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先月発表されたアフガン状況に関する国連レポートは「ターリバーンの分裂」について9項目にわたり分析している。その中に「ハッカーニによる演説(2月16日報道)」のくだりがあり、「内容をもっと知りたい」と思った。便利な世の中である。詳細した記事があるのだ。天下のAPの記事ということもあり、著作権を侵さぬよう”抜粋”・補筆しながら紹介する。ちなみにターリバーンの内部分裂については、政権奪取からわずか3週間ほどの2021年9月6日に本サイトの主筆ファテー・サミ記者が現地からの情報として伝えている。(「ターリバーンとダーイッシュの生みの親ISI長官、子供喧嘩の恥ずべき仲裁」のうち「政権奪取後2週間のターリバー
”支配者ターリバーン、禁止令をめぐる食い違いを珍しく公の場で露呈”
オリジナル記事:Ruling Taliban display rare division in public over bans
オリジナル筆者:ラヒム・ファイズ、AP通信(RAHIM FAIEZ, Associated Press)、共同執筆、AP通信記者リアザット・ブット (Riazat Butt)
オリジナル投稿日:2023年2月16日(Feb 16, 2023 / 01:11 AM CST)
オリジナル記事のタイトルをクリックして最初に目を引くのが、校庭におけるハッカーニの勇姿ではなかろうか。クールか怖いかはさておき、騙されてはいけない。小さく説明されているとおり「資料写真」である。こんな感じだったんでしょうね、という編集部の思いやり。2月16日発のラヒム・ファイズ記者による報告はこう始まる。
“このところ、アフガニスタンの支配勢力ターリバーン内の分裂が珍しく公の場で露呈しているが、そのきっかけは政府の有力者であるシラージュッディン・ハッカーニ内務大臣(訳注:正確には「代行」。ターリバーンは律義にも自分たちの政府は臨時のものとの位置づけで「代行」とか「暫定」とかの冠をつけている)による、ターリバーン運動の隠遁する最高指導者に対する暗黙の批判とみられる演説であった。”
胸のすく話ではないか。政権奪取後もずっと”プロセスが不透明だったターリバーン指導部の意思決定”に対する内部からの批判である。つまり、この記事によると、”同組織の最高指導者ハイバトゥラー・アクンザダ”による”6年生超の学校や大学への少女と女性の出入り禁止命令”にハッカーニが噛みついたらしい。
“この禁止措置が国際的に激しい騒動を引き起こし、経済が崩壊したアフガニスタンの孤立を深め、人道危機を悪化させた”ことは衆目の一致するところであるが、そこまでには紆余曲折があった。ターリバーン政府が ”女性の学業続行を認め、女子生徒が中等学校に通うことを許可すると繰り返し約束していた中、昨年の12月に突然女子生徒の復帰許可決定が覆された。”
つまりその決定は ”これまでの政策と矛盾しているようにも見えた”。結果として国際的な猛烈批判を浴びたので、一大事となったが、当のターリバーンにして見れば、「女子の話など取るに足らない」事象なのだろう。だからふらつく。しかし、上層部にかねてから批判の念を抱いていたハッカーニは、それに抗議した(どの口が?との批判はさておき)。
“ハッカーニは週末、東部ホースト州にあるイスラーム宗教学校の卒業式でのスピーチでコメントした。
ハッカーニの支持者らがソーシャルメディアに公開した演説のビデオクリップによると、彼は「権力を独占し、システム全体の評判を傷つけることは我々の利益にならない」と述べた。さらに「この状況は容認できない」と付け加えた。
ハッカーニは、ターリバーンが政権を握った今、「より多くの責任が私たちの肩にのしかかり、それには忍耐と善良な行動、国民との関わりが必要だ」と述べた。またターリバーンは「人々の傷を癒し」、人々がターリバーンや宗教を憎むことがないよう行動しなければならないと忠告した。
ハッカーニはアクンザダには言及しなかったが、この発言はソーシャルメディア上で彼に向けられたものと多くの人がコメントした。ハッカーニも女性教育の問題には言及しなかったが、過去には少女と女性が学校と大学に通うことを許可するべきだと公に発言していた。”
面白いのは、ハッカーニにとっては「批判こそまずありき」で、批判先や批判の内容(この記事によると、女性差別)が隠されていることだ。これを「アフガン流」とでも呼ぶのだろうか。この発言への政府からの逆批判も、また「アフガン流」である。
“カーブル政府のトップ報道官であるザビフラー・ムジャヒドは、明らかにハッカーニのコメントに対する反応として、ハッカーニの名は出さずに、「批判は当事者に直接話すのが最善である」と述べた。
