義ではなく恐怖が諸国を結束させた時に築かれた。アメリカの再生についても同じことが言える。その歴史を通して、アメリカ合衆国は国家の存亡の危機に瀕した時にのみ、大規模な投資を行ってきた。南北戦争は北部の鉄道網を急速に拡大させ、後の大陸横断鉄道の基盤を築いた。州間高速道路システムと国防教育法の創設は、平時の合意ではなく、冷戦への恐怖から生まれた。軍事研究開発は、半導体産業、GPS技術、そしてインターネットを生み出す画期的な発明の資金源となった。良くも悪くも、国家安全保障への懸念は、アメリカにとって最も一貫した公共投資の原動力となってきた。

今日の中国およびロシアとの対立は、再び国民を鼓舞する役割を果たし、インフラと産業の再建、サプライチェーンの強化、防衛産業基盤の再生、世界トップクラスの人材の誘致、そして国民の信頼回復に向けた行動を促す可能性がある。目標は、単に大国間の争いに勝つことだけではない。その力を導き、国内の崩壊を修復し、アメリカの利益と価値観を反映した世界を形作ることだ。それはアメリカと、アメリカを支持する意志と能力を持つ人々のために機能する自由な世界である。

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