The Surge of Religious Schools in Afghanistan

(WAJ: アフガニスタンの内戦が始まって40数年。アフガニスタンからはさまざまな理由で難民が輩出した。正確な数字は不明だが累積カウントすれば1000万人を超えるのは確実であり、ディアスポラ(離散民)として世代をつなぐ人々の数は当然にもそれ以上であろう。2021年のターリバーン復権によってさらに専門知識や技術をもつ人びとの流出が急増した。国内でも女性を社会から隔離している。アフガニスタンの人材の損失は計り知れないが、さらにそのうえ、国内では社会の生産力に寄与しない教育を急増させている。21年から3年。これがさらに継続した社会の行く末はどのような様相を呈するのだろうか。切なくかつ暗澹たる気持ちを抑えきれない。)

 

ハシュテ・スブ(アフガニスタンの独立系メディア)
ムハンマド 2024年9月11日

先週メディアに発表された、ターリバーン支配下の教育省の最新報告書によると、宗教学校の数は現在2万1000校を超え、350万人以上の生徒が在籍している。対照的に、一般の公立および私立学校の生徒数は1万8000人超だ。これらの数字は、アフガニスタンが向かう方向と、その先に迫る暗く危険な未来をはっきりと示している。

貧困に苦しみ、外国からの援助のみで生き延びている社会には、子供たちに生計を立てる方法を教える教育機関が必要だ。あるマウラナ(訳注:マドラサなどの宗教機関を卒業したイスラームの宗教指導者の称号)がかつて言ったように、人間はまずパンについて考える。教育は、何よりも社会の経済的向上に貢献し、人々を依存、物乞い、外国人への依存から解放するべきだ。社会のニーズは単にパンを見つけることだけにとどまらず、基本的なニーズが満たされたら他の重要なニーズも満たさなければならないのは事実だが、これらは適切な時期に対処されるべきだ。ユネスコやその他の国際機関で教育システムを評価するベンチマークとなっているマズローの有名な基本的欲求に関する理論(訳注:満たされるべき欲求の段階を下から順に生理的欲求・安全の欲求・社会的欲求・承認欲求・自己実現の欲求の5つに分ける理論)は、基本的なニーズが満たされて初めて、国民は尊厳のある生活を送り、国家の安定と繁栄を達成できると示唆している。

子どもや若者が尊厳を持って生きられるよう育てるには、さまざまなスキルや知識を身につけさせる必要があるが、今日の世界では、世俗教育とも呼ばれ現実の教育がそれを提供している。宗教教育、特にアフガニスタンやパキスタンの学校で教えられている教育は、人々の生活を向上させたり、ニーズを満たしたりする上で、大きな役割を果たしていない。この種の教育は、学生を自立させることができないだけでなく、慈善や施しに頼るように育て、社会の重荷となる。これはマドラサ教育制度の最も単純な欠陥であり、アフガニスタンでは現在、受動的な消費者となり、生計を他人に頼るようになる350万人の人々を育てていることになる。

しかし、このタイプの教育の問題はそれだけではない。これらの学校を卒業した人の多くは、知識がほとんどないにもかかわらず、自分の知識について高い期待と誇大な主張を抱いている。彼らは他の知識分野を軽蔑と嘲笑の目で見ており、他の分野の実践者を同等とは見なしていない。これらの卒業生の多くは、自分たちが神と預言者を代表し、彼らに代わって発言しているため、他の人とは違うと信じている。この独善的な感覚により、彼らは批判を免れ、いかなる批判も宗教と神聖な価値観に対する侮辱と解釈する。このように、彼らは社会的抑圧の代理人となり、他の教育を受けたグループを抑圧し、社会に権威主義的な規範を定着させる。

アフガニスタンとパキスタンの宗教学校に過激主義やジハード主義の思想が浸透し、状況はさらに危険になっている。これは、従来の学校には見られなかった新しい現象だ。暴力に頼る政治運動であるターリバーンがこの地域で台頭し、地政学的なプレーヤーとなった今、多くの宗教学校がこの計画に同調し、過激主義とテロリズムの成長と促進の拠点となっている。もちろん、すべての宗教学校がそうであるわけではないが、現状ではターリバーンのモデルが主流である。これらの学校は隔離された環境であり、生徒は異なる考えや別の世界観に触れる機会を奪われている。この精神的、心理的な隔離により、生徒は非常に無防備となり、テロリスト集団に勧誘される格好の標的となり、戦争や暴力に参加することになる。

もし350万人のアフガニスタンの若者が宗教学校に通う代わりに、収入を生む仕事につながるスキルの訓練を受けていたら、アフガニスタンは大きな変化を遂げていただろう。実用的な知識とスキルを備えた若者一人ひとりが、2、3人の家族を養うことができ、1000万人近くの国民の生活を改善できただろう。しかし、現在の状況は逆だ。さらに大きな災難は、ターリバーン政権下で他の学問分野の価値と重要性が低下し、公立学校が日々新たな課題に直面していることである。ターリバーンとその教師にとって、公立学校は競争相手とみなされており、異なる知識を提供することで宗教指導者の影響力を弱めている。ターリバーンは近代化とそれに伴う現象に対する戦いを自らの使命の一部とみなしており、この理由から公立学校の弱体化に組織的に取り組んでいる。

アフガニスタンは過去3年間に人材の相当部分を失っている。同国の知識人や文化人のほとんどが亡命や移住の形で避難したためだ。この膨大な数の熟練した専門職の人材を補充するには、少なくとも20年間の組織的な努力と十分な投資が必要であり、これはアフガニスタンの国内予算の能力をはるかに超える課題である。宗教学校と公立学校の不均衡がこの災難の極みである。公立学校はさまざまな専門分野の人材を養成することになっているが、宗教学校は1つの分野にのみ焦点を合わせている。しかし、報告によると、宗教教育のための学校は2万1000校以上あるのに対し、他のすべての分野の学校は約1万8000校にすぎない。開発の原則や貧困と後進性からの脱出の要件に精通している人なら、アフガニスタンのターリバーン政権が引き起こした災難の深刻さを理解できるだろう。

ターリバーン政権は、宗教指導者に政府役職を与え、専門家を脇に追いやることで、社会を自らの条件に合わせるよう強いている。多くの人々は、宗教指導者またはその受け皿となり、最終的には政府の職に就くことを期待して、子供たちを宗教学校やコーラン暗記センターに通わせている。人々は、この制度では専門教育で成功することはできず、むしろ圧力や脅迫に直面することになると知っている。アフガニスタンの地平線には破壊的な津波の兆候が見えているが、誰もそれを真剣に受け止めていないようだ。ニマ・ユーシジ(訳注:現代ペルシャ詩の父といわれているイランの詩人)は次のように述べている。

 

村はずれに男が独り立っている、

背には重い荷物、

手をドアにおき、男はつぶやく:

「中で眠る者たちが心配で起きている、

目は涙が溢れるままに。」

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