「もし誰かが首長や大臣、あるいはその他の役人を批判するなら、公の場ではなく、その批判を直接かつ密かにその人に表明すべきである、とイスラームの倫理でも言われている」と言うのがその論である。”
続いて、記事は例の「ターリバーン運動の隠遁する最高指導者」の話に移る。つまり”公の場にほとんど姿を現さず、カンダハール州南部にあるターリバーンの中心地から出ることもほとんどないイスラーム学者アクンザダ” の紹介である。
“彼の周りには、女性の教育と労働に反対する仲間の宗教学者や部族の指導者たちがいる。知られている限り、彼の写真は年齢不詳のものが 1 枚だけ存在する。アクンザダがカーブルを訪れたのはターリバーン政権掌握後、親ターリバーン聖職者の集会で演説するため一度だけだったが、非公開のイベントということもありメディア報道にその姿は映らなかった。”
ちょうど10年前に病死したと伝えられるオマル師と同様、アミール・アル=ムウミニーン(信者の王)となったアクンザダだが、直近の国連レポートでは「腎臓病」と伝えられ、我らが主筆ファテー・サミ記者には「既に死亡」と宣告されるなど、相当な「隠遁」ぶりである。(「<視点~036>死せる孔明 生ける仲達を走らす」参照)そんな指導者が果たして生き馬の目を抜く政治の世界で機能しうるのか?その点を、記事は学者に振って語らせる。
“ターリバーンは通常、内部の対立に水面下で対処しており、ハッカーニの発言は「重大なエスカレーションだ」とウィルソンセンターのアジアプログラム副所長で南アジア担当シニアアソシエイトのマイケル・クーゲルマンは述べた。ターリバーン指導者らも、もちろん広い視野を持っているが、「カンダハールでは彼らは隠者であり、国民の日常生活には関与していない」と彼は語った。そして「国を統治し、国民にサービスを提供しなければならないのは、カーブルにいる政治家たちだ」と付け加えた。”
記事は続いてハッカーニの基礎知識へ。
“ハッカーニは、ホースト州(訳注:パキスタンとの国境地帯)を中心とする同名の家族を中心に構築されたハッカーニ・ネットワークとして知られるターリバーンの一派を率いている。このネットワークは長年にわたり米国主導のNATO軍や旧アフガニスタン政府軍と戦い、民間人への攻撃やカーブルでの自爆テロで悪名が高かった。米政府は、米軍と民間のアフガン人への攻撃の廉でシラージュッディン・ハッカーニに1,000万ドルの報奨金をかけ続けている。”
賞金首が内閣の中枢にいるのをいぶかる向きもあるだろうが、これは米国の一存だ。ある国家が他国の有力者をお尋ね者にするのなら「どっちもどっち」と言えなくもない。そんなハッカーニは賞金に目がくらんだ仲間に裏切られもせず、政府内で頑張っている。
“ハッカーニの今回のコメントは、反政府勢力として20年間戦い続けた後、統治する側になり、国民の要求に急速に対応しなければならなかったターリバーンだからこそ、幹部同士の間に明らかな相違点があることを明示した。”
政権掌握時に”世界とのより良い関係を望み、1990年代のような女性に対する社会的制限や公衆の面前での鞭打ちなどの刑罰には戻らない”とした一派と、”以来約20カ月にわたり、女性からほとんどの仕事を奪い、中学、高校、公園への出入りを禁止し、公共の場では頭からつま先まで覆い隠すよう命じた”一派との軋轢が問題なのだ。もちろん今は後者の天下なのだが、こんな話もある。
“ターリバーン政権のアブドゥル・サラーム・ハナフィ副首相は2月14日にカーブルで行った演説(訳注:その模様はこちら)で、女性と少女に対する教育の禁止を間接的に批判した。いわく「教育システムの質と量を改善し、更新しなければ、決して成功することはない」と。さらに、イスラーム学者には、行為や慣行を禁止するだけではなく、解決策や前進する道を提示する義務があるとも付け加えた。”
このように内部対立が珍しく露呈していることについて、記事は大物ジャーナリストの言葉をもって締めくくる。
“ラホールを拠点とするパキスタン人ベテランジャーナリストでターリバーンに関する数冊の著書があるアフメド・ラシッドは、アクンザダとカンダハールを拠点とする支持者らに変化は期待しないと語った。
米国と北大西洋条約機構(NATO)の脅威に直面していると考えるターリバーンにとって団結は最優先事項であり、ターリバーン内に「何らかの反乱」があるかは疑わしい。しかし、実際に政府の業務を担当しているターリバーン指導者の一部は「このままではいけないことに気づいた」と同氏は語った。”
【金子 明】
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