Two Years in Darkness: A Nightmare of Suffocation and Brutality for the People of Afghanistan
By: Merwais Samadi
By Hasht-E Subh On Aug 7, 2023
ハシュテ・スブ 2023年8月7日
メルワイス・サマディ
(WAJ: 本論考は、ターリバーンが復帰したあとの2年間に、アメリカとターリバーンの間で結ばれたドーハ合意をターリバーンがまったく守っていないこと、にもかかわらずアメリカおよび国際社会はターリバーンを全くコントロールできていないことを明らかにしている。それどころか、2年間の既成事実のうえにターリバーンと取引をする傾向が強まっていることに危機感を示している。アフガニスタンでターリバーンと闘っている女性団体は、人道支援の口実の下にターリバーンを資金的に援助する事態さえ生まれていることに警告をならすほどである。国内における抗議の声が武力によって抑圧されている現在、国外からの抗議の声がとくに重要な局面となっている。「デファクト・オーソリティ」、つまり「事実上の政府」という表現でターリバーンとの関係を取り結ぼうとする動きが出てきていることに注意を払うべきである。)
アフガニスタン共和国が崩壊して2年近くが経過した。2年前、ターリバーンは、アフガニスタンの政治指導者たちの無策と歯止めなき腐敗、そして地域的、世界的な共謀によって、不法に権力を掌握した。この2年間、共和制を崩壊させた要因について、旧体制の指導者、政府高官、アフガニスタンに関与する国々の代表者たちは、数多くの声明や見解を発表してきた。これらの声明はしばしば、この破滅的で不名誉な失敗の責任を回避するものだった。その間、高級ホテルの無菌の密室で運命を決められ、この事態の矢面に立たされてきたのはアフガニスタンの人々であった。歴史は政治的大失敗の責任を負うこの者たちを裁くだろうし、アフガン国民はそのことを集団的記憶にとどめるだろう。
本稿では、ターリバーン圧政下の2年間、アフガン人が直面した課題と問題の範囲を、域内諸国と国際社会の役割と立場を考慮しながら評価する。
この2年間、ターリバーンはアフガニスタンに政治、経済、人権、社会、安全保障の各分野で深刻な危機をもたらし、アフガニスタンは国際舞台で事実上孤立した。この間、アフガン国民は基本的なサービスを受けられないだけでなく、人権侵害、貧困、抑圧、脅迫、強制に耐えてきた。ターリバーンが暴力的に台頭した時代から現在に至るまで、アフガン国民は、脅迫、基本的人権を構成する市民的・政治的自由の縮小、社会のあらゆる領域における女性と女子の組織的疎外といった悪影響を感じてきた。
この2年間、ターリバーンは、その厳格で野蛮なイデオロギーをもって、政治活動家や女性の権利擁護者の恣意的な逮捕、メディア関係者の弾圧、超法規的処刑、強制移住、宗教的・民族的マイノリティの活動の抑制と資産没収を一貫して行ってきた。これにより、脅迫、恐怖、物理的・心理的不安の環境が醸成され、何十万人ものアフガニスタン人が祖国を捨て、さまざまな国で困窮と不安の中で生活せざるを得なくなっている。このような現実は、国連安全保障理事会や人権特別報告者などの国際機関からの最近の報告書や、国内外の独立したメディアによる記録によって裏付けられている。
ターリバーンの厳格で暴力的な政策の下で、アフガン国民が耐えてきた過酷な犠牲にもかかわらず、アフガニスタンの女性と女子は、社会参加、教育の継続、雇用機会、男性の付き添いなしに家の外に出る自由などの権利を組織的に奪われ、主要な犠牲者となっている。過去2年間、最も顕著な指令と勅令は、名を隠したターリバーン指導者から発せられ、女性と女子の権利を標的にしていた。それは、アフガニスタンの女性すべてに対するジェンダー・アパルトヘイト(性的抑圧、性奴隷化)を意味した。
2年間に、ターリバーン一派は、あからさまだが空虚な自尊心に駆られ、政治的安定、正当性、国民の信頼を保証するための中心的な前提条件である、包摂的で選挙で選ばれた制度の確立を求める国内外の要請を一貫して拒否してきた。排他的で抑圧的な体制の維持に固執することで、大多数のアフガン国民の意思を無視し、国家を危険な軌道と不確かで暗い未来へと事実上誘導してきた。
ターリバーンの歴史的な姿勢からの変容を謳う主張とは裏腹に、過去2年間、この集団の考え方はより暗いものであった。彼らの記録と行動は、いかなる前向きな変化も拒んできただけでなく、暴力と過激主義への傾向を増幅させてきた。支配を回復して以来、アフガニスタンは再び、数多くのテロリストや過激派組織の結節点へと姿を変えた。ターリバーンがこれらのテロ組織を匿い、斡旋し、協力することによって、アフガニスタンの安全保障、地域近隣諸国の安定、そして国際社会全体に対して間違いなく脅威となっているという認識を、信頼できる文書が裏付けている。
