The Organization of Islamic Cooperation Delegation’s Kabul Visit: Seeking Solutions or Whitewashing the Taliban?

イスラーム協力機構代表団のカーブル訪問

(WAJ: アフガニスタンを含む57か国が加盟しているイスラーム諸国協力機構(OIC)がターリバーンによる政権奪取の後の2022年3月6日にアフガニスタンでの活動を再開し、現在に至っていることは評価できるが、その活動の内容は不明であり、ターリバーンの不作為に目をふさぎ、現状のままのターリバーンの国際承認を後押しするような言動がみられる。もしOICがターリバーンの不作為をとがめるのでなく、そのままの承認の方向に向かうとしたら、OICそのものの信用にも傷がつくだろう。)

By: Amin Kawa
By Hasht-E Subh On Sep 3, 2023
アミン・カワ
ハシュテ・スブ 2023年9月3日

イスラーム協力機構(OIC)は、他のイスラーム宗教団体とともに、国際イスラーム法学アカデミー(IIFA)(訳注:文末参照)が率いる代表団をアフガニスタンに派遣したと発表した。IIFAによると、この代表団はイスラーム教における穏健さと公平性、教育や女性の労働の権利に関してターリバーン当局と協議した。この代表団の派遣は、組織の執行委員会と閣僚評議会の要請に従って実行された。ターリバーンはまた、この代表団が首相の政治代理人およびターリバーングループの外務大臣代理と会談したことを確認した。同団体は、この代表団がISISの脅威に対するターリバーンの対応を「比類のない効果的」なものと称賛し、ターリバーンの進歩を「認める」よう世界に訴えたと主張している。しかし、一部の国民は、イスラーム協力機構(OIC)は賞賛したり、ごまかしたり、容認したりするのではなく、ターリバーンの「中世」的行動、女性の権利の広範な禁止、骨を砕くほどの貧困、広範な人権侵害、そしてアフガニスタンの政治危機に対処することに重点を置くべきだと主張している。

(訳注:国際イスラーム法学アカデミー(IIFA)は、ラビ・アル・アワル 1401 AH(西暦 1981年1月)に設立されたユニバーサルな学術団体であり、イスラーム協力機構(OIC)の補助機関。メンバーは、イスラーム世界のさまざまな地域の法学、文化、科学、経済の知識分野を専門とする著名なイスラーム法学者、学者、知識人。メンバーは現代の生活問題を研究し、本格的で効果的なジハードを実行し、イスラームの伝統に由来する解決策を提供することを目指し、イスラーム思想の発展に寄与する組織)

<参考サイト>
https://iifa-aifi.org/en/45074.html

 

OICのプレスリリースによると、今回の訪問はターリバーンとの協議のために、イスラム協力機構(OIC)が執行委員会と閣僚理事会の決議を追求する枠組みの中で実施された。同組織の声明にはこうある: 「国際イスラーム教義アカデミー(IIFA)およびイスラーム世界の他の関連宗教機関の指導の下、学者たちがアフガニスタン(ターリバーン政権)に派遣され、イスラームにおける節度と公正、女子教育、女性の雇用といった重要な問題について対話を行っている。」これらの宗教学者の出身国は、サウジアラビア、トルコ、パキスタン、アラブ首長国連邦、バーレーン、ヨルダン、マレーシア、インドネシア、チャド、ガーナだと報道されている。

<参考サイト>
https://www.oic-oci.org/topic/?t_id=39446&t_ref=26590&lan=en

 

一方、ターリバーン支配下の国営バフタール通信は、ターリバーンの2年間の業績に対するこの代表団の称賛について報じた。同通信は、イスラーム協力機構(OIC)代表団のメンバーの話として、ターリバーンによるISIS(訳注:イラクとシリアで創生されたイスラム過激派組織。ISIL、 IS、ダーイシュ、イスラム国などと呼ばれることもある)への対応は「比類のない効果的」なものであると述べ、世界に対し彼らの進歩を「認識」するよう呼び掛けた。しかし、ターリバーンは、この代表団の任務の主な焦点である節度、公平性、女性の権利については何も言及していない。

