The Whitewashing of Tyranny: : Western Narratives and the Reality of Afghan Women under Taliban Rule

(WAJ: 本稿は、米国外交官ザルメイ・ハリルザドの妻、シェリル・バーナードのターリバーン支配下のアフガニスタンへの物議をかもした訪問と、それに続く世界的な反発を批判的に検証する。それは、ターリバーンを称賛するバーナードの発言を、政治的便宜のために権威主義体制を復活させようとする西側のより広範な物語の中で文脈化している。本稿は、国際人権団体からの報告、アフガニスタンの女性活動家による直接の声明、信頼できるメディア情報源を引用して、ターリバーン支配下のアフガニスタン女性の実体験と外交のレトリックとの間の断絶を強調している。バーナードの発言は、組織的なジェンダー・アパルトヘイトを糊塗し、国際的な説明責任のメカニズムを弱体化させるのに役立っていると主張している。この論考は、アフガニスタンの市民社会との新たな世界的連帯を呼びかけ、基本的人権を侵害し続ける政権の正常化を拒否している。この分析は、アフガニスタンの女性の声を拡大し、正義と自由を求める現地の闘争に対する外国の政治的言説の有害な影響を精査することを目的としている。 なおファテー・サミ氏がこの間、本サイトに執筆した論説のすべては「ファテー・サミ執筆記事一覧」で読むことができる。)

Researched and written by Fateh Sami

調査、分析、執筆
ファテー・サミ
2025年6月7日

はじめに

2021年8月にターリバーンがアフガニスタンを制圧したことで、ジェンダー平等と人権に向けたアフガニスタンの進捗は大きく後退した。国際的な警告や、アフガニスタンの女性をエンパワーするための何十年にもわたる努力にもかかわらず、ターリバーンは急速に厳しい制限を課し、懸命に戦った成果を帳消しにした。しかし、厄介な傾向が現れている : 一部の欧米の人物や物語は、ターリバーン政権を「変化した」存在として描き始め、治安と統治の改善を強調しながら、進行中の人権侵害を軽視したり無視したりしている。最も顕著な例の1つは、シェリル・バーナードが2025年にアフガニスタンを訪問した際の公のコメントで、アフガニスタンの女性は「より安全だと感じており、」国は「発展への道を進んでいる」と主張した。本稿では、そのような発言の意味、文書化された現実との不協和音、そして女性に対する組織的な抑圧を特徴とする体制を正常化することのより広範な地政学的および倫理的影響について調査する。

 

専制政治のごまかし

2025年にアフガニスタン・インターナショナル(訳注:アフガン人と亡命者を対象としたニュースおよび時事問題を扱うテレビ局で本部はロンドン)が放映したシェリル・バーナードのインタビューは、アフガニスタンの市民社会と世界の人権コミュニティ内で即座に怒りを引き起こした。元米アフガニスタン特別代表ザルメイ・ハリルザドの妻バーナードは、ターリバーンは根本的に「変わった」と主張し、その証拠として治安の改善を強調した。彼女は、アフガニスタンの女性が「安全になったと感じており」国は「発展への道」を進んでいると主張している。

しかし、このような発言は、アフガン女性が直面する記録しておくべき現実とまったく対立するものだ。かかる現実については国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)、アムネスティ・インターナショナル、独立系ジャーナリストなど、複数の信頼できる情報源が広範な情報を提供しつづけており、 教育、雇用、公的生活から女性を意図的かつ継続的に排除するキャンペーンの広範な証拠となっている。

 

ターリバーン復権以後

•教育: 6学年を超えて女子は学校に通うことが禁止されており、高校大学は女子学生に対してほぼ閉鎖されたままだ。この禁止令は何百万人もの少女に影響を及ぼし、彼女たちを非識字と機会損失に追いやっている。

•雇用: 女性公務員は組織的に解雇され、自宅待機を余儀なくされており、彼女たちの生活は損なわれ、女性のガバナンスや市民社会への参加が損なわれている。2022年12月以降、国内外のNGOで働くことが女性には禁止されたことで、人道支援や開発に不可欠なプログラムが損なわれている。

• 公共生活と移動の自由: ターリバーンの「勧善懲悪省」は、厳格な服装規定(全身を覆うもの)を強制し、男性の保護者(マハラム)がいない女性の移動を制限し、脅迫、体罰、公の場で恥かかせるなどで行動を抑制している。女性は、「不適切な行動」などの曖昧な容疑で、頻繁に嫌がらせを受け逮捕されたりしている。

・これらの現実は、女性の自律性を犯罪化し、公共の場から女性を消し去ろうとする組織的なジェンダー・アパルトヘイトを例証している。バーナードのバラ色の状況描写は、真実を歪曲するだけでなく、ターリバーンにプロパガンダの材料を与え、意味ある改革なしに国際的な正当性を獲得しようとする彼らの企みを助けている。

 

アフガン女性たちの反応

アフガニスタンの女性活動家や市民団体の反応は迅速で痛烈だった。60以上の女性が主導する団体が団結してバーナードの発言を非難し、ターリバーンの残忍なジェンダー政策を隠蔽する共犯者として彼女を非難する公開書簡を発表した。一部の活動家は、政権のプロパガンダ装置を活性化したバーナードの役割について調査を求め、そのような共謀が戦争犯罪人の責任を問うための国際的な法的メカニズムを弱体化させると示唆している。

ターリバーン支配下で生活する多くのアフガン女性にとって、バーナードの訪問は裏切りと受け止められた。西側の人物が進歩について誤解を招く言説を述べると秘密の識字教室から地下の抗議行動まで、彼らの日々の闘争が見えなくなる。ある著名な活動家が嘆いたように、「彼女の言葉は、私たちの敵の手に武器を与えるようなものだ」。

