The Taliban’s Dilemma: Balancing Ties with TTP and Pakistan

 

(WAJ: アフガン・ターリバーン、パキスタン・ターリバーン(TTP)およびパキスタンとの三つ巴は、次第に抜き差しならない局面へと進みつつある。パキスタンが作り育てた両ターリバーンはパキスタンにとって獅子身中の虫となりつつある。アフガン・ターリバーンはパキスタン・ターリバーンをアフガン北部に移住させ、北部支配を強固にしつつパキスタンからの批判を避けようとしている。しかしそれはパキスタン・ターリバーンにとって真に受けるわけにはいかない提案であろう。一方、周辺諸国にとって、IS(イスラミック・ステーツ)などのテロ組織を抑えるために利用できるのはアフガン・ターリバーンしかないが、そのターリバーンの姿勢がはっきりしない。この三つ巴はお互いがお互いをコントロールできない状態へと発展する可能性を内包している。仮に経済危機に瀕する核保有国であるパキスタンが国家的破綻を迎えるとすれば、この地域の危機は世界危機へと転化しかねない。目が離せない事態の推移である。)

 

By: Shujaduddin Amini
By Hasht-E-Subh Daily On Aug 15, 2023

シュジャドゥッディン・アミニ
ハシュテ・スブ・デイリー 2023年8月15日

以前の予想に反して、ターリバーンのアフガニスタン支配はパキスタンに幸福をもたらさなかった。その原因は、パキスタンの利益に反する行動をテヘリケ・ターリバーン・パキスタン(TTP)がアフガニスタンを拠点にして行うテロ活動の増加である。7月20日、パキスタンのカワジャ・ムハンマド・アシフ国防相は、パキスタンは当初、長年の紛争におけるターリバーンの勝利に謝意を表明していたことを認めた。しかし、パキスタンはターリバーンが敵対勢力を庇護するとは思わなかった。7月19日、パキスタンのアフガニスタン問題担当特別代表アシフ・ドゥラーニーが3日間カーブルを訪問し、TTPを鎮圧せよとのパキスタン政府からの重要なメッセージをターリバーンに伝えた。

8月7日、パキスタン陸軍参謀総長のアシム・ムニール将軍は、アフガニスタンを拠点とするテロリストがパキスタンの安全保障問題を引き起こしているとの声明を発表した。彼は、パキスタンはアフガニスタンにいるこれらのグループの制圧に迫られていると強調した。これに対し、ターリバーンのスポークスマンであるザビフラ・ムジャヒド(Zabihullah Mujahid)は、パキスタン国内での攻撃を防止・制御する責任をターリバーンに負わせることはできないと述べた。イスラマバード当局はこれまで、これらの攻撃に関してTTPにしか言及してこなかったが、今ではアフガン人が関与していると言及している。8月1日、シェバズ・シャリフ首相は、アフガニスタン国民がパキスタンでの最近の攻撃に関与していると主張し、越境テロリストの警戒をターリバーンに求めた。さらに、パキスタンのヒナ・ラバニ・カール外務大臣は、アフガン人がパキスタン国内でのテロ攻撃に加担していると発表し、関連文書や証拠をターリバーン・グループに提供したと主張した。イスラマバードの懸念に対し、ムジャヒドは、アフガニスタンの領土はいかなる国の利益に対しても利用されることはないというターリバーンの姿勢を繰り返した。

イスラマバード政府関係者が表明した懸念に照らし合わせると、ターリバーン・グループはTTPとパキスタン政府という2つの選択肢のどちらを選ぶかという決断を迫られている。目下の問題は、ターリバーン集団がTTPよりもパキスタン政府を優先するかどうかである。

