The U.S. rejected a U.N. resolution condemning slavery
(WAJ:国連総会は2026年3月25日、奴隷貿易とアフリカ系住民の奴隷化を「人道に対する最も重大な犯罪」とする決議を採択した。123か国が賛成し、米国・イスラエル・アルゼンチンのみが反対、52か国が棄権した。決議は、奴隷制の歴史教育や記憶の継承、謝罪や補償を含む「修復的正義」の必要性を強調している。
一方、米国は「当時国際法上違法ではなかった歴史的行為に法的な賠償義務はない」して補償を否定した。記事によれば、この立場は米国社会の一部世論とも重なる。調査では、約3分の1の米国人が奴隷制の歴史が現在の黒人と社会や米国社会に大きな影響を与えていないと考え、多くの白人は賠償に反対している。また、奴隷制に関する基礎知識も十分ではなく、2019年の調査では平均正答数は5問中2問だった。
記事は、こうした認識不足の背景として教育政策を挙げる。マサチューセッツ州、バージニア州、テキサス州の歴史教育基準を比較すると、奴隷制の「現在への影響」や制度的人種差別とのつながりが十分に教えられていないという。特にテキサス州の新カリキュラムでは「人種差別」という言葉すらほとんど登場しない。
さらに、トランプ政権は2025年以降、奴隷制を扱う展示や記念碑、教育パネルの撤去を進めており、記事はこれを「米国史の書き換え」と批判する。筆者たちは、過去の不正義と現代社会を結びつけて教育することが、より自由で公正な未来のために不可欠だと主張している。
日本は、棄権票を投じた。その理由を「奴隷制と奴隷貿易は“人類史上の重大な不正義”であるが、この決議文には法的・概念的に懸念がある」としている。(国連日本政府代表部声明)
今回のテーマは「奴隷制」であるが歴史的には「帝国主義的侵略」や「原子爆弾の使用」など“人類史上の重大な不正義”はほかにもある。棄権などというあいまいで責任逃れの姿勢は一日も早く捨て去るべきである。
日本と同様に棄権した主要国は下記のとおり。
・イギリス
・カナダ
・オーストラリア
・EU加盟国(European Union の全27か国)
ドイツGermany
フランスFrance
イタリアItaly
スペインSpain
オランダNetherlands
ポーランドPoland
など
賛成した123か国の中心は、アフリカ諸国、カリブ海諸国、そして中南米・アジア太平洋の多くの国々。特に強く推進したのは、Ghana を中心とするアフリカ連合(AU)と、カリブ共同体(CARICOM)。アフリカ連合加盟国55か国の大半は賛成。
今回の投票行動を特徴づけたのは、
・欧米先進国(EU、日本、英国、カナダ、豪州など)は多くが棄権
・米国・イスラエル・アルゼンチンの3カ国のみが反対
・グローバルサウス諸国は広範に賛成
なお、最近の国連決議では相互に反対する側に立つことが多かったロシアとウクライナが同じ「賛成」にくみした点は注目に値する。)
以下、Good Authorityの記事全文
米国、奴隷制を非難する国連決議を否認
Eva Jaber, Zola Sayers-Fay, and Kelebogile Zvobgo (Good Authority)
2026年5月12日

米国フィラデルフィアのIndependence National Historical Parkでは、トランプ政権が、アメリカ独立革命期における奴隷化された人々の日常生活を説明する情報パネルの撤去を命じた。2026年4月に撮影された写真には、失われたパネルの一部と、この情報検閲に対する市民のコメントが写っている(cc)Good Authority。
3月25日、「奴隷制および奴隷貿易犠牲者国際追悼デー」に、国連総会(UNGA)は、奴隷貿易およびアフリカ人とその子孫の奴隷化を「人道に対する最も重大な犯罪」と宣言する決議を採択した。
この歴史的決議について、123か国が賛成票を投じ、52か国が棄権した。反対票を投じたのは、米国、イスラエル、アルゼンチンの3か国のみであった。さらに、米国国連代表部は、補償に関する決議の勧告も拒否し、「当時の国際法上違法ではなかった歴史的行為について、米国は法的な補償請求権を認めない」と主張した。