「アフガン・パワフル・女性運動」は、バーナードの訪問を「アフガン女性の苦しみに対する侮辱」と表現し、敵への賛辞は、制裁と世界的な孤立に直面すべき政権を正常化するリスクがあると警告し、ターリバーンの行動は孤立した人権侵害ではなく、女性の権利を根絶し、反対意見を罰し、権威主義的支配を定着させるための組織的な試みの一部であると強調した。

ターリバーンの弾圧に抵抗するアフガン女性の声は多様で勇気にあふれている。逮捕、暴力、社会的追放のリスクをはねのけ、女性たちは抗議行動を組織し、秘密の学校を運営し、彼女たちの窮状を世界に訴え続けている。彼らの生きた経験は、一部の西側外交官や評論家が広める浄化された物語と対立するものだ。

 

ターリバーンの正当性における西洋の物語の役割

シェリル・バーナードの発言は、より広範な地政学的な文脈の中で理解されなければならない。2021年の米国の撤退が混沌と化して以来、西側の政策立案者はターリバーンとの関与に関して難しい選択に直面している。一部の人々は、紛争の再発やテロリスト集団の復活を恐れて、地域の安定を求めている。また、長期にわたる軍事的関与に疲れ果て、外交的または現実的なアプローチに軸足を移したいと考えている国もある。

この文脈の中で、ターリバーンを「実行可能な統治パートナー」として再ブランド化する取り組みが急増している。注目を浴びる訪問、外交的な提案、安定性と安全を強調するメディアの描写は、ターリバーンがその行動が控えめとし、国際的に受け入れられるに値するという物語を作り出している。

しかし、これらの物語は、現実政治の祭壇に人権と民主主義の原則を生け贄に捧げる危険をはらみ、超法規的殺人、少数民族の弾圧、女性の教育と雇用の禁止、女性蔑視の命令の暴力的な執行など、ターリバーンが現在も行っている残虐行為を意に介さない。

このような体制を正当化することは、国際規範を弱め、世界中の権威主義的なアクターを大胆にする。それは、戦略的利益のためなら人権侵害が見過ごされてもいいという危険なメッセージを送る。さらに、抑圧の下で苦しむ人々の声を疎外し、正義を求める彼らの訴えを非合法化する。

このように外交的なレトリックと現実との乖離は、国際的な関係者と一般市民の間に混乱を招き、効果的な人道的対応と対象限定型制裁を調整する努力を損なうことになる。欧米の人物が公然とターリバーンの行動を称賛したり、軽視したりすると、ターリバーン政権の政策変更にむけて努力する勢力にとって必要な道徳的権威と影響力が損なわれる。

 

結論と行動喚起

ターリバーン支配下のアフガニスタン女性たちの窮状は、人権と正義に対する国際社会のコミットメントのリトマス試験紙だ。シェリル・バーナードのコメントは、意図的であろうとなかろうと、専制政治を隠蔽し、不処罰を可能にする危険な傾向に貢献している。

本稿は、信頼できる報告や活動家の証言をもとに、外国の政治的言説とアフガン女性の生きた現実との間の明確な対照を強調した。それは、現地の声を中心に据え、真実や正義よりも地政学的な便宜に奉仕する言説に抵抗することの重要性を強調している。

 

国際人権基準を守るために、国際社会が順守すべき事柄

• 女性の権利と自由の具体的な改善なしにターリバーン政権を正当化しようとする試みへの拒否
• アフガニスタンの市民社会、特に正義のために命を危険にさらしている女性主導の組織への支援
• 人権侵害の責任者である個人や団体に対する、対象を絞った制裁の維持と実施
• 抑圧的な当局を正当化することなしに、人道支援を必要な人々に確実に届けること
• アフガン女性の声を増幅しプロパガンダに対抗する正確で細部を見落とさない報道の促進

アフガニスタンの未来は、国際社会の連帯と説明責任にかかっている。ジェンダー・アパルトヘイトと権威主義的抑圧に断固として立ち向かうことによってのみ、アフガニスタンの女性たちに自由、尊厳、平等の約束を実現することができるのだ。

【参照】

アムネスティ・インターナショナル、2023年。スローモーションの死:ターリバーン支配下の女性と少女。[オンライン]

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)、2023年。アフガニスタン:ターリバーンが女性の権利を弾圧。[オンライン]

UNAMA (国連アフガニスタン支援ミッション)、2023年。アフガニスタンの人権:2022年から2023年。[オンライン] https://unama.unmissions.org [2025年6月2日アクセス]。

アフガニスタン国際、2023年。シェリル・バーナードへのインタビュー:ターリバーンは変わった。治安が戻ってきた。【テレビ放送】アフガニスタン国際、12月12日。
https://www.afintl.com [2025年6月2日アクセス]。

アフガン・パワフル・女性運動、2024年。シェリル・バーナードのアフガニスタン訪問に関する声明。[オンライン]
[2025年6月2日アクセス]。

UN Women、2023年。アフガン女性の権利:ターリバーン支配の1年。[オンライン]

ザ・ガーディアン、2023年。「彼女の言葉は武器だ」:アフガニスタンの女性がターリバーンの称賛をめぐり、米国外交官の妻を非難。[オンライン]

BBCニュース、2024年。アフガン女性は、NGOや国連機関で働くことを禁じられた。[オンライン] 1月8日  [2025年6月2日アクセス]。

ニューヨークタイムズ、2023年。ターリバーンのジェンダーアパルトヘイト:女性に対する体系的な戦争。[オンライン]