さまざまな民族や社会階層から代表を集めた包摂的な政府を作るという表向きの美辞麗句にもかかわらず、世界各国や地域諸国は、それぞれの自己利益に沿って、公言した価値観とは矛盾するやり方でターリバーンと関わってきた。ターリバーンへの譲歩を許し、財政援助を拡大する特徴をもつこのような形の交流は、自分たちの支配に代わるものは存在しないというターリバーン内の誤った認識を助長した。その結果、これらの国々によるターリバーンへの協力要求が、ターリバーンからの援助要求よりも優先されるという、依存の概念が生まれた。
ドーハ合意には隠された取り決めがあり、アフガニスタンからの外国軍の完全撤退という結果をもたらしたものの、この2年間われわれは、米国、欧州諸国、国連などの組織がとる一貫した態度を目撃してきた。これらの国々や組織は、アフガニスタンに対する統一的なアプローチとして、またターリバーンと交流する上での条件として、次の3つの柱を断固として強調してきた。これらの原則は、国連安全保障理事会の決議にも反映されている:
1- すべての構成員を包摂し受け入れ可能な政府の枠組みの確立;
2-人権、特に女性の権利を擁護し、女性と女子による教育、学習、雇用への自由なアクセスを促進することへの揺るぎないコミットメント;
3-テロリズムとの持続的かつ精力的な戦い。
外国人関与者の役割
米国の諸機関、とりわけジョー・バイデン大統領率いる政権が、アフガニスタンで平常と安定の体裁を取ろうと努力していることを示す証拠が数多くある。それにもかかわらず、2年間にわたるターリバーンとの関係が彼らを幻滅させたことは明らかだ。バイデン政権関係者は、共和党の批判にあるように、アフガニスタン情勢が2024年の大統領選挙の結果に影響を与えないよう、負の影響を避ける努力をしている。アメリカの対アフガニスタン政策の根底にあるのはドーハ協定の履行であり、協力を通じてターリバーンの大多数に影響力を行使することを目的としている。多大な努力と多額の政治的・財政的投資を行ってきたにもかかわらず、ワシントンはこの2年間、ターリバーンに目的を押し付けることにも、このグループに対する他国の影響力を弱めることにも成功していない。さらに、米国は、ムッラー・バラダール(Mullah Baradar)やムッラー・ヤクーブ(Mullah Yaqoob)のようなターリバーン内にいる支持者の地位を高めるのに尽力してきたにもかかわらず。とは言え、アフガニスタンでの制空権を維持し、一貫した軍事・諜報活動を行うことには成功している。それゆえ、米国にとってアフガニスタンにおける人権問題の重要性は低下しているように見える。
政治的な思惑が異なる欧州諸国は、アメリカのアフガニスタンでの行動への不満があるため、この問題で自主的に行動する可能性が低いと認識するのは極めて重要である。彼らの今後の出方は欧州連合(EU)内の集団的決定によって左右される可能性が高いが、それに密接に絡むのがアメリカによる口出しである。国連も同様だ。過去2年間、国連はターリバーンに約束を守り、アフガニスタン国民と国際社会の願望に従うよう説得してきたが、具体的な成果はあまり得られていない。この行き詰まりは主に、国連安全保障理事会のメンバー、特に常任理事国5カ国が統一的な姿勢をとっていないことに起因している。加えて、ウクライナ紛争と世界的な政治情勢が、大国間の不信感を増幅させている。これがアフガニスタン情勢に大きな影響を及ぼし、域内における国連の実効性を損なっている。
過去2年間、特にウクライナ紛争を背景に、ロシアはターリバーンとの紛争に関与することを控え、代わりにアフガニスタンに対する外交政策においてターリバーンとの交流を優先することを選んだ。ロシアの目的は、伝統的に自国の影響圏内にある中央アジア諸国で、不安と安全保障上の脅威が拡散するのを防ぐことである。ロシアのターリバーンへの関与は、主に安全保障、情報、経済的な懸念が中心となっている。その最大の懸念は、ターリバーン支配下のアフガニスタンから中央アジア諸国やロシアへの麻薬密売の拡大とともに、ISISを含むテロリスト集団や宗教的過激主義の拡大である。その結果、ロシアはモスクワのアフガニスタン大使館の管理をターリバーンに譲るなど、ターリバーンに譲歩することで短期的にこれらの脅威を緩和しようとしている。中央アジア諸国は、こうした懸念をロシアと共有している。さらに、ウズベキスタンとトルクメニスタンはターリバーンとのつながりを強化し、経済交流を促進している。ロシアはまた、イラン、中国、南アジア諸国、特にインドを含む、より広範な経済回廊の確立を目指している。この試みは、石油、ガス、穀物の輸出に課された欧米諸国の制裁を回避することを目的としている。