こうした立場は国際社会の大勢から外れているが、私たちの研究によれば、これらの問題に関する米国の投票行動は、アメリカ国民の一部の見解を反映している。
「人道に対する罪」とは定義上、政府や組織の政策の一環として行われる、民間人に対する広範または組織的な攻撃を指す。奴隷制、絶滅、拷問、強制移住などがその例である。この国連決議の重要な部分では、「真実、記憶、教育、歴史的正義が、和解と持続可能な平和に不可欠な要素である」と勧告している。この考え方は、トランプ政権の多くの政策と相容れないように見える。現政権は、多くの州政府・地方政府とともに、米国史に関する教育課程を検閲し、博物館展示を消去し、アメリカの奴隷制の歴史に関する記念碑を撤去しようとしてきた。
この国連決議が述べていること
国際機関が「人道に対する罪」のような重大な国際犯罪を比較したり序列化したりすることは多くない。苦しみの序列化は論争を招きやすく、多数の加盟国を抱える大規模組織では非生産的になりかねない。しかし、この国連総会決議は、奴隷制が「世界史に決定的な断絶をもたらしたこと、その規模、継続期間、組織的性格、残虐性、そして今日に至るまで労働・財産・資本の人種化された制度を通じてすべての人々の生活を構造化し続けている永続的影響」によって特に重大であると論じた。
奴隷制の「永続的影響」に焦点を当てている点が、この決議の重要な特徴である。これは、アフリカ系住民に対する修復的正義――正式な謝罪、補償、再発防止の保証など――の根拠を提供する。また、その他の救済措置には、人種差別や制度的差別に対処するための法律・制度・サービスの改革が含まれ、奴隷制の歴史とその現代的影響に関する教育も含まれる。
国連総会決議は、安全保障理事会決議とは異なり法的拘束力を持たない。そのため、米国だけでなく52か国もの棄権があったことは特に注目に値する。棄権国の半数以上は欧州連合加盟国であり、カナダと英国も棄権した。
米国と同様、これらの国々の多くは、アフリカ人とその子孫の奴隷貿易と奴隷化に責任を負っていた。それにもかかわらず、彼らは奴隷制を「歴史上最も重大な人道に対する罪」と認めることを拒否した。各国は「犯罪の序列化」への懸念を表明したが、それは特に、ホロコースト――人道に対する罪と、特にジェノサイドという関連するが異なる犯罪を伴った歴史――に対するヨーロッパの経験によるものかもしれない。さらに、EU加盟国は補償問題を回避しようともした。
なぜ米国は「反対」票を投じたのか?
米国代表団は、奴隷制を「歴史的な誤り」と認めたが、それは現代とは無関係であり、補償の対象にもならないとした。しかしこの反応は、米国における奴隷制の歴史と、その永続的遺産を無視しているように見える。
この見解は、ある程度、多くのアメリカ人が奴隷制の歴史とその継続的影響について抱いている考え方と重なっている。長年にわたり、ワシントン・ポスト、Pew Research Center、Gallupは、奴隷制に関する類似した世論調査を実施してきた。3機関はいずれも、「奴隷制の歴史が現在の黒人アメリカ人や米国社会全体に影響を与え続けていると思うか」を成人に尋ねている。その結果、概して約3人に1人のアメリカ人は、奴隷制の歴史が黒人アメリカ人や米国社会にほとんど、あるいは全く影響していないと考えていることが示されている。さらに、大多数のアメリカ人、特に白人アメリカ人は、奴隷制に対する補償に反対している。
他の調査では、多くのアメリカ人が米国における奴隷制の歴史全体を十分に理解していないことも示されている。例えば、2019年のWashington Post–SSRS調査では、約1000人のアメリカ成人を対象に、奴隷制に関する5つの重要な事実についてクイズを行った。回答者の平均正答数は5問中2問に過ぎなかった。
参考までに、その質問は以下の通りである。
・「米国で奴隷制を禁止した根拠は何か?」
正解:「合衆国憲法修正第13条」
・「奴隷制は13植民地すべてに存在したか、それとも一部だけだったか?」
正解:「すべての植民地に存在した」
・「リンカーンは最初の大統領選出馬時、米国で奴隷制を終わらせると約束したか?」
正解:「リンカーンはそのような約束をしていない」