イスラーム協力機構(OIC)は現在、ISISホラーサーン(IS-K)(訳注:アフガニスタンのIS=イスラム国組織)への対抗におけるターリバーンの功績を称賛しているが、最新の展開として、国連安全保障理事会はアフガニスタンにおけるISIS攻撃の複雑さの増大に懸念を表明した。評議会メンバーらは、ISISが作戦能力を強化しており、現在20以上の異なるテロ集団がターリバーン支配下で活動していると強調している(訳注:本サイト「<国連安保理報告・連載-5>TTPほか絡み合うテロ集団」https://webafghan.jp/un_n2312536pdf-5/参照)。ワシントン・ポスト紙はまた、ターリバーンの政権復帰により、アフガニスタンがISISの重要な拠点となったと報じた。

<参考記事>
https://www.washingtonpost.com/national-security/2023/04/22/afghanistan-terrorism-leaked-documents/

 

一方、一部の国民は、イスラーム協力機構(OIC)は国際舞台における重要なイスラーム機関として、普遍的価値観に重点を置き、正義を確保し、アフガニスタンで蔓延する人権侵害に対処すべきだと主張している。彼らによると、この組織が派遣した代表団は、広範な人権侵害と公的生活からの女性の完全な排除で告発されているターリバーン組織をごまかすことに集中してきたという。

これらの市民は、国際機関や援助機関の報告通り、アフガニスタンは最悪の人道状況にあると主張している。この国の市民の一人であるハビブラ(Habibullah)は、国民の経済状況は悲惨だと述べている。同氏は、大多数の国民の経済状況は憂慮すべきものであり、人々は極度の失業と飢餓のために家を追われ、近隣諸国に避難していると付け加えた。

市民らによると、現在の状況ではイスラーム協力機構(OIC)がターリバーンに対し、抑圧、排他主義、過激主義をやめるよう圧力をかける必要があるという。これにより、人々は通常の生活に戻ることができる。これらの市民は、イスラーム諸国は骨を砕くほど貧困を悪化させ、女性に厳しい制限を課すなどのターリバーンの行動を非難すべきであると強調している。彼らはイスラーム協力機構(OIC)加盟国に対し、国民の要求に沿ってターリバーン支配下のアフガニスタンの危機的状況に対処するよう求めている。彼らは、この危機がイスラーム世界に誤って伝えられないよう求めている。

最新の展開として、ターリバーンが医師評議会試験と公衆衛生の修士課程から女性と女子を排除したことに注目すべきである。現在、医学分野の卒業生数十人の女性が専門医療機関への入学を待っているが、ターリバーンは彼女らから医療専門センターへの入学試験を繰り返し剥奪している。過去2年間でターリバーンは女性に対して50以上の法令を発令した。これらの法令によると、女性は3年生以降の高等教育、就労、旅行、希望する服装、娯楽施設、レストラン、スポーツ会場への入場、国連を含む国際機関での雇用が禁止されている。

イスラーム協力機構(OIC)はイスラームの穏健さと公平性に関してターリバーンと対話するため代表団を派遣したが、一方でこの集団は過去2年間、教育カリキュラムからジャファリア法学(訳注:シーア派におけるフィクフ(教義)つまりイスラーム法学の学派(マズハブ)のひとつでシーア派の多数派)を排除し阻害さえしている。この組織はまた、特にアフガニスタンでのシーア派の宗教儀式の際に、信教の自由に厳しい制限を課している。ターリバーンはムハッラム月(訳注:イスラームの一年の始まりの月でさまざまな宗教行事が催行される)の間、シーア派の会葬者に大幅な制限を設けており、その結果、ターリバーン武装勢力による銃撃が発生し数人の死傷者が出ている。