ターリバーン首長国は、国際社会を満足させるような成功をどの分野でも達成できていない。世界、特に近隣諸国は、アフガニスタンにおけるテロと闘うという決意で一致している。もしターリバーンが効果的な行動を起こしたとすれば(それはまだ起こっておらず今後も起こりそうもないが)世界における彼らの立場は変わるだろう。ターリバーンはパキスタンを含む近隣諸国の賛同を得ようとするかもしれない。最近、ジョー・バイデン政権がカーブルでアル=カーイダの指導者アイマン・アル・ザワヒリを殺害した(訳注:2022年7月31日)ことで、ターリバーンは世界から非難されるのではなく、テロとの戦いのパートナーとして見られるようになったという認識が広まった(訳注:「アル=カーイダはアフガニスタンに本当にいないのか?」)。これによって、ターリバーンはアル=カーイダとの関係をいくらか免罪された。ターリバーンはアル=カーイダを匿ったことで処罰を受けるだろうと予想されていたにもかかわらず、処罰を免れただけでなく、報償も受けた。現在、ターリバーンはTTPをめぐるパキスタンとの対立を解決することを最大の課題と考えている。そのため彼らは、自分たちがテロリスト集団と積極的に戦っていることを世界に納得させようとしている。世界はアフガニスタン国内からパキスタンに対して発動されるTTPの活動に注目しているが、パキスタン当局はそうした懸念を無視してきた。

2021年11月9日、パキスタン政府とTTPが1カ月の停戦を実施するさい、ターリバーン内務大臣代理のシラージュッディン・ハッカーニ(Sirajuddin Haqqani)が重要な役割を果たした。これはTTPに対するターリバーンの影響力を示している。しかし、停戦は短命に終わり、TTPはすぐに計画を打ち切り、パキスタンの利益に反する攻撃を再開した。ターリバーンが停戦を仲介したという事実は、ターリバーンがパキスタンからの圧力に屈したことを示唆しており、パキスタンに和平を確立する意志があることを示している。パキスタンをなだめるためにターリバーンがとったもうひとつの措置は、TTPメンバーのアフガニスタン北部および西部地域への移転である。ターリバーンのスポークスマンはこの行動を確認し、アフガニスタンとパキスタンの共通の利益に基づいて決定されたと述べた。ターリバーンは最近、ムッラー・ハイバトゥラー・アクンザーダ(Mullah Hibatullah Akhundzada)の指導の下、パキスタンの利益に反するジハードへの関与を禁止する命令を発し、パキスタンを喜ばせる行動に出た。このニュースの信憑性は、ターリバーンの国防大臣代理であるマウラウィ・モハマド・ヤクーブ・ムジャヒド(Mawlawi Mohammad Yaqoob Mujahid)(訳注:タリバン創設者故モハメッド・オマル氏の長男)によって確認されており、アフガニスタン国外でジハードに従事することは真のジハードとは見なされないと述べている。TTPのメンバーはターリバーン指導者に忠誠を誓い、彼の命令に従っていたため、ドゥラーニーがカーブルを訪問した際、この命令を出すようターリバーン幹部に圧力をかけたと伝えられている。パキスタンはこの命令の公表を支持しているが、ターリバーン当局は世論を気にして公表できないでいる。

ターリバーンはTTPよりもパキスタンを優先しているようだ。しかし、TTPに対処するためには、武力衝突という選択肢しか残されていない。ターリバーンはこのアプローチに慎重であり、軽々しくは考えていない。彼らは国民抵抗戦線(NRF)(訳注:アフマド・シャー・マスードの子息アフマド・マスードが指導する反ターリバーン抵抗組織)やアフガニスタン自由戦線(訳注:2022年3月に結成され、NRFと異なりタジク人以外も参加)から散発的な抵抗を受けており、同時にイスラム国ホラーサーン(ISIS-K)の妨害にも直面している。パキスタンからの支援はあるものの、ターリバーンはTTPに対して新たに戦端を開くことはできない。もしそうすれば、TTPのメンバーはISIS-Kと同盟を結ぶかもしれず、それはターリバーンにとって不利になる。その代わり、ターリバーンは武力紛争に訴えるのではなく、停戦や他の地域への移転、ジハードへの関与を禁止する命令の発令といった平和的手段によってTTPの脅威を排除することに注力している。