・「1860年当時、米国人口の何%が奴隷だったか?」
正解:「13%」
・「南北戦争の主な原因は何だったか――奴隷制か、それ以外の理由か?」
正解:「奴隷制」
米国史と、その教え方をめぐる対立
国連総会での投票、アメリカ国民の奴隷制理解の限界、そして補償への反対は、米国における「真実」と「記憶」をめぐるより広範な対立を浮き彫りにしている。この状況は、その対立の源泉を解き明かす機会でもある。私たちは、人種暴力が米国教育でどのように描かれているかを研究している立場から、米国史カリキュラムを詳しく検討した。
国連総会決議は、教育が、社会が過去(および現在進行中)の不正を理解し、その是正を支持する上で不可欠であると認識している。政治的立場の異なるマサチューセッツ州、バージニア州、テキサス州の教育基準は、奴隷制とその現代的遺産を含む米国史上の人種暴力に関する教育の欠落を示している。
マサチューセッツ州
2018年の歴史・社会科学学習フレームワーク(幼稚園前から高校卒業まで対象)は、奴隷制の永続的影響を明示的に認めていない。その代わりに、「効果的な教育は、米国が多様性受容において達成した進歩を称賛すると同時に、過去および現在の偏見、人種差別、偏狭さについて、誠実で知識に基づいた学術的議論を促進する」と一般的に述べている。
バージニア州
2023年の11年生向けバージニア・米国史学習基準は、奴隷制の永続的遺産を暗黙的に認めている。基準は「容赦のない事実ベースの扱い」を提唱し、生徒が「米国および世界における奴隷制、隔離、人種差別という消えない汚点」を理解することを目指している。しかし、「消えない」という表現は持続的影響を示唆するものの、その関連性を明示する具体例が不足しているため、学校教育が「過去が現在にとって重要である」という理解を十分に伝えられない可能性がある。
テキサス州
2026年1月、テキサス州は新たな社会科フレームワークを採択した。しかし、米国史の主要トピックとサブトピックには、「人種差別」という語すら含まれていない。また、奴隷制に関する最後の大きな議論は南北戦争の原因に関するものであり、その後の影響には触れていない。その後の記述では、ジム・クロウ法、クー・クラックス・クラン、リンチに言及しているが、それらを現在進行中の制度的人種差別や反黒人暴力と結びつけておらず、奴隷制から続く歴史的連続性の中でも説明していない。
重要なのは、これら3州の教育委員会のいずれも、黒人に対する過去・現在・継続的な不正に対する補償という考え方を導入しようとしていないことである。
これは何を意味するのか?
米国総会での「反対」票は、米国教育や政治のより広範な潮流を反映しているだけでなく、トランプ政権による「米国史の一部を書き換える」運動の一環でもある。
2025年1月に政権へ復帰して以降、大統領は歴史教育への攻撃をさらに強め、国立公園局の施設、スミソニアン博物館、その他連邦資金を受ける施設において、奴隷制を認める教育用プレート、博物館展示、記念碑の撤去を命じてきた。大統領は、こうした米国史の認識が「建国の理念や歴史的節目を否定的に描いている」と批判している。
米国史教育において、歴史的不正義と現代の不正義を結びつけて理解することは、より自由で公正な未来を促進するために必要と思われる。むしろ最近の政治動向は、過去とより完全かつ真実に向き合う必要性を示している。
Eva Jaber は、William & Mary のStamps 1693 Scholarであり、International Justice Labの研究員である。
Zola Sayers-Fay も、William & MaryのStamps 1693 Scholarであり、International Justice Labの研究員である。
Kelebogile Zvobgo は、William & Mary政府学部のMansfield准教授であり、International Justice Labの創設者兼ディレクターである。彼女は人権、移行期正義、国際法および国際裁判所を研究している。初の著書は『Governing Truth: NGOs and the Politics of Transitional Justice』である。