以前、米国国際信教の自由委員会(USCIRF)(訳注:国内外で宗教の自由が守られていることを監視する独立・超党派の米連邦政府委員会)は、ターリバーンがアフガニスタンで信教の自由を厳しく制限していると述べた。さらに、アジア人権開発フォーラム(FORUM-ASIA)は、ターリバーンによるアフガニスタンにおけるシーア派の組織的排除と信教の自由の広範な侵害に対して強い懸念を表明した。この組織は、ターリバーンがシーア派、主にハザラ人の宗教的および信条の自由を禁止していると指摘している。(本サイト「トピックス」コーナー参照。さらにはHazara International Stop Hazara Genocide: Afghanistan’s deadly oppression of the Hazaraなど参照)

<参考サイト>
https://www.uscirf.gov/news-room/releases-statements/uscirf-releases-new-report-religious-freedom-and-womens-rights

 

複数の人権報告書によると、アフガニスタンの人道危機と人権状況は悪化している。ターリバーンによる2年間の統治下で、「アフガニスタンの証人」(訳注:文末参照)グループはターリバーンによる人権侵害事件を3329件報告した。これらの違反には、元軍人の拘束と殺害、抗議する女性と少女の恣意的拘束と弾圧、拷問、メディア検閲、信教の自由と女性の権利の制限が含まれており、これらすべてをターリバーンが犯したと非難している。

(訳注:アフガニスタン人と海外の研究者、アナリスト、ジャーナリスト、国際専門家が構成。安全上の理由から、チームの身元の大部分は機密。本プロジェクトは、オープンソースの分析と調査の専門知識を持つイギリスに本拠を置く非営利団体Center for Information Resilience (CIR)によってコーディネートされている。https://www.afghanwitness.org/

 

これまで、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)はターリバーンによる800件の人権侵害を記録していた。 UNAMAの報告書によると、ターリバーンは元治安部隊や前政権当局者の超法規的殺害、恣意的拘束、拷問、虐待の責任を問われている。一方で、人権監視団体はアフガニスタンの人権状況を壊滅的かつ悪夢のようなものだと表現している。

イスラーム協力機構(OIC)が今年7月にイスラーム学者のグループをアフガニスタンに派遣していたことは注目に値する。これらの宗教学者は、教育や雇用の権利など女性の権利に関連する議題を含め、ターリバーンとの議論に従事した。しかし、これらの会談の結果は依然として不透明である。イスラーム協力機構(OIC)はターリバーンによる政権奪取を受け、2022年3月6日にアフガニスタンでの活動を再開し、現在、アフガニスタンを含むイスラーム諸国57か国が加盟している。

原文(英語)を読む

The Organization of Islamic Cooperation Delegation’s Kabul Visit: Seeking Solutions or Whitewashing the Taliban?

One thought on “OIC: 解決策を求めるか、それともターリバーンをごまかすか?”
  1. […] ★ ターリバーンのこの政策に関しては、世界57カ国およびオブザーバー5カ国と国連など8組織からなるイスラーム協力機構(OIC) も危惧している。 『ウエッブ・アフガン』の記事「OIC: 解決策を求めるか、それともターリバーンをごまかすか?」(アミン・カワ、2023年9月10日)ではイスラーム協力機構が派遣した国際イスラーム法学アカデミー(IIFA) とターリバーン当局者(勧善懲悪省大臣およびイスラーム学者ら)とのやり取りを報じ、ターリバーンのみならずイスラーム諸国の対応をも批判の俎上に乗せている。 OIC側は広範な分野に及ぶ世界の批判をイスラームの衣をかぶせてターリバーン側に伝えた。それに対してターリバーンの勧善懲悪省シェイク・ムハンマド・ハーリド・ハナフィ大臣は、麻薬問題や社会悪との戦いを行ってきたと述べ、つぎのようにプレゼンしている。 […]

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