当初はターリバーンの復活に熱狂的だった中国も、ここ2年間はアフガニスタンに対してより現実的な見通しを持つようになった。中央アジア市場とアフガニスタンの天然資源は、一貫して中国の経済目標にアピールしてきた。ターリバーンとの関わりは比較的単純で、グループのメンバーは一般的な法律に関係なく、指導者の決定にほぼ従うからだ。中国はパキスタンやイランと協力し、アフガニスタンの資源を活用する戦略を練っている一方で、インフラ整備を指揮し、ターリバーンを通じてささやかな政治改革を始めている。これらの改革は、国民を統合する包摂的な政府の樹立を条件としている。しかし、ターリバーンは米国に勝利したものの、中国からの褒美はいまだ限定的だ。今後ターリバーンが中国の条件を呑めば、北京はアフガニスタンと強固なパートナーシップを築く用意がある。国民を統合する包摂的な政府は中国にとって望ましいが、人権、女性の権利、そしてターリバーンがこれらの原則を守ることはたいして重要ではない。さらに、アフガニスタンにおける東トルキスタン・イスラーム運動(ETIM)の存在に関する中国の懸念は、以前と比べて減少している。もはやこのグループは中国の安全にとって重要で喫緊の脅威ではなくなっているからだ。
最近の情勢とアフガニスタンにおけるインドの影響力の低下を考えれば、ニューデリーは進展する情勢に無関心ではいられない。ターリバーンに対する中国とパキスタンの影響力は、インドを不利な立場に追いやる。イランはアフガニスタンをめぐって中国と連携しているため、インドはイランとの関係を緊密にすることはできない。現在の状況では、インドの唯一の短期的選択肢はロシアとの関係強化である。過去2年間、前アフガン政権の特定の派閥がインドとターリバーンの意思疎通を促進してきた。パキスタンと中国がターリバーンに対して影響力を持っているにもかかわらず、インドは一部のターリバーン関係者と接触を開始し、カーブルにある大使館の再活性化を通じてその存在感を拡大した。しかし、パキスタンと中国がターリバーンを支配しているため、インドとターリバーンの間には不信感が続いている。重要なのは、それでもインドが徐々にその働きを取り戻しつつあることだ。インドが統治するカシミール地方で治安が悪化するにつれ、ターリバーンが支援する過激派戦闘員が流入するため、アフガニスタン国内のターリバーンに対する圧力を強める必要がある。
過去2年間、パキスタンはターリバーンの復活と、アフガニスタンで宿敵インドに勝ったとの認識で歓喜していたが、いまやターリバーンとの複雑な関係に苦慮している。一方で、ターリバーンにたいするパキスタンの影響力はまぎれもないが、他方アフガン国内にTTP(パキスタン・ターリバーン)が存在する事実がある。アフガン・ターリバーンとパキスタン・ターリバーンが緊密な関係にあることと相まって、イスラマバードとアフガン・ターリバーンとの関係を複雑にしている。アフガニスタンのデリケートで複雑な状況を考えると、さすがにターリバーン指導者とその家族を受け入れつづけ、またターリバーンを一貫して支持してきた国であっても、パキスタンは現段階ではターリバーンの正式承認をためらっている。ターリバーンの支配下でパキスタンの治安部隊への攻撃や死傷者が増加していることから、ターリバーンとの安全保障協力に対するパキスタンのアプローチは慎重である。それにもかかわらず、パキスタンの治安組織はターリバーンの特定の派閥に対して大きな影響力を保持しており、ターリバーン内に大きな影響力を及ぼしている。
イランはターリバーンの公式承認は控えているが、ターリバーンが復活するまでの数年間、そして復活後も、同グループとの安全保障と諜報活動の関係を維持してきた。ターリバーン支配下のアフガニスタンでイスラム国ホラーサーン(ISIS-K)や他のテロ組織の存在が大きくなったため、イランはこの2年間、ターリバーンとの交流を強化するようになった。それに伴い、イランはテヘランにあるアフガニスタン大使館を親善の証としてターリバーンに譲渡している。さらに、アフガニスタンに関するイランと中国の協力関係は、両国の政治対話の重要なポイントとして浮上している。イランは、アフガニスタンにおける宗派間紛争の防止と中国との経済・安全保障協力の確立を、自国の利益にとって極めて重要なことと考えている。そのため、ターリバーンに対する軍事行動への支持は控えている。
