東アジアに広く伝わる民間伝承=梁祝伝説集

 

 紹 介 

東アジアに広く伝わる民間伝承=梁祝伝説集

女子の教育をめぐる悲恋物語

 

(WAJ: 人類が家父長制を採用するようになって、社会は世界のほとんどの地域で、母系社会から女性を隔離、差別する社会に変貌した。女性解放の戦いは人間が文字を使うようになって延々と続けられ、さまざまな説話が生まれてきた。中国原産の民間伝承「梁祝伝説」もそのひとつである。本書は、中国各地からさまざまなバリエーションの説話を収集したものである。さらにこの素晴らしい説話が、形を変えて東アジアに広く伝えられているにもかかわらず、日本ではほとんど知られていない事実に驚いた渡辺明次氏が、定年退職後中国にわたり語学留学し、日本語に翻訳した、という感動的な書物でもある。「中国人なら誰でも知っている」、という安氏に梁祝説話について紹介してもらった。)

 

中国各地に伝わる梁祝口承伝説集
編者:周 静書、訳者:渡辺明次、発行所:日本僑報社
定価:本体2800円+税 購入先:日本僑報社Amazon

「りょうさんぱく」と聞いて、多くの日本人がまず思い浮かべるのは、『水滸伝』に登場する豪傑たちの巣窟・梁山泊(りょうざんぱく)でしょう。

しかし、ここで取り上げようとしているのは、おそらく中国に古くから伝わるもうひとつの「梁山伯」――民話「梁山伯と祝英台」の主人公ですね。

この二つは、漢字は似ていてもまったく別物です。

· 梁山泊(りょうざんぱく)= 山東省にある湖の名。『水滸伝』の舞台。
· 梁山伯(りょうさんぱく)= 人名。中国四大民間伝説の一つ「梁祝」(りょうしゅく)に登場する悲劇の恋人。

日本では、『水滸伝』の影響力が圧倒的に大きいため、「りょうさんぱく」と聞けば、まず間違いなく「梁山泊」が連想されます。しかし、ここで紹介する作品は「梁山伯」にまつわるものなので、それはまさに“知っているようで知られていない中国のもうひとつの物語”を提示する、恰好の機会となるでしょう。

ここで、この名前の混淆(こんこう) に軽く触れ、「梁山泊」ではなく「梁山伯」であること、そしてそこに込められた愛と変身の物語の深みを簡単に知っていただくと、読者の興味をぐっと引きつけられることでしょう。

「梁山伯と祝英台」(りょうざんぱくとしゅくえいだい) は、中国四大民間伝説のひとつに数えられる、悲恋物語です。日本では「中国のロミオとジュリエット」と紹介されることもありますが、それ以上に「変身」と「蝶」 のモチーフが美しい、約1600年の歴史を持つ物語です。

 

あらすじ

1. 女装の入学
東晋の時代、才女・祝英台(しゅく えいだい)は「女性は学問をするな」という父の反対を押し切り、男装して杭州の学堂へ向かいます。道中で出会ったのが、誠実で学問に励む青年・梁山伯(りょうざんぱく)です。意気投合した二人は義兄弟の契りを結び、共に3年間学びます。

2. 気づかれぬ恋
この3年間、梁山伯は祝英台が女性だと全く気づきません。しかし祝英台は次第に彼に恋心を抱きます。帰郷の際、彼女は「自分には妹がいるので、ぜひ娶ってほしい」と遠回しに自分自身を指して約束を取り付けます。

3. 悲劇のすれ違い
ところが、梁山伯が約束通り訪れるまでに、彼女の父はすでに裕福な家の息子・馬文才(ば ぶんさい)との縁談を勝手に決めてしまいます。遅れて真実を知った梁山伯はショックのあまり病に倒れ、若くして世を去ります。

4. 蝶になる
結婚の日、祝英台は花嫁衣装の下に喪服を隠し、梁山伯の墓の前でひざまずきました。すると突然、墓が大きく割れ開き、彼女は迷わず飛び込みます。やがて、一対の美しい蝶が墓から舞い上がり、二匹は寄り添いながら空へと消えていきました。

ぜひ、「梁山伯」の世界を、日本でも知ってください。

安 佑樹人(Yukito An)
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