pakistan-wins-trumps-favor
(WAJ: アフガニスタンに米軍が残してきた軍装備品を回収すると主張するトランプ大統領の再登場に際して、アメリカとパキスタンの関係改善が注目されている。その象徴が、米軍撤退時にカーブル空港で起きた大規模自爆攻撃犯人の逮捕である。米国は逮捕作戦をパキスタン政府の協力のもとに実行した。パキスタンは米国との関係回復、ターリバーンの抑制にむけ躍起となっている。この地域での情勢緊迫化から目を離せない。トピックス:「ビラーワル・ブットー・ザルダーリー:アフガニスタンはテロリストの避難所となっている」 参照)
シュジャウディン・アミニ(ハシュテ・スブ:アフガニスタンの独立系メディア)
2025年3月13日
左:シェバズ・シャリフ・パキスタン首相 右:トランプ米国大統領
ドナルド・トランプ米大統領は、共和党・民主党の下院議員や上院議員からなる数百人の議員を前にした米議会での初の演説で、カーブル空港での自爆攻撃の主犯とされるモハメド・シャリフラー容疑者の逮捕に協力したパキスタンに対し、謝意を表明した
<参考サイト>
ISIS-Kテロリストのモハメド・シャリフラーが裁判にかけられる
パキスタン、カーブル空港爆破事件の容疑者はアフガニスタン国籍と発表
パキスタンのシェバズ・シャリフ首相も驚き、トランプ大統領の発言に感謝と喜びを表明した。タミー・ブルース米国務省報道官は、シャリフラー容疑者の逮捕におけるパキスタンの役割を称賛し、イスラマバードはテロとの戦いにおいてワシントンにとって極めて重要なパートナーであると述べた。マイケル・ウォルツ米国家安全保障問題担当大統領補佐官も、トランプ大統領に代わってパキスタンのムハンマド・イシャク・ダール外相との会談でイスラマバードの役割を称賛し、テロとの戦いにおける共同の取り組みの継続を求めた。イシャク・ダール氏は満足感を表明する一方で、アフガニスタンのターリバーンからアメリカの武器を回収するよう要請した。これは完全に不可能というわけではないかもしれない。
ターリバーンがアフガニスタンで政権を握って以来、パキスタンは、テフリク・エ・ターリバーン・パキスタン(TTP)による攻撃の急増、経済不安、バローチスタン(バルーチスタン)の分離主義、宗派間の対立、国際関係におけるインドの存在感の高まり、ニューデリーとカーブル政権との緊密化、イスラマバードとカーブルの実効支配政府との緊張関係など、数多くの課題に直面してきた。この脆弱で不安定な状況において、トランプ大統領の最近の姿勢とパキスタンへの称賛は、パキスタンの文民および軍指導者の士気を高め、同国の統治に新たな息吹を吹き込むものとなっている。したがって、パキスタンによるシャリフラー容疑者逮捕の動きは偶然ではなく、トランプ大統領の支持を得て現在の危機を乗り切る機会をつかむために、数カ月、あるいは数年前から計画されていた計算された行動であったと想定するのは無理なことではない。
パキスタン自体が長らく同盟国からすらテロリスト集団を支援していると非難されてきたにもかかわらず、トランプ氏がパキスタンの対テロ活動を称賛したことは、より意味深いものとなる。さらに重要なのは、トランプ氏が以前パキスタンに対する最も厳しい批判者のひとりで、パキスタンがテロとの戦いを口実に数十億ドルを流用しながら、実際には過激主義や急進主義を助長しているとして、同国を欺瞞とテロ支援国だとして繰り返し非難していた事実だ。これを理由にトランプ氏はパキスタンへの40億ドル近くの軍事援助を停止していた。当時は米軍がまだアフガニスタンに駐留しており、ワシントンはイスラマバードの協力に頼っており、特にドーハでは米国とターリバーンの和平交渉が進行中だった。トランプ氏は最初の政権時代にはインドを支持し、世界経済や最新技術における同国の役割をしばしば称賛していたが、その姿勢はパキスタンにとって特に不快なものだった。トランプ大統領がイスラマバードについて肯定的に語っている今、それはパキスタンにとって真剣に考慮すべき外交戦略上の兆しだ。特にホワイトハウスの新大統領が同盟国と敵国の両方を無差別に批判し、その称賛を受けた国がほとんどない時期にはなおさらだ。
トランプ氏の発言の騒ぎが収まる前に、パキスタンは米国に重大な要求を提示した。ターリバーンからの軍事装備の回収である。イシャク・ダール氏はウォルツ氏との会話の中で、米国が軍事装備を回収する必要性を強調した。同様に、パキスタンのカワジャ・ムハンマド・アシフ国防相もこの要求を強調した。過去3年間、パキスタンほどターリバーンの米国製兵器保有を強く非難した国はない。イスラマバードは米国の同盟国とみなされているが、この問題についてはパキスタンよりもイラン、中国、ロシアなどの国の方が懸念してもいいはずだが、これらの国は比較的無関心のようにみえる。パキスタンの主張によると、TTP戦闘員は米軍がアフガニスタンに残した最新鋭の兵器で武装している。パキスタン軍が標的にされるたびに攻撃が著しく正確なことからこの主張は信憑性があると思われ、これらの作戦で最新鋭の軍事装備が使用されている事実を示唆している。
現在、ターリバーンにとって状況はより困難になっている。パキスタンのロビー活動が継続し、勢いを増せば、トランプはターリバーンから軍事装備を回収する決意をさらに固めるだろう。それは間違いなくカーブルの現政権にとって不利となる。パキスタンによる支援と引き換えに、トランプが回収した軍事装備をパキスタンに移送すると決定する可能性さえある。このシナリオがますます現実味を帯びてくると、ターリバーンはパキスタンを喜ばせるためにTTPに背を向けるしかなくなる。彼らにとってそれは大きな代償を伴う選択肢となる。拒否すれば、パキスタンと衝突するだけでなく、トランプ氏から繰り返し警告を受けるリスクもある。しかし、別の種類の取引も考えられる。ターリバーンが軍事装備を保持する代わりにTTPとの関係を断つという取引だ。もちろん、これはトランプ氏とパキスタンの間に新たに生まれた友情が長続きするかどうかにかかっている。
ターリバーンの反応も注目に値する。パキスタンがISIS(訳注:イラク・シリアのイスラム国)を支援していると非難したのだ。この反応はターリバーンの不安を反映している。理由はターリバーンが以前にカーブル空港での自爆攻撃の実行犯を殺害したと主張したことで、おそらく前米政権から譲歩を得たからだろう。理想を言うと、ターリバーンは攻撃者の逮捕を歓迎し、共同のテロ対策の重要性を強調すべきだった。攻撃で200人近くのアフガニスタン市民が死亡したことを考え、本当にアフガニスタン市民の保護に関心があると示したいのであれば、首謀者の逮捕に満足の意を表明すべきだった。しかし、ターリバーンのスポークスマンはトランプ氏の演説に賛同するどころか、完全に不満を表明し、パキスタンがISISを支援していると非難した。ホワイトハウスがこのような主張に耳を傾ける可能性は低い。特にパキスタン当局者の一見ポジティブなイメージが特別に注目されている時期にはなおさらだ。