重要な側面は、アフガニスタンの南西部と北西部へのイランと中国の共同投資構想である。イランとターリバーンの間には不信感を長引かせるさまざまな要因があるにもかかわらず、イランと中国の協力は双方の課題として依然として重要な関心事である。イランはスンナ派とシーア派の抗争を防ぎ、アフガニスタンにおける中国との経済・安全保障関係を育むことを優先している。その代わり、イランは軍事介入を主張しない。
アフガニスタンの地政学的現実を認識しているアラブ諸国、特にカタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビアは、この2年間、ターリバーンとのオープンな交流チャンネルを維持してきた。カタールはドーハにターリバーンの代表事務所を置き、ターリバーンと他国との交渉や交流の震源地として機能しており、ターリバーンに対して最も大きな影響力を行使している。サウジアラビアは、強固な同盟国であるパキスタンとより緊密な連携をとりつつも、ターリバーンとの交流は、以前の統治時代と比べると慎重に進めている。この2年間、アラブ首長国連邦はターリバーン内の若い派閥との関わりを追求してきた。この派閥は指導部とは異なり、イランとの緊密な関係を維持している。アラブ首長国連邦はアフガニスタンの前大統領に避難所を提供する一方で、ターリバーンの特定の派閥との協力を通じてイランの影響力に拮抗しようと図っている。この動きは、ターリバーンに代わってアフガニスタンの飛行場の管理契約を首長国企業に授与したことに象徴される。
最後に、トルコは影響力の保持と利益の保護を追求するため、ターリバーンが復活して以来、ターリバーンとの関係を維持してきた。NATO加盟国として、トルコは比較的広範囲に関与しており、ターリバーン関係者を受け入れている数少ない国のひとつである。トルコは自らを世界的、領域的な関与者と位置づけ、さまざまな派閥やグループとの関わりを求めている。トルコにアフガニスタン旧政府の高官が多数滞在していることは、この役割を強調するものであり、アフガニスタンのトルコ系民族の間での影響力がその証左となっている。
ターリバーン支配の一過性
この2年間、ターリバーンは国家を後退させ、アフガニスタンの未来に向けた政治的、安全保障的、経済的、人間的、社会的な青写真を何一つ描くことなく、暗闇へと導いてきた。システムの核心は完全に崩壊し、男女を含む住民の基本的権利がターリバーンによって著しく侵害され、剥奪されるというシナリオを引き起こしている。その結果、アフガニスタンとその住民は、貧困、不確定な状況、暗い未来という泥沼に陥っている。
アフガニスタン問題に関与している国々は、それぞれが既得権益を守っており、自国の利益を守るだけでなく競争相手の利益を損ないターリバーンに圧力をかけることができる。そのため、これらの国々が、アフガン市民の権利と自由を尊重するすべての勢力を含む政権を構築するための戦略や意思を共有することはない。多くの会議が開かれ枠組みが試されたが、域内や世界のすべての利害関係者の目的に沿うことができず、具体的な成果は限定的だ。
同様に、政治的見地から人権や女性の権利の遵守をめぐる言説は、ターリバーンに対する圧力の道具として、また国内の政治的おしゃべりのために、米国を含む多くの国によって活用される、道徳的で感情的な主題である。しかし、ターリバーンとの対話となると、主眼は常に自国の利益を高めることに置かれ、他のことは考慮されない。
現在の世界情勢の中で、アフガニスタン問題は、米国を含む主要国の外交政策や国家安全保障戦略の最重要項目の中で、突出した位置を占めていないと認識する必要がある。来る2024年のアメリカ大統領選挙で共和党が勝利を収め、ウクライナの混乱が収まって初めて、アフガニスタンに対する政策の転換が確実に日の目を見る。そのような変化が、アフガニスタンに対する各国の姿勢に影響を与えることは間違いない。
最重要事項は、ターリバーンの支配が永続せず、一過性のものであると認識することである。その結果、アフガニスタン国民を真に代表し、過去を特徴づけた腐敗、偏見、反感の汚点を取り除いた、強固な国政を担える勢力の樹立が不可欠となる。そんな政治グループは、国際社会や域内の活動家との調整の役割を効果的に担い、アフガニスタンで展開される力学に貢献することができる。過去の失敗を教訓として、この努力はアフガニスタンの人々の願望と関心に沿うものでなければならず、それによってより有望な時代を切り開くことができる。
Two Years in Darkness: A Nightmare of Suffocation and Brutality for the People of Afghanistan