パキスタンがターリバーン創設の責任者であることを考えれば、パキスタンはターリバーンに対して影響力を持っている。ターリバーンがパキスタンに逆らうことはまずありえない。これまでのところ、ターリバーンはパキスタンと同じように、どの国の要求にも応じようとはしていない。ターリバーンはジハードを譲れない原則と考えているが、パキスタンをなだめるためにジハードを禁止している。このような指令の発布は、TTPを制圧するために軍事力を行使するのと同じくらい、いやそれ以上に効果的だ。大砲や戦車はTTPによる当面の脅威を取り除くことができるが、シャリーア(訳注:イスラーム法。ただしターリバーンは独自解釈によるシャリーア法を発布する)に基づく指令はパキスタンに対するパキスタン・ターリバーンd根あるTTPの戦争を永久に非合法なものにするだろう。それはターリバーンがパキスタンに提供できる最大の好意である。

帰ってきたターリバーン』の著者であるハッサン・アッバスによれば、ターリバーンはパキスタンに強い信頼を寄せており、それは指導者たちがいまだにパキスタンに住居を構えていることからも明らかだという。アフガニスタンの元パキスタン大使マンスール・アフマド・カーン(Mansoor Ahmad Khan)も最近のインタビューで、ターリバーンがアフガニスタンを支配しているにもかかわらず、グループの高官たちはいまだにパキスタンに住居を構えていることを認めた。彼は特に、ムラー・ヤクーブがパキスタンに住居を持っていることが知られていると述べた。

パキスタンはTTPの制圧に真剣に取り組んでおり、そのためにターリバーンを促している。いっぽうTTPは日に日に自信を深めている。パキスタンはTTPを止められなくなるのではないかと心配している。イスラマバードの最大の懸念は、TTPがインドなど他国の代理勢力になることだ。あるいは、時間の経過とともに、ターリバーンがパキスタンに圧力をかける手段としてTTPを利用する可能性もある。そのため、イスラマバード当局は、アフガニスタンへ真実を伝えるか、もしくは軍事介入を通じて、この「扇動勢力」を一刻も早く排除、あるいは弱体化させる努力をしている、とパキスタンのビラワル・ブット・ザルダリ外相(訳注:パキスタン人民党(PPP)共同議長でイスラーム世界初の女性首相で暗殺されたベーナジール・ブットー故首相の息子)は述べている。

米国とパキスタンは、TTPとの戦いに関しては一致している。米国政府高官は、アル=カーイダとともに米国の指定テロ組織リストに含まれているこのテロ集団と闘うパキスタンの努力を一貫して歓迎している。また、TTPはアル=カーイダと密接な関係を維持していると考えられている。たとえば、米国務省のネッド・プライス前報道官は今年1月3日、パキスタンにはテロ攻撃から自国を守る権利があると述べ、パキスタンへの支持を表明した。これは、アフガニスタンでターリバーンがTTPに庇護を提供していると非難するイスラマバード当局者の主張と一致する。8月9日、パキスタンでの同時多発テロ事件(訳注:最近のパキスタン内での一連のテロ事件。本サイト「トピック」コーナー参照)を受けて、米国務省のマシュー・ミラー現報道官は、米国はパキスタンの対テロ作戦を引き続き支援すると断言した。テロとの戦いにおける米国とパキスタンの関係の重要性を強調した。

参考サイト
米国務省年頭記者会見
https://www.state.gov/briefings/department-press-briefing-january-3-2023/

米国務省8月9日記者会見
https://www.state.gov/briefings/department-press-briefing-august-9-2023/

 

前述した事例は、テロリズムへの対処における米国とパキスタンの重要な協力関係を示している。ターリバーンは、米パ協力関係の影響を無視できない。アメリカのような強国が、アフガニスタン領内でのTTPに対するパキスタンの軍事攻勢を支援すれば、ターリバーンはパキスタンの意向に従うしかなくなる。パキスタンは、アメリカのターリバーンに対する姿勢に容易に影響を与える能力を保持しており、それはターリバーンから好意的に見られている。テロ支援国として知られるパキスタンが、国際社会の目には反テロ勢力として映っているという事実は別問題であり、それはパキスタンの工作員の技量と洗練さに